深山幽谷の滝Part1 深山幽谷の滝Part2 深山幽谷の滝Part3 深山幽谷の滝Part4
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朝日連峰出谷川、八久和川中流部、皆瀬川源流虎毛沢、比立内川源流真角沢、小阿仁川、日高山脈の滝、安栖沢・山釣り紀行、幽谷の滝
▲原始の姿をとどめる朝日連峰出谷川源流「呂滝」

「9月中旬、我々は秋色に染まり始めた朝日連峰を訪れた。
かつて、大イワナの釣れる渓としてその名を馳せた、八久和川源流の出谷川を目指す・・・
エゾオヤマリンドウが咲き乱れる天狗角力取山まで6時間30分。

頂上は砂礫の広場で、その中央に石を並べて作った土俵がある。
天狗から連想するものは゛釣り天狗゛。
50cmを超える大イワナをぶら下げてこの山を登れば、誰だって天狗に変身するような気がする。」
(「自然倶楽部1996年7月号 朝日連峰出谷川源流 釣天狗谷をゆく」菅原徳蔵記、関西廣済堂)
▲ブナが林立する尾根の登山道をゆく・・・大井沢登山道から高度差900mを登る ▲天狗角力取山山頂にある土俵 ▲出谷川源流部を望む・・・ここから渡渉点まで高度差700mを下る
▲岩場の大淵、トロ場連続 ▲コマス滝
▲オツボ沢出合い下流ゴルジュ ▲大岩魚が潜むコマス滝 ▲コマス滝上流

「ウシ沢が合流すると、まもなくゴルジュの奥にコマス滝が現れる。
入口に立つと左の巨大な岩の底が気になった。
底は深く、えぐれたエゴも大きい。大物の気配は十分だ。・・・
コマス沢を過ぎると谷は一気に開け、広河原となる。」
(「自然倶楽部1996年7月号 朝日連峰出谷川源流 釣天狗谷をゆく」菅原徳蔵記、関西廣済堂)
▲出谷川最大の釜をもつ呂滝

「出谷川渡渉点より上流は大釜がたくさんあるが、呂滝の釜は大きさ、深さともに群を抜いている。
百尾単位でイワナがいても何らおかしくない天然の養魚場といったところだ。
写真を撮った後、岩場をヘツって大きくえぐられた滝の右へ出た。

滝頭めがけて何度も振り込んだが、竿はピクリとも動かない。
足下をのぞき込むと、青く染まった深い底に尺を越えるイワナが数尾見える。
足元の岩の底が大きなエゴになっており、そこが岩魚の棲家のようだ。

すでにアプローチで失敗、完全に私の負けである。」
(「自然倶楽部1996年7月号 朝日連峰出谷川源流 釣天狗谷をゆく」菅原徳蔵記、関西廣済堂)
▲弁天岩の滝
▲限りなく透明に近い流れが印象に残る
▲弁天岩の滝上流は巨大な岩が点在する ▲垂直の壁・・・西俣沢も近い ▲山肌を斜めに削った幾筋もの切れ込み、紺碧に染まった流れ・・・独特の美景

「滝の上流は、浸食された奇岩が連なる渓谷・・・
谷はどこまで行っても岩だけが目立つ。
淵や瀬、トロ場、ゴルジュの大釜など好ポイントは至る所にある・・・

流れは清く、底まで透き通って見える・・・
目立つのは、夏の洪水の爪痕ばかり。
遥か頭上の枝にゴミが引っ掛かり、葉が枯れた草や枝は一様に下流へとなびいている。
その高さは7〜8mにも達していた。」
(「自然倶楽部1996年7月号 朝日連峰出谷川源流 釣天狗谷をゆく」菅原徳蔵記、関西廣済堂)
▲中俣沢魚止めの滝5m
▲東俣沢ゴルジュに懸かるマムシ滝
▲東俣沢魚止めの滝15m
かつては、この滝壺にイワナが群れていたというが・・・それは昔話なのだろうか
恐らく、大洪水で下流へ流されたのだと考えたい
いずれイワナは源流をめざして遡上する習性をもつ
原始の姿をとどめる出谷川源流にイワナが群れる姿を夢見て竿をたたむ
八久和川中流部
▲八久和川カクネ平のテン場・・・ミズナラの巨木が多くマイタケの宝庫。森は広く、テントはどこにでも張れる。
▲八久和川支流長沢・魚止めの滝 ▲腰までつかりながら八久和川を渡渉

皆瀬川源流・虎毛沢の滝
▲虎毛沢ヨドメの滝をゆく

虎毛沢は、虎毛山塊の盟主・虎毛山(1,433m)をはじめ、高松岳(1,348m)、石神山(1,142m)、
須金山(1,253m)など魅力的な山々を源流とし、枝沢も多い
虎毛山という奇妙な名前は、浸食谷の縞模様が虎毛に見えることから名付けられたという
▲美しいナメ
▲縞状奇岩をゆく。こうした自然の造形美を鑑賞しながら沢を歩くと背中の荷の重さが軽くなる。 ▲支流戸沢・魚止めの滝6m ▲支流猿子倉沢の小滝
▲赤湯又沢出合いのゴルジュ滝
「変化に乏しい中で、赤湯又沢出合いのゴルジュとナメ滝は、壮厳な感じを与え、
強烈な印象として心の中に焼き付けられる。

至る所で目につくのがスベリ台のような岩盤である。
草木一本生えない斜面に保水力はない。
崩れ落ちた露頭にはヒバが多く生えている。」
(「自然倶楽部1990年9、10月号 皆瀬川源流虎毛沢」菅原徳蔵記、関西廣済堂)
▲猿子倉沢二段10m滝
▲崩落した大岩で流れを堰き止めた2m滝・・・この下の4m滝がヤマメ止めの滝 ▲虎毛沢の魚止めは、以外に近い。ヨドメの滝は、落差より釜の大きさが見事。巨大なプールでは、ジャンプするイワナを何度も目撃した。

比立内川源流真角沢の滝
▲真角沢支流大深沢源流左俣、7m滝
真角沢は、白子森(1,179m)に源を発し、大深沢、鳥坂沢、天狗ノ又沢と
三本の支流群よりなる流程およそ4キロ余り、比立内マタギが活躍した比立内川の源流部である。
▲真角沢支流大深沢の滝 ▲真角沢の小滝2m
▲真角沢源流3m滝 ▲鳥坂川桧倉沢、ゴルジュの奥4m滝
▲真角沢支流大深沢、ゴルジュに懸かる滝 ▲天狗ノ又沢4mナメ滝

乳頭山・安栖沢(アズマイ)山釣り紀行
▲安栖沢源流をゆく ▲ブナの新緑 ▲源流のイワナ ▲ヤマザクラ
▲ショウジョウバカマ ▲登山 ▲タケノコ ▲黒湯
「贅沢な旅だった。今でもまた訪れたいという衝動が残っている。
安栖沢の深い谷の底から、奥羽山脈の背骨稜線に踊り出て、
平家落人部落のような黒湯に至る13キロの旅。

それは、「沢登り」「新緑」「山の幸」「花」「登山」「タケノコ」そして「秘湯」の旅であった。
安栖沢は単なる「沢登り」としては二流の沢である。
乳頭山も単なる「登山」の対象としては二流の山である。しかも、我々のやっていることも二流である。

「全てに二流なら一流に負けない」。
二流を様々に組み合わせることによって、一流の旅が満喫できるのだとつくづく思った。」
(「自然倶楽部1991年12月号 雲海に消えたイワナ」菅原徳蔵記、関西廣済堂)  
▲ゴーロ途中の小滝と大釜

「車止めから2時間余りでC1に到着。ここから上流部は巨岩ゴーロの連続であった。
落差も大きい。巨大な岩は、急勾配の谷を埋め尽くしていた。・・・
巨岩の階段を上って行くと、ぐんぐん高度が増していく。滝などあろうはずはない。

伝左衛門沢のようなゴーロがどこまでも続いていた。
やっと緩勾配になったところで2m滝。大きなプールの水面は、新線の深いグリーンに染まっていた。
2尾キープしたところで右岸を巻く。

目に飛び込んできたものは、紫の群落・森の精、シラネアオイ。これだけ大きな群落は珍しい。・・・
急斜面に連なる新緑のブナに暮れてゆく淡い光が、斜めに降り注いでいた。」
(「自然倶楽部1991年12月号 雲海に消えたイワナ」菅原徳蔵記、関西廣済堂) 
▲ゴルジュ ▲カエルを食べていたイワナ ▲標高1,040mテン場C2

「小鳥のさえずりが、森の中から聞こえてくる。雪代の去った渓の水位はかなり下がっている。
源頭の雪はまだ深いに違いない。
すばやくテントを撤収し、移動開始。標高921mの二股で荷を下ろした。・・・

岸辺に咲くムシカリの白い花の群れの下、ゴーロ帯を釣り遡っていくと、
次第に谷は圧縮され、初めて出合うゴルジュ帯となる。
黒光りする壁下の流れ出しから、尺級イワナが飛び出した。・・・

ゴルジュ帯を越えると、やっと渓は開け、穏やかな流れとなる。
振り返ると、右岸の斜面は太い笹竹に覆われている。私は笹竹に飛び込んだ。
密生する笹竹の下を這うようにタケノコを探す。ふくよかな枯れ葉の聞から、ニョキニョキと顔を出している。
一つ見つけては360度振り返る。あっちにも、こっちにも、たちまち私の釣りベストは重くなった。・・・

標高999m、二股下流。大きな石にネコ足で進んだ。石の裏に隠れて、静かにポイントへ投入。
目印がまもなく水中に没した。竿が震え、心が震えた。
右手にイワナを握り締めて頭を石に叩きつける。野ジメ。口から異物が飛び出した。カエルだ。

カエルはわずかに原型を止めているに過ぎなかった。カエルをも飲み込むイワナ。
豪雨によって、川虫が極端に少なくなると、イワナはへやカエルを追う「渓の狩人」となる。
ここからまたもゴー口連瀑帯となる。・・・

荷を担ぎ6.3キロ地点、C2を目指した。
標高1,040m、ゴーロ滝に張り出したヤマザクラが渓に花を添える素敵なキャンプサイトだった。
最後の夜は、タケノコとイワナ料理に花が咲き、焚き火を囲む仲間の目は、満足感で満ち溢れていた。」
(「自然倶楽部1991年12月号 雲海に消えたイワナ」菅原徳蔵記、関西廣済堂) 
「ブナの棄先からしたたり落ちる雨音で目が覚めた。
テントから顔を出すと、一帯は流れる雲海の中であった。高度計は1,000メートルを越えている。・・・
燃えないゴミは全て背中に背負って8時15分、出発。

意外に勾配は緩い。瀬尻からイワナが走る。新緑が雲海にしっとりと濡れ、水玉となって渓に流れ落ちていった。
前方は濃いガスで何も見えない。不透明な雲海に向かって沢を遡った。
周りが見えない沢登りは、幻想的でさえあった。

身を切る冷たさの中で、次第に汗が吹き出してきた。
汗をかくと見えてくる風景が確かにあった。
はるか頭上に白樺のスリムな姿が、濃い霧に見え隠れしたかと思うと、
オオシラビソの変形した奇妙な姿が突然現れたり、白に覆われた空間を紅色に染めるツツジ、
そして足元から動く黒い物体に身が引き締まる思いだった。

やがて、イオウの臭いがかすかに鼻をついた。高度計が1,200mを越えると、スノーブリッジが出現。
さらに、雲海は濃くなった。源頭は近いというのに魚止めの滝は存在しなかった。
いつの間にかイワナは、スノーブリッジの連なる雲海に消えていた。」
(「自然倶楽部1991年12月号 雲海に消えたイワナ」菅原徳蔵記、関西廣済堂) 
▲雪渓を登り千沼ケ原へ
▲安栖沢源流・雲海に消えたイワナ ▲コバイケイソウの若葉 ▲神田が連なる千沼ケ原

「右岸の湿地斜面には、まだ花をつけていないコバイケイソウの大群落が何処までも続いている。
霧雨にしっとりと濡れた大きな葉の群れは、眩しいくらい原色の緑だった。
背丈が次第に低くなっていくオオシラビソの群落。登り始めてから3時間弱、
笊森山と三角山の鞍部に広がる広大な高層湿原、千沼ヶ原にたどり着いた。

低く垂れ込めた雲海の中の湿原は、静かだった。
ときおり「ホウホケキョ」「カッコウ、カッコウ」の鳴き声が、静寂の湿原に響き渡った。
湿地帯に淡いピンク色の小さな花。
放射状にのびる花先に、水玉がいくつも付いていて、今にも落ちそうな気配をみせている。
ショウジョウバカマ。なんと美しい花だろう。
心の底までピンク色に染めるような淡い花に、充実感が雲海の流れとともに広がっていった。

次第に雲海は去って、ベールに包まれた千沼ケ原の全貌が見えてきた。
天上の湿原は神秘的でさえあった。
天上に連なる奥羽山脈の細道を快適に歩いた。」
(「自然倶楽部1991年12月号 雲海に消えたイワナ」菅原徳蔵記、関西廣済堂) 
▲山で食らえば何でも旨い ▲ミネザクラ
▲お花畑 ▲標高1,415m・乳頭山の岩頭 ▲ブナの樹海に向かって下る。

「眼下に広がる山並には、まだら状に残る雪。視界を遮るものは、流れる霧だけだった。
巨大なスノーブリッジを縦走していくと、ハイマツ群落、黄・白・紅の花の群れとなった。
お花畑でオニギリとイワナを食べた。旨い。自然を丸ごとふりかけて食べる。この旨さ。
下界では作り出すことのできない逸品である。本物のグルメは、自然の中でしか作り出すことはできないのだ。

なだらかな山に突き出た岩肌の項上を目指す。
荷が重くなり、汗が吹き出してくる。午後1時15分、標高1,415m。ついに乳頭山にたどり着いた。
ふくよかな乳房の項点に立ったはずだが、そこは板状節理の連なる岩頭だった。
登山客も思い思いの場所でオニギリをほおばっている。みんな満足そうな顔だ。

秋田県側へ一直線に下る。遠くに1,637mの秋田駒ヶ岳が、流れる雲の中に見える。
眼下には、盛り上がるような先達川のブナの樹海、
登山道の脇には黒いカマキリのような大群・ミネザクラが見事な調和を保ちながら風下に低くなびいている。

下るにつれて、ブナは大きく太くなっていく。
ブナの豊かな林床には、太いタケノコがいくつも顔を出している。・・・
密生している笹竹の中にタケノコ採りの人達が見えた。
大きな麻袋は、パンパンに膨れ上がっている。あんな重いものを、人間は担げるのだろうか。

一本松沢を過ぎ、先達川に達する。7時間余り歩き続けている。
頭の中は、とうに空っぽである。黒湯はまだか、と呪文を唱えながらひたすら歩いた。
足が前になかなか出なくなった頃、崖の底に見えた。黒湯だ。

茅葺、杉皮葺き、柾屋根の連なる古びた村の中に、湯煙が白く立ち昇っている。
突然現れた幻の村。黒湯というよりは「平家の落人部落」「山賊の里」「原始集落」を発見したような新鮮な感動があった。
もしかしたら、我々は時代を逆上ってきたのではあるまいか。
薄暗い木風呂ですっかり汚れた汗を流し、やっと我に返った。」
(「自然倶楽部1991年12月号 雲海に消えたイワナ」菅原徳蔵記、関西廣済堂) 
太平山系・小阿仁川源流の滝
▲萩形沢4mナメ滝「空白の滝」
太平山登山道入り口上流に、2m、5m、4mの連続滝がある
上段の4mナメ滝は、白い瀑布がキラキラと輝き美しい
滝を眺めていると、雑事が一杯詰まった心も、ジワジワと「空白」になっていく
▲萩形沢ゴーロ滝
▲萩形沢中流部の4mナメ滝
▲大旭又沢二段5mの大ナメ滝 ▲大旭又沢支流岩魚沢三階の滝10m
▲小旭又沢魚止めの滝三段17m ▲小旭又沢魚止めの滝上段7m、流木と釜
▲大蓋沢源流二条の滝
谷は両岸が切り立ち日中でも薄暗い
清冽な二条の飛瀑を浴びて、一帯は緑の苔に覆われている
深山幽谷の滝を代表するような神秘的な滝である
北海道日高山脈の滝
▲歴船川ポンヤオロマップ川の湧水滝

北海道日高山脈を流れる川は、カール地形のためか、ほとんど最源流部まで詰めないと大きな滝がない
本州では考えられない地形ゆえに、渓魚の天然分布が広く、冷水を好む渓魚の楽園と言われる由縁でもあろう
また、渓魚の遡上を阻む滝があれば、その滝上には魚一匹生息しないのも日高の特徴である

それは、東北のように杣人がイワナを滝上に移植放流する風習がなかったことを示している
なぜ移植放流の風習がなかったのだろうか・・・
本州の川とは桁違いに懐が深く、流れも太い
つまり、人を容易に寄せ付けない険しい地形と厳しい気象条件があったからに違いない
▲元浦川ソエマツ沢魚止めの滝

ソエマツ沢源流に懸かる魚止めの滝は、「大イワナの滝壺」(白石勝彦著、山と渓谷社)にも記されている
その記録によれば、尺5寸級を数本釣り上げ、魚止めの滝では60cm近い大イワナを目撃したという
しかし、当時は林道もなく、山越えルートを辿らないとソエマツ沢源流には辿り着けなかった時代である

「二又から1.5km地点、左岸から小沢が流入する。両岸は、急に圧縮され、二段の魚止めの滝が姿を現した。
下段の壷は小さいが、上段の壷は大きいプールになっている。
切り立つ岩は、滝のしぶきで濡れ冷たい光を放っていた。中は薄暗く、緑に染まったプールは意外に深い。

かつては、大イワナの滝壺であったのだろうが、イワナの気配さえなかった。」
(「別冊フィッシング第39号1997年 北の国/大イワナと大カジカ」菅原徳蔵記、廣済堂出版)
▲ヒグマの糞(ソエマツ沢) ▲歴船川ポンヤオロマップ川の小滝と釜
▲歴船川ポンヤオロマップ川右岸に懸かる美しいナメ滝
枝沢が滝となって合流する釜には、渓魚が群れている
この川は、サクラマスの遡上を阻む滝は皆無・・・上流にとどまる渓魚はヤマメのオスばかりだった
▲新冠川中流部、ゴーロ滝
▲新冠川中流部、本流に注ぐ枝沢の滝・・・新冠川本流にも渓魚の遡上を阻む滝は皆無だが、ダムによって分断されている ▲新冠川上流の小滝とイワナ淵・・・奥新冠ダム上流にも大きな滝はないが、ダムの完成記念あるいは釣り人たちによってニジマスが放流され、野生化している
▲新冠川源流のゴーロ滝・・・巨岩のゴーロ区間は意外に長い
水の透明度は抜群、見上げれば澄み切った青空、三角山のように尖がった山が印象に残る
真夏でも水は冷たい・・・その清冽な流れを蹴って、沢を登るだけで気分は爽快となる
▲ペツピリガイ沢左岸のナメ滝 ▲ペツピリガイ沢イワナ止めの滝二段4m
ペツピリガイ沢は、しばらく河原が続くが、ほどなく険悪な函となる
2回ほど高巻いたが、次第に険悪な函が連続・・・途中で函に降りると、2段4mの滝に出会う
滝壷は深く大きい・・・本流から遡上するイワナやニジマスの一時的な魚止めとなっている
▲札内川は、東北の渓流に近く適度な落差がある。こうした山岳渓流にはオショロコマが生息している。
▲正面の沢は九ノ沢(標高780m付近)・・・八ノ沢と同様、カムイエクウチカウシ山(1979m)の登山ルートになっている ▲標高930m二又・・・札内川本流は、オショロコマの遡上を阻む滝は皆無だった
▲静内川支流シュンベツ川の険悪な大函・・・まるで地獄谷のような函が続く
日高山脈で圧倒されるのは、滝ではなく険悪な函である
北大山の会著「日高山脈」には次のように記されている

「昭和3年7月、慶大山岳部の斎藤長寿郎氏らがカムイエクウチカウシ山からシュンベツ川を下った。
だが、本流の峻悪な函で行き詰まり、上アブカサンペ沢へエスケープした。」

昭和33年電源開発調査の際に左岸に刈り道がつけられるまで、
シュンベツ川は、その上流の一部分が歩かれたのみだった
左岸に巻き道がつけられたとは言え、既に五十余年も経ている

数キロに及ぶ大函を越え、野営する釣り人や山菜採りがいないだけに、藪と化している
沢登りの人たちでさえ、この函を突破した記録は極めて少ない
ちなみに「日本登山体系1 北海道・東北の山」には次のように記されている

「林道終点より沢へ降りて左岸の踏み跡をたどる。
ここは2kmほど続く巻き道でこの函は非常に険悪である。」
しかし、「踏み跡」と言えども、辿る者がいなくなるとあっという間に藪と化してしまう

滝と釜が連続するヌビナイ川右俣
「山と渓谷1999年6月号 特集:日本の名渓39選」には、北海道の川が3本選ばれている
大雪山系忠別川クワウンナイ川右俣、日高山脈ヌビナイ川右俣、狩場山須築(すっき)川
そのヌビナイ川右俣について、京極紘一(北海岳友会)さんは次のように記している

「深く切れ込んだ緑の谷で白い岩床のナメ滝が釜をもって連続する姿は圧巻だ。
また、流れ落ちる清流が、釜にエメラルドグリーンの水を湛える様は華麗であり、
日高山脈のなかで最も美しい渓谷といわれている。・・・」
▲遡行者を威圧する日高独特の函
▲507m二股・左股、函に懸かる滝 ▲狭いゴルジュに吸い込まれるように落下するF3
「・・・沢は突然のように狭くなり、滝のある廊下状の函が長く続き、
へつり、徒渉、高巻きを繰り返してぬけ、大滝を越えると、前述の
日高一といわれるナメ滝が目の前に感動的に展開する。
特に紅葉の季節は最高の渓谷美となることはいうまでもない」(「山と渓谷1999年6月号」京極紘一・北海岳友会)
▲ヌビナイ渓谷の美しさは、流水の透明度の高さとエメラルドグリーンに染まった釜である
まさに日高最後の秘境と呼ばれる日高山脈・・・その中でも日高一の美渓と言われるのも当然だと思う
唯一残念なのは、渓魚一匹生息していないことである
▲狭い廊下帯を流れるヌビナイ峡谷
▲釜と滝が連続
▲ヌビナイ川核心部・七ツ釜
2000年9月16日、札幌市の山岳会のメンバー・3名がヌビナイ川の滝に転落、
死亡するという悲惨な事故が起きている・・・
狭い函と滝が連続するヌビナイ川は、雨で増水すれば逃げ場がなく危険きわまりないので注意!
深山幽谷を代表する秘渓の滝
▲「深山幽谷の滝シリーズ」の最後を飾るのは「夢幻の滝」

この不思議な渓を初めて訪れたのは、今から20年以上も前のことである
入り口は断崖絶壁が丸くえぐられ、真っ暗な岩穴トンネルのようになっていた
雨が幸いしたのか・・・この滝壷で尺岩魚が立て続けに釣れた

イワナの誘惑に駆られて、暗い門の奥に入ると、背筋が寒くなるような滝が懸かっていた
何となく不気味な予感がして、それ以上進むこともできず退却したことがあった
それほど両サイドの壁は険しく、狭く、暗かった

人を容易に寄せ付けない滝の上には、奇妙な言い伝えが残っていた
「昔は、あの沢のイワナは全部頭がつぶれていた」・・・

後年、この幽谷の滝を高巻き探索すると、確かに「頭がつぶれたイワナ」が複数生息していた
正面から見ると、まるで「人魚」のような奇妙奇天烈な顔で私を睨みつけた
だから、私にとってこの滝は、夢か幻でも見ているような滝のイメージが今でも鮮明に蘇る

(深山幽谷の滝シリーズ・・・「完」・・・2009年4月4日)

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