深山幽谷の滝Part1 深山幽谷の滝Part2 深山幽谷の滝Part3 深山幽谷の滝Part4
深山幽谷の滝Part5 深山幽谷の滝Part6 山釣り紀行TOP


八幡平・葛根田川、和賀山塊・生保内川、シトナイ川、和賀川源流の滝
▲和賀山塊・生保内川ヨドメの滝2段6m
生保内川・標高約660mのゴルジュ始点に懸かるヨドメの滝は、落差が小さいものの
両サイドの屹立する壁が凄まじく、訪問者を戦慄させるに十分の迫力がある・・・まさに幽谷の滝である

■写真及び記録メモ
@八幡平葛根田川源流の滝・・・「北の釣り1988年9月号 岩手・葛根田川源流」(菅原徳蔵記)
 「2006年7月中旬 小和瀬川から葛根田川へ」(秋田・源流釣友会記録)
 「2007年8月 八幡平・源流の沢旅2007」(秋田・源流釣友会記録)

A和賀山塊生保内川源流の滝・・・「自然倶楽部1994年12月号 秋田・生保内川」(菅原徳蔵記)
 平成3年7月下旬 「失われた畏怖への旅、生保内川」(秋田・源流釣友会記録)
B和賀山塊シトナイ沢源流の滝・・・「自然倶楽部別冊 1993年釣行記 生保内川支流シトナイ沢」(菅原徳蔵記)
C和賀川源流の滝・・・「自然倶楽部1991年4月号、5月号 和賀川源流行」(菅原徳蔵記)
八幡平・葛根田川源流の滝
▲葛根田川の美景・・・葛根田名物の函に懸かるナメ滝

葛根田川を初めて訪れたのは1988年7月のこと
その記録「北の釣り1988年9月号 岩手・葛根田川源流」(菅原徳蔵記)には・・・

「葛根田川上流は、奥羽山脈の中枢をなす乳頭山、大白森、大沢森、曲崎山、八瀬森、
関東森、大深岳といった1200〜1500bの山々を源頭として七つの支涜群からなっている。
この流域は、秋田フキの巨大な葉を上から見たような丸い形をしている。
これは、有望な枝沢が多いことを示している。・・・

葛根田川には、明治以前までイワナは棲息していなかったが、明治のころ、秋田県生保内の職漁師が
先達川から金堀沢へイワナを放流したことから、今では源流部までイワナが棲息しているという。」
▲右岸に懸かる長大なスラブ滝50m ▲お椀型のナメ滝5m ▲美しい渓相をみせる函の入口

「葛根田林道から川へ下りると竹ヤブの中に踏み跡がある。
雨で濡れた竹ヤブをかき分けるように進む。踏み跡はすぐに河原に達している。
大ベコ沢までは広々とした平凡な河原である。
右岸から流入する大ナメ滝は50mにも達し、逆層のスラブ壁をなめるように滑り落ちている。

大ベコ沢より上流は石も次第に大きくなり、大岩の点在するナメ床、ゴーロが続き、
まもなく右手に丸い形をした落差5mのナメ滝がある。このナメ滝の左下は丸く削り取られている。
おわんのようなツボに、真っ白の糸を幾条にも引いたように流れれ落ちている。

歩き易いナメ床を遡行していくとゴルジュ帯となる。ここを右岸に巻くと、美しいナメ床が連続している。
次第に渓は狭まり、二番目のゴルジュ帯となる。
増水時は困難に見えるが、渇水なので左岸をへツリながら通過する。
岩盤はザラザラしていて滑りにくい。」(「北の釣り1988年9月号 岩手・葛根田川源流」菅原徳蔵記)
「このゴルジュ帯右岸から流入する15mのナメ滝が本流へ落下する様はみごとである。
ゴルジュを越えると廊下状ナメとなり、まもなく右岸から流入する大石沢に出合う。・・・

大石沢出合いまではかなりの水量であるが、それより上流は半減する。
大石沢出合いはナメ床が削り取られた水路となって滑るように流れている。」
(「北の釣り1988年9月号 岩手・葛根田川源流」菅原徳蔵記)
▲1988年7月撮影・葛根田大滝二段25m ▲2007年8月撮影・同左
葛根田大滝は、20年前の写真と比べてもほとんど変わらず、堅牢な滝であることが分かる

「中ノ又沢出合いで四人の沢登りパーティに出合う。昨日本流を遡り、中ノ又沢を下降してきたという。・・・
600m程進むと2段25mの葛根田大滝に達する。この滝ツボは水を満々とたたえ、いかにも大物がいそうである。」
(「北の釣り1988年9月号 岩手・葛根田川源流」菅原徳蔵記)
▲葛根田川上二又(1988年7月撮影) ▲上二又テン場(2007年8月撮影)

「一気に大滝まで歩き、左岸を大きく巻いて滝上より四人で釣り遡る。・・・
九時四五分、上二又に到着。ここは左岸高台が絶好のキャンプ場となっている。・・・
まわりはヒバ、サワグルミ、ミズナラの巨木が林立し、いかにも源流部らしい。」
(「北の釣り1988年9月号 岩手・葛根田川源流」菅原徳蔵記)
▲1988年7月撮影・F1の滝 ▲2007年8月撮影・同左
二つの写真を見比べると、明らかに滝頭が崩れて崩壊しているのが分かる
20年も経つと、脆い滝は水の力で浸食崩壊を繰り返し、姿を変える
▼滝ノ又沢F1の滝
崩壊した岩屑は下流にゴロゴロ点在し、実に歩きにくくなっている
葛根田川支流中ノ又沢の滝
▲中ノ又沢・F2のナメ滝
中ノ又沢は、入口から三つの滝が連続している
しかし、その上流は、源頭部まで滝らしい滝がない
源流部は、歩いても歩いても一帯は平坦で穏か・・・滝も皆無・・・笹薮と深いブナの森に埋め尽くされている
▲左から中ノ又沢が出合う二又 ▲中ノ又沢・F1の滝 ▲中ノ又沢・F3のナメ滝

葛根田川源流八瀬沢、北ノ又沢の滝
▲15m滝を大きく高巻こうとしたが失敗・・・五葉松が生える尾根まで登ってしまった ▲標高860m右岸八瀬沢出合いの5mナメ滝 ▲2007年8月撮影・同左

「私は副会長と北ノ又沢に入る。下流部のザラ瀬がウソのように谷は圧縮され、
ゴーロをともなった釜が連続し、好ポイントが続く。・・・
200m程進むと右岸から流入する5mのナメ滝があった。・・・

八瀬沢は、落差のあるゴー口連瀑帯となっているが、アタリがない。
まだ一時を過ぎたばかりである。思い直して再度北ノ又沢15m滝に挑戦する。」
(「北の釣り1988年9月号 岩手・葛根田川源流」菅原徳蔵記)
▲最後の詰め8mナメ滝
▲八瀬沢は出合いの滝を越えると、階段状のゴーロが続く ▲八瀬沢源流に懸かる20mナメ滝 ▲八瀬森山荘

八瀬沢は、八瀬森湿原から関東沢に抜ける沢登りルートになっている
最初は、階段状のゴーロが続くが、一転穏やかなザラ瀬が続く・・・なぜかイワナが生息していない
▲1988年7月撮影・北ノ又沢ヨドメの滝15m ▲2007年8月撮影・同左

「ここから300m程進むと谷はさらに狭くなり、直角に左折すると15mの直滝である。
両岸絶壁で釣り人をこれ以上進むのを拒絶するかのような見事な滝である。・・・

高巻きは小さく巻くのが原則である。先程は大きく巻こうとして失敗した。
屹立する壁にもわずかな糸口があるはずである。
滝は直角に曲がったところにあるが、この曲がる手前にわずかなガレ場がある。

手掛かりとなる木がないので慎重に草の根をつかみながら直登。中間まで登った所で踏み跡があった。
下から見たのでは全くわからない程のわずかな小段が壁の横に走っている。ここを巻いているようだ。
後は簡単に巻くことができたが、今度は5mの滝である。

ここでなぜか踏み跡がなくなっている。ガレ場を登り、横にトレースして脇尾根に取り付く。
壁は上流まで直に近く、大高巻きでも無理である。
ザイルがなければとても下降できない。」
(「北の釣り1988年9月号 岩手・葛根田川源流」菅原徳蔵記)
▲両岸切り立つ滝頭全景
右岸の壁はオーバーハングとなっていてザイルで懸垂下降しないと滝上には降りられない

「滝頭めがけて脇尾根を下る。脇尾根から上流へは小さな小段となっているので、上流へ回り込む。
両岸は直に近い岩壁で手掛かりとなる木もない。下を見るとオーバーハング状になっている。
ブナが横たわる木をよく見るとザイルで下降した時の捨て縄が巻きついていた。

かなり古いものですぐに切れた。5mのシェリンゲをこの木に巻きつけ下降。
岩は風化し、ことごとく崩れ落ちていく。わずかの小枝も岩にくい込んだものではなく、すぐに抜けてくる。
シェリンゲがなければ、まっさかさまに落ちてしまう。
高巻きに失敗したりしながら挑戦すること2時間、やっと滝上にたどりつく。」
(「北の釣り1988年9月号 岩手・葛根田川源流」菅原徳蔵記)
▲ナメの小滝 ▲二段ナメ滝。渇水だが、赤茶けた岩床を流れる水の透明度は抜群。 ▲北ノ又源流右岸のスラブ滝。ここからほどなく、ヨドメの滝がある。

和賀山塊生保内川源流の滝
▲生保内川中流部に懸かる三条の小滝 ▲増水した生保内川をゆく

生保内川は、車止めから約11kmも上流のヨドメの滝まで滝らしい滝はない
比較的穏やかな渓ではあるが、ひとたび大雨が降れば恐ろしい川と化すので特に注意が必要だ
それは、下流の生保内川沿いの林道が洪水の度に崩壊を繰り返していることで分かる
▲深い渓畔林に包まれた清冽な流れ ▲右岸枝沢の滝・・・タニウツギの花が彩りを添える美しい滝

「二日目も快晴。今日は何としても魚止め滝を見たい。
ゴーロが終わるまでたっぶり40分歩いた。それ以降はうんざりするほどの広河原が続く。・・・
強い日差しに輝く桂やブナを眺めていると、上空に大鷹の姿が見えた。
狭い谷間を吹き上げる上昇気流に乗ってゆっくりと舞っている。・・・

広い河原も、次第に両岸が切り立ち始める。正面に初めて残雪が現れた。
魚止めの滝はもう間近。残雪を吹き抜ける風は異様に冷たく、釣り人を緊張させる。
やがて、洪水が起きてもイワナが安心して遊ぶことのできそうな最上流の長いトロ場が現れた。」
(自然倶楽部1994年12月号「秋田・生保内川」菅原徳蔵記より)
▲両岸絶壁のヨドメの滝・・・V字狭谷に懸かる2段6mの滝

「谷は4m程に圧縮され、ゴツゴツとした岸壁は険しさを増した。
壁を伝い左に直角に曲がると、白い瀑布を懸けた4mの滝が姿を現し、やっと源流らしい雰囲気となった。
上部は巨大なスノーブリッジが狭い谷間を埋め尽くしている。

スノーブリッジを登って行くと眼下に滝が見えた。魚止めの滝だ。
左岸の壁はほぼ垂直に天空までのびている。右岸の壁はやや緩い。
緩いといっても直角に近く、足場が見当たらないツルツルの壁だ。まさにX字峡谷に懸かる瀑布。

下の滝は2mと小さいが、上の滝は二段6m。
壷は深い緑に染まっている。雪代や洪水の時には、おそらく一直線になりイワナは上流へ遡上するに違いない。
滝の上流は右に直角に曲がり全貌は見えない。
何とかして上流へ行ったみたいと思い、360度天空を見上げたが、簡単に巻けるルートは見つからない。
時間もないので、あっさりとギブアップしてしまった。

車止めから魚止め滝までおよそ8km余り、ここまで滝らしい滝は全くない。
延々と連なる河原、そして長いゴーロ、さらに続く広河原も長く、
少々うんざりするぐらい平凡な流れが8km余りも続いた後、
突如として吃立する両岸絶壁のX字峡谷に懸かる滝が出現する。
その落差の激しさには驚きを禁じ得ない。この急激な変化は、訪れる釣り人に感動を与えずにはおかない。
あの滝の上流へ行ってみたいという衝撃を押さえながら渓を下った。」
(自然倶楽部1994年12月号「秋田・生保内川」菅原徳蔵記より)

和賀山塊・生保内川支流シトナイ沢源流の滝
▲5番目の堰堤、この上に堰堤湖がある
▲おびただしいほどの流木が横たわる広河原 ▲下流部の小滝 ▲ブナが主体の渓畔林
「真っ赤なタニウツギが咲き乱れる生保内川沿いの林道を、釣りキチ三平になった気分で歩いていた。・・・
最後の堰堤を越えると広河原、おびただしいほどの流木が横たわっていた。
ノビネチドリ、ミゾホオズキ、ミヤマガラシなどの山野草を眺めながら、清らかな流れを登った。
見上げると緑の森は確実に深くなっていった。

所々ヒバの木も見えるが、全体的にブナが主体の森だ。
緑の自然庭園が連なる谷、生保内川本流から別れて4km地点の河原にテントを張った。
他の渓と比べて際立つ特徴は、流木の多さだ。

シトナイ沢は、8km余りにも及ぶ長大な支流であるにもかかわらず、
流域は細長いゴボウのような極めて珍奇な形をしている。
こういう地形は典型的な雪崩の多発地帯であることを示している。

標高800mから1,300mにわたる分水嶺から崩壊する雪崩のエネルギーは凄まじい。
巨木を次々となぎ倒す轟音が轟き、一気に数kmに及ぶ谷を埋め尽くすに違いない。
流木が多いのは当然のことだった。」
(「自然倶楽部別冊 1993年釣行記・生保内川支流シトナイ沢」菅原徳蔵記)
▲右岸に懸かる簾状の滝の名水を飲む ▲左からニヌヒカバ沢が合流する二又
「直立する黒壁を幾つもの糸を引いたように流れ落ちる谷を遡っていくと、
次第に緑の樹木が渓に覆いかぶさるゴーロとなる。
谷間に落ちてプロック状に残る雪渓、その下を靄とともに白く流れる中から、美しいイワナが飛び出す。

ニヌヒカバ沢近くになると、谷は狭くなり、流れる雲海の隙間から志度内モッコ(1,290m)が見えた。
左手から滝の音、振り向けばX字になった深緑の中から浸み出した流れが白い帯となって落走し、
岩盤にぶつかった後、狭い岩場の溝を伝って本流に注いでいた。

二又上流部は尖った石がゴロゴロする階段、渇水の時は間違いなく伏流となる区間だが、
雪解けの冷水が岩を縫うように流れていた。」
(「自然倶楽部別冊 1993年釣行記・生保内川支流シトナイ沢」菅原徳蔵記)
▲雪煙が舞う大雪渓をゆく
▲左岸前方に懸かる20m滝 ▲連続する滝は雪渓の下に埋もれていた

「遡るに連れて勾配はきつさを増し、両岸の壁も威圧感をもって迫ってくる。
その峡谷を雪渓が埋め尽し、穴の中から雪煙が燃え上がっていた。
圧縮された雪渓を慎重に遡っていくと、頭上から一筋の帯となって流れ落ちる20m滝。

雪渓の寒さも加わり背筋がザワついた。
厚さ2mを越える雪渓が崩れ落ちた壷で、妙なイワナが釣れた。
「おい、ドジョウが釣れたぞ」と会長が叫ぶ。魚体は真っ黒、痩せて細長い。
白い雪渓の上に落ちたイワナの黒さは、一層異様な輝きを放った。

小雨が雪渓に降り注ぎ、その放射熱で移しいほどのガスが濃く立ち込めていた。
冷気を帯びたガスが風に吹かれて、ゆっくりと流れていく。
立ち込めるガスの中では、滴り落ちる汗も凍てつきそうなほど寒い。

イワナを釣るポイントは分厚い雪渓の下、もはや釣りどころではない。
6月にこれだけ巨大な雪渓を見るのは初めてのこと、何物かにとりつかれた様に延々と連なる雪渓を遡り続けた。
流れる雲海と大雪渓、前方には中国の桂林のような奇峰が聳え、振り返れば、
幾重にも重なり合った山々がうねるように連なっていた。

源頭に立ち俯瞰すると、シトナイ沢を征服したような妙な錯覚に陥っていた。
宇宙から地球を眺めたガガーリンは「地球は青かった」と言ったが、シトナイ沢も青かった。」
(「自然倶楽部別冊 1993年釣行記・生保内川支流シトナイ沢」菅原徳蔵記)
和賀山塊和賀川源流の滝
▲ワシクラ沢合流点上流、5mナメ滝
夏の強い陽射しにキラキラと輝くナメ滝シャワーが、ことのほか美しい滝である
しかし、ここから谷は急に圧縮され、700mにも及ぶ険悪なゴルジュとなる
▲高下川・標高520mを起点とする和賀岳登山道をゆく ▲ブナのモンスター ▲和賀川渡渉点(標高720m)

「標高750m、旧登山道分岐点。
一抱えもあるブナの根元で休んでいると、チリン・チリンチリンと熊鈴の音が次第に近づいてくる。
・・・笹竹の中から現れたのは、明らかに登山の格好をした老人である。・・・
昔はこの辺一帯がブナで鬱蒼と覆われ、昼でも薄暗く気味が悪いほどで、
登山道も今のように広くはなく笹が密生した道なき道であったという。・・・

歩くにつれてブナの森はさらに深くなる。
二抱えもあるブナの巨木に思わず天を仰ぐ。測定してみると直径が1.2mもある。
ブナの幹はもともと白っぽく艶やかであるが、数百年の歳月を経て
様々な地衣類や苔類が巧みに棲み分けてブナ特有の波紋を描く。

これがイワナの斑点とオーバーラップして、ブナ=イワナというイメージがぼくの頭の中を占領し続けてきた。
目の前にある巨木は全身苔やツルで覆われ、中間部より大小グロテスクなコブを作って天に突き上げている。
このブナのモンスターを見ていると、まるで和賀山塊の主のように思えてくる。・・・

『和賀岳自然環境保全地域』と書かれた環境庁の看板を過ぎると、
急勾配の下り坂となり次第に沢の音が大きく響いてくる。2時間半で和賀川に到着した。
右岸に広いテント場がある。」(自然倶楽部1991年4月号、5月号 「和賀川源流行」菅原徳蔵記)
源流部のゴーロ滝。水は清く、清冽な瀑布が美しい。 和賀川源流のイワナは、白い斑点が大きくアメマス型の綺麗なイワナだ。水の透明度も高い。
▲ゴーロ連瀑帯。真夏の渇水期とは思えないほど水量が多い。 朝靄に包まれた渓・・・こうした豊潤な空間を釣り歩くのは気分爽快だ。 白い斑点が大きく、鮮明な個体は、北海道のエゾイワナに似ている

「3.9km地点上部より突然巨岩のゴーロ。渓の真ん中に巨大な岩が居座っていた。
その上に這い上がってみると、延々とゴー口連瀑帯が続いている。
汗がいっペんに吹き飛んでしまうような清冽な流れに、しばし釣りを忘れてレンズを飛瀑に向ける。

レンズを通して流れが心の中まで飛び込んでくるような不思議な快感。
渓は刻一刻と変化する。イワナ釣りは歩いて釣る。カメラも同じだ。
渓はひとつとして同じものがない。時間と空間の流れによって、被写体が生き物のように変化する。」
(自然倶楽部1991年4月号、5月号 「和賀川源流行」菅原徳蔵記)
▲三段12m滝
「薄暗い河原の向こうにやっと滝らしい滝が出現する。3段12m滝だ。
岩盤は飛沫を浴びて黒光りしており、堅いゴツゴツした岩床を滑るように冷水が流れ大きな淵へと落下していく。
・・・左岸の壁が崩壊したガレ場を過ぎると、間もなく二又に到着する。・・・

夕方になっても不思議と蚊や虫のいない所だ。
標高が高いせいだと言う人もいるが、ここは僅か720mしかない。
大深沢と関東沢出合いなどは900mもあるが、物凄い蚊の大群に襲われている。
どんな理由にせよ、害虫がいないということは快適この上ない。」
(自然倶楽部1991年4月号、5月号 「和賀川源流行」菅原徳蔵記)
▲3m滝
▲ゴー口上部から・・・500m程遡ると谷はずっと狭くなり、3m滝が懸かる、この滝上左岸より流人する枝沢はすぐに5mの魚止め滝となっている ▲真夏の渇水とはいえ水量は充分・・・しかも、冷たさも申し分なく、腰まで激流に浸るとスーツと汗が引いていく ▲和賀川源流ヨドメの滝、6mナメ滝
標高884m二又の右の沢は、ほどなく4段12mのヨドメの滝となる・・・本流をさらに標高約1000m余り上ると細流となり、落差6mほどのヨドメの滝がある
▲ゴルジュに懸かる小滝
▲昼なお暗いゴルジュ帯。一瞬、渓の威圧に圧倒される。 ▲登山道と交差する渡渉点下流は、長大なゴルジュが続き、遡行は困難を極める ▲犬を連れた地元の釣り師は、5mナメ滝に座ってのんびりイワナを釣る。

「今日(三日目)は、…下流からワシクラ沢間を探検することに決定した。
河原を下るとすぐに第一ゴルジュ帯だ。渓は急激に圧縮され、昼でも暗く不気味である。
淵頭の岩肌にしがみつき、やっと竿を出す。

ゴーゴーと沢の音が両岸の壁に大きくこだまして物凄い合成音を作り出し、白い飛沫が容赦なく砕け散ってくる。
身震いするほどの冷気が漂う渓の威圧が、凄い迫力で迫ってくる。
左岸の壁上部までやっとの思いで登り、2ケ所のゴルジュ帯を大高巻きすると、やっと渓は開ける。・・・

1.2km程下った所で、今度は極端に渓が狭まり両岸絶壁の廊下帯だ。
特に、左岸は数百mの壁が威圧してくる。
右岸を際どく巻いて下るが、まだまだゴルジュ帯は続く。

またも右岸の壁上部まで取り付き巻き開始。振り返れば屹立する壁、遠く前を眺めても壁・壁・壁の連続だ。
これではワシクラ沢出合いまで続いているのではないか、と副会長がうんざりした表情で舌打ちする。・・・
もうこうなってはイワナ釣りではなく、沢下りである。

下りながらのルート探しは結構難しいもの。巻き道や踏跡などは全く見当たらない。・・・
ボルトやハーケンなしに、川通しに前進することは不可能である。
結局、長大な大高巻となる…上流部とは対照的に、厳しい渓である。」
(自然倶楽部1991年4月号、5月号 「和賀川源流行」菅原徳蔵記)

深山幽谷の滝Part1 深山幽谷の滝Part2 深山幽谷の滝Part3 深山幽谷の滝Part4
深山幽谷の滝Part5 深山幽谷の滝Part6 山釣り紀行TOP

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送