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 二日目は、清冽幽玄な沢を登り、キノコ狩りと岩魚の産卵シーン撮影に挑む。上の写真は、ゴーロ連瀑帯上部の風景。苔生す岩が、落下する飛瀑に弾け飛ぶ瞬間が一際美しい。
 早朝、デジカメを片手に渓流散歩・・・テン場周辺のブナ林を撮る。大方ブナの葉は落ち、森全体が明るく見通しもすこぶる良い。9月なら、下草やブナの葉、潅木類に覆われ、キノコを探すのは難しい。ましてブナの森の代表・ナメコともなれば、何となく難しいと思っている人が多いように思う。しかし10月下旬ともなれば、これだけ林床が丸見えになるんだから、遠くからでもキノコは見通せる。つまり、ナメコ狩りのシーズンは、思ったより簡単にキノコを見つけることができるベストシーズンなのだ。この時季を逃すようなら、死ぬまでキノコの悦楽を味わうことはないだろう。
 肌寒い早朝の小沢。大量に降り積もった落ち葉と身を切るほどに冷たい流れ・・・落ち葉の下には、本流から遡上したペアのイワナが潜む。ナメコが生える季節は、岩魚たちの恋の季節でもある。
 10月下旬ともなれば、寒くて眠られないかも知れないと思ったが、テントの中は意外に暖かかった。ホッカイロを腹と背中に張って寝たら暑いぐらいだった。昨夜は満天の星だっただけに、今日は天気が良さそうだ。まずはブナの森、せせらぎの音、小鳥のさえずりを聞きながら熱いコーヒーを飲む。やっぱりブナの森の喫茶店に勝るものなしだ。

 朝食のラーメンを食べていると早くも地元の三人組が山から下りてきた。キノコ狩りかと思ったら、青鹿岳に登るという。リーダーらしき人が懐から取り出した図面には、登山ルートに「鬼の坪」と記載された場所があった。ここは庭園のような美しい場所だという。坪と呼ぶだけあって、ここだけが傾斜が緩く高山的な様相を呈し、ナナカマドやダケカンバ、ハイマツなどが生え、特に紅葉が美しいらしい。ぜひ一度訪れてみたい場所だ。
 鬼の坪の伝説・・・「昔、川原平のマタギが青鹿沢でイワナ釣りをしたのち、鬼の坪の近くでワサビを採っていると、仙人が雲に乗って往来するのを見たといいます。ついで、この鬼の坪は近づくと山の天気が悪化したり、身内に病人が出たりしたという話もあります。砂子瀬のマタギは、鬼の坪を訪れてから目付きが悪くなったといいます。どう悪くなったかというと、鬼のように、他人をにらみつける癖がついてしまったそうなのです。」(「津軽白神山がたり」根深誠著、山と渓谷社)
 沢にはまだ陽が射し込まず、冷たい空気が漂っていた。前方は、終盤にさしかかった黄葉が朝陽に輝き、その美わしさに吸い込まれるように源流を目指す。果たしてどんなドラマが待ち受けているのだろうか・・・。
 早くも美味しそうなムキタケが生えていたが、採らずに先を急ぐ。
 絶品のムキタケの群生。一見クッキーのようにも見える。スポンジのような食感を楽しむには、クリームシチューが美味しいらしい。このキノコは、大量に採れかつ味が淡白で、和風や洋風、中華料理など、どんな料理にも合うのが特徴。
 ムキタケもナメコも沢を歩き、ひたすら倒木を探すだけだ。しかし、ムキタケは大型で水分を多く含んでいるので採り過ぎると重くて歩けなくなる・・・採り過ぎに注意。
 真ん中のムキタケは、皮を剥いたもの。名前のとおり簡単に皮がむける。ムキタケの旬は、傘を裏返してみると簡単に見分けられる。写真のように白いヒダのものが絶品。虫がついていたり、ヒダが褐色を帯びてくると旬は過ぎていることを示す。いくら食べられるキノコでも、旬を過ぎた古いキノコは採らないのがベターだ。
 朝陽に輝く急斜面のブナ、ブナ・・・。暗い沢から見上げると、スポッライとを浴びたように一際輝いて見える。
 ブナの森が濾過した名水・・・一面苔生す岩盤から滴り落ちる湧水は見事というほかない。背中から三脚を取り出しスローシャッターで撮る。もちろんコップを取り出し、ブナの恵みを美味しくいただく。平凡だが、五臓六腑に染み渡る美味さだ。これを飲んだら、コンビニなどで売っている名水なんて飲めたものではない。
 落ち葉を敷き詰めた沢を清冽な流れが走り下る。前方にブナの赤茶けた色とカエデの黄色が鮮やだ。美しい晩秋の渓流・・・落ち葉舞い散る渓流には、イワナのペアが恋に戯れ、倒木を埋め尽くすキノコの山が加わるのだから堪らない。
 青空に全山燃えるような紅と黄・・・2003年最後の美の競演に、時を忘れて酔いしれる。
 ブナの真新しい倒木。傷ついたブナの表皮は、急斜面の岩盤を滑り落ちた凄まじさを物語っている。恐らく数年後には、ナメコの山と化すであろう。
 上の写真の倒木の左下に生えていたナメコ。新しいブナが滑り落ちた際に付着したのか、泥がついていた。写真に録るには、綺麗とは言いがたいが、食べるにはちょうど旬のナメコだ。これもまた西側斜面だった。
 一本一本採るのが面倒になり、柴ちゃんが下に買い物袋の口を開け、小玉氏が株ごとナイフで切り落とす。ちょっと荒っぽい採取法だが。
 珍しくナラタケを見つける。しかし、ナラタケ独特の巨大な群生は最後まで見ることがなかった。最もポピュラーなキノコだけに、この種に限って言えば、確かに今年は大不作といえるだろう。
 錦秋の森にキノコを追う。小沢が流れ込む開けた場所は、キノコの宝庫。キノコが生える風倒木も多いだけに、見逃してはならないポイントだ。ちなみにこの場所には、ムキタケ、ナラタケ、シイタケが多く生える場所だ。
 次第にゴーロの階段はきつくなり、一面白い瀑布が続く。キノコの気配はなく、遡行に専念する。
 ゴーロ終点の滝。
 延々と続く急勾配のゴーロ終点から下流を望む。手前に苔生す庭園のような巨岩、奥に黄葉のブナ林が輝いて見える。
 ゴーロが終わっても、巨岩が幾十にも積み重なり行く手を阻む。やむなく右手の斜面を高巻く。ここを高巻けば、渓は一気に開ける。
 急な沢を登りきると、そこは穏やかな別天地。丸見えの浅瀬から黒い影が何度も走る。
 緑、紅、赤褐色、黄色、青空・・・ありとあらゆる自然の色彩が陽射しに輝く。こんな美しい森の中をキノコを探しながら歩けば、時の流れも疲れも全て忘れてしまう。
 原生林のワンカット・・・静寂の空間に、まるで黒い妖怪が這うように林立する巨木たち。本物の原生林は、どこかお化けでも出てきそうな雰囲気を持っている。鬼の坪の伝説のような摩訶不思議な伝説が生まれたとしても何ら違和感を感じない。原生林には、人間の想像力を超えた不思議な魔力が潜んでいる
 稜線の灰色と下の紅葉のコントラストがオモシロイ。
 老木を見上げると、サルノコシカケとシダ植物が生え、一種異様な雰囲気を演出している。森をのんびり散策しながら撮影に専念していると、東側斜面から「オ〜イ」と叫ぶ声が聞こえた。
 駆け寄ると、得意満面な笑顔でキノコの山を見下ろす小玉氏の姿が見えた。この巨木には、ムキタケとナメコが群生していた。
 キノコの山を下から撮影。手前がムキタケ。
 
 傘の開いたナメコをローアングルで撮影。背後のブナは、黄色ではなく、枯れて赤茶けた色に染まっている。つまりナメコは、ブナ林の黄葉末期が旬である。
 撮影が終わると、早速採取に取り掛かる。こうしたキノコの山は、一人ではなかなか撮れない。キノコを探す人、写真を撮る人・・・それぞれ役割分担すれば、スピーディかつ素晴らしいカットが撮れる。だから4人でも決して別れて歩かず、一つの沢を皆で歩くのがベターだと思う。何人いてもキノコは決して逃げたりしないから十分楽しめる。
 古い根株に群生していたクリタケを発見。ちょっと旬を過ぎた感じだったが、選んで間引くように採取する。
 クリタケ・・・一般にクリの木に多く生え、色も栗色、上から見るとどことなく栗そのものにも似ているキノコ。有毒のニガクリタケに似ていると言うが、図鑑ではなく、フィールドで見ればその違いは歴然としている。どうしてこの二種を混同するのか、不思議なくらい違う。
 クリタケ2・・・クリタケは、かなり生長しても食用になるという。栗色からやがて黒ずむと誰も手を出さなくなる。ところが、熱湯を通すと、不思議なことに再び元の色に近くなる。油で炒め、鶏肉と一緒に煮込むと、シャキシャキした歯応えで大変美味い。
 チャワンタケ・・・確かに茶碗のようにも皿のようにも見える。オモシロイ形にしばし見惚れる。ヨーロッパではサラダに使ったり、生のまま砂糖とブランデーをまぶして食べるらしいが、私はとても食べる気になれないキノコだ。
 「見る阿呆に、撮る阿呆」と一斉に笑われているようなユニークな表情をしたキノコ。私ならさしずめ「ワライタケ」「ゲラゲラタケ」と言った名前を付けるのだが・・・。このキノコは幸運を呼ぶノコなのだろうか、まもなく夢にまで見た岩魚の産卵シーンに遭遇する。

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