ナメコ狩り1 キノコ狩り2 岩魚の恋1 岩魚の恋2 山釣り紀行TOP 


 晩秋の白神、赤茶けたブナのトンネルを抜けると、
 そこはペアで群れる岩魚とナメコの楽園だった。


 山釣りとナメコは、これまで縁の遠い存在だった。なぜなら山釣りシーズンの4月から9月下旬まで、イワナを釣りながらお目に掛かれるキノコではなかったからだ。山釣りオフシーズンに突入してから早や1ヶ月が過ぎた10月下旬、イワナが遊ぶブナの渓谷に分け入ると、幸運にも折り重なるように群生したナメコの山に遭遇した。

 初めて見る巨大なナメコの山、山・・・
 「ブナ=イワナ=ナメコ」の図式
が、頭の中を何度も駆け巡った。
 「イワナの恋のダンス」・・・左がイワナのオス、右がメス。
 恋のダンスを繰り返す水面に落ち葉が舞う季節に注目

 キノコの山だけでなく、落ち葉舞い散る源流で、イワナの神秘の舞「恋のダンス」に釘付けとなった。大川タカヘグリ新湖で目撃したイワナの恋のダンスは、圧巻だった。水中撮影にも挑戦してみたが、何とか1枚だけ見られる写真が撮れていた。「イワナバカ」にとって、これほど魅惑的で感動的なシーンはないだろう。

 10月下旬は、ナメコ狩りとイワナの産卵を観察するベストシーズン
 
だと確信する山ごもりだった。
 竿を持たずに沢を歩くのはつまらない・・・と長年思っていたが、最近、落ち葉を踏みながらイワナウォッチングとキノコを探しながら歩くのが実に楽しく感じるようになった。それは、冬眠前の熊がブナの森の最後の恵みを貪る心境と似ているようにさえ思う。
 早朝、風が強く、時折アラレが舞う寒い日だった。倒木に生えたムキタケの傘に落ち葉があるのがお分かりだろうか。黄葉もそろそろ終わりに近づき、昨夜からの強風で大量の落ち葉が堆積していた。
 地元で番鳥沢と呼ぶ左岸のマタギ小屋跡をベースキャンプに設定。この周辺は、ブナの森に覆われ、清冽な水と山の幸に恵まれている。いつも思うことだが、マタギ小屋がある場所は、この世の別天地・・・いつも感心させられる。

 キノコ狩りを楽しむには、同じフィールドに最低3年は通うことが鉄則らしい。これはどうも正しいように思う。あちこちフィールドを変えてしまうと、むやみに動き回るだけで徒労に終わりかねない。3年も通えば、四季折々、どこにどんなキノコが生えるか・・・即座に判断できるようになるだろう。私たちもこの鉄則に習って、白神を定番のキノコ狩りフィールドにしたいと思っている。
 テン場を構え、焚き木を集めてからいよいよキノコ狩りへ。対岸の倒木に群生していたムキタケを採る。急斜面を攀じ登った高台にナメコが生える倒木があるのだが、残念ながら全て腐りかけていた。連日雨が降り続いたせいだろうか?、ナメコが腐るのがやけに早いように思う。
 西の斜面に巨大な倒木を見つける。近づくとナメコが重なり合うように群生していた。まずは発見者の柴ちゃんと記念撮影。いざ採ろうとすると、何とか食べられそうだが、明らかに旬は過ぎていた。ナメコが不作なら帰りに採ることにし、写真だけ撮るにとどめる。それにしてもモッタイナイ・・・。
 ムキタケのアップ。ナメコが生えていた倒木の手前には、ムキタケとブナハリタケが生えていた。
ナメコの沢へ
 右の沢へ入ると、待望のナメコが生えていた。全体が厚い粘液に覆われ、ひと目でナメコと分かる。これはほんの序章に過ぎなかったのだが・・・。
 落ち葉と小粒のナメコ。こんなに小さなナメコは、採らずに残そう。
 極上のナメコをカッターナイフで一つ一つ丁寧に切り取る長谷川副会長。ナメコが生えていたブナの倒木に注目。ナメコが生えていた倒木は、斜面にしろ、水平な河原にしろ、日当たりが良く湿気の多い地面にピッタリ接触した場所に生えている。地面から離れたような倒木には、ほとんどナメコは生えていなかった。これから考えると、倒木が湿気を帯びていることがナメコが生える条件のように思う。
 東側斜面に生えていたムキタケを採る小玉氏。またムキタケか・・・と言いながら、それでも楽しそうに採取する。柴ちゃんは、たくさん生えていたムキタケに飽きてしまい、「ナメコしか採らない」などと言い出した。

 不思議なことに東側斜面にムキタケ、西側斜面にナメコと、まるで棲み分けでもしているように生えていた。光の当たり具合でキノコの種類も違うようだ。
 ちょっと小粒だが、ナメコがポツリポツリと顔を出すのが見え出した。
 見上げれば、ブナは黄葉も終わり、すっかり赤茶けた色に変身。強風がくれば、一斉に落ちて裸木と化すであろう。
 堆積した落ち葉を踏みしめながら歩くと、西側斜面にちょうど傘が開いた旬のナメコに出くわす。それでもまだまだナメコの山にはほど遠い。
ナメコの山また山・・・頭の中の常識は、いとも簡単に崩れ去ってゆく瞬間を楽しむ。
 出ました。出ました。ナメコの山が・・・こんなナメコの山に遭遇すれば、心も体も舞い上がるような気分になる。またしても西側斜面の倒木だった。早速、ナメコに付着した落ち葉を綺麗に取り除き、撮影会モードに突入。
 上からナメコを俯瞰するように撮る。物凄い数だ。とても本数で数えられるものではなく、キロ単位で測定する以外にない。傘の中央部が赤褐色で周辺は薄い橙色をしている。天然のナメコは強いヌメリがあるのが特徴だが、写真だけ見てもお分かりいただけるだろう。
 記念撮影をした後、全員で楽しいナメコ狩りを楽しむ。一本一本ナイフで丁寧に切り取る。切れども切れどもなかなか無くならない。そのうち、「ナメコしか採らない」と宣言した柴ちゃんは、ついにナメコ採りも飽きてしまったほどだ。
 急斜面で数十分も採っていると、体が固まってしまう。とうとう小玉氏もギブアップ。私が交代でナメコを採る。数分もすれば、手がナメコのヌメリでベトベトになってしまった。一本の倒木で飽きるほどナメコが採れるなんて驚くほかなかった。
 今度は、平らな地面に倒れたブナに、傘の開かないナメコの幼菌と成菌・・・その色の違いに注目。この倒木も地面に食い込むように倒れていた。ナメコの生える場所が、だんだん頭の中にインプットされてきた。
第二のナメコの山・・・ナメコの山のナメコ攻めに圧倒される。
 ブナの倒木に重なり合うように生えたナメコの造形美は、何度見ても圧巻だ。探すポイントは、沢沿いをを歩きながら、日当たりの良い西側を探すだけ。ただ大量の落ち葉で、ナメコが隠れているので注意深く探さないと見逃す場合もある。
 上から撮影。傘が開いた成菌は、栽培物と姿・形が大分違う。幼菌は半球形だが、傘が開くと、ほとんど扁平になる。幼菌より、傘が開いた成菌のほうが美味しい。
 今度は下から思い切ってナメコに近づき撮影。ちょっと逆光で半分白とびしてしまったが・・・その造形美は360度角度を変えるたびに、無意識にシャッターを押してしまうほど美しい。イワナと同様、キノコ狩りも山に泊まると一味も二味も衝撃度が違う
 極上のナメコだけに、嬉しさを隠し切れない。しかし、柴ちゃんはナメコの山また山にすっかり飽きてしまい、採らずに上流へ消えてしまった。「これじゃサルでも採れるナメコ狩りだ」・・・白神の森では、キノコが不作なんて信じられない。世界自然遺産の意味を身体で感じる瞬間でもあった。
 正面から見ると、不思議と饅頭が重なっているようにも見える。長い間、この感激を知らずに、禁漁ともなればあっさり冬眠モードに突入していたとは・・・何とも愚かな山釣りだった。
 渓流とナメコの幼菌。こうした清冽な流れや滝との構図を撮りたかったが、残念ながらこうした場所には、ナメコがほとんど見当たらなかった。これは天候不順の影響を受けたからに違いない。
 ナメコの山を満喫し沢を下る。するとまたもや落ち葉に隠れたナメコを発見。上る時は、4人で探しても見落としたナメコだ。誰彼となく「どこ見て歩いているんだ」との声が飛ぶ。キノコは、上りでは見えないが、下りで発見できる場合もある点に注意。
 何度採っても楽しいナメコ狩り。
 こんなナメコの群生を見落としていたとは・・・一人ならいざ知らず、4人で絨毯爆撃のように上ったんだが。キノコはイワナと違って訪問者が何人訪れても逃げたりしない。丹念に探し歩いても、草や落ち葉に隠れて見落とすキノコもやたら多いのが現実だ。
 またもや3人掛りでナメコを採る。奥に小沢が見える。小沢の左岸側が西側斜面だ。終わってみれば、ナメコが生えていた斜面は全て西側斜面だった。余りにも単純な図式に驚くほかない。しかもこの山一つ隔てた沢には、ナメコがほとんど生えていない。それが何故なのか。全く理解に苦しむ出来事だった。
 キノコ料理・・・奥の鍋は、キノコ鍋に入れるナメコの成菌とムキタケ。手前の鍋は、ナメコの幼菌を使ったダイコンおろし和え用の食材に。

 キノコ鍋・・・山内いものこ、比内地鶏、糸コン、採取したばかりの天然ナメコとムキタケをたっぷり入れて煮込む。万能つゆ・味どうらくの里で味付けをし、仕上げにネギとセリを入れて完成。山で冷えた体が一気に温まる一品だけに、絶対外せない料理だ。鍋に入れるキノコは、傘の開いたキノコほどボリュームもあり美味い。10月下旬ともなれば、気温も低く、持参する肉は、冷凍したものを持ち込めば腐る心配もない。ただし二日目に使用する肉は、万が一のため二重にフリージングバックに入れて冷水に浸して置く。ブナ林のキノコは食材として一級品だけに、持ち込む食材も地物の一級品にこだわりたい。

 ナメコのおろし和え・・・砂糖醤油でナメコを煮込み、ダイコンおろしで和える。これまた酒の肴として絶品。小粒のプリプリした食感が、ダイコンおろしのサッパリ感と調和し、言う事なし使用するナメコは、傘の開いたナメコではなく、小粒のナメコが美味い。

 ナメコの定番は味噌汁だが、秋田ならナメコを入れた納豆汁が断然美味い。昆布漬け「つる太郎」とナメコを和えたものも美味そうだ。その他キノコを使う秋田の鍋物は、芋の子汁、山の芋鍋、キリタンポ鍋。牛肉とキノコのロール焼き、キノコのグラタン、キノコフライ、キノコご飯、キノコのスパゲッティ、キノコピザ、キノコのバター炒め、キノコ焼き、キノコの酢の物・・・キノコ料理のバリエーションは際限がなく、フィールドでの楽しさは無限と言えるだろう。

ナメコ狩り1 キノコ狩り2 岩魚の恋1 岩魚の恋2 山釣り紀行TOP 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送