和賀山塊八滝沢1 和賀山塊八滝沢2 和賀山塊八滝沢3 山釣り紀行TOP
八滝沢の岩魚たち、赤とんぼ、タニウツギ、フキユキノシタ、倒木、雪渓、クマの糞、魚止めの主・・・ |
三日目、C2をベースキャンプに八滝沢を詰め上がり、和賀岳山頂をめざす予定だった。 しかし、大発生したアブの攻撃と余りの暑さにギブアップ。 聖なる水を蹴って、ひたすら岩魚探索に専念することに。 一見、軟弱な選択と思われたが・・・ ズシリと重い魚止めの主に「感激を釣る」・・・ラッキーなドラマが待っていた。 |
八滝沢は、下流部の8つの滝を越えると、一転穏かな流れとなる。 奥に和賀岳稜線も見える。 沢の両岸は意外に狭く切り立っている。 それだけにテン場適地は少ない。 |
渇水の瀬尻に目を転ずれば、岩魚が丸見えだった。 そっと近寄り、12倍ズームのデジカメで撮影する。 不用意にポイントに近づこうものなら、数匹の岩魚たちが弾丸のように走った。 |
▼夏の源流の風物詩・赤とんぼ 渓には、赤トンボ(アキアカネ)が群れをなして飛んでいた。 夏の初めに羽化した赤トンボは、夏の暑さに弱い。 羽化するとすぐ、涼しい源流へ飛び夏を過ごす。 涼風が吹く秋になると、体が真っ赤になり、 何千匹もの大きな集団となって平地の水田に戻ってくる。 |
源流の岩魚たちは、真夏にもかかわらず、顔が黒くサビついていた。 暗い岩陰にじっと隠れているせいだろうか。 |
サイズは9寸ほどだが、サンマのように痩せた岩魚 食べても美味しくないので流れに戻す。 |
岩魚の背中には、擦り切れたような傷がある。 光りの加減で着色斑点が不鮮明だが、 実は鮮やかな橙色をしたニッコウイワナだ。 唇、腹部、各ヒレとも濃い柿色に染まっている。 尻尾には朱色の線が入っているのが特徴的な個体だ。 |
楽しい楽しい幽谷の岩魚釣り 大挙押し寄せていた沢登りの人たちも、この沢はつまらないらしく実に静かだ。 お陰で誰にも邪魔されることなく、源流を二人占めして釣り上がる。 |
背ビレ付近の背中に擦り切れた傷が鮮明に見える。 白い斑点は小さいが鮮明で、虫食い状の斑紋は見られない。 釣れるサイズは8寸から尺クラスと一回り大きい。 |
▼くの字ナメ滝4m 今から18年前、初めて八滝沢に入った時は、 このナメ滝を魚止めと勘違いし引き返したことを思い出す。 |
暑さを吹き飛ばすには最高のシャワークライミング わざと流芯を歩き、聖なる飛沫を全身に浴びて登る。 噴出す汗がスッーと引き、身がキリリと引き締まる。 疲れた体に気合を入れるにも絶大な効果がある。 |
滝上の淵を眺めると、ご覧のとおり、岩魚が悠然と泳ぐ姿が・・・ |
今夜のオカズ用岩魚は6尾、あっと言う間に終了。 生かしたまま種モミ用の袋に入れ、デポして魚止めの滝をめざす。 以降、岩魚をキープする必要はなく、 岩魚の記録撮影に専念するのみ、足早に沢を歩く。 |
▼スベリ台ナメ滝3m 帰りに、このスベリ台ナメ滝を滑ってみたが、 ブレーキがほとんど効かず、一気に滝壺へ入ってしまった。 夏の渇水期なら、快感この上ない・・・自然の造形の妙 |
前方に、和賀山塊の盟主・和賀岳(1440m)が見えた。 登ってみたい衝動に駆られるものの、 走る岩魚を眺めながら、冷たい沢を歩く方が楽しい。 |
時折、竿を出し、岩魚の生息を確認する。 こうした小さなポイントでも岩魚のアタリはあった。 |
大量に落ちていたブナの実 昨年落ちた古い実に違いない |
ナメの岩盤に釣り上げた岩魚を横たえると、一際美しく輝いた。 斑点も鮮明で、側線前後に橙色の着色斑点を持つ典型的なニッコウイワナ 「深山幽谷の美魚」と言わんばかりに、煌く流れに岩魚がキラキラと輝いた。 |
真夏なのに、タニウツギの花が咲いていた。 花は、5月下旬〜7月頃に咲くのが一般的だが、8月に見るのは初めてのこと。 標高が約800mと高いせいだろうか。 |
湿った岩場には、フキユキノシタとダイモンジソウが群生していた。 フキユキノシタは、葉が卵円形で三角状のノコギリ歯があり 和名は葉がフキに似ていることによる。 |
谷が左にカーブすると、両岸の壁は狭まり、廊下状のゴルジュとなる。 大量の倒木の奥に、雪煙が舞う雪渓の残骸があった。 竿を納め、遡行に専念する。 |
渇水とは言え、圧縮された淵は深く、すぐに腰上に達する。 沈んでいる倒木に足をかけ、慎重に徒渉し突破する。 |
狭い廊下帯を埋め尽くした倒木の凄まじさに驚く。 大雪と雪崩の凄まじさが伝わってくる。 こうした自然のかく乱が、森を活性化し、キノコなどの恵みをもたらす。 うず高く累積したブナの倒木を潜り抜け、巨木を伝わって上流へ。 |
奥に入るにつれて、クマの糞も多くなる。 沢沿いのエゾニュウは、ことごとくなぎ倒され、薮にクマ道ができていた。 戸堀マタギによると、堀内沢周辺にはクマが百頭も生息しているという。 さすがに、それを実感させるほどクマの痕跡が至る所にあった。 |
▼雪 渓 狭い廊下状ゴルジュを抜けると、巨大な雪渓に遭遇 クソ暑い夏なら、天然クーラーのように涼しく桃源郷のような夢心地に浸ることができる。 一帯は、雪煙が舞い、深山幽谷の神秘性が一際際立つ。 雪国の高山源流部は、夏の遅くまで雪渓が残ることは珍しくない。 特に今年の冬は例年にない大雪だったから、こんなに巨大な雪渓が残ったのだろう。 |
雪渓周辺は、春爛漫・・・ ゼンマイ、イタドリの若芽、アザミなど春の山菜が萌え出ていた。 その若芽を獣たちが食べた痕跡もやたらあった。 時計の針が逆回転しているような不思議な感覚を味わう。 |
源流部は、さすがに水量が少なくなるものの 岩魚は瀬尻から何度も走った。 竿を出さず、岩魚ウォッチングを楽しみながら足早に魚止めの滝をめざす。 |
渓の宝石が、聖なる流れに遊ぶ姿を見るのは何とも楽しい。 岩魚の姿を見ては、ズーム撮影を繰り返す。 なかなか距離が進まない。 |
▼魚止めのナメ滝5m ついに来ました憧憬の魚止めの滝 水量は少ないものの、滝壺は意外に深い。 背中のサブザックから竿を取り出し、魚止めの主を狙う。 右の流木に身を隠し、そっとブドウ虫のエサを振り込む。 |
すぐにアタリがあったが、意に反し、8寸程の小物だった。 顔は浅黒く、橙色の着色斑点が鮮やかな個体だった。 写真を撮り、ナメの流れに返す。 こんな小物が魚止めの主であるはずはない。 再度、滝壺深くにエサを送り込む。 |
すぐに鈍いアタリが竿を握る手に伝わってきた。 小物なら、エサに食らいつくとすぐに走るが、大物は違う。 一発でエサを丸呑みにし、じっと動かない。 だから、手に伝わるアタリは意外に小さい。 合わせるとズシリと重い・・・ 超硬調の竿は満月状態だが、なかなか水面上に上がってこない。 無理をせず、水面を引きずるように下流に寄せ、岩盤のナメ床へ 鼻曲がりの精悍な面構え・・・見事な魚体に満足感が全身を貫く。 |
斑点は不鮮明だが、全身が黄金色に輝く独特の個体 精悍な面構えに加え、魚体は丸々と太っていた。 魚止めの主に相応しい風格を備えている。 まさに「幽谷の精霊」と形容したくなるほど麗しい。 長年、深い滝壷に居着いているせいか、尾ビレは、心なしか小さい。 しばし、撮影のモデルとして付き合ってもらうことに・・・ 感激の岩魚をどう撮るべきか・・・ ナメ床をせせらぎのように流れる清流に泳がせ何度もシャッターを切る。 |
八滝沢源流の岩魚は、天然分布の岩魚ではない。 沢の下流部には、岩魚が到底遡上できない大滝が幾つもある。 その険谷の滝上に移植放流を繰り返したのは、角館町白岩の故秩父孫一マタギだった。 戸堀マタギによると、彼は、熊猟の合間に小屋に置いてあった釣り道具を持ち、 魚止めの滝へ通い続けた。 「今日は何番目の滝まで放して来た」とイワナの放流を得意げに話していたという。 マタギは、熊猟をするだけではない。 春は山菜採り、夏は岩魚釣り、秋はキノコ狩りと、四季折々山の恵みを享受し それこそ年中山に依存し、山に生かされてきた人たちだ。 和賀山塊を狩場にしてきた仙北マタギの後継者たち 豊岡三代目シカリの鈴木隆夫氏や小山岩作マタギ、故助四郎シカリの孫・鈴木弘康マタギも 皆岩魚釣りが大好きな人たちだ。 つまり、マタギと岩魚は深い関係にあることが分かる。 私たちが山釣りというスタイルで沢遊びを楽しむことができるのは、 こうした素朴な渓流魚と人の自然誌があったからにほかならない。 そのことを釣り屋だけでなく、沢屋の人たちも忘れないでほしいと願う。 |
▼魚止めの主は流れに返す 山釣りの世界では、魚止めの主は写真を撮ってリリースするのが一般的だ。 なぜなら大きい岩魚ほど、再生産の源泉になるからだ。 綺麗ごとではなく、食べる観点から考えてみても 源流に生息する40cm前後の大物は、年老いて肉が不味い。 岩魚の旬のサイズは、8寸から尺前後に限られる。 従って、8寸以下及び35cm以上の大物はリリースするのがベストの選択だと思う。 また、岩魚は山で食べる魚・・・つまり「山魚」だから一人、2〜3尾もあれば十分だ。 ・・・続く・・・2006年8月20日記 |
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