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聖なる流れの美しさと清涼感、岩と水と緑が織り成す多様な造形美は
人間の感性を強く刺激する。
特に、うだるような真夏の狭谷は、ひんやりとして涼しく
道のない源流は、訪れる人も稀で、原始の魅力に溢れている。
清冽な水が無尽蔵に流れる飛瀑を浴びて滝を攀じ、
ナメ床を滑るように流れる美しき水を蹴って歩く爽快感は、何にも代え難い。
▼魚止め滝上部
 魚止めの主と撮影会を存分に楽しんだ後、
 目的を源流に懸かる大滝見学に切り替える。
 左の写真は、右手から連続する滝となって流れ込む小沢の滝。
 コップを取り出し、聖なる水をありがたくいただく。
 右上の写真は、本流に懸かる3mほどの滝。
 以降、階段状のゴーロが続く。
岩魚の姿が消えた源流部で昼食
右下にガムテープを巻いた100円ライターに注目。
ガムテープは、焚き火の着火材として大活躍してくれる。
また釣り道具、野営用具などの補修材としてマルチに使えるので、
ぜひ準備したい小物の一つ。
▼ナメ滝を彩るクガイソウ
 夏の渓流を彩る代表的な草花
 薄紫色の長い花は、動物の尻尾のような独特の形をしている。
 クガイソウの葉は、4〜8枚が輪生。
 良く似たヤマルリトラノオは、葉が2枚向き合ってついている。
▼ミヤマハコベ
▼ハナニガナ
▼エゾニュウ ▼センジュガンビ
▼八滝沢大滝10m
 階段状のゴーロを高度を稼ぎながら歩くと、間もなく行く手を阻む大滝に出会う。
 標高およそ950mに懸かる滝。
 水量が少なく迫力に欠けるが、飛沫が適度なシャワーのようで涼しい。
左:大滝全景。右岸の窪地状の斜面に巻き道があった。
 滝は4つの滝が連続している。
 以降、難所らしい難所はなく、ひたすら登れば山頂に達することができるはず。
 しかし、源流でも蒸し暑さは半端じゃなく、
 山頂へのアプローチに未練を残しつつも、テン場に戻る。

右:大滝から下流を望む。奥の山並みは、小杉山の稜線。
深山幽谷の山魚料理
▼岩魚料理
 尺クラス2尾は、刺身に。8寸クラス3尾は、塩焼きに。
 残り1尾は、鰻のタレを使った蒲焼風岩魚丼に。

渓谷での山ごもりは、できるだけ地産地消を心掛けたい。
渓流釣りも、山菜採りも、キノコ狩りも日本古来の文化であり
山の命をありがたくいただくことによって、
山に生かされている感覚と感謝の気持ちが
フツフツと湧き上がってくる。
それを頭ではなく、体で感じることが、山と同化する近道だと思う。
▼左:岩魚の刺身
 真夏の岩魚の刺身は、料理するまで生かしておくのがコツ。
▼右:刺身のアラのタタキ
 これは絶品!
 骨付きのアラを山刀で丁寧にタタク
 味噌と刻んだネギを入れ再度タタク・・・酒のツマミに最高の味だった。

2006年夏、聖なる流れと渓谷美を撮る
夏の清冽な流れを表現するには、スローシャッターに勝るものナシ
だが、荷を軽くするため、PLフィルターやNDフィルターは持参しない。
日中、感度の高いデジカメで1/8以下のスローシャッターは選択できない。
だから撮影のチャンスは、薄暗い夕方、早朝に限られる。
いくら手振れ補正付きのデジカメとは言え、三脚は必携だ。
飛沫にしっとり濡れた左の岩には、苔とダイモンジソウの緑がビッシリ
岩と岩の間を聖なる水が絶え間なく落走する光景は
いつ見ても心が洗われる
岩と水と水辺の植物が織り成す造形美・・・渓流は被写体の宝庫だ
▼苔岩の雫
 滴り落ちる雫を線で撮る
▼清冽な流れとフキユキノシタ
 年中湧水が滴り落ちる岩場には、苔とフキユキノシタが群生する
▼ゴーロの小滝
 水は常に動き、岩にぶつかっては真っ白に砕け落ち、シャワーの雨を降らせる
 その動感を表現するには、オートモードは全く役に立たない
 シャッタースピード優先モードを選択し、1/8以下で撮影する
▼滑り台のような岩を滑り落ちる小滝
▼焚き火と岩魚
 狭い谷間に夕暮れが迫り、そろそろ宴会という時に
 またまた大粒の雨が降ってきた。
 やむなく、テントに避難し、水割りのウィスキーで乾杯
 降り続く雨は、なかなか止まなかったが、乾ききった山々に吸収されたのか
 沢の流れは、ほとんど変化しなかった。
4日目、小沢を登り分水尾根を下ってお助け小屋へ
テン場を綺麗に片付け、八滝沢を少し上った右手の窪地状の小沢を登る。
稜線との標高差は、約160m。
意外に傾斜はきつく、何度も休みながら登る。
空身で登るのと、荷を背負って登るのとでは雲泥の差だ。
泥壁の急斜面を上り切り、ブナの根元で一休み
噴出す汗に、大量のアブが群がる
夏の薮こぎは、この上なく苦しい。
地図では快適なルートに見えても、実際に経験してみると、沢を歩く方が快適だ。
八滝沢左岸のブナ林
ブナの幹には、クマの爪痕がやたらあった
まもなく稜線も近い。むさ苦しい潅木をかき分け登る。
やっとオイの沢と八滝沢の分水尾根に辿り着く。
勘を頼りに登ってきたが、ちょっと高い右手にそれてしまった。
薮こぎは、勘が全くあてにならない・・・下りで痛い目にあってしまった。
尾根のピーク874mから北北西の尾根を、標高差約460m下れば
オイの沢のお助け小屋に出るはずなのだが・・・
勘を頼りに下ると、オイの沢支流水沢の脇尾根に迷い込む
横にトラバースして修正するものの、これがえらく体力を消耗する
時々磁石で方向を確認するものの、今度は、八滝沢の脇尾根に迷い込む
やたら時間と体力をロスしてしまった。
やっとの思いでお助け小屋に転がり込む。
本流には、4人の沢登りパーティがテン場を設営し、焚き火用の流木を集めていた。
聞けば、彼らのコースは、八滝沢〜辰巳沢(豆蒔沢)〜和賀岳稜線〜小沢下降〜
マンダノ沢〜羽後朝日岳〜部名垂沢下降とのこと。

「部名垂沢は、見るところがなく、ただ下るだけだからオモシロクないよ
むしろ朝日沢を下った方がいいのでは」
「その方が帰りも近いし、そうしようかな」

「晩飯の岩魚は釣らないの」
「ここ、岩魚釣れますか」
「八滝沢に入れば釣れますよ」
「でも、上流にもう一組の沢登りパーティがいるからなぁ・・・」
と残念そうな答えが返ってきた。
5日目、暑い陽射しを浴びて堀内沢本流を下る
4泊5日は、長いようで短い
暑い陽射しがガンガン降り注ぐ谷をのんびり下る。
清涼感溢れる滝の飛沫を高速シャッターで撮る
その後、滝壺に腰上まで入って、火照る体を冷やす
真夏でも、沢の流れは意外に冷たい。
だから夏の沢歩きは、水に濡れながら歩くに限る。
エメラルドグリーンに染まったトロ場
深いトロ場を腰まで入って渡渉する
滴る汗もスーッと引き、快感この上ない。
朝日沢出合いで休憩していた4人の沢登りパーティ
聞けば、生保内川を遡行し、羽後朝日岳〜朝日沢下降とのこと。
むさ苦しい薮こぎ、潅木こぎも多々あったのだろう・・・相当疲れているようだった。
真夏の薮こぎは避けた方が賢明だと思うが、人の好みは十人十色
登山と違って沢登り、沢遊びは、歩くコースを自由自在に選択できる点が素晴らしい。
空を見上げると、雲ひとつない青空に飛行機の白い軌跡が走っていった
今回のパーティは、二名
真夏日が続く季節とはいえ、山では二日にわたって雨に見舞われた。
荷を軽くすることを優先し、ブルーシートを省略したのは失敗だった。
それでも、魚止めの主に出会えた感激で帳消しとなった。
「山の中に入って、欲するときに糸を垂れると、たちまちにして30センチに近い、
 イワナやアマゴがかかってくる、というのだったら、これは確かに、登山術の奥義の一つに数えられてもよい。
 そう思って釣りの稽古をはじめたが、もう数年たつのにいっこうに上達しない。・・・

 どんな条件のもとにあっても、欲するままに釣る、というような境地は、
 どうやらこちらの思い過ごしであったらしい。
 岩や雪を相手にしている方が、まだよっぽど確実である。」(1948年「釣り人よいずこにゆく」、今西錦司)
和賀山塊・堀内清流をゆく

樹間に垣間見える青空と夏雲
混交林に包まれた深緑からセミの鳴き声が響く
聖なる流れ、せせらぎの音、小鳥の囀り、トンボの舞い、岩陰で涼むアズマヒキガエル・・・
時折、瀬から黒い影が走り、カワガラスが猛スピードで渓を駆け抜けていく
人間も獣と同じ生き物・・・
だから、時には山にこもって「自然に生かされている」感覚を無性に取り戻したくなるに違いない。

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