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縄文の世界観、キノコ探しのポイント、ブナ林の食用キノコ、ムキタケ、ナメコ、ブナハリタケの郷土料理
 日本のキノコ文化を東西二つに区分すると、西は「マツタケ文化圏」で決まり。では、東は「マイタケ文化圏」・・・ではなく、「雑キノコ文化圏」と言うらしい。それほどブナの森には、さまざまな美味しいキノコが生える。写真は、苔生す倒木に生えたムキタケの群れ。晩秋、森の美を演出する主役は、やっぱりキ・ノ・コ。撮ってよし、採ってよし、食べてよし・・・一年を締めくくるブナの恵みに言うことなし。
 ブナ林のナメコとムキタケの旬は、落ち葉が降り積もる晩秋から初冬。ナメコが折り重なるようにビッシリ生えたナメコに出合うと、舞い上がるほどの感激、感動を味わうことができる。山の頂から、あるいは道路沿いから燃えるような黄葉を眺めるのも楽しいが、ブナ林の本当の豊かさを実感したいのなら、黄葉とキノコ狩りを同時に楽しむのが一番だ。きっと採集の遺伝子が騒ぐに違いない。
晩秋・・・落葉舞う白神の渓をゆく
 秋田県二ツ井町と青森県西目屋村を結ぶ道路が通行止めのため、白神山地の玄関口まで大館市〜弘前市を大きく迂回せざるを得なかった。それがため、秋田市から4時間もかかってしまった。午前9時、やっとパッキングを済ませ出発。黄葉、紅葉に染まった渓に心躍らせながら上流を目指す。
 河原に降り積もったおびただしいほどの落ち葉を踏み締めながらキノコの森へ。風が吹けば、天空から落葉がヒラヒラと降り注ぎ、まるで夢の世界を彷徨しているような気分だった。ナメコのシーズンは、こうしたブナ林の黄葉晩期から雪がちらつく初冬だ。山の冷え込みはきついだけに、寒さ対策は万全を期す必要がある。特にホッカイロは必携だ。
 谷を吹き抜ける風に、落葉は頭上から花吹雪のように舞い散り、清流を流れ下る。
 遅い朝食の後、巨岩が点在する枝沢に入る。苔生す岩や渓にも大量の落葉が降り積もっている。下界では、連日飲み会が続き、ついには風邪を患い体調は最悪だった。重い荷を背負い、30分も沢を歩けば、体中から下界の毒素が噴出す。次第に体も軽くなる。これだから渓流ウォーキングはやめられない。
縄文の世界観・・・ブナ帯文化
 縄文の世界観・・・「東北地方は、かつて縄文文化が栄えた地方である。縄文の遺跡は、東日本に多く見られるが、ブナ林もまた東日本に多い。縄文文化はブナ、ミズナラに代表される落葉広葉樹があったから栄えた文化で、ブナ帯文化と言っていい。ブナ帯文化には、全て循環するという世界観がある。これは、人間から世界を見るのではなく、自然の大きな循環の中で人間を見る世界観である。」(1985年6月、ブナ・シンポジウム・梅原猛)
ブナ林のキノコ探しのポイント
 ブナ林のキノコ探しのポイント・・・沢筋を歩き、ひたすら風倒木を探すことに尽きる。沢筋は、適度な湿り気が保たれるため、倒木にキノコがよく生える。ただし、林床がシダや笹薮に覆われたような暗い斜面は×、笹などの下生えが少なく明るい森を好む。中腹の高台に沼などがあれば、周辺の倒木、立ち枯れ木にキノコが生えている場合も多い。ブナを中心とした広葉樹の切り株・倒木・枯れ木、光、水分の三拍子が揃った場所なら、キノコの山に遭遇する確率は格段に高くなる。

 風倒木は、倒れてから三年目以降が狙い目。天候は快晴が続いた後ではなく、雨が降った二、三日後が最高の条件と言われる。晴れた連休や休日は、キノコ狩りの人たちが大挙押しかけるため、できれば水曜日から金曜日が最も収穫量が多いように思う。
 かつてマタギ小屋があった小沢にテン場を構える。いつも感心するのは、この小屋を建てた場所の素晴らしさだ。一帯は、ブナ林に覆われ、すぐ傍らを清冽な水が流れ、山の幸、川の幸の宝庫。さらに増水した場合でも、杣道を辿り車止めに達することができる。山に依存して生きる山人の経験、知恵が凝縮されている。
ブナ林の代表的な食用キノコ
 ブナ林の代表的な食用キノコ・・・ナメコ、ムキタケ、ブナハリタケ、ヒラタケ、ウスヒラタケ、ナラタケ、ナラタケモドキ、マイタケ、トンビマイタケ、アケボノサクラシメジ、ブナシメジ、ヤマブシタケ、マスタケ、シイタケ、チャナメツムタケ、クリタケ、キクラゲ、ヌメリスギタケ、ヌメリスギタケモドキ、チチタケ、エノキタケ(ユキノシタ)、キツネノチャブクロ、ヌメリツバタケ、ヤマブシタケ、ニカワチャワンタケ
ナメコ ムキタケ ブナハリタケ ヒラタケ
ウスヒラタケ ナラタケ マイタケ トンビマイタケ
アケボノサクラシメジ ブナシメジ マスタケ シイタケ
チャナメツムタケ クリタケ キクラゲ ヌメリスギタケ
チチタケ キツネノチャブクロ ヌメリツバタケ ヤマブシタケ
 ツキヨタケ、ナラタケが終わった10月下旬、キノコ狩りのメインは、ナメコとムキタケ。それ以外にブナ林で目にするのは、ブナハリタケ、ヒラタケ、チャナメツムタケ、クリタケ、巨大なシイタケ、ヌメリスギタケ、ヌメリスギタケモドキ。ただし年によっては腐っている場合もある。

ブナ林のキノコ狩り・・・ムキタケ、ナメコ
 マタギ小屋跡からすぐの風倒木に生えたムキタケの群生。10月下旬ともなれば、紛らわしい毒キノコ・ツキヨタケも姿を消している。ムキタケは下から見れば、一目瞭然・・・大型のキノコで、ブナ林の中では最も絵になるキノコだと思う。透明感のある黄白色で、ヒダはかなり密、柄は太く短いのが特徴だ。美味しいキノコを狙うのは、人間だけでなく、無数の虫たちも狙っている。虫食いかどうかは、手にとらなくとも、下から観察すれば簡単に見分けられる。
 上から見ると、確かにツキヨタケに似ている。しかし、ツキヨタケのように毒々しい小鱗片はない。半円形から貝殻形で、淡い黄土色。時に緑系、紫系、灰色系と遺伝子の多様性に富んでいる。ナイフで切り取ると皮がむけやすく、料理の時この表皮をむくことから「ムキタケ」の名が付いた。傘の内側はゼラチン質で、半分に割るとツキヨタケのような黒いシミがない。
 残念ながら腐っていたナメコ。裏を見れば、腐っているかどうかはすぐに判別できる。
 ムキタケ・・・地面に伏した倒木に生えていたムキタケ。一般にナメコは、地面に接したブナの倒木、ムキタケは、宙に浮いた倒木や立ち枯れ木に発生すると言われる。しかし、これは一般論であって、現場では明確に区別することは難しい。同じ倒木にナメコとムキタケが同時に生える場合もある。
 ナメコの成菌・・・幼菌は半球形だが、傘が開くと平らになる。表面は著しい粘液に覆われ、いかにも美味しそうに見える。傘の中央部が茶褐色、周辺部は淡い黄白色。
 下から見上げると、これまた美しい。傘裏のヒダが透明感のある黄白色のものが上級品。濃い褐色になると質が落ちた証拠。虫もキノコが大好きなだけに、透明感溢れる無傷のキノコに当たると嬉しいものだ。
 ナメコ採取のポイントは、折り重なって生えているナメコを壊さないよう、下から上に向かって一本一本、順序よく切り取る。
 天然のナメコは、色が濃く、傘表面のヌメリが光に輝き、多様な美しさがある。それだけに絶好の被写体と言える。
 ナメコの幼菌・・・全体がヌルヌルした茶褐色の玉が、隙間なく生えている。まるでハタハタのブリコ(卵)を連想してしまう。傘の粘液が光にキラキラと輝き、とにかく美しい。天然ナメコは、栽培品より色が格段に濃い点に注目。
 ナメコの美を撮る。見る角度によって、様々な表情を見せるだけに、角度を変えながら何度もシャッターを押す。
 ナメコの採り方・・・倒木を傷つけないよう、片手で傘又は柄をつかみ、ナイフや山刀、カッターナイフなどで一つ一つ丁寧に切り取り、竹カゴの中へ。傘が開いたナメコなら、ハサミも使い勝手が良さそうだ。手でむしり採ると、倒木を傷つけるだけでなく、泥汚れまで持ち帰ることになり、後の処理が大変なので×。
 ナメコの幼菌は、傘裏にヒダを包む被膜に覆われている。傘が開くと、被膜も破れる。
 左:立ち枯れ木に生えたムキタケ 右:巨木の根元に生えたマスタケの老菌
 やや傘が開けかけたナメコ。これは・・・という倒木は、二、三日前に採られた跡だった。それでもナメコは、発生する木を変えながら1ヶ月にもわたって、次から次へと生えてくる。年によって違うが、白神では、10月中旬から11月上旬頃が旬。
 傘も柄も太く、見事なナメコの幼菌。地面にベッタリ伏したブナの倒木に生えていた。苔に覆われた倒木から顔を出していただけに美しい。こうして生えたキノコは、木を腐らせ土にかえす。肥沃な土が、新しいブナの木を育てる。ブナの木は、死んでも命が絶えることはない。
ブナハリタケ(ブナカノカ)・・・秋田の郷土料理
 ブナハリタケ・・・ブナ林のキノコの中で最も香りが強く、真っ白で発見しやすい。昔からキノコ狩りの対象は、大量に採れるのが条件。そういう条件を満たすキノコの一つが、ブナハリタケ。9月から10月にかけて、ブナの枯れ木、倒木に重なりあって生える。

 地元では、ブナカノカと呼ぶ。とにかく収穫量が多く、古くから食用キノコとして重宝されてきた。雨の日以外でも水分を多量に含んでいるので、両手で絞り出す。一時的に縮むが、スポンジのようにすぐ元の形に戻る。繊維質で丈夫なキノコだ。
 ブナハリタケは、傘の裏が細い針を垂らしたようになっているのが最大の特徴。その名の通り、ブナ林を代表するキノコだが、ブナの減少とともに「深山幻のキノコ」の一つとも言われているらしい。しかし、白神や森吉などのブナの森では採取するのが嫌になるほど群生している。ブナハリタケに含まれる「イソロイシルチロシン」は、塩分が気になる人の健康にいいらしい。
 ▼左:ブナカノカの煮付け・・・秋田では、秋の収穫の頃の料理として欠かせない食材。汚れを落としたブナカノカを食べやすい大きさにさく。厚手の鍋にサラダ油をひいて熱し、ブナカノカ、千切りにしたニンジン、ゴボウ、油揚げを入れて炒める。醤油と酒少々で味をととのえ、汁がなくなるまで煮詰める。最後にあらかじめ茹でておいたササギを加え、ひとまぜする。

 ▼右:タケノコとブナカノカの煮付け・・・塩蔵したものを田植えの頃の料理として使う。1.ブナカノカを塩抜きし、沸騰した湯でさっと煮る。2.タケノコは、沸騰した湯で5〜6分茹で、水にさらしておく。3.鍋に豚肉を入れ、2のゆで汁と酒を加えて炒める。4.いったん鍋から豚肉をあげ、醤油で味をととのえ、コンニャク、ブナカノカ、タケノコを入れ、再び豚肉を加えて中火で煮る。味がしみたら最後にニンジンをいれ、数分煮立てる。・・・ミズ(ウワバミソウ)やアイコ(ミヤマイラクサ)などの山菜を加えると青味が出て料理が引き立つ。(「阿仁川流域の郷土料理」モリトピア選書9)

 特有の香りが気になる人は、一度茹でこぼすか、塩蔵すると気にならなくなる。揚げ物、煮物、炒め物など、どんな料理にも合う。
 ヤマモミジ・・・イタヤカエデと同様、鮮やかな黄色に染まっていた。葉先が鋭くとがり、フチには鋸歯がある。黄葉初期は、赤系、黄色系、黄緑系など多彩な色の変化が美しい。
 苔生す倒木に折り重なるように生えていたムキタケを採る。ボリュームもあり、一カ所見つけると食べきれないほど採取できるのが魅力。雪国の鍋物には欠かせないキノコの代表で、保存も簡単。食べられる分だけ小分けにして冷凍保存すればOK。解凍すれば、元の姿に戻る。
 採取したムキタケ・・・今晩のキノコ鍋は、このムキタケと傘の開いたナメコがメイン。芋の子、豚肉を煮込み、よく洗ったナメコ&ムキタケを入れ、味噌味で調理。厚切りにしたネギをぶっ込み完成。冷え込みがきつい山の夜は、焚き火を囲み、アツアツのキノコ鍋に勝るものなし。

 左はナメコの成菌で汁物・鍋物用、右は小粒の幼菌で、大根おろし和え用。辛味は通常の大根の3.7倍もある「松館しぼり大根」と和えて食べてみた。しこたま辛いが、ナメコのヌメリとほどよく合い、酒のツマミにグーだった。


 ▼なめこの味噌汁・・・天然のナメコは傘の開いたナメコを使う。新鮮なうちにあっさりした味噌汁にするだけで、キノコの旨味が十分味わえる。簡単かつ美味。(「阿仁川流域の郷土料理」モリトピア選書9)

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