キノコ狩り2005-NO.1 キノコ狩り2005-NO.2 目屋マタギの自然知 山釣りの世界TOP


雨のキノコ狩り、巨大なムキタケ、清冽幽玄・・・苔生す晩秋の渓、黄葉の谷
 晩秋のブナ林を流れる小沢・・・上から眺めているだけで心が洗われる。
 二日目の朝4時、テントを打つ雨音で目が覚める。2泊3日の山ごもりでは、二日目がメインの日だが、一日中雨にたたられてしまった。キノコ狩りは、午前に2時間、午後から1時間半、合計3時間半ほどしかできなかったが・・・
 雨は一向に止まず、対岸に渡渉できないほどの濁流となった。本来ならナメコは、対岸の斜面に多く生えている。待てどもやまない雨・・・やむなくムキタケが多い斜面を狙うしかなかった。
 午前10時、全員雨合羽を羽織り、小沢を上りながらキノコを探す。デジカメは首からぶら下げ、雨に濡れないよう雨具の内側に入れて歩く。
1本の倒木に4種のキノコが群生
 テン場から5分ほどの近場に巨大なキノコの群生に出会う。これはラッキーだった。昨年までは、宙に浮いていた倒木でムキタケだけが生えていた。今年は折れてしまっていたが、それが倒木に適度な水分補給をしたのかキノコの山になっていた。、
 長い倒木の中間から下部は、ムキタケとブナハリタケ、上部はナメコとヒラタケが群生していた。一カ所で4種のキノコを採取できるなんてラッキーとしか言いようがない。
 まずは下からムキタケを採る。雨が降っても、楽しい楽しいキノコ狩り。
 同じ倒木の上部に生えていたナメコの成菌。いずれも極上品だった。この反対側にヒラタケも生えていた。開いた傘は、ほぼ円形に近く、中心ほど色が濃い。独特のヌメリ、色艶に加え、倒木を覆う緑の苔と赤茶けた落葉が彩りを添え美しい。
 傘の下にある柄には、ゼラチン質の膜が残っている。雨にしっとり濡れた傘から雨滴が滴り落ちる姿も、なかなか絵になる。ただし、雨の日は、デジカメを濡らす危険と手振れに注意。
 ヒラタケ  ハコネサンショウウオ
 料理は、ヌメリを生かした汁物や各種和え物にするのが定番。おろし和え、味噌汁、納豆汁、けんちん汁、芋の子汁・・・他に佃煮、焼きナメコなど。中でも傘の開いた成菌は、オーソドックスな味噌汁が美味い。幼菌よりコクのある出汁が出るので、味噌汁の具として一級品だ。
巨大なムキタケ・・・
 ムキタケは大きくなると、ビックリするほど巨大な半漏斗型になり、ゼラチン質の肉も厚くなる。虫一つ食っていない極上品だった。
 上から見ると柄を中心に外側に反り返り、まるで漏斗のような形をしている。雨を傘で弾くのではなく、生えている柄に雨水を供給しているような奇妙な形をしている。キノコは、幼菌、成菌、老菌になるに従って、形も色も大きく変化するだけに、一枚から数枚しかないキノコ図鑑だけで判別するのは難しい。まずは、キノコに詳しい人に現場で教えてもらうことが必須だが、さらに現場から常に謙虚に学び続ける姿勢こそ大切だと思う。
 大滝をバックにブナハリタケを採るの図。キノコ狩りは、山の冷え込みがきつく、水も冷たい。風倒木、枯れ木は、急な斜面を上らねばならない。それだけに、足ごしらえは、フェルト足袋にピンソール又はピンソールミニを装着すれば、保温性+滑り止めに絶大な効果を発揮する。
 雨が降り続く中、小沢の源流を上り詰め高台に出る。振り返ると、淡い紅と黄の競演・・・雨で煙り、静寂の森は神秘的な輝きを放った。
 ほどなく、ブナの苔生した倒木を白く彩るブナハリタケに出くわす。またブナハリか・・・東側斜面は、もともとナメコが期待できないだけに食えるキノコに出会えただけでも幸せと思わなければ・・・。
 雨の中、ブナハリを採る。こんな日は、水分をたっぷり含んでいるので、両手で水分を絞り出すことを忘れてはならない。ゴミや泥をつけないよう一枚一枚丁寧に切り取る。
 ブナの幹を伝う雨水滝・・・巨木の幹を伝う天水は、まるで滝のように根元に流れ落ちていた。柴ちゃんが笹の葉で小さなコップを作り天水を飲む。雨にたたられ、やることがなければ、こんな遊びもオ・モ・シ・ロ・イ。
 立ち枯れた木に生えたムキタケ。ムキタケと似ている毒キノコ・ツキヨタケも、こうした立ち枯れ木に折り重なるように群生する。つまり、ツキヨタケとムキタケは、同じ場所に生える場合が多い。それだけに注意が必要なのだが、ムキタケが生える時期になれば、ツキヨタケは姿を消すからありがたい。この二種は、生える時期をずらすことによって「棲み分け」をしているように思う。
清冽幽玄・・・苔生す晩秋の渓
 三日目の朝、雨も上がり、濁っていた流れも清流に戻っていた。朝6時過ぎ、まだ薄暗かったが、デジカメと三脚で清冽な流れをスローシャッターで撮影してみる。シャッタースピードは1秒から2秒程度。シャッターブレを防ぐため、短縮タイマーシャッター2秒を使えば完璧だ。
 赤茶けた落ち葉が苔岩を彩り、白い帯と飛沫が幾筋にも走る・・・清冽幽玄
 沢歩きをしていると、なぜか湿潤な苔と岩を噛むように流れる清冽な水に心を奪われる。まして早春の残雪や可憐な山野草、晩秋の落ち葉が彩りを添えると一際美しい。生と死が永遠に循環する命の源流・・・古来より山人や隠遁者、世捨て人など、仙人の世界のように思っている人もいるが、実は万人が好む世界だと思う。なぜなら、そこには日本人の心の原点があるからだ。
 苔蒸す岩、降り積もった落ち葉、清冽な水が幾筋にも落走している。

 苔類は、キノコやシダ植物と同様胞子で増える。また苔は、緑色から分かるように葉緑体を持ち光合成を行う。葉緑体を持たず、他の生物に栄養を依存しているキノコやカビの仲間とは大きく異なる。
 苔は、なぜ岩や木の幹、風倒木などに生えるのだろうか。苔は体が小さく、シダ類や種子植物との生存競争に勝つことは難しい。そこでほかの陸上植物が生育していない場所、つまり岩や巨木の幹、風倒木など、利用できそうなあらゆる場所を利用しているのである。

 こうした苔の生態を考えると、無用な競争を避けて「棲み分け」していることが分かる。「棲み分け」は、生き物の多様性を生み出す原点だと思う。テロと戦争を繰り返す人間様も、生き物たちの持続的な「棲み分け」に学ぶ必要があるのではないか。
 採取したキノコは、均等に分配する。会では、背負う荷物から山の幸まで、全て平等に分配するのが鉄則。
 キノコ狩りはわずかな時間に過ぎなかったが、終わってみれば、結構な量を採取していた。三日間お世話になったテン場を綺麗に片付け、荷を背負う。来るときよりズシリと重かった。
増水した黄葉の谷を下る
 燃える黄葉の中、増水した渓を下る。水は身を切るほど冷たい。冷水の季節は、カッパズボンを履き、スパッツで足首を締めると保温性を確保できる。ぜひ試してみてください。
 色鮮やかな黄葉に何度も足止めを食わされる。黄、紅、赤茶色、黄緑・・・ブナ林の黄葉の美しさは、森の樹種と色の多様性にある。
 ブナ林の黄葉のピークは過ぎ、上部は黄色から赤茶けた色に変色しているが、下から黄色と赤茶色のグランデーションをかけたように色鮮やか。パラパラと舞い散る落ち葉が、晩秋の風情をさらに盛り立ててくれる。
 下る途中、ウェーダーを履いた3人組のキノコ採りに出会う。
 「採れましたか」
 「いや、みな採られた跡だ・・・」 白神と言えども、近場は苦戦を強いられるようだ。
 イタヤカエデの鮮やかな黄色が一際目をひく。まもなく錦の衣を脱ぎ、木枯らしが吹くことだろう。
 今回のメンバー・・・左から柴ちゃん、金光氏、長谷川副会長、章カメラマン、そして私の5名。雨にたたられ、岩魚の恋の撮影はかなわなかったが、竿を持たない山釣りもまた格別に楽しいものだ。オフシーズンをできるだけ長く楽しむのも今後の課題だ。

(写真撮影は、全てPanasonic LUMIX DMC-FZ20)
 「ブナ帯のキノコの王者のようなナメコは、人々の好みに合っている上に・・・もともとナメコがブナの倒木に多く発生したことを思えば、やはりブナ帯のキノコの代表は、これに尽きると言えるであろう。」(「ブナの森と生きる」北村昌美、PHP選書048)
 「動物、植物、菌類」をバランスよく食べる・・・自然界には、動物、植物、菌類の三つが存在する。植物は、生産者で無機物から有機物を合成する。動物がそれを消費し、菌類が無機物に還元する。それを再び植物が有機物に変える。その永遠の循環が生態系を維持している。

 だから、自然界の「動物、植物、菌類」をバランスよく食べることが自然の理にかなった食生活だという。ならば、山にこもる場合、消費者であるイワナ、植物の山菜、菌類のキノコをバランスよく食べることこそ、自然の理にかなった山ごもり定食と言えそうだ。ちなみに、キノコが採れない時季は、菌類を含む納豆、チーズなどがあればバランスをとれる。
参考文献
「きのこ狩り入門」(山と渓谷社)
「ブナの森と生きる」(北村昌美、PHP選書048)
「阿仁川流域の郷土料理」(モリトピア選書9)
「山菜&きのこ採り入門」(大作晃一、山と渓谷社)
「あきた山菜キノコの四季」(永田賢之助、秋田魁新報社)
「キノコ狩りガイドブック」(伊沢正名、川嶋健市共著、永岡書店)
「きのこの見分け方」(大海秀典他、講談社)
「ヤマケイポケットガイド15 きのこ」(小宮山勝司著、山と渓谷社)
「釣り人のための山菜・きのこ」(菅原光二著、つり人社)
「山菜、キノコ、木の実採り入門」」(鈴木アキラ編著、山と渓谷社)

「きのこ・木の実・山菜カラー百科」(主婦の友社)

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