早春ブナ林の恵み1 早春ブナ林の恵み2 早春ブナ林の恵み3 山釣りの世界TOP

 ハプニングの一つは、テントのポール。4〜5人用のポールではなく、2〜3人用のポールを間違えて持参。ポールに枝木を足して事無きを得た。さらにフライシートは、防水性がかなり悪くなった古いシートを間違えて持ってきてしまった。ハプニングの二つ目は、釣りから帰ってきた直後、車のキーを落としたことに気づく。これには愕然・・・。
 私は、テン場近くのポイントで2尾をゲットし、2004年初釣り完了。以降は、竿を担がずカメラだけ持参して仲間と同行。上の写真は、小玉氏が岩魚を掛けた瞬間である。
 白い斑点のアメマス系のオス岩魚だが、全体的にまだ黒っぽく、サビはとれていない。これから雪代の洗礼を全身に浴びて、サビを徐々に落とし、神秘の美魚に大変身してくれるに違いない。
 昨夜の雨と雪代で増水した渓流では、岩魚のポイントも極端に少なく、大場所のみを狙うしかない。ここぞ、というポイントでは、必ず岩魚がヒット。「きたよ、きたよ」と叫ぶと、まもなく竿を立て、強引に引き抜く。
 側線より下に薄い着色斑点を持つニッコウイワナ。顔は黒くサビついているが、この顔こそ早春岩魚の特徴だ。胸ヒレの外側の白さが際立つ。これも岩魚の大きな特徴の一つ。
 頭部から背中にかけて鮮明な虫食い状の紋様に注目。白神の森は「縄文の森」と呼ばれているが、その森に棲む岩魚を「縄文岩魚」と呼んでいる。その最大の特徴が、ゴギに似た虫食い状の紋様だ。
 この岩魚は、体色そのものは本来の白さに近いが、頭部と胸ビレにサビが残っている。腹部は、濃い橙色に彩られ、滝と滝に阻まれた居着きの特徴を示している。何十年見続けても、決して見飽きることはない。むしろ、過酷な世界に生きる不思議な生態、強烈な引き、美しい魚体、神秘的な紋様に、吸い込まれるような魅力を感じる。
 左の写真:斜面の空間を独り占めしている巨木。小さな人間では、森の主のような巨木を、上から見下ろすことはできない。いつも巨木に見下ろされてしまう。人間なんていかに小さな存在か思い知らされる。この日当たりの良い斜面には、極上のアイコとシドケが群生する。採取しては、この巨木を見上げる。そして、心の中で感謝の手を合わせる。

 右の写真:芽吹く前のブナ。遠くまで見通せるだけに、眺めていても実に爽快な感じがする。吹き抜ける風、頭上でさえずる野鳥の声、沢の音・・・全てが心地よく心に染み渡る。
 岩の上に乗り、岩陰の淀みを「点」で釣る。雪代で渦巻く渓流・・・岩魚は、できるだけ深く流れの緩い岩の底深くに潜んでいる。こうした早春の釣りは、「線」ではなく「点」で釣るのが鉄則。極端な言い方をすれば、重いオモリで垂直に落とし、岩魚の頭を叩くくらいの感じがいい。
 苔生す岩、透き通るような清流から岩魚が顔を出す。横に広げた胸ビレの大きさ・・・まるで飛行機の翼のようにも見える。激流を自在に泳ぐたくましさが伝わってくる。頭部の虫食い状の紋様も鮮明だ。
 この個体は、虫食い状の紋様はしているものの、ちょっと乱れ方が少ない。通常の丸い斑点と虫食い状の紋様の中間種といった感じがする。可愛らしい顔から判断すれば、メス岩魚。
 サビがほとんどとれていない岩魚。特に顔は墨で塗ったような黒さ。側線直下に鮮やかな橙色の斑点が見える。もちろん、腹部の橙色も鮮やかだ。
 斑点、背中の紋様ともに鮮明な個体。光によって斑点が薄い黄橙色に見えるが、よく見ると無着色斑点のアメマス系岩魚だった。
 餌を追う争いに、いつも負けているのか、それとも病か・・・妙に細長い個体。色も青光したサバのような体色に、白い斑点と背中の紋様がくっきり。他の個体とは明らかに異なっていた。
 白い瀑布が怒涛のように流れ落ちる滝壺。辺り一面に飛沫が漂う。その滝の洗礼を浴びながら、岩魚を釣り上げた瞬間を撮る。この感激は、釣り師だけが味わうことのできる特権だ。
 泣き尺の岩魚。斑点は、全て白のアメマス系だが、小さく不鮮明。滝壺の奥底に潜んでいたせいだろうか。頭部だけでなく、体全体が黒くサビついたような魚体・・・何となく源流岩魚の風格を感じる。
 この岩魚も滝壺で釣れたものだが、胸ビレが異様に小さいのに驚かされる。何かで擦り切れたのか、それとも年中滝壺に居着いてしまったために胸ビレが退化したのだろうか。これだけは岩魚に聞かないと分からない。それにしても惚れ惚れするような魚体だ。
 釣りはわすか二時間、一人3尾分をキープしたところで納竿。なぜ一人3尾なのかと言えば、刺身用1尾、ムニエル用1尾、塩焼き用1尾の計3尾。これに山菜を加えれば、最高贅沢な宴会が楽しめる。この時点で、釣りベストのポケットに入れていた車のキーはどこぞに落としていたのだが・・・。
 テン場に着いたのは午後3時。車のキーを入れていたポケットに大きな穴があいていることに気づく。もちろんキーはなかった。恐らく、杣道から沢に下る時に落としたに違いない。ということで、4人に夕食の準備を頼み、私だけ斜面を登りながらあてもないキー探しへ。山にきて、これほどつまらない歩き方もない。

 落差200mほどの斜面をくまなく探すも見当たらない。とうとう朝飯を食べた水場まで戻ったが見つからなかった。これは諦めるよりしかたがないな・・・ふと、水場の右手を見ると、綺麗なフキノトウが4本、残雪をバックに咲いていた。「そんなことぐらいで落胆するな、車が使えないなら歩け」「そんな無茶な」・・・。

 帰る途中、大きな双眼鏡を下げた人が杣道を下ってきた。時計は既に午後5時を過ぎていた。「バードウォッチングですか」「いや、鳥と植物観察ですよ。白神が見える所まで言ってきました。ところで、どちらへ」と怪訝そうに聞かれてしまった。「実は、沢にテントを張っているんですが、車のキーを落としてしまったんです。それを探しているんですが、見つからず諦めて帰るところです」「はぁ、そうですか。それは気の毒に」・・・山は一瞬にして暗くなる。足取りは殊の外重かったが、駆けるようにテン場に向かう。
 ヨレヨレになりながらテン場に着くと、豪勢な料理が出来上がっていた。燃え盛る焚き火と半年振りの源流定食を目の前にすると、再び元気が沸いてきた。車のキーをなくしたショックなんて、どこかへ飛んで消えていた。 
 半年振りに味わう岩魚の刺身。山ごもりには、なくてはならない唯一のタンパク源だけに、岩魚に感謝・・・いつものことだが、この岩魚たちの分も元気に人生を生き抜かないと、岩魚に申し訳ないような気分にさせられる。車のキーがなくなったぐらいで落ち込んでなんていられない。
 雪代の音を聞きながら焚き火を囲み、熱燗で乾杯。20周年記念の山釣りは、とんだハプニングでスタートしてしまったが、旬の山菜と岩魚の料理を山盛り食べ、飲み語らい、ついには酩酊・・・満足、満足。いつになく歩き回っただけに、疲れもピークに達し、シュラフに潜ると同時にドデングーだった。これじゃ、たわいもない子供と同じだ。

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