早春ブナ林の恵み1 早春ブナ林の恵み2 早春ブナ林の恵み3 山釣りの世界TOP

 大人は昔子供だった・・・このことをいつも思い出させてくれるのがブナの森だ。訪れる度に、全てを包み込むように迎え、早春の恵みをどっさり与えてくれる。まるで母のような慈愛に満ちた森だからこそ、大人がいとも簡単に子供に帰ってしまう。

 写真は「新緑の峰走り」・・・日当たりの良い右側の斜面は、谷底から峰に向かって、新緑の絨毯が、日増しに広がってゆく。木々が芽吹き、山が萌黄色に染まり始めると、岩魚釣りと山菜採りシーズンの到来だ。
 早春の恵み・・・アイコ(ミヤマイラクサ)とシドケ(モミジガサ)。雪国のブナ林帯では、この二種の山菜が最も人気が高い。それは、大量に採取でき、かつ美味だからだ。採る、撮る、食べる・・・全て二重丸。店頭に並ぶ魚や野菜とは、比較にならない旬の味を思う存分味わう。
 ブナの森をゆく・・・昨日まで雨が続いたが、一転これ以上ない好天に恵まれた。沢は、雪代と雨のため怒涛のような流れ。当然のことながら、杣道を利用し目的のテン場に向かう。
 杣道とは言っても、重い荷を背負っての急登はきつい。半年間、机に座り、パソコンに向かってばかりいたオフシーズン。体はなまりになまっている。特に年度末、年度当初は、宴会が重なり、暴飲暴食する機会も多い。それだけに、心臓がパッコン、パッコンと激しく音を立てて叫ぶ。額に汗がポトポト落ちる。体から下界の毒素が100%抜けないと、身も軽くならない。少なくとも、山に身体が馴染むには、三日間ほどを要する。
 木々が芽吹く前は、最も山の見晴らしが良い。杣道や尾根、小沢を歩きながら新緑の絶景を楽しむチャンスだ。熊やサル、カモシカなどの野生動物、バードウォッチングから新緑、山野草、山菜に至るまで、楽しみは尽きない。
 新芽がわずかに膨らみ始めたブナの木々が、逆光にキラキラと輝く。こんな輝きを見るのは、何ヶ月ぶりだろうか。深い雪に閉ざされて暮らす雪国人にとって、待ちわびた春・・・その輝きは何倍にも増幅し、無上の歓喜をもたらす。
 ブナとサワグルミが林立する小沢周辺は、まだ芽吹かず、光のシャワーが林床一面に降り注ぐ。斜面の中間部から清冽な源流水が溢れ出し、苔生す岩の隙間を流れ下る。日当たりの良い東側の斜面には、雪解け跡に山菜、山野草が次々と芽を出す。木々の葉が光をさえぎるまでに・・・
 アイコ、シドケ、ホンナ、ヤマワサビ、ミズ、アザミなどの山菜、イワウチワ、キクザキイチゲ、ニリンソウ、ネコノメソウ、ヒトリシズカ、エンレイソウ、ヤマエンゴサク、キケマンなどの多種多用な春の妖精たちが顔を出す。ブナの森は、まさに生物多様性の宝庫だ。
 噴出す汗をぬぐいながら、冷たい源流水で喉を潤す。半年ぶりの源流水・・・五臓六腑に染み渡る冷たさ。「生き返る」とは、こんな瞬間を言うのだろう。
 左:早春の柔らかい陽射しを全身に浴びながら、のんびり山菜採りを楽しむ。いつものことだが、好天に恵まれると、ブナの森は天国だ。森からの贈物を、自ら採る楽しさ、無上の喜びは、実践した者でなければ決して理解できないだろう。

 右:雪解け水がとうとうと流れ、苔岩にぶつかっては水しぶきをあげる。その清冽な飛沫は、まわりの苔や草花にたっぷり浴びせる。そうした場所には、ミズ、アザミ、ダイモンジソウ、ネコノメソウなど水辺を好む植物が芽を出す。
 土から顔を出したばかりのシドケ。これだと茎が小さく、ほとんど食べる所がないように見える。しかし、土中に隠れた茎の部分は意外に深く、掘り取るような感じで根ぎわから折り採るのがコツ。
 葉が開かないシドケの若茎は、土の上部は緑色、土の中に入っている部分の色は赤紫色をしている。写真では、茎の部分がほとんど土の中にある茎であることが分かる。若芽時は、土の中に隠れている部分が最も色合いが良く美味しい。
 日当たりの良い斜面に顔を出したアイコ。アイコの若芽もシドケと同様、土に手を入れ、手前に折るように倒すと簡単に根ぎわから採取できる。若芽は、土の中にある根元が最も美味い。
 アイコの若茎のアップ・・・アイコも同様、若芽時は、土中に隠れた部分が太く、色合い、味ともに良い。土の上に顔を出した部分だけ折り採る人もいるが、これではせっかく美味しい部分を見逃すことになるので注意。
 アザミ・・・沢ではフキノトウと並び最も早く芽を出す。シドケやアイコが芽を出し始めると、誰も手を出さなくなる。しかし、意外に知られていないのがアザミの根。特にモリアザミの根は、ヤマゴボウと呼ばれるほど太く、味噌漬けやきんぴらに利用されている。
 ダイモンジソウの若葉・・・渓流では、最もポピュラーな山野草だが、隠れた山菜でもある。食用は、若葉と花茎。採取時期は、ミズと同じく春から秋と長いのも大きな特徴。生で天ぷら、茹でて各種和え物。採取は、根を残すようにナイフで切り取る。
 ニリンソウ・・・食べられる山野草だが、北国のブナ林では、ほとんど採取の対象になっていない。なぜなら、これより遥かに美味い山菜が山ほどあるからだ。昨春、物は試しと、初めて食べてみた。意外とクセもなく、サクサクした食感でなかなか美味。ただし、猛毒のトリカブトと間違えないよう、白い花を確かめながら、慎重に採取すること。天ぷら、汁の実、おひたし、各種和え物など。
 左:ミズ(ウワバミソウ)。まだ小さいので採取せず。 右:ヨモギ・・・里の山菜だが、渓流沿いにもよく生えている。アイコやシドケがまだ生えていない早春時には、若葉を天ぷらにすると美味い。
 ウパユリの若葉・・・光沢のある大きな若葉は、渓流沿いでよく見掛ける。私は食べたことはないが、美味しいらしい。若苗、若葉を、塩をひとつまみ入れた熱湯でよく茹で、水にさらしてアクを抜く。料理は、おひたし、各種和え物、煮びたし、油炒め。鱗茎は、油炒め、甘味噌煮、茶碗蒸し。鱗茎をすりつぶすと、上質のでんぷんがとれるという。
 イワウチワ・・・ブナの林床を埋め尽くすように咲く早春の山野草だが、既に花の旬は過ぎていた。上の写真は、遅咲きのイワウチワを探し当てて撮影したもの。花は、白と淡いピンク色で清楚な花姿に心ひかれる。
 エンレイソウ・・・3本並んで咲くエンレイソウは、光のシャワーに嬉しさを隠し切れず、大きな3枚の翼を広げて踊っているかのように見える。花姿は、何となく原始的で強烈な個性を持っている。大型の花だが、種子から花が咲くまで、何と十数年もかかるという。
 小沢を下りながら採取したアイコ(ミヤマイラクサ)とシドケ(モミジガサ)。山菜は、岩魚と同様、山の息吹が残る採りたてが命。それだけに山で食べてこそ美味いのだ。

 いよいよテン場をセットし、岩魚釣りへ・・・。ところが、とんだハプニングが連続してしまった。

早春ブナ林の恵み1 早春ブナ林の恵み2 早春ブナ林の恵み3 山釣りの世界TOP

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送