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雷雨の中のキノコ狩り、ナメコ生長観察、きのこ不作ニュース、ムキタケ・ツキヨタケMEMO、山人のマイタケ採りに学ぶ、山釣りの理想郷・・・
二日目は、小沢を上って尾根を越え、一般のキノコ採りの人たちが入り込めない奥地をめざす予定だったが・・・
めざす小沢は、入口から二つに分かれている
昨日は右の沢を上ったが、今日は滝が連続する急峻な左の沢に入る

F1の滝の左岸を高巻く途中で、突然谷は暗くなる
ほどなく稲妻が光り、狭谷を揺るがすような雷鳴の轟きが全山に木霊した
頭上からは、大粒の雨が降り注ぐ
雷雨の中、F2の滝は、右岸の急峻な細尾根を上り、滝頭にトラバースして辿り着く

雷雨は、ますます激しさを増す
小沢の流れは、大量の落ち葉とともに濁り始めた
ついには、大量のアラレが谷に降り注ぎ、バチッ、バチッ・・・と落葉と地面を叩く音がした
同日午前8時半頃、発達した積乱雲により竜巻が発生、八郎潟町では13棟のトタン屋根が全半壊する被害が出た・・・
我々は、この積乱雲が山を通過中に激しい雷雨、アラレに見舞われた
もはやキノコ採りどころではなかった

とりあえず、標高差約150mほど上れば、谷は穏やかになる
この悪天候では、奥地を目指すのは無理と判断せざるを得なかった
小沢源流部の高台から東ではなく、西の方向に進み、テン場に戻るルートに切り替える
標高約650m付近の高台は、ブナの巨木が林立する穏やかな森が広がっている
どんなに悪天候でも、この森なら安心だ
ナメコのポイントは、傾斜地と高台の境界線付近だが・・・
倒木に群生しているナメコは、連日の雨でことごとく腐っていた

西の方向に下りながら探していくと、苔生すブナに、食えそうなナメコの成菌を発見した
雨の中でも楽しいナメコ採り開始・・・
ほぼ平らな森にポッカリと開いた空間があった・・・巨木が倒れた証拠
至る所に巨木が横たわっている
埋もれ木に生えたナメコは既に腐っていた
目を巨木の根元に転ずる・・・「おおっ、旬のナメコだぁ〜」と叫ぶ

大根おろし和えやナメコ汁に最高のサイズだ
ナメコは、雨に打たれて、傘のヌメリが一層増したのか、やけに輝いて見える
▲左・中:標高約630m付近のブナの森
標高600m〜650m付近の高台は、クマが昼寝した跡や
親子クマがじゃれて遊んだ痕跡がやたら目立った
クマの密度は、谷沿いを歩いているだけでは分からない

▲右:標高約600m付近から対岸の山を望む
標高800m〜1000m付近は黄葉が終わり、ほとんど葉を落としている・・・沢底に下るにつれて色鮮やかなのがよく分かる
▲ やっと見つけたナメコの大群生
この写真は、今年の異常気象とキノコ不作の関係をよく示している
9月上旬〜中旬は、異常な残暑、雨もほとんど降らず、マイタケやサワモダシは不作続き
9月下旬からやっと冷え込みが厳しくなったが、相変わらず好天が続き雨が少なかった

そうこうしているうちに、10月17日前後に、季節はずれのナラタケが爆発的に発生した
10月下旬になると一転不安定な天候が続き、連日悪天候が降り続いた
ナメコは一斉に発生したが、連続雨と湿度が高過ぎた影響で、あっと言う間に腐ったのではないかと推察される
折り重なるように生えた大群生だが、半分ほどは腐っていた
残りの成菌は、何とか食べられるが、傘裏が褐色系に変色し、とても市場に出せるような品質ではない
つまり、天然キノコを扱う直売所や市場では、きっと品薄に違いない
▲ ムキタケの群生
ムキタケは、ナメコと違って丈夫なキノコだが、それでも2〜3割程度は腐っていた
空を見上げると、流れる雲は早い・・・
天候は、雨が降ったり止んだり、ほんの一瞬光が射し込むなど、天候がコロコロ変わった
デジカメは、雨に濡れると×・・・雨中の撮影は、軽量の折りたたみ傘を使用した
▲草木に覆われた場所で、旬のナメコの成菌を見つける
ナメコの傘は、成菌になると平らに開く・・・明るい褐色で著しい粘液におおわれる
右端のナメコは、傘が変形している・・・生えている場所によっては、傘の形も多様性に富む
▲ 絵になるムキタケの風景
苔に覆われた倒木、半円形の大型キノコの上に褐色の落葉が絶妙なアクセントを添える
晩秋の森の風景を撮るなら、キノコは欠かせない存在だ
▲ キノコ採りは昼までに切り上げ、テン場でのんびり過ごす
大雨で川は濁流と化し、水位はかなり上昇していた
焚き火の場所は大雨にたたられ火種は完全に消失・・・薪も完全に濡らしてしまった
焚き火が安定するまで1時間半もかかった
しかし苦労した分だけ、焚き火に雨が降っても決して消えないほど盛大な炎になった
▲ ナメコの成長観察結果
左の豆粒ナメコは、初日昼頃に撮影したもの
右は3日目朝に撮影したもの・・・2日も経っていないが、既に市販のナメコサイズに生長していた
ただし、サワモダシ(ナラタケ)に比べると、かなり成長は遅い
▲ ブナの黄葉・・・ブナの葉は黄色から次第に枯れて茶褐色となる
葉の全体が一斉に褐色になるわけではなく、虫食い状から次第に面的な褐色へと変化・・・
これが晩秋の微妙なグランデーションの素になる
▲源流酒場「桃源郷」・・・
晩秋の黄葉と苔生す清流を借景に、燃え盛る焚き火を囲み、採りたてのキノコ三昧で熱燗を飲む
広大な自然庭園のど真ん中に構えた源流酒場は、まさに「桃源郷」・・・

人が抱く「桃源郷」は、十人十色だが、私にとっては、単なる空想ではなく、身近な自然に存在する
だから、岩魚に限らず、山菜、キノコ採りの場合も、桃源郷の真っ只中で
焚き火を囲み、山の幸を肴に酒を酌み交わさないと、心は満たされない
きのこ不作ニュース2008
▼ 「キノコ不作 雨少なく、栄養蓄えられず・・・」・・・朝日新聞秋田版 2008/11/06
記事によれば、今年は秋に雨が少なく、天然キノコは不作という
秋田市の9月の降水量は59.5ミリで平年の33%、10月も105ミリで平年の65%と少なかった

秋田市民市場の店主は「仕入れは去年の半分くらい
キノコが順調に入ってこず、珍しく少ない」
キリタンポ鍋に使われるマイタケは、よく採れる年は一度に10キロほど入荷することもあるが、
今年は1週間に3キロほどしか入荷しないという

▼青森県弘前市「地物キノコに異変、収穫量激減で小売店品薄状態」(陸奥新報)
山で採れる地物のサモダシ(ナラタケ)やマイタケの収穫量に異変が起きている
小売店によっては昨年に比べて1割程度しか入荷がないという

また、嶽温泉にある岩木屋によると、毎年15人前後のキノコ採り全員が不作を嘆いているという
特に減っているのがサモダシ
店頭の販売員も「昨年に比べれば1割ほどではないか」という

例年なら地物の天然マイタケも9月一杯は楽しめたというが、
今年は9月上旬に初入荷して以降、地物はほとんど入ってこないという
今夏は平年に比べ降雨量が多く、逆に9月の平均気温は高かった
日照りが続いて地面が乾き、さらに雨続きでキノコの菌が流されてしまったことが、不作の原因の一つと指摘している
ムキタケMEMO
・柄がなく半円形から貝殻形で、傘の表皮がむけることから「ムキタケ」「カワハギキノコ」などと呼ばれている
・傘の色は黄褐色が多いが、緑系、紫系、灰色系など多様性に富む
・発生時期・・・ナメコと同じで10月中旬〜11月上旬が最盛期
・晩秋のキノコ採りでは、ナメコと並び人気の高いキノコで、とにかく大量に採取できるのが最大の魅力
 また、ムキタケは丈夫なキノコで、どんなに押し重ねても壊れない。
・他のキノコが不作であっても、なぜかムキタケは、いつも大量に採取できる不思議な食用キノコ
 さらにボリュームもあり、特に雪国の鍋物に欠かせないことから秋田では人気が高い
▲右は一般的な形をしたムキタケだが、左のムキタケは異様な形をしている
上から見ると柄を中心に外側に反り返り、まるで漏斗のような形をしている

キノコは、幼菌、成菌、老菌になるに従って、形も色も大きく変化するだけに、
一枚から数枚しかないキノコ図鑑だけで判別するのは難しい
やはりキノコに詳しい人に現場で教えてもらうことが必須だと思う

・ムキタケと間違えて、毒キノコ・ツキヨタケで中毒する例が最も多く、注意が必要
・毒のツキヨタケは、茎を割ると、根元に黒紫色のシミがある
 ムキタケにはシミがないので、念のため確認することを忘れてはならない
・また、ツキヨタケと違って、ムキタケはその名のとおり表皮がむけやすいのも大きな特徴

・熱い汁物、鍋物に入れると、ツルッとしていて喉を火傷するほど・・・ノドヤケの地方名もある
◆料理・・・納豆汁、シチュー、鍋物、すき焼き、トマトとナスのグラタンなど
キノコ中毒例ナンバーワン・ツキヨタケMEMO
▲毒キノコの代表・ツキヨタケ
秋田県内の中毒例で最も多いのは、ツキヨタケ、次いでクサウラベニタケ・イッポンシメジ
ツキヨタケは、ムキタケ、シイタケ、ヒラタケと間違えて中毒する例が後を絶たない

◆2008年のツキヨタケ中毒事例
2008年10月6日、群馬県で食用のムキタケと間違えて
毒キノコのツキヨタケを食べ、3人が嘔吐などの症状が出た

2008年10月16日、北海道日高町の会社宿舎の従業員が毒キノコのツキヨタケをシイタケと間違い採取
17日朝、味噌汁にして食べ、男女12人が嘔吐や下痢など食中毒症状を訴えた

2008年10月26日、新潟県の旅館経営者の親族が、村上市内のキノコ採りグループから
譲ってもらったツキヨタケを、毒キノコとは知らずに旅館に持ち込んだ
旅館では、同日の夕食にバター炒めやキノコ汁として調理し、客9人と従業員4人が食べた
うち客6人と従業員3人が嘔吐や下痢などの食中毒を訴えた
▲若いツキヨタケは、いかにも美味そうに見えるので特に注意が必要
ブナ林のキノコ狩りで最も多く目にする毒キノコの筆頭がツキヨタケ
ムキタケやシイタケ、ヒラタケと色や形が似ていて、同じ環境の下に生えているのでややこしい
・発生時期・・・夏の終わりから秋・・・特に紛らわしいムキタケが生えてくる晩秋には姿を消す
・発生場所・・・ブナなどの広葉樹の倒木や切り株、立ち枯れ木に群生し、被写体としても魅力的な毒キノコ
・傘は半円形で、黄褐色のち紫褐色、直径は8〜20cmと大型
 茎は短く、ヒダとの境に隆起したリング状のツバがある
・縦に裂くと、根元に黒紫色のシミがある
▲左:ツキヨタケ 右:シイタケ
▲ブナの倒木に生えたツキヨタケ ▲ミズナラの倒木に生えたシイタケ
若いツキヨタケは、一見シイタケに似ているので注意
▲シイタケとツキヨタケの見分け方
シイタケには丈夫で固い柄があるが、ツキヨタケには柄がなく(極端に短い)
シミを確認するまでもなく簡単に識別できる
また、シイタケの傘は完全な円形だが、ツキヨタケは半円形である
▲ツキヨタケの成菌
半円形の傘は大きく肉厚で、バター炒めにすれば美味しそうに見える
食用のキノコが見当たらない場合は、このキノコが食べられたら・・・と、何度思ったことか
日本では、毒キノコ中毒例の半数以上がツキヨタケと言われている

成菌になると、傘の色が紫褐色に変色し、毒々しさを増す
・中毒症状・・・食後約30分〜数時間で強い嘔吐や下痢、腹痛が数日間続き、
 みるもの全てが青く見える幻覚症状を伴うことがある・・・ ときには、脱水症状などで死に至ることもある
▲ムキタケ・・・上から見ると、傘の色、半円形、大型で肉厚のキノコである点がツキヨタケに良く似ている ▲ムキタケ・・・ムキタケは下から傘裏を見れば、大変美しい。ヒダが密で黄白色。
▲ツキヨタケの見分け方・・・キノコを縦に裂くと、根元に黒紫色のシミがある。このシミはツキヨタケを見分ける重要なポイントで、幼菌にもはっきりとしたシミを確認することができる。 ▲姿、形が良く似ているムキタケは、念のため縦に裂いて黒いシミがないことを確認する。もちろん、ムキタケには、根元に黒いシミはない。
▲ウスヒラタケ・・・ときに、傘の色がツキヨタケに似た毒々しい色をしている場合がある
そんな場合は、縦に裂いて黒いシミがないことを確認する

◆ヒラタケと間違えて中毒した事例(毎日新聞 2008.11.1)
2008年10月23日、新潟県長岡市でキノコの卵とじを食べた4人が嘔吐などの症状を訴えた
市内の山林で採取したツキヨタケをヒラタケと間違えて食べたのが原因だった
同県生活衛生課によると、今年県内で発生したツキヨタケの食中毒は25人で前年同期の2倍にのぼる
・・・他に石川県11人、群馬県5人、宮城県4人、東京都2人などの被害がでている
山人のマイタケ採りに学ぶ
・毎年9月〜10月にかけて約40日間で350kg〜400kgのマイタケを採る
・マイタケシーズンが近付くと、盆過ぎに下見に行く・・・偶然を期待するような採り方はしない
・何百、何千通りものコースが頭の中に入っている
・採った後も、幾つか巡回し、次回の目安とする

◆マイタケの採り方・・・ナタやナイフを使えば、次から生えないと言われる
 品質の良いマイタケは起こしやすい場所に生える
 根元に手をさし込み、持ち上げるようにして起こす

◆ツクシとマイタケ・・・起こし難い場所は、長さ1m程度のツクシを使う
トリコシバ(クロモジ)の枝の先をノミのように平に削ったものを「ツクシ」という
マイタケは、木の根の洞穴に生えることが多いが、そんな時マイタケの根の当たりに見当をつけてツクシを差込み
感覚をつかんで株全体を起こして根から壊さず切り取る・・・こうしないと商品価値がなくなる

また、根株が残らないように綺麗に採る
運悪く育ちすぎて腐ったマイタケを見つけたら、すっかり取り去る
こうしないと、来年その木から良いマイタケが採れない
これは、根株を残しておくと、木がマイタケに栄養をとられ続けるからだと言われる

・マイタケを採った跡は、他人に見られないように、土やコケ類で隠す
(中には、マメやサワリの状態のマイタケは、草木で隠す人もいる・・・ただし成長が悪くなる)
・採ったマイタケは、シダ類を内側に敷き、トリコシバの枝を切ってツトにして覆い包む
・マイタケの採れた場所には、付近のブナにナタで目印を刻む
山 釣 り の 理 想 郷
◆春・・・新緑、山笑う

◆夏・・・深緑、山滴る

◆秋・・・黄葉、山粧う

若いときは、とにかく未知の谷を旅する方が刺激が強く楽しかった
確かに世界が広がり、学ぶ点も多い
しかし、年をとってくると、体力的にも気力的にも無理がきかなくなった
そんな中、今年は身近なフィールドに戻って、四季を通じて彷徨ってみた

私が追い求めていた山釣りの理想郷は・・・
意外にも最も身近なフィールドにあったことに気付かされた
これは2008年最大の収穫であった

ふるさとの山に向かいて 言ふことなし
ふるさとの山はありがたきかな・・・
」(石川啄木)
この啄木の詩こそ、心の理想郷を追い求める人生の終着駅のように思う

 参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本のきのこ」(山と渓谷社)
「キノコ狩りガイドブック」(伊沢正名、川嶋健市著、永岡書店)
「きのこの見分け方」(大海秀典他、講談社)
「白神山地・四季のかがやき 世界遺産のブナ原生林」(根深誠著、JTB)

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