黄葉とキノコ狩り2008-1-1 黄葉とキノコ狩り2008-1-2 山釣り紀行TOP
サワモダシ(ナラタケ)の群生1〜5、生長過程、山神ブナ、ブナ林に生える主なキノコ、秋田キノコ食文化・・・ |
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三日目の朝の出来事・・・テン場の後片付けをしていると、熊鈴の音が聞こえた 見上げると、やけに足が速い地元の古老だった 「おはようございます」と、声を掛けると、足を止めニコッと笑った 「車2台あったがら、4人ぐれぇはいると思ったども2人だがぁ 昨日も来たども、4人にしてはテントが小さいと思っていだ・・・ 岩魚釣りだがぁ・・・」 「いやいや、岩魚はもう禁漁だがらキノコ採りだぁ 山のキノコ料理で焚き火を囲み、一杯飲めば最高だぁ」 「そりゃそうだなやぁ オラも医者に山さ行ぐなど、止められでいるども、注射打ってきた 昨日だば、キノコ重でぇぐて、腰いでぇ・・・ 俺はバカだがら、この山は全部歩いでる あっちは○○山、こっちは○×山、この峰の陰は△△沢だ・・・ 熊も多ぐなって、あっちの高台にも、背後の高台にも熊がいるどぉ・・・」 後期高齢者ともなれば、家族や医者が心配し、山に行くなと反対される しかし、山で出会う古老たちを見ていると、まるで別人・・・とにかく生き生きしているのが印象的だ 山で倒れるかもしれないが・・・人生、こうありたいものだと思う 二日目・・・雲一つない快晴に恵まれる 所々ヤブと化した杣道を辿って穏やかな沢へと下る |
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沢に下りると、すぐ左岸に倒木が折り重なっていた 手前の倒木を乗っ越すと、早くもサワモダシ(ナラタケ)の大群生が目に飛び込んできた 目を斜面に転ずると、頭から突き刺さっていたブナの巨木にも群がって生えている しかも全て旬のサワモダシ(ナラタケ)だ 本日の大当たり連発を象徴するようなスタートだった |
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▲砂地の倒木に生えたサワモダシを撮る、採る 朝露にしっとりと濡れた傘の頭は、乳首のように盛り上がっている これがサワモダシか・・・と思うほど両サイドに群がって生える姿は美しい |
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▲巨大なブナの倒木・・・苔に覆われた根元には、可愛らしい幼菌が無数に芽を出している キノコの造形美は千差万別で、美の多様性に富んでいる それだけに、ネイチャーカメラマンたちを魅惑的に引きつけてやまない この倒木には、豆粒のようなナメコの幼菌もみられた サワモダシが終わると、一面ナメコが生えてくるだろう |
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▲石突きの根元を残してポキッと折るように採取する 効率よく採取するには、4〜5本をまとめて採り、土のついた根元を取り除く その際、枯葉などのゴミも一緒に取り除く 右の写真・・・ゴミが混ざらないように丁寧に採取する あっと言う間にコダシが満杯となる とりあえず、採取したキノコは草を被せて河原にデポしておく |
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▲ナメコ | ▲ブナハリタケ | ▲ブナシメジ | |||||||
途中、右手から流れ込む小沢を上り、高台のブナ林を散策する 今回は、ブナハリタケの群生に何度も出くわしたが、採取はしなかった なぜなら、美味しく大量に採れるキノコを優先しないと荷の重さに耐えられなくなるからだ こんなチャンスは、滅多にあることではない |
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▲小沢沿いの倒木に生えていたサワモダシ(ナラタケ) 黄葉が始まると、沢沿いの適度な湿り気のある倒木には、ナメコ、ムキタケが生えてくる しかし、ナメコ、ムキタケの気配はほとんどなく、ほぼ100%近くがサワモダシだった しかも老菌はほとんどなく、芽を出してから3日〜5日程度経過した旬のものばかり マイタケでなくとも、踊りたくなる |
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▲ヤブの中の倒木に生えていたサワモダシ(ナラタケ) 沢から斜面の獣道を辿り東方向に進む 笹薮に立つブナの幹にブナハリタケやサワモダシが群がって生えていた さらにヤブに埋もれた倒木にも、サワモダシ・・・もはや採る意欲を失い、先を急ぐ |
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▲山の神様を象徴するような神木発見! ブナの根元の大きなコブをじっくり見ていただきたい 微笑む女性の顔が二つ・・・極めて珍しい造形木・・・ 不思議なことに、見れば見るほど「山の神様」に見えてくる 人跡希な奥山にひっそり佇む「山神ブナ」との遭遇・・・これは、何かの啓示だろうか 森の主のように聳える巨木に立ったならば、誰しも驚きと感動を覚える かつて山人たちは、そうした神の木にはしめ縄を張って大事にしてきた この山神ブナにも、しめ縄を張ってみたい衝動に駆られた |
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▲ムキタケ・・・ナメコ同様、ブナ林を代表するキノコの一つ 日当たりの良い斜面に生えていた |
▲ブナハリ | ||||||||
▲標高600m付近のブナ林 | ▲高台から黄葉の絶景を望む | ▲ブナ林の宝石・ナメコ | |||||||
小沢を上って、ブナの巨木が林立する高台を彷徨う 途中、笹薮や潅木類を抜けると現在位置が分からなくなる それでも日当たりの良い倒木には、ムキタケ、ナメコ、ブナハリが生えていて楽しい 所々に赤いテープを巻き目印をつけながら進む |
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▲美しいサワモダシ(ナラタケ)の幼菌 キノコのお菓子やキノコグッズのモデルにしたいほど、姿・形が美しい サワモダシは、根元から数本束状になって発生する 傘が開くと折り重なるようなキノコの山となる 一般に芽を出してから4〜5日後が採り頃と言われる |
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▲サワモダシ(ナラタケ)の群生・その2 緩やかな小沢の源流部左岸の高台は、ブナの巨木が林立する別天地 案の定、全身苔に覆われた倒木にサワモダシ(ナラタケ)が群生していた 地面の埋もれ木にも折り重なるように生えていたが、後処理を考えると間引くように採るしかない 残したキノコを眺め、「もったいない、もったいない・・・」を連発しながら別の小沢に向かう |
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▲左の写真:被さっていた草を取り除くだけで、傘が簡単に壊れるほどモロイ サワモダシ(ナラタケ)に枯葉や草、土を混ぜてしまえば、ゴミとの分別がつかず半分捨てることになる そうした苦い体験をしないと、なかなか完璧な採取はできない |
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▲サワモダシ(ナラタケ)の群生・その3 右岸の斜面に横たわるブナの倒木に幼菌がビッシリ生えていた 採取は、大きめのものを選び、ナイフでまとめて切り取るように採る |
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▲群生本体周辺部に横たわる倒木にも群れをなして生えている ブナ林は、黄葉が始まると葉が落ち、林床にも日の光が入り易くなる 栄養に富んだ土壌と適度な日照は、キノコにとってベストな環境となる |
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▲白い胞子を飛ばしている成菌 地面に埋もれた木に折り重なるように生えたサワモダシの群生 傘の表面には胞子が白く積もり、一面カビのように見える これでも食用には十分だが、もはや手を出す余裕はなかった |
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▲ヒラタケ | ▲ブナシメジ | ||||||||
▲ブナハリタケ こういうキノコまで採取していたら、とても背負って帰れるものではない |
▲ムキタケ | ▲ヌメリスギタケ | |||||||
本流に戻り、昼食・・・重くなったキノコは、その場にデポし源流をめざす 二つの滝を大きく高巻く・・・右岸高台に野営した跡があった 初日に出会った古老の話によると、このテン場に寝袋やブルーシートをデポしていたが 熊のイタズラが絶えなくなり、源流部での野営を諦め、我々のテン場まで下がってきたという 熊は減っている・・・とよく耳にするが、現場に立てば、熊の密度は、かなり高いと実感させられる かつては、北海道以外で熊撃退スプレーを携帯したことはなかった しかし、昨今の熊は奥山だけでなく里熊も増え、遭遇する機会が増えた だから無用なトラブルを避けるために、熊撃退スプレーは、必需品になってしまった 穏やかな源流部をのんびり歩いていると、藪に横たわるブナの倒木を見つける ヤブの上に出ている倒木には何も生えていない 下のヤブをかき分けると、サワモダシ(ナラタケ)が折り重なるように生えていた |
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▲サワモダシ(ナラタケ)の群生・その5 藪に覆われた倒木、埋もれ木は適度な湿り気があり、キノコが生えやすい 藪をはらうと、あっちにも、こっちにも生えている もはや背負いきれないほど採取しているので、つまみ食い程度にとどめる キノコの山にこれだけ当たれば、だんだん採り方が雑になる 後で考えると実にもったいない・・・仲間がもう2〜3人いれば良かったのだが・・・ |
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▲産卵に備え浅瀬にいた4匹の岩魚は我々に驚き、穴に隠れてしまった | |||||||||
▲源流部の黄葉・・・そろそろ岩魚の産卵も最盛期を迎える | ▲夕日の逆光が谷に降り注ぎ、美しい輝きを放つ | ▲サワモダシの幼菌 | |||||||
▲飽きるほど採取したキノコ でも、撮るのも、採るのも実に楽しい 岩魚釣りでは何度も訪れている沢だが、キノコ採りは初めてのこと だからキノコが生えやすい斜面や倒木の種類と位置を知る山見は、重要な作業 次回に備え、本命のムキタケやナメコが生えるポイントを頭にインプットしながら源流を彷徨った |
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▲キノコ鍋に使ったキノコ 2人なら、採取量に比べ、ほんの一握り程度しか消費できない |
▲右は、ナラタケ幼菌の煮付け(大根おろしがあれば最高) | ▲キノコ鍋が余ったら、ご飯にかけたり、キノコラーメンの具に利用すれば美味く食べられる | |||||||
▼紅葉狩りとキノコ狩り 狩りは、漁労、採集活動と並び、人間の根元的な生業だった もともと「狩り」とは、獣を捕まえる意味で使われていたが、 それが野鳥やウサギなどの小動物に広がり、やがて果物の収穫(イチゴ狩り、ブドウ狩り、リンゴ狩りなど)や キノコ採り、紅葉・草花を眺めたりすることにも広く使われるようになった 観光農園では、子供から大人までがみな果物を夢中で採る光景を目にする これは現代人にも採集の遺伝子が残っている証左だと思う 岩魚や山菜、キノコ採りに夢中になるのも、我々の体の中に潜む漁労・狩猟採集の遺伝子が騒ぐからだろう そう考えると、紅葉狩り、キノコ狩りといった表現に納得させられる ちなみに、秋田では「キノコ狩り」とは言わず、「キノコ採り」と呼ぶのが一般的である 「キノコ狩り」という言葉の響きには、どこか貴族的な遊び、趣味的な雰囲気が漂う |
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▲採りすぎて荷の重さに耐えながら車止めへ 酒や食料が減ったとはいえ、キノコを担ぐと30kg近い重量になった ブナ林のキノコフィールドは、岩魚の宝庫=キノコの宝庫という方程式が成り立つことを実感した 最近は、限界集落の増加や狩猟人口の急激な減少に伴い、熊の密度も高いだけでなく、テリトリーも拡がっている キノコ採りで奥山に行く場合は、特に親子熊との遭遇に細心の注意が必要だ まして、親熊と子熊の間に入ってしまったら戦うことを覚悟しなければならない 人間の社会も山も時代とともに変化する・・・その変化に野生動物は敏感に反応する 山に入れば、お茶の間感覚の動物愛護は全く通用しない 無用なトラブルを避けるためには、熊鈴だけでなく、積極的な自衛策として熊撃退スプレーを携行すべきだと思う |
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ブナ・ミズナラ林に生える主なきのこ20種(標高1,000m以下) | |||||||||
ブナ林のキノコ狩りを楽しむには、わずか20種程度を覚えれば十分楽しめる マイタケ、トンビマイタケ、シイタケ、ヤマブシタケ、アケボノサクラシメジ マスタケ、ヒラタケ、ウスヒラタケ、ブナシメジ、ナラタケ、ムキタケ ナメコ、エノキタケ、クリタケ、ブナハリタケ、エゾハリタケ、ヌメリスギタケ キクラゲ、チャナメツムタケ、シロナメツムタケ (チチタケ・・・秋田ではほとんど食べない) |
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秋田のキノコ食文化MEMO(参考文献:「聞き書 秋田の食事」農文協) | |||||||||
キノコ採り 秋田の山村では、山菜と同様、キノコも驚くほど豊富である キノコの季節になると、今頃はどの沢に何が生えるか、直感的に分かる 夏に顔を出すトビタケ(トンビマイタケ)がキノコのはしりで、晩秋まで続く 農作業のできない雨の日などは、大きな弁当をコダシ(背負い袋)に入れ、 日に二度、三度と山に入り、キノコを蓄える 当座食べるもの、塩漬け、干しキノコなどにきちんと分ける キノコの保存 大量に採取したキノコは、長い冬に備えて、干しキノコや塩漬けにして保存する キノコの塩漬け・・・キノコを湯がき、ザルに上げて水を切る 冷めたら一斗樽に塩を少し多めにふって漬け込む 一回漬けるごとに熊笹を並べて仕切り、これを繰り返して樽一杯にする 最後に重石をして、蓋が塩水で隠れるほど水を入れる これは空気を遮ってキノコの腐敗を防ぐ効果がある |
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キノコ料理 保存キノコは、水に浸したり、塩出ししてからキノコ料理を作る 客がくれば、必ず一品はキノコ料理を添える 塩出しキノコは、大根おろしや納豆汁の具、煮しめ、うさぎ汁に入れたりする 干しキノコは、吸い物やキノコご飯、鍋物(だまこもち、きりたんぽ、いものこ汁)、煮付け、正月膳、祝本膳などに用いる ○鹿角地方の肉鍋・・・寒い夕食のご馳走の主役は肉鍋 大鍋に山から獲ったウサギ、山鳥などの肉をたっぷり入れ、 寒干し大根、ゼンマイ、ネギ、キノコなども豊富に入れ、味噌で味つけする この鍋物は、寒さを吹き飛ばし、体が芯から温まる ○納豆汁・・・栄養価が高く、寒い冬を代表する食べ物 雑きのこ(サワモダシ、ナメコ、シイタケ)、ワラビ、ゼンマイ、油揚げ、木綿豆腐など 山菜・キノコをたくさん入れた味噌汁に、すり鉢ですった納豆を入れ、ひと煮たちさせ ネギの細切りを入れる ○きりたんぽ鍋(県北地方) 土鍋に鶏ガラでとった出汁を入れ、比内地鶏、鶏もつ、マイタケ、ゴボウを入れ醤油、酒、みりんを加えて煮る ひと一煮たちしたら、きりたんぽ、ネギを入れ、最後に、せりを入れる ○いものこ汁(県南地方) 里芋は食べやすい大きさに切り、鶏肉は厚めに大きく切る 鍋に里芋を入れて煮る・・・半煮えになったら鶏肉を入れる 柔らかくなったら溶いた味噌を加えて味をつける 雑キノコ(マイタケ、シメジ類、サワモダシ、シイタケなど3種程度) ネギ、油揚げ、糸コンニャクを入れ、一煮立ちさせ、酒をまわし入れ、セリをはなして火を止める 鮭の水煮(缶詰)を入れる場合は、煮上がる直前に入れる ○その他キノコを使う鍋料理 鶏の水炊き、常夜鍋、石狩鍋、寄せ鍋、ほうとう鍋、ねぎま鍋、すきやき、だまこ鍋、鴨鍋、カニすき 味噌ちゃんこ鍋、海鮮しゃぶしゃぶ、鶏つくね鍋、イワシのつみれ鍋、ジンギスカン、カキの土手鍋、カルビ鍋 |
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