赤水渓谷その1 赤水渓谷その2 故川上健次 関連ページ 錦繍のノロ川源流をゆく 山釣りの世界TOP


赤水渓谷Part2・・・黄葉と兎滝、岩魚ウォッチング、赤水峠コースの甌穴の滝、友の訃報
 両サイドに一枚岩盤がそそり立ち、U字状に削られた天然水路は意外に広い。色づき始めた自然画廊を眺めながら、ジャジャブのんびり歩く。美しき景観に夢心地・・・シャッターを押したくなる場面は、至る所にあった。
 左:珍しく岩の斜面一面が緑の苔に覆われていた。これまた美しい。
 右:奥へ奥へと進むに連れて、黄葉のシャワーが降り注ぐ。稜線の登山道から俯瞰する黄葉も美しいが、聖なる水を蹴って見上げる黄葉もまた格別・・・山釣りオフシーズンは、沢をのんびり歩き、黄葉とキノコ狩りに勝るものなし。
 いかに硬い岩盤でも、長年雨水にさらされると、ついには削られ不思議な紋様を造る。見ようによっては、野生動物や人間の顔に見えたりもする。水は偉大な彫刻家でもある。
 いずれのナメ滝も落差は小さいが、甌穴がよく発達している。黄葉とナメ滝シャワーを浴びながら歩く快感は、何にも変え難い。
 黄葉、一枚岩盤、ナメ滝、釜、甌穴・・・旅人を飽きさせない。長い歳月、水の流れに揉まれた岩が丸く削られ多様な甌穴を造る。ナメの廊下が続く岩稜には、キタゴヨウやクロベなどの針葉樹が列をなし、渓谷沿いのブナ林との対比が見事だ。
 紅と黄色、緑の中を聖なる水が切れることなく流れている。まるで天国の庭園に迷い込んだような錯覚に陥る。
 黄葉とナメ滝・・・ブナ、ハウチワカエデ、ツタウルシ・・・黄葉、紅葉の色が濃くなるにつれ、それらを讃える言葉が見つからない。
 ナメ床の流れが逆光でギラギラと輝く。光と水の水面をジャブジャブ歩く。
 黄金色に染まった渓をゆく。先行していた10名余りのパーティに追いつく。聞けば、兎滝を見てから引き返し、赤水峠を越え玉川温泉に向かうという。リーダーに従い、ひたすら一列縦隊で歩いていた。
 それに比べ、背中にキノコを入れる籠とヤカンをぶら下げ、右手に長い柄の鎌を持ち、キノコ目で歩く中村会長。完璧な「キノコ狩り」スタイル・・・会うたびに「何をしているんですか」と聞かれる。これぞ田舎の沢歩きスタイルなのだが・・・
 眩しいくらいの黄金色に染まったブナ。錦秋の森、豊穣な色彩の氾濫・・・。
 ブナの実の落果が終わる頃、ブナは黄金色に染まる。今年はブナの実が豊作、来年は決まって凶作が待っている。それは厳しい自然の掟でもある。
 ナメの岩盤は、あちこちに甌穴の落とし穴がある。反射した水面は、底が見えず、上ばかり見ていると深い甌穴に落ちかねない。深みと甌穴を避けながら歩く。
赤水渓谷のクライマックス・兎滝
 やっと黄葉に染まった兎滝に到着。すると、上から下ってきたパーティがザイルで滝を下降する場面に遭遇。しばし、聖なる飛瀑と滝下りを鑑賞する。滝を眺めながら、なぜこの滝が「兎滝」なのか・・・皆目分からなかった。
 縦構図で撮影した写真なら、何となく動物の形をしているのが分かる。いつもより水量が多く、不鮮明だが、左向きに上部が頭、その下が手と足で斜め下になっているように見える。見ようによっては白兎、白犬、白馬のようにも見える。なるほど・・・と合点する。
 滝の頭に乗っかっている倒木にザイルを掛け、最後は二人でバランスをとりながら下降しているところ。右側の岸壁に滝を上るための丸い窪地が点々と加工してあるのが見える。普段の水量なら、斜め下向きの兎の足を上って行けば楽勝で上れそうだ。しかし、このぐらいの水量になると、下りは足場が見えず危険極まりない。
 最後の二人が滝下に下り終えると、片側のザイルを引っ張り回収する。爽快感、清々しさが満面の笑顔に表れていた。聞けば、わざわざ札幌から来たという。北海道の沢登りは、もはや寒くオフシーズンに突入したという。今回は桃洞渓谷を詰め上がり、尾根に出て、赤水渓谷を下る一周コースだという。何とも贅沢なコースだ。今度我々も挑戦してみたいと思った。
 札幌のパーティが下った後、また10名ほどのパーティが滝頭に姿を現した。どうも黄葉の季節は、沢登りコースのゴールデンルートになっているようだ。そうなるのも当然のこと。桃洞渓谷、赤水渓谷とも、森と水の回廊として実に魅力的な沢だからだ。(滝の右側に加工された丸い窪地がはっはり見える)
 札幌の沢登りパーティ14名は、滝下りを終え早速記念撮影。撮影しているのは、彼らから頼まれた柴ちゃん。皆さん、満足感、充実感でいい笑顔をしています。
赤水岩魚ウォッチング
 下る途中、枝沢の滝壺を覗く。そっと近付き覗き込むと、流木の下に尺クラスの岩魚が見えた。最初は小さな岩魚2尾も一緒にいたが、私に気づいたのか、右の泡立つ方に逃げられてしまった。幸い、この壺の主は悠然としていた。
 12倍ズームで、じっとシャッターチャンスを待つ。しかし、動きが鈍くなかなか全身が見えない。餌が流れてくると、上流へ動き補食した後、定位置に戻ろうとした瞬間を切り撮る。
 餌に食らいつく瞬間を撮る。小さな滝壺だから、ほとんど移動しない。定位置は、身を隠すことができる流木の下で、微動だにせず餌を待ち続けている。餌が流れてくると、初めて動き出し、無防備に全身をさらけだし飛びつく。その一部始終をワクワク、ドキドキしながらウォッチング。まもなく黄葉が終わり、渓に落ち葉が大量に降り注ぐようになると、岩魚の恋の季節だ。岩魚馬鹿にとって、その産卵シーンはぜひ撮影してみたいテーマだ。
 赤水峠コースのナメ滝
 標高670m二股地点、右岸から流入する沢は、赤水峠〜柳沢林道〜玉川温泉に向かうルート。しばし、上ってみたが、絵になるナメ滝と甌穴が連続していた。秋の気配を感じさせる落ち葉も、白い飛瀑に彩りを添える。
 何段にも連なるナメ滝。右は、飛瀑の力で抉られた甌穴の滝。
 最後の滝頭から下流に向かって撮る。ナメと釜が連続している。これまた美しい景観だ。聖なる水の造形美は、一つとして同じものがない。同じ場所でも四季折々千変万化・・・それだけに飽きることなし。
帰路・キノコ狩りは不発
 帰路は、広葉樹の斜面や枝沢に分け入りキノコを探す。なぜかその気配さえほとんどなかった。
 尾根にはミズナラの巨木、斜面には倒れたばかりの倒木も数多く見られたが、ことごとく空振りに終わる。キノコは、どこにでも生える訳ではない。キノコの山と言えども、沢一本違えば、全くない場合もある。
 枯れ木にサルノコシカケとツキヨタケが生えていた程度。兎滝の上流は、ナラタケがかなり群生していたとの情報だったが、下流はさっぱりだった。
 ブナに巻き付いたツタウルシ・・・落葉つる性植物で、秋にはいち早く紅葉し美しい。葉に触れるとかぶれるので注意。
 迫力満点のツキノワグマの剥製(野生鳥獣センター)・・・秋は、木々に豊かな実りがなりはじめツキノワグマにとってもごちそうの季節。ドングリ、ブナの実、クリ、コクワ、ヤマブドウ、サルナシなど、厳しい冬の冬眠に備えて大量に食べる。冬、山が根雪になるころ、十分に脂肪を蓄えたツキノワグマは、ブナや天然スギなどの大木の樹洞や岩穴、土穴を利用して冬眠する。(センターの解説書より引用)
 本命のナメコ&ムキタケは、黄葉のピークが過ぎ、渓に大量の落ち葉が降り積もる頃だ。2005年最後の山ごもりは、10月下旬、「白神の黄葉とキノコ狩り」・・・と思っていた矢先、自然を考える釣り人の会代表の吉田よしみさんから一通のメールが届いた。そのメールを読み、愕然・・・10月9日、粗大ゴミさんこと「根がかり倶楽部」代表、「渓道楽」顧問・川上健次さんが「立山の有峰林道にて運転していた車が崖下に転落し、同乗していた奥様と共に亡くなられました」と・・・絶句!・・・
 思えば、1997年、白神山地世界遺産地域管理計画の見直しを求める運動で知り合い、2000年、和賀山塊マタギ小屋撤去騒動では保存する会を共に立ち上げ、2000年8月、保存を訴える署名簿を秋田森林管理署角館事務所に提出した。
 その際、瀬畑翁と来県した川上さんと初めて会った。その時、一緒に山に行こうと誘われたが、日程が合わず延び延びになっていた。(写真:仙北マタギ戸堀操さん宅にて)

 昨年9月、追良瀬川で偶然出会うチャンスに恵まれたが、折りしも大雨と仲間のアクシデントに見舞われ、それもかなわなかった。「自然を考える釣り人の会」を立ち上げ、来年1月に発行予定の「新源流紀行」にも声をかけていただいた。いつか焚き火を囲み、酒を酌み交わしたいと念願していたが、それさえ夢と化してしまった。
 写真左から川上健次さん、三人目が瀬畑雄三翁、中村二朗会長、菅原、戸堀マタギ(2000年8月18日、秋田県角館町にて)。

 彼は、団塊の世代を代表する山釣り師だった。私が関心を抱く事件には、ことごとく彼が先頭に立っているという不思議な男だった。山釣りで培った経験、技術、人脈・・・これから若い人たちに伝承しなければならないことが山ほどあったはず・・・それだけに、残念、無念。残された仲間の皆さんの心境を思うと、掛ける言葉も見つかりません・・・ただただ心からご冥福をお祈り申し上げます。

赤水渓谷その1 赤水渓谷その2 関連ページ 錦繍のノロ川源流をゆく 山釣りの世界TOP

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送