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 三日目、またまた快晴。雨の多い白神で、こんなに快晴が続くのは奇跡に近い。今日の本命は、キシネクラ沢探検だ。というのも、これまで入り口の滝上を探ったこともなければ、キシネクラ沢の情報を聞いたことがなかったからだ。少なくとも我々にとっては、情報空白地帯だった。 
 「赤石川」の名前の由来となった「赤石」
 泊り沢出合い二股まで一気に歩く。ここから上流は水量が半減する。平凡な沢をただ歩くだけではつまらない。川虫採取用の網で、川虫を採取してみる。一回でカワゲラが数匹入った。大型のカワゲラは既に羽化したのか、やや小さい。川原にはブナの葉を食べるブナアオシャチホコの幼虫もいた。これはイワナの大好物だ。
キシネクラ沢源流探検
 キシネクラ沢入り口5m滝。かつてはいつも雨に見舞われ、幅広い滝全体から物凄い形相で流れ落ちていた。今は超渇水で、その面影はなし。
 キシネクラ沢入り口の滝は、左の岸壁を直登する。岩壁は凹凸があり、意外に上りやすいが、下りは足場が見えないので注意。安全のため10mの布テープを張った。
 滝上は岩場と甌穴が続いている。それだけにどんな渓谷美を見せてくれるのか期待したが・・・。 
 小滝を左に直角に曲がると渓相は一転、平凡なザラ瀬が続いている。
 ニッコウキスゲ  オオバキボウシ(ウルイ)
 エゾアジサイ  ノコンギク

 沢沿いには、カラマツソウ、トウキ、オオバキボウシ、ヤマブキショウマ、ニッコウキスゲ、クガイソウ、エゾアジサイ、ソバナ、ノコンギクなどの草花が咲いているが、平凡なザラ瀬にはイワナの姿が見えない。標高600m二股まで歩いたが、滝らしい滝はなく絵になる場所はなかった。期待していたイワナウォッチングも空振りに終わった。どうも入り口の5m滝が魚止めのようだ。
 キシネクラ沢のミヤマカラスアゲハ・・・メタリックグリーンの輝きが特に美しい。日本の美しい蝶のトップにランクされている。岩場に浸み出す水を吸水していた。源流谷に多く見られ、アザミなどの花の蜜を吸ったり、地面や岩場で吸水していることが多い。
 アズマヒキガエル・・・真夏日が続いているせいか、飛沫が飛び散る岸辺で涼む姿が目立った。一般にガマガエル、イボガエルとも呼ばれている。
 キシネクラ沢を下り、懐かしのカゲマツ沢のナメ滝(右の写真)を撮影してテン場に戻る。二ツ森から泊ノ平、カゲマツ沢コースを辿る場合、遡行のフィナーレを飾る滝だった。今は指定ルートから外れているので注意。
世界自然遺産・白神の森と渓
 テン場周辺の森(右岸)・・・渓畦林の代表と言われるサワグルミは、渓沿いの湿った低地に分布している。緩い斜面から高台一帯は、大規模なブナの森を形成している。
 高台のブナ林
 石の小谷場沢が合流する赤石川左岸一帯は、平坦な低地が広がっている。林床は笹に覆われているが、密度はそれほど濃くもなく、比較的歩きやすい。樹種は、ブナとサワグルミがほとんど。特にサワグルミの巨木が多い。
 白神のブナの寿命は300年〜400年。森を歩いていくと、天命をまっとうしたブナが至る所に倒れていた。写真は、ブナの巨木が根元からバキッと折れたように倒れていた。森にポッカリ穴が開いたように明るい。チシマザサに埋もれた地面に、ブナの稚樹も見える。光を得たチシマザサも勢いを増す。自然界の生存競争は厳しい。
 ブナの実は、下から見上げれば全く見えない。上から俯瞰するように眺めると、ご覧のとおり。今年はブナの実が大豊作・・・昨年は凶作でクマの出没が相次いだが、今年はクマも大喜びしていることだろう。
 ブナの実は6〜7年に一度大豊作になると言われる。その多くは、森の動物たちの餌となる。例え芽を出したとしてもノネズミなどに食べられてしまう。200〜400年の樹齢を全うできるのはごく少数に限られる。だから写真のブナは、倒れて「可愛そう」なブナではなく、むしろ、天命をまっとうした超幸せなブナとも言える。
 白神のブナの起源は8000年〜9000年前と言われる。以来、世代交代を繰り返し、現在の森は全体として安定した究極の森・・・「極相林」あるいは「原生林」と呼ばれている。沢沿いの湿った斜面には、ブナだけでなく、チシマザサ、サワグルミ、オオバクロモジ、オオカメノキ、カツラ、ホオノキ、ミヤマナラなど樹種も多様である。
 巨木が二本仲良く並んでいたが、ついに一本は倒れてしまった。二本並んでいた当時は壮観だったのだが・・・。ブナの森の森は、山菜、キノコ、薬草、野生鳥獣、イワナの宝庫・・・狩猟採集の時代から、その恵みを求めてブナの森に分け入った自然と人間と文化を抜きにして白神を語ることはできない。だからこそ白神の森は、別名「マタギの森」と言われている。余談だが、「マタギ」は別名「ブナの森の狩人」とも呼ばれ、ブナの森に依存した山村の暮らしを総称して「ブナ帯文化」と呼ぶ。
 赤石川の流れをスローシャッターで撮る。全体的に赤っぽい感じがする。やっぱり赤石川だ。
 流木の小滝(石の小谷場沢)
 苔生した岩から滴り落ちる湧水。コップに受けて飲めばしこたま美味い。
 ブナの倒木に生えたサルノコシカケ(石の小谷場沢)・・・こうした渓沿いの倒木には、秋になるとナメコ、ムキタケ、ブナハリタケ、サワモダシ(ナラタケ)など様々なキノコが群生することだろう。キノコの造形美、ぜひ撮影してみたいテーマの一つだ。
 やや暗くなりかけてきた頃、ヨドメの滝が気になって本流を下る。すると深淵の下流から十数匹のイワナの群れが一団となってゆっくりと上流に泳いでいく光景を目にする。日中は餌を追ってバラバラに行動するが、夜になると群れをなすのだろうか。
 ヨドメの滝上流の小滝。
 石の小屋場沢出合いから400mほど下るとヨドメの滝の上段5m滝がある。 
 ここは右岸を大きく巻いて滝下に出るルートになっているが、時間がなく滝上からヨドメの滝頭を撮影するにとどめた。
 四日目、若干雨が降ったが、乾いた森がちょっと湿った程度ですぐに止んだ。一瞬、渓も森も白いガスに煙り、別れを惜しむかのような神秘的な輝きを放った。霧の彼方からカワガラスが低空飛行で渓を駆け抜けていく。一雨降れば、イワナを狙ってヤマセミもやってくるだろう。待ちに待ったトンビマイタケも一斉に顔を出し、赤石川源流も一気に活気づくに違いない。
 今回のメンバー・・・右から中村会長、長谷川副会長、私の3名。今年はアブ、ハエ、蚊が大量発生。夏のクソ暑い中、急斜面の薮こぎの連続、なかなか目的地に着かない。休むたびに、アブと蚊が噴出す汗に群がり集中攻撃を受けた。それは地獄の苦しみ。やはり赤石川源流は、どこからアプローチしても遠い。

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