私の意見


朝日新聞秋田版 2000.5.29付け

県と地元漁業者が共同歩調
メッカ八郎湖、釣り客のマナーでトラブル続出
定置網切断、漁師がけが
料金徴収し、「共存」求める声も


 「パス釣りのメッカ」として全国的に名高い八郎湖(八郎潟残存湖)。五月から本格的なシーズンが始まり、各地から一日に千人を超える愛好家でにぎわう。だが、地元の漁業関係者は来月からブラックバスの駆除を始める。釣り人が捨てた針で漁師がけがをするなど、トラブルが頻発しているためだ。県もこの魚釣り上げられたブラックバス。口に多くの傷があり、何度か釣られていることが分かる(八郎湖で)を「害魚」と認め、駆除を許可した。しかし漁業者の中でも、「無条件全面駆除」を主張する強硬派と、「被害が抑えられればブラックバスと共存の道もある」とみる穏健派の間には微妙な温度差も。駆除作戦がブラックバス問題解決のかぎを握るかは、なお不透明だ。(前田 晋平)

 岩手、山形、静岡、所沢、大阪……。水温が上がり、バス釣に最適の季節を迎えた八郎湖には、他県ナンバーの四輪駆動車が所狭しと止まっている。

八郎湖がバス釣りで「全国区」になったのは、五年ほど前からだ。
八郎湖には冬の間、氷が張るため、バス釣りは半年間ほどしか出来ない。その分、魚は比較的簡単に釣れる。ほとんど通年釣れる南の湖と比べ、魚が「世間ずれ」していないためだ。しかも、愛称「ハチローバス」は元気がよく、まだ一度も釣られたことがないものも多いという。有名タレントが訪れたことがあるといううわさも、多くの若者を引きつけている。

 だが、釣り客の増加に伴ってトラブルも急増。路上駐車やごみの投げ捨てだけでなく、ボートのスクリューで定置網を切られたり、綱に引っかかった針で、わかさぎ漁をしていた漁師がけがをするなど、深刻な被害も続出している。ある漁師は「綱を引いていたら、針が指に刺さって手術をした。一体だれが補償してくれるのか」と憤る。別の漁師は「現行犯』で見つけても、相手のボートが速くて追いつけない」と、あきらめ顔だ。

 こうした現状を知ってもらおうと昨秋、県水産漁港課が音頭を取って意見交換会が開かれた。愛好家側からは、釣具店などにチラシを置いて客にマナー向上を呼びかけた、などの報告もあったが、漁業者側が納得するには至らなかった。網のある場所を示す看板を立て、近づかないよう呼びかけるという案も示されたが、経費負担の問題で今のところ実現していない。

 漁業者側がバス駆除を始める六月は、本来は禁漁期間だが、県は一カ月間だけ「バス漁」を許可した。約五十の定置網を立て、ほかの魚は逃がす。採ったバスは、入漁料を取ってバス釣り客を受け入れている山梨県の河口湖に買い取られる。

 県は、当初は両者の調停者的な立場だった。だが昨年十二月、ほぼ県内全域にまたがる四十八市町村の湖沼などでブラックバスが確認されたことから危機感を強め、全面駆除方針に変わった。新潟県にならい、釣った魚を再び逃がす「キャッチ・アンド・リリース」の全面禁止も検討しているという。

 日本最大のバス釣り団体である日本バスクラブ(NBC)の秋田支部(佐藤仁支部長)は静観の構えだ。「技術的に全面駆除は無理」とみており、特に危機感はないという。マナー問題はついては、「客にチラシを配り、漁民に迷惑をかけないよう、出来るだけのことはしてい
く」としている。

 同支部は、県に対して「料金を取って釣り客を受け入れることも考えてほしい」と要望している。県は「八郎湖では漁業権が放棄されており、漁業者には補償金も支払われている」として料金徴収には難色を示しているが、この「共存策」には、漁業者の一部からも賛成の声が出ている。

 今後もしバス釣り客が八郎湖から消えることになれば、釣具店や宿泊施設などへの影響は必至だ。湖への入り口となる琴丘町鹿渡のガソリンスタンドでは、ブームが始まった五年ほど前からバス釣り客の給油が目立ちはじめたといい、経営者は「シーズンには売り上げが三割ほど伸びる。なくなれば打撃だ」と話す。

県は、バスの全面駆除に当たって、周辺への経済効果を調べるアンケートを実施する予定だが、「その結果によって方針が変わることはない」(水産漁港課)という。
 私の意見

 秋田のブラックバス問題は、関東・関西に比べれば数年遅れていると思っていたが、その広がるスピードは格段に速くなった。あの渓流魚の敵・コクチバスやブルーギルも生息しているとの現地情報が県水産漁港課に寄せられている。現在、確認作業が行われているが、「ヤッパリ」きたか、という空恐ろしさを感じている。

 そんなおり、県が「全面駆除」に踏み切った英断を高く評価したい。
 日本バスクラブ(NBC)秋田支部の「料金を取って釣り客を受け入れることも考えてほしい」との要望は、彼らの常套手段である。また、この策略に、漁業者の一部から賛成の声が出てくるのも、利益追求型社会では当然のことのようにも見える。

 八郎潟におけるブラックバス問題の特徴は、漁協に漁業権がないことである。
 八郎潟干拓で漁業補償を受け取った時点で、漁業権が放棄されている。従って、バスを漁業権魚種に定めて料金を徴収する道はないのである。にもかかわらず、一部の人たちは、超法規的に漁業権を与えて料金を徴収しようという暴論も出てきている。

 仮にこの暴論が正論になったとしたら、世の中オシマイである。バスストップキャンペーンを自ら否定するだけでなく、地元に利益を与えるものであれば、法も規則も倫理もないに等しい。
 今年は、2000年である。こんな汚点を21世紀に引き継げば、21世紀の釣りも漁業も生態系もお先真っ暗としか言いようがない。

 密放流という犯罪の上に成り立つ利益追求型の声に対して、行政がそれを認めるなどという過ちは、決して犯してはならない。「共存」と言えば、聞こえは言いが、犯罪者との「共存」は誰しも望まないし、まして行政がやるべきことではない。

 我々が21世紀に引き継ぐべきものは、独特の風土の中から生まれ、代々引き継がれてきた魚の文化とその魚たちを育む地域固有の生態系ではないか。そうした魚と食文化、貴重な生態系や地域固有の遺伝子を持つ魚たちが失われつつある現在こそ、それらを見直し、再評価すべき時ではないか。一時の利益のために、ブラックバスを容認することは、持続的なシステムをことごとく破壊することになるだろう。

 幸い、周辺の経済効果を調査はするものの、その結果によって「全面駆除」の方針を変更しない、との固い決意、さすが秋田県と言いたい。水産漁港課の皆さん、我々はその固い決意を全面的に支持したいしと思いますので、ともに頑張りましょう。

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