関連ページ ブラックバス駆除作戦第1弾



第124回秋田県種苗交換会農業農村整備フェア

 明治以来、1回も休むことなく124年間続けられてきた秋田県農業最大のイベント、種苗交換会が大館市の樹海ドームで開催された。第1協賛会場の農業農村整備フェアでは、「環境保全」をテーマに田んぼ周辺や溜池に生息するイバラトミヨ、メダカ、モツゴなどの在来種の保護とブラックバスの駆除を訴えるキャンペーンが実施された。

 会期は10月31日〜11月6日の1週間。私は3日間このキャンペーンに参加したが、来場者数は、それぞれ6万人(10月31日)、10万人(11月3日)、21万人(11月4日)と大盛況であった。

 農業農村整備フェアの内部正面に、大館市の農業用ため池で捕獲されたブラックバス3尾を展示した。その左には、中仙町の農業用水路で捕獲されたイバラトミヨ、その奥には田んぼ周辺で捕獲されたメダカ、タナゴ、モツゴ、ドジョウ、フナなどの小魚を水槽展示した。左の写真は、ブラックバスの水槽上部に設置された説明文・・・「ブラックバスとは・・・」「ブラックバスの駆除にご協力を」と題し、ブラックバスの恐るべき生態とブラックバス駆除に理解と協力を訴える内容だ。

 このコーナー設置に参加した団体は、秋田県農政部農地計画課、農地整備課、秋田県土地改良事業団体連合会、北秋田総合農林事務所、東北農政局西奥羽土地改良調査管理事務所。魚の捕獲と水槽展示に協力した主な団体は、大館市の農業ため池を管理する土地改良区、県水産振興センター、県立大学短期大学部農業工学科の神宮字寛講師である。
 ブラックバスの水槽横には、「ブラックバス情報」と題した自由閲覧用のファイルを設置・・・秋田県におけるブラックバス駆除作戦の情報を網羅したもの。  左の男の子は、バス釣りの好きな少年だが、「ブラックバス情報」のファイルを一生懸命読んでいるところ。水槽の下には、羽後町土地改良区が「最大58センチ、約2000匹を駆除」した「ブラックバス駆除作戦第1弾」のページを貼りだしている。右の女の子は、それを夢中で読んでいるところ。
 氷河期の生き残り、湧泉に住むイバラトミヨ10匹を展示。
 地元では「ハリザッコ」あるいは「トンギョ」と呼んでいる。

 この小魚は、イワナと同じで、水温が10〜15度と安定した清流にのみ生息、湧水のある平野部にランドロックされた貴重なもの。それだけにイワナ馬鹿には、最も親近感を持つ在来種だ。県版レッドリストでは、絶滅の可能性が最も高い「絶滅危ぐ種IA」に指定している。
 水槽内を泳ぐメダカの向こうにブラックバスが見える。
 「ブラックバスがメダカを食う?」ではないが・・・偶然そういう配置になった。かつては、どこにでもいたメダカ、タナゴ、トジョウ、フナ・・・孫を連れたおじいさんやおばあさんなどに特に人気があった。

 あるおじいさんは、水槽に食い入るように見つめながら、可愛い孫に語りかけた。「これがメダカの学校だど」・・・今では「田んぼの学校」なんて呼んだりしているが。この当たり前の二次的自然も姿を消そうとしている。それを孫たちに伝えようとおじいさんは、懐かしの小川を想い出すかのように孫に語りかけ続けた。
 水槽の中を泳ぎ回る魚たちを熱心に覗き込む。「あっ、メダカだぁ、フナだぁ、あれっ、これドジョウじゃない・・・」
 ブラックバスの展示は、特に注目を集めた。バスストップキャンペーンのCMがテレビやラジオで流されたこともあって、この名前を知らない人はほとんどいなかった。しかし、実物を見るのは初めてという人が意外に多かった。

 「これがぁ、魚をカジルやつは・・・」「ブラックバス?、初めて見だ〜、それにしてもデカイなぁ」「食えねぇ魚を勝手に放流して困ったもんだぁ・・・」。゛ブラックバスは食えない魚゛だ、と思い込んでいる人がほとんどだった。その度に「皮を剥げば美味しい魚だ」と料理方法も含めて説明した。「雷魚に比べれば、確かに美味そうに見えるなぁ」・・・。

 中には、「何でブラックバスなんか展示するんだ」と疑問を投げかける農業者もいたが、「ブラックバスの駆除に協力を呼びかけるためだ」と説明すると「あ〜そういうことか。それなら大いに賛成だ」と納得。特に、農業用ため池を管理する土地改良区、農家の方々には、誰一人としたバスを擁護する人はおらず、むしろ自分たちが管理する溜池に勝手に放流していることに腹を立てる人が圧倒的だった。
 農業農村整備フェア入口・・・寒さが厳しい毎日であったが、連日、団体客や家族連れで賑わった。  ブラックバスの展示コーナーは、特に家族連れの人たちに人気があった。
 年配の農業者の人たちは、「初めて見た」という人がほとんどで、水槽の中を泳ぐバスを食い入るように見ていた。

 皆一様に、その大きさに驚き、「こんなデカイ魚なら、雑魚をいくら食べたか知れねぇなぁ」・・・「バスは、在来の小魚を食い荒らす悪者」というイメージが定着しているようだ。中には、ブラックバスを見るなり、「自然保護団体の敵」と言う人もいた。

 「こんなデカイ魚なら、釣ればオモシロイだろうな」・・・そりゃオモシロイ、どんどん釣って、家に持ち帰り、食べるなりして再放流しないようにしましょう。
 約2000匹のバスを駆除した羽後町土地改良区のページを熱心に読む親子。小さな農業用ため池に2000匹ものブラックバスがいたことにショックを受ける人が多かった。さらに、在来の小魚がおらず、共食いまでしていた事実に驚いていた。

 「ブラックバスは、食う物がなくなると共食いもするんだぁ・・・」

 人間の想像をはるかに超える巨大な八郎潟や琵琶湖で「バス問題を考える」から、分けのわからない議論になるのだ。小さな水槽で実験すれば、たくさんいた小魚もあっと言う間に食い付くし、共食いするであろうことはすぐに理解できるはずだ。

 バスの生態を解明するために、あるコンクリート会社の社長は、八郎湖で捕獲された40センチ級のバスを買い上げ、自宅の大型水槽に入れて観察を続けた。ところが、餌となる生きたフナやトジョウを確保するのに四苦八苦、余りの食欲にお手上げとなり、観察を断念したほどなのだ。

 多くの農業用ため池は、人家から遠く離れ、水質汚濁や開発の影響もほとんど受けない場所に位置している。なのに在来の魚は成魚ばかりで、小魚はいないくなった。さらに増え続けたバスは食べる小魚がいなくなると、共食いをはじめる。そうした駆除の実態をみれば、在来魚が減少した犯人は、ブラックバスであることは、誰でも容易に理解できるはずだ。農業用ため池でのブラックバス駆除作戦の狙いは、水を抜き、バスを容易に駆除できるだけでなく、その恐るべき実態を簡単に把握できる点にある。
 40センチを超えるバスのアップ。口元をじっくりご覧ください。釣り人に何度も釣られ、リリースを繰り返されて、可愛そうなくらい傷だらけになっている。
 私たちが説明するまでもなく、説明文と実際の駆除のページを読んで納得する人が多かった。関心の高さは、子供から老人まで年齢の差はなかった。  展示している魚は、いずれも珍しく、持参したカメラで入念に撮影する人もいた。
 バス擁護派の人たち、あるいは地元の釣具店の人たちが来場して、ブラックバス駆除キャンペーンにクレームをつける人がいるのではないか、と思い、背後でじっと見ていたが、そういう人は皆無だった。

 やっぱり秋田は、都会と違って、心までバスに汚染されてはいなかった。

 農家の人たちも、兼業化、高齢化の進展が著しく、水路の維持管理も十分できなくなっているのが実態だ。当然のことながら、維持管理を軽減するために、三面舗装のコンクリートやパイプラインが増え続け、一方ではイバラトミヨやメダカなど、在来の魚たちが激減した。それに農家の人たちも危機感を抱き始めた。

 今では、貴重になった湧泉とイバラトミヨを何とか守りたい、という運動があちこちで見られるようになった。環境に配慮した整備は、事業費がこれまで以上に高くなるだけでなく、草刈や泥上げなど、維持管理にも多大な労力がかかる。なのにこうした動きが活発になってきたのだ。「お金よりも環境優先」という流れが確実にやってきていることを実感せざるを得ない。ブラックバスの密放流やバスのキャッチ&リリースは、こうした流れに逆行していることは間違いない。
 その場に佇み、熱心に見入る家族連れや子どもたち・・・

 バス釣りの好きな子供は、「バスを駆除するなら、雷魚はどうなんだ」と質問、「八郎潟のような大きな湖沼と違って、農業用ため池には、雷魚なんて、もともといないんだ。羽後町土地改良区のページを見てご覧。外来魚は、ただの一種のバスだらけ・・・。それも滅茶苦茶繁殖しているだろ。バスは、雷魚より分布域がはるかに広く、数も圧倒的に多い。もちろん彼らの餌は、もともとため池に生息している小魚たちだ。わずか数年で小魚たちを食べ尽くし、共食いまでしているんだ。雷魚なんて比べ物にもならない恐ろしい魚だ。そんなブラックバスを無差別に放流した人は誰だろうねぇ」
 水温が低く、動きは鈍いが、展示されている小魚たちに比べれば、一際大きく迫力は十分。正面から見ると、結構愛くるしい顔をしているが・・・。食べ物がなく、お腹がへこんでいるのがわかるだろうか。
 来場者に展示しているブラックバスについて、説明しているところ。農家の方々は、ブラックバスの害について漠然としたイメージは持っているものの、一般的に関心は低い。自分たちに身近な農業用ため池でブラックバスを駆除した実態を知れば、無関心ではいられなくなる。  昔、湧水のある所に生息していたイバラトミヨを懐かしむように覗き込む。大館市や比内町など、北秋田地方では「トンギョ」と呼んでいた。今では湧水もなくなり、ほとんどが絶滅、仙北郡と平鹿郡の湧泉が残る地域に細々と生きている。
 バス釣りの好きな少年や青年もたくさん訪れた。しかし、ため池を管理する土地改良区や農家の方々、ザッコの会などのボランティアグループの人たちが、泥まみれになって約2000匹も駆除した実態を見れば、ショックを受けざるを得ない。さらに、最大58センチのバスや共食いの実態には、思わず身を乗り出して読んでいた。

 私たちは、バス釣りそのものを否定しているわけではないのだから、せめて密放流を非難し、キャッチ&クッキングを実践してほしいと願わずにはいられない。ブラックバスを漁業権魚種に指定し、遊魚料を徴収すれば儲かるとか、地域活性化になるとか、経済性から見れば「害魚」ではなく「益魚」だとか、そんなお金優先の時代は終わったのだ。
 農業用ため池のブラックバス駆除作戦は、これから本番を迎える。
 ブラックバス駆除作戦は、行政が主体では決して成功はしないだろう。あくまで、ため池を管理する土地改良区、その下流の水系を管理する漁協を中心に、地域の人たちやボランティアの人たちが主体となることが、成功の鍵を握っている。

 バスは「害魚か否か」といった総論的な議論ではなく、実際に地域の人たちが汗水流して駆除を実施した生々しい実態を報告することが、理解と協力を得る最大の方法だ、とつくづく思った。

 羽後町土地改良区のブラックバス駆除の成果は、無報酬でバス駆除に泥まみれになって悪戦苦闘するボランティアの人たちのひたむきな姿を見て、土地改良区や農家、漁業者の方々もブラックバスの駆除に本気で乗り出した点にある。3日間、ブラックバス駆除キャンペーンに参加して、それを支援する声の大きさに、自信と勇気をもらったような気がした。

関連ページ ブラックバス駆除作戦第1弾

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送