頭のつぶれたイワナの謎を追う 山釣りの世界TOP


「人魚」=「頭のつぶれた岩魚」、岩魚のタタリ?・・・
 ねこぱんさんから岩魚にまつわる奇奇怪怪の実体験「岩魚幻談」(朔風社)がFAXされてきた。沢田賢一郎氏の「人魚の話」には、背筋がゾッとした。というのも、この実話に登場する「人魚」こそ「頭のつぶれた岩魚」そのものだったからだ。確かに、見れば見るほど人間の顔をしているではないか。

 「・・・魚には全部でないにしてもかなりの種類に人魚と呼ばれるものがいて、普通の魚と異なり、特別の意味を持っている。それも人間に対して・・・
 それはただの冷血動物ではなく、魔力とか霊の力とかいった神秘的な意味を持つ魚で、特に老生しており、顔が人間と同じ、しかも俗にアカンベーをした時の顔をしている。この人魚は勿論そんなに多く存在するものではなく、それを見る人はまれである。そしてどこの山奥の村の言い伝えだか忘れたが、その地方きっての名人と言われる職漁師は、何時の日かこの人魚を釣り上げる。そこで、この人魚を釣ったら、職漁師は引退するのがならわしだという。もし、それに逆らうと大変な災いがあるというのだ。・・・」

 この話が、私にとって真実味を帯びているのは、この人魚を初めて釣った時、確かに不思議な魔力を感じたからである。
 今から15年前、私はこの不思議な渓を訪れた。入り口は断崖絶壁が丸くえぐられ、真っ暗なトンネルになっている。かつて単独で雨の中、この壷で尺岩魚を立て続けに釣ったが、巻くことができず退却したことがあった。それほど両岸壁は険しく、狭く、暗かった。

 ここを大きく巻くと、廊下状ゴルジュが連なり腰まで渡渉しながら前進した。すると、渓は一気に開けザラ瀬が続いていた。岩魚のいそうなポイントはあるが、なぜか岩魚の影すら見えない。もしかしたら下流のトンネルが魚止めかと思った。何と1キロ余り上流の上二又まで、私の竿は沈黙したままだった。

 「岩魚はいないんじゃないか」と半ば諦めながら右の沢へ入った。ところが突然浅瀬から岩魚が走る姿が見えた。思わず叫びそうになるのを抑え、カーブ地点の瀬に餌を振り込んだ。すぐさま、ごく普通のアタリがかえってきた。簡単に釣れてきたが、岩魚の顔と目があった瞬間、全身の身の毛が逆立った。「頭のつぶれた岩魚」・・・しばらく手につかむことすらできなかった。深い静寂が襲ってくるような恐怖感に包まれた。

 不思議なことに、頭のつぶれた岩魚を釣った瞬間、右足に激痛が走った。もうまともに歩くことができないほど痛い。「これは岩魚のタタリではあるまいか」・・・と心底思った。もう釣る気力は完全に失せていた。竿を畳み、二又の石にへたり込んだ。しばらく休んだ後、枝で杖を作り、足を引きづるようにして谷を下った。それからというもの、沢を歩くたびに右足首が痛むようになった。時々、激しい激痛が走ることもあり、ストックを欠かさず持ち歩くこともあった。今思えば、それは岩魚釣りを「引退」しろというお告げだったのかも知れない・・・。だが、意に反して、私は釣りを止めるどころか、その不思議な魔力にますます狂ってしまった。
 「人魚」を釣り上げた沢田賢一郎氏の文を参考までに抜粋する。

 「・・・私は岩から降り、少し下がって水ぎわに近づきながら魚を手元まで引き寄せた。水面から出た魚の顔を見た瞬間、私は掴もうと思って伸ばした手を思わず引っ込めた。そのイワナが大きな眼をむいて、こちらを見ているのである。それもただの顔ではない。どう見ても人間の顔。それも薄気味悪い顔をしてじっと見つめているのだ。

 私は背中がぞくぞくし始め、しばらくの間、まるで蛇ににらまれた蛙のように、身体が動かなくなり、すくんでしまった。やっと我に返ってから、以前聞いた人魚の話を思い出した。

 ・・・頭は人間のように丸く、眼は前に付いており、上アゴは人間のようだが、下アゴだけは魚と同じ形をしていた。口は横に開きっぱなしで、それ以上開くことも、また閉じることも出来ない。体長は25センチくらいか。身体は異常に痩せており、アバラ骨の跡が丸見えで、色は背中が特に黒く、腹は鮮やかなオレンジ色をしていた。

 ・・・それから藪を越え、林を通り過ぎ、ガレ場を越えながら渓を下って帰る時の気味の悪さは今でも忘れられない。帰ってよく考えてみると、不思議なことばかりである。第一、あのような源流に何故一尾だけいたのか、開閉できない口で、どうやってエサを食べていたのか、どうもよくわからない。やはり本当に人魚なのだろうか・・・」

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