最近、私たちが愛するフィールドで差し迫った問題が続いている。私たちは自然保護団体ではないけれど、釣り人の一人として看過できない問題が「白神山地・赤石ダム問題」だ。

 ブラックバス問題や生物多様性を守る議論でいつも話題になるのは、「在来種の減少は、ブラックバスなど外来種の侵入定着だけでなく、開発などによる生息地の破壊」だという点である。バス擁護派でさえ「在来種の減少は、開発、環境汚染などによる生息環境の悪化」を第一に取り上げ、この問題に真っ先に取り組むべきだと主張している。ならば、議論だけでなく、在来魚の減少をもたらす生息環境の破壊・悪化に対して、釣り人たちの意見を申し述べ、少しでも改善する努力をすべきではないだろうか。

 釣り人であるならば、魚が住める川を望むはずだし、開発、環境汚染などによる河川環境の悪化は悲しむべきことである。日高横断道路や赤石ダム問題は、魚たちが棲めない河川環境の破壊・悪化をもたらす大問題でもある。

 20世紀の自然保護は、自然保護団体の独断場のような様相を呈し、釣り人たちはどちらかと言えば蚊帳の外だった。森林伐採、林道、堰堤ができるたびに、釣り人は苦々しい思いにかられ、年々減少する魚のことを、ただ呟くだけだった。21世紀は、釣り人たちが主体となって「南会津のブナ林伐採」を中止に追い込んだように、釣り人たちの参加で劇的な進化を遂げようとしている。白神山地・赤石ダム問題も、魚をこよなく愛する釣り人の立場で考え行動してほしいと切に願う。
赤石ダムは、白神山地の核心部を流れる赤石川の上流部(青森県鯵ヶ沢町)にあり、水力発電用(東北電力)として1955年に完成。

白神山地に源を発する赤石川(鰺ヶ沢町)、追良瀬川(深浦町)、笹内川(岩崎村)の3河川には、それぞれ赤石ダム、追良瀬堰堤、笹内堰堤がある。そこで蓄えられた水は地下トンネルで大池(岩崎村)に通水。大池第1、大池第2、松神の3水力発電所で利用された水は川に戻さず、直接、日本海に流している。

地元漁業者は「アユやサケ、ウグイ、マヤメの生息数が減った」という指摘があるほか、環境保護の立場からも放水量の増加やダム不要論を訴える声が上がっている。

このダムは発電用のみのダムであり、地域住民に対してはお金でしか貢献していない。20世紀の開発の時代は終わりを告げ、環境の世紀、生物多様性の保全が大きなテーマになっいる今日、その模範となるべき世界自然遺産・白神山地の水が下流にほとんど流されてないという現実は憂慮すべきことである。アユやサクラマス、アメマスが遡上する豊かな赤石川に復活させることが、地元流域住民と鰺ヶ沢町の願いであることは、言うまでもないが、自然を相手にする釣り人たちにとっても大きな願いである。

赤石川は、金アユが釣れる清流として全国から釣り人が集まる。しかし、赤石ダムの亀裂補修工事のために、ダムに堆積した土砂が下流に流れ、金アユが大量死したという。これは釣り人にとっても由々しき問題である。

鰺ヶ沢町の自然保護団体・赤石川を守る会は4月9日、東北電力が取水用ダムを設置している赤石川の水利権更新にあたり、地域住民の声を十分反映させるよう青森県に申し入れた。

県は、2002年1月、赤石川の放水量などを調査するため、地元関係者らで構成する協議会を設置した。水利権は2002年3月末に期限切れを迎えたが、県は東北電力に1年限りの暫定許可を与え、その間に検討を重ねることにした。

2002年8月29日、岩崎村にある東北電力大池系発電所に関する4回目の「水利使用に係る検討協議会」(会長 佐々木幹夫・八工大教授)が開催された。電力側は、7〜9月は、赤石川(鰺ヶ沢町)、追良瀬川(深浦町)、笹内川(岩崎村)から発電用の取水を減らし、現状の3倍に当たる毎秒0.89立方メートルを下流に放水すると提案した。(現在の放水量は赤石川で毎秒0.137トン、追良瀬川で0.126トン、笹内川で0.042トンから、それぞれ0.399トン、0.368トン、0.123トンに増える)

これに対し、委員の長谷川兼己鰺ヶ沢町長は「要望してきた内容に沿う数字」と評価しながらも「アユ放流の6月、サケ遡上の10月も放水量を増やしてほしい」と一層の放流増を求めている。

赤石川には、赤石ダムの他に第1号から第8号までの堰堤がある。それら堰堤には、魚道が設置されているものの十分機能が果たされているとはいいがたい。大池系発電所の水利使用に係る検討協議会の資料の「主な魚類の生息分布図」によれば、赤石川1号砂防堰堤の下流にアユ、サケ、ウグイ、上流にイワナと生息が分かれている。赤石川清流会などの地元の赤石川を守る運動の一環として、魚道の清掃により、赤石ダムまでアユが遡上することが確認されている。

水量が豊富な時期はまだいいが、渇水期には、魚道から流れ出る水量も不足し、魚類が遡上できなくなっているという。現状では、赤石ダム、機能が果たせなくなった砂防ダムの撤去が夢物語とするならば、少なくとも河口からアユが上流の生息地に向けて遡上する6月、ウグイやサケが産卵のために遡上する9月〜10月に魚道が機能するだけの水量が必要だ。鰺ヶ沢町長の発言は、地元漁業関係者からの意見を込み上げたもので、私たち釣り人も、鰺ヶ沢町の意志を尊重し、支援することが必要だ。

さらに水利権の更新期間も大きな問題だ。高知県では、四万十川中流にある四国電力の佐賀取水堰の水利権更新の際、5年間に限って水利権の更新を認めている。世界自然遺産に登録された白神山地の流域一帯は、自然保護の先進地として全国で最も注目されている地域である。さらに世論や行政の対応も大きく変わった。既に環境省はもちろんのこと、国土交通省や農林水産省では「魚のすめる川づくり」や「伝統工法の導入」「水田生態系保全」「生活排水処理の整備」「生物多様性の保全」など、完全ではないものの前向きの取り組みが行われるようになった。かつての開発と電源開発時代からみれば革命的な変化である。水力発電とは言え、こうした世論や社会の大きな変革に対応した河川環境の改善に取り組むことは社会的責務と言えるだろう。

 本来なら流域を変更する旧来の発電方式を改め、発電で取水した水は同一水系に戻す、あるいは赤石ダムや砂防ダムを撤去することが望ましい。しかし、これまでの電源開発の歴史と金銭的な補償、地域との度重なる検討経緯から推察すると、わずか1年程度の期間では、社会的合意が困難であるように思う。とすれば、水利権更新期間を従前の10年間にこだわることなく、短期間に限定し、その後の世論や自然・河川環境の変化に対応した検討・改善を加えていくことが不可欠であると考える。

赤石ダム問題に釣り人たちの声を届けましょう
ぜひ、釣り人たちの声を下記のアドレスへお願いします。
長谷川鰺ヶ沢町長宛E−mailアドレス: ajkanemi@net.pref.aomori.jp
青森県知事への提案:http://www.pref.aomori.jp/teian/index.htm
東北電力「環境問題への問い合わせ」:http://www.tohoku-epco.co.jp/toiawas/chikyu.htm

詳細は、東北自然保護団体連絡会議のHP・東北自然ネット

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送