初夏の山釣りPart1 初夏の山釣りPart2 山釣り紀行TOP
イワナと渓畔林、ナメ滝、シノリガモ、カワガラス、水の風景、バカにつける薬はない、横倉の湧き水と棚田・・・ |
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▲ブナ帯のイワナ谷を釣る イワナと渓畔林(ブナ帯の広葉樹) ブナ帯の渓畔林の豊かさ、水清き穏やかな流れこそ、「イワナ天国」を象徴する風景である 渓畔林周辺には、多種多様な陸生昆虫が生息している 晩秋になると、大量の落葉が渓流に落下する その落葉を食べるトビゲラ類やカゲロウ類、カワゲラ類などの水生昆虫は、 渓畔林の豊かさにほぼ比例して多い イワナは、これら水生昆虫と落下昆虫を主食としている ゆえに、イワナの魚影は、ブナ帯の渓畔林の豊かさと比例関係にあることが分かる ただし、目で見た風景だけでは判断できないことがある それは「水質」である・・・見た目がきれいでも、強酸性水ならば、生き物一匹生息できない だから、未知の渓流に入る時は、川虫の生息調査が必須である 川虫が生息していれば、水質に問題はないことが分かる さらに、川虫の採取量が多ければ、イワナの生息数も多いと推定できる |
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▲薄い着色斑点をもつニッコウイワナ 魚体は、花崗岩のように白っぽく美しい 側線より上の無着色斑点は鮮明で、測線下の着色斑点は薄い 頭部から背中にかけての斑紋は、若干虫食い状を呈している 腹部の柿色は、源流部に居着いている特徴を示している
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▲壮大なナメ滝 | |||||||||||||||||||
風光明媚なナメ滝で昼食をとることにする 「ニッポンの笑顔 秋田のイワナから!」 長谷川副会長は、仙台で震度6強の地震に襲われ、今だ余震が続き、今回が初参加であった 彼は、チョウチン釣りを得意とするが、大場所が続く本流釣りに苦戦していた ナメ滝のすぐ下流に、チョウチン釣りに最適な枝沢がある 「この枝沢に入ってみたら」と勧めると、飯も食べずに入っていった この枝沢は、滝までの距離は短く、藪沢だが、本流から遡上した良型のイワナが生息している ほどなく4尾のイワナを釣り上げ、満面の笑顔で帰ってきた・・・良かった! これぞまさしく、「ニッポンの笑顔 秋田のイワナから!」であった |
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初夏の光と水の透明度の高さを利用して、イワナを撮る このイワナの特徴は、白い斑点が大きく鮮明な点である 頭部から背中にかけて、虫食い状の斑紋は少ない |
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野生のイワナは、正面から撮影すると迫力がある しかし、イワナは撮影者を警戒して暴れるので、なかなかベストショットが撮れない たまたま、おとなしくポーズをとったので、その瞬間を逃さず何度もシャッターを切る 生きたエサを丸呑みする大きな口、激流を泳ぐスマートな体型、大きな尾びれに注目 やはり、源流唯一の山魚・イワナは、谷の風景に欠かせない美魚である |
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▲釣ったイワナは、こまめに網袋に入れてデポしておく 山釣りの楽しさ・・・単独と大人数の比較 釣り上がるパーティの人数が多くなればなるほど、警戒心の強いイワナは釣れなくなる 従って、最も効率よく釣るには、単独行の選択しかない だから、イワナの職漁師は、ほとんどが単独行であった しかし、山釣りは、職漁師でもなければ、イワナを釣ることだけが目的ではない 仲間の人数が多ければ、山での知恵や技術が多彩で、釣り以外の楽しみが広がる 山で困難に遭遇した時は、仲間の協働の力・技術が大きな威力を発揮する 人間を山で生きる野生動物に例えると、常に単独行動をとるオスグマではなく、 いつも群れをなして行動するサルに近い動物であることに気付かされる |
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▲谷沿いの残雪 | ▲残雪周辺は、春・・・ムラサキヤシオツツジの花 | ||||||||||||||||||
ヨドメの滝となっているナメ滝を境に、イワナの特徴が明確に異なっている 滝より上流のイワナは、斑点が大きく鮮明な点は同じだが、 測線より下の着色斑点が明らかに濃い |
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▲チョウチン毛針で釣り上げたイワナ 竹濱毛針を丸飲みしている ここで午後2時・・・左足不調の私は、ここで納竿し、早めに下ることにする ここより上流は、中村会長と長谷川副会長の二人に任せ、T氏と二人で下った 上流に向かった二人は、1時間ほどで良型8尾を釣り上げたという そのイワナの撮影ができなかったのが悔やまれる |
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釣り上がる速度なら問題ないのだが、いざ下り始めると・・・途端に激痛が走る 何度も休みながら、亀のような速度で下る もちろん、休む度に撮影だけは怠らない |
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▲シノリガモのメス 渓流で繁殖するシノリガモ シノリガモのメスは地味だが、目の後ろに白い円形があるのが最大の特徴 初夏は繁殖期で、山間の渓流にすみ、水生昆虫や岩の藻類を食べる 文献によると、繁殖が確認されているのは、北海道、青森、岩手、宮城、群馬とある なぜ秋田が入っていないのか・・・ 恐らく、繁殖地点が山岳渓流の奥地であるから、 沢登りや山釣りの技術を持った野鳥好きの調査員がいないからであろう 我々は、この周辺で、繁殖期にシノリガモを何度も見ている 前回、この沢の支流でオスとメスがツガイで泳ぐ姿も見ている しかし、撮影に成功したのは、今回を含めて二回だけである 本来、野鳥撮影には、500mmといった超望遠レンズが必要である 風景写真を主とするカメラでは、もともと野鳥撮影は無理 今回は、たまたま幸運に恵まれただけのことである 山岳渓流で繁殖する野鳥の生態を解き明かすには、野鳥マニアの人たちが、 「水清く岩美わしい処女的な自然の深みに入らなければならない」と思う ぜひそうした野鳥マニアが出てくることを期待したい |
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▲親子連れ6羽のシノリガモ(白神山地追良瀬川源流サカサ沢で撮影) 親子連れ6羽のシノリガモは、2003年8月、追良瀬川源流で撮影した写真である 夏の源流域に5羽のヒナを連れたメスがいるということは、ここで繁殖している証拠 イワナが群れるブナ帯の渓流は、シノリガモの繁殖に適している なぜなら、水は清く、岩美わしく、夏涼しく、水生昆虫や藻類の宝庫 子育て環境として、こんな素晴らしい場所はないからである |
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シノリガモは、近付くと流れに乗って楽々下り、次の淵で潜り、水生昆虫を補食したりしていた 足を引きづりながら、やっとシノリガモに追いつくと、またもや流れに乗って楽々下る その繰り返しで下る 「僕もシノリガモになりたい!」と心底思った ちなみに、滝があると、その時だけは、次なる淵へ向かって飛んだ |
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▲渓流に棲むカワガラス イワナ釣り師にとって、カワガラスは最も馴染み深い鳥である 沢沿いを猛スピードで飛び、竿にぶつかられたこともある すばしっこく、カメラを構えても逃げられてばかりだった 左足の激痛で、休み休み歩いたのが幸いし、何とか撮影に成功した 水面から出ている岩にとまり、尾をビクッビグッと動かし、沢沿いを一直線に飛ぶ 水中に潜り、主に水生昆虫を補食する つまり、カワガラス+シノリガモがいるということは、 「水生昆虫が豊富」で、かつ「イワナの宝庫」である証でもある |
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▲サワグルミ林 ブナやトチ、カツラと並び渓畔林の代表種・・・湿っぽい沢筋に生える 沢筋には、サワグルミの倒木も多いが、決して薪として使ってはいけない 湿っぽく燃えない木の代表だからだ・・・かつてはマタギ小屋の材として使われた |
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▲ホオノキ 風車のような大きな葉が特徴で、透過光で見上げると一際美しい 大きな葉は、食べ物を盛ったり、包んだり、ホオバ味噌などの料理に利用されている |
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▲釣りながら採取したタケノコ | |||||||||||||||||||
▲大きな倒木を切って平らな台をつくる・・・こういうことは、パーティの人数が多くないとできない | ▲刺身用のイワナ | ||||||||||||||||||
尺イワナと言えども、鮮度が落ちると、刺身には使えない 刺身用のイワナは、サイズが8寸〜尺前後で、かつ旬のイワナのみを使うのが鉄則である 鮮度がいいと皮がきれいに剥がれ、身もピンク色で美しい 塩焼きは、時間をかけてじっくり焼かないと食べられない 従って、すぐに食べられる刺身は、山釣り定食に欠かせない一品である |
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▲タケノコとフキの油炒め用 | ▲右はワラビ | ||||||||||||||||||
キャンプファイヤーのように高く燃える炎 飯を炊く飯盒を乗せるには、火力をアップさせる必要がある 焚き火の薪と薪の空間を空けようと動かせば、火の粉が舞い上がる その瞬間を6秒程度のシャッターで撮る 焚き火から遠く離した串刺しイワナが、まるで炎に包まれたような不思議な写真になった これでは、イワナが丸焦げになるのではないか、と思うだろう しかし、実際は、焚き火の遠赤外線効果で素晴らしい燻製に仕上がった 単なる塩焼きイワナではなく、燻製に近い状態まで仕上げるには、 串刺しイワナを焚き火から離し、焚き火の火力を強く、かつ一晩じっくり燻すのがベストである その完成品が、右下の写真である 家庭で作る燻製と違って、野趣あふれる最高の燻製ができ上がる |
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イワナは、なぜ人跡稀な源流域に生息しているのか 水は冷たく清らか、岩も森も美わしく、多種多様な食べ物に事欠かない 同種の魚類は皆無で、食物連鎖の頂点に君臨できる さらに、最大の外敵である釣り人や鳥類から身を守りやすい でも、イワナには足がないから、落差の大きい滝は上れない しかし、釣られはしたものの、運良くマタギや釣り好きの人たちに、 滝の上に移植放流されたお陰で、生息域を拡大できたのである 上記の問いに対する答えには、「イワナと人の自然誌」が隠されていることを忘れてはならない 我々は、イワナに導かれて源流の素晴らしさを知った また、人間からイワナを見るのではなく、イワナから人間を見る世界観も教えられた |
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ブナ帯文化 ブナの森の恵みに依存した専業的山棲み・・・ 木地屋、炭焼き、マタギ、鷹匠、山漁(イワナ職漁師)、ゼンマイ&マイタケのプロらは、 ブナ帯文化を象徴する生業である これらブナ帯狩猟漁労採集文化とブナ帯農耕文化を区別する論文もみられるが、 現実には、専業的山棲みと言っても、生業の合間に農耕も行っている例が圧倒的に多い 従って、ブナ帯文化は、ブナ帯狩猟漁労採集文化と農耕文化が融合した 複合的な文化であると考えるのが妥当であろう |
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奥の岩の上に乗っている流木に注目・・・ 恐らく、大洪水が起き、あの高さまで水位(2m以上)が上昇した証であろう その洪水の恐ろしさを想像すると、やはり「想定外」と言わざるを得ない こういう想定外の洪水は、事前にキャッチし回避する以外に命の保証はない |
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▲イワナ遊ぶ渓流は「水の風景」の宝庫 両岸からブナ帯の渓畔林が、谷に迫り出している この緑の回廊は、強い陽射しを遮り、涼感たっぷりの空間を形成している 花崗岩の滑らかな岩盤には、清冽な水しぶきを浴びて緑の苔が生え、 清冽な白い瀑布は、左右に蛇行しながら岩を滑り落ちるように流れ下る まさに水と緑が織り成す造形美の傑作と言えるだろう |
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▲花崗岩の天然水路を走る「美しき水」 僕にとって「命の水」は、風景の源流である だから、山釣りでは、三脚を持参し、必ず「美しき水の風景」を撮る カメラのファインダーを覗いているだけで、清き水に心が洗われる ブナ帯の自然の素晴らしさは、やはり「美しき水」である その水の豊かさを象徴する生き物の筆頭が・・・「イワナ(岩魚)」である |
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三日目も快晴 帰りも休み休み歩くしかなかったが・・・ それを哀れに思ったのか、シノリガモがお供をしてくれた 休むたびに、清流に浮かび涼しげなシノリガモを観察する 巧みに淵の中に潜っては、水生昆虫を補食していた 僕が動き出すと、シノリガモも流れの中心に乗って流れ下る 同情されているのか、それともバカにされているのか いずれにしても、シノリガモから元気をもらったことは確かである |
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仲間は、左岸の杣道を歩いていた 彼らにシノリガモの存在を教えると・・・ 右の写真のとおり、水中に潜って水生昆虫を補食するシーンを食い入るように見つめていた |
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▲ミズナラの葉 | ▲ブナの葉 | ||||||||||||||||||
▲トチノキの葉・・・まもなく花が咲くだろう | ▲ヤマモミジの葉 | ||||||||||||||||||
K沢が合流する地点から、右岸の杣道はしっかりしている 次の昼飯を食べる予定の枝沢合流点まで約1km 沢を歩く方が左足への負担が軽いと思い、一人、歩いたこともない本流を下った 澄み切った青空、深い緑、透き通るような流れ・・・ エゾハルゼミの大合唱は途切れることなく鳴り響く 仲間が30分で辿り着いた合流点まで・・・何と3倍の1時間半近くもかかった 車止めに辿り着く頃は、ほぼ限界に近く這うような状態であった それでも後悔は一切しない・・・それどころか、気分だけは爽快であった 長谷川副会長がワラビを採りたいというので、帰りにワラビ山を覗く この時、ワラビを採る気は当然ゼロであった しかし、サンダル履きで林道筋を歩くと、やたら生えているではないか ワラビの誘惑に、限界に達した左足のことはすっかり忘却の彼方へ飛んでいった 再び渓流足袋に履き替え、ワラビ山に突入した やはり、「バカにつける薬はない!!」 |
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今年の夏は「クール旅」・・・白神山地・藤里町横倉の湧き水と棚田 | |||||||||||||||||||
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