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イワナ釣りの基本、テンカラとチョウチン毛針考、毛針を丸呑みするイワナ、創造的な釣り、タケノコ、ワラビ・・・
この谷は、昼でも薄暗い
苔岩の階段が連なる滝壺には、幽谷の主・イワナが潜む
初夏・・・原始庭園に木漏れ日が射し込むと、

羽化したばかりの羽虫たちは、滝の飛沫周を無数に飛び交い始める
イワナはたまらず岩陰から飛び出し、飛沫周辺の羽虫を貪り食う
毛針シーズンの到来である
▲原始庭園に棲む美魚

▽毛針もエサもイワナを釣る基本は同じである
イワナ釣りの基本は、
@イワナに気付かれないようにアプローチすること
A食い筋に流すこと
B食い気を誘うこと
C足で釣ること


この四点セットの技術さえあれば、9割以上釣ったも同然である
▲渓畔林の若葉・・・緑の透過光は、豊潤な谷の空間を優しく照らしてくれる
この木漏れ日が、豊かな苔を育み、原始庭園の幽深な美を演出してくれる

天然イワナの生息数は、こうした広葉樹の渓畔林の豊かさ、
日帰りの釣り人を容易に寄せ付けない奥深さにほぼ比例する
(林道や堰堤など人工構造物が一切ない沢であることは言うまでもない)
だから、イワナを追うには、経験的にそうした沢をいくつ知っているかに尽きるだろう
車止めから沢沿いの杣道をしばらく歩き、誰もいない無人の谷に降り立つ
とうに雪シロは終わり、水量は半分以下に減水していた
イワナも丸見えだが、釣り人も丸見え・・・釣法も変えざるを得ない
▲竹濱毛針に食いついたイワナ

▽信ずる者は必ず釣れる

毛針は疑似餌だから、技術レベル、季節、天候、時間帯によっては全く釣れない場合もある。
そんな時、自分の未熟な技術はさておき、まず毛針を疑う。
色が合わない、形が違う、毛針が小さくアピール度が低いのでは等々。
疑似餌を疑い始めたらきりがない。

さらに、イワナは釣りきられてしまったのでは・・・
先行者がいるのでは・・・
果ては毒流しにでもやられたのか?と、次から次へと疑念が湧き上がる

こうした釣れない最悪の連鎖にはまると、不思議なほど釣れないものである
そして誤った結論・・・イワナ釣りは、やっぱり本物のエサに勝るものなし
こんな時、エサ釣り師は我慢できず、毛針にエサをつけて釣りはじめる


しかし、一方○○毛針で、自分の固定観念を打ち砕くような爆釣を経験すると、
その毛針は絶対的な存在となる。
疑似餌にとって、この絶対的信頼が極めて重要である
こうなれば毛針に対する淡い期待から「毛針で必ず釣れる」信念へと質的転換が起きる

サブザックから絶対的信頼をおく竹濱毛針を取り出し、1号のラインに結ぶ
▲暗い谷の滝壺
▲渓畔林の一つ・ブナ ▲滝壺の潜む真っ黒なイワナ ▲毛針が上顎に掛かったイワナ
早朝は肌寒く、まだ羽虫の姿が見えない
予想どおり、毛針を追うスピードは鈍い
加えて、エサ釣りの早合わせのクセが抜けず、立て続けにバラしてしまう

やっと釣り上げ、岸に引きずり込んだイワナを撮影しようとカメラを構えた
イワナは危険を感じたのか、ムクッと起きあがり猛スピードで流れの中に走っていった
慌てて竿を握ったものの、浅掛りの毛針は外れて逃げられてしまった・・・思わず苦笑い

以降、毛針釣りの勘が戻った
立て続けに3尾をキープしたところで遅い朝食をとる
ここまでは、毛針を丸飲みするイワナは皆無だったが・・・
▲朝飯前の釣果3尾は生かしたままデポしておく ▲毛針を丸呑みしたイワナその1
やっと狭い谷にも強い光が射し込む
初夏の強い陽射しを浴びて、清冽な水も渓畦林の緑もキラキラと輝きはじめた
大岩から落下する飛沫周辺を眺めていると、小さな羽虫が無数に飛び交っていた

オニギリをほおばりながら、絶好の毛針日和に独りほくそ笑んだ

羽虫が飛び交う小さな壺に毛針を振り込む
イワナは何の疑いもなく水面を割って果敢に毛針を追い始めた
岸に寄せると、毛針が見えないほど丸飲みしている・・・まるでエサ釣りでもしているような錯覚に陥る
▲原始庭園

▽向こう合わせの毛針釣り

瀬で一匹釣り上げ、移動しようと思った時である
目の前のトロ場に、水面を見つめて定位しているイワナが丸見えだった
足を止め、眺めていると、水面を飛び交う羽虫に夢中で、接近者には全く気付いていない
羽虫が水面スレスレにきた瞬間を狙って盛んに補食しているではないか

ならば、毛針なら一発だろう
イワナの目の前に毛針を垂直に落とす
イワナはすぐさま水面を飛び出し毛針をくわえ反転した

それでもまだ合わせない・・・黄色のラインが走り、竿先が震える・・・
こんな極端な「遅合わせ」でもイワナは疑似餌を吐き出さない
だから、イワナの毛針釣りは、「向こう合わせ」でも釣れる

つまり、マニュアル本に書いてあるような面倒くさい合わせのテクニックは一切不要である
ただし、合わせのタイミングが遅すぎて、格好いい釣りとは言い難い
しかし、格好など二の次である
▲毛針を丸呑みしたイワナその2(岩下に隠れていたニッコウイワナ)

▽岩下に隠れているイワナを釣るには

落下する白泡の岩下が気になった
エサならば、その岩下に送り込みイワナを釣り上げるのだが・・・
毛針にはオモリがない・・・岩下に隠れているイワナをどう釣るか

自然の流れを利用する以外に手はない
大岩を滑るように落下する水に、毛針をぶつけるように振り込む
毛針は、落下水に乗って白泡の渦から岩下へと自然に送り込まれる

イワナが毛針を食う瞬間は見えないが、目印が走り、竿が弓なりになる
上の写真のとおり、毛針を丸呑みしている・・・わずかに茶系のハックルが口先にはみ出している
暗い岩下に隠れていたせいか頭部はいまだ黒くサビついている
腹部の橙色と測線下の着色斑点が鮮やかで、源流イワナらしい美しい個体に満足
▲毛針を丸呑みしたイワナその3(この沢では珍しいアメマス系のイワナ)
▲毛針を丸呑みしたイワナその4(瀬尻から水面高く飛び付き、丸呑みにしたイワナ)

■テンカラとエサ竿利用の毛針比較

イワナに気付かれないように釣るには、できるだけ竿長+仕掛けの全長が長い方が有利である。一方、障害物を避け、正確に「食い筋に流す」、「食い気を誘う」操作をするには、できるだけ短い方が扱いやすい。その妥協点がテンカラの経験知によってマニュアルに記されている。

▽障害物の多い源流&沢用

伝承テンカラの基本寸法・・・竿3.3m〜3.6m+テーパーライン3.3m〜3.6m+ハリス1〜1.7m=7.6m〜8.9m
エサ竿利用のチョウチン毛針・・・竿5.4m〜6.1m+ライン2m〜2.5m=7.4m〜8.6m

竿長+仕掛けの全長を比較すれば、伝承テンカラとチョウチン毛針はほぼ同じである。つまり、ポイントまでの距離に差がないことを意味する。

次に、どちらが正確に「食い筋に流す」、「食い気を誘う」操作が可能かと言えば、チョウチン毛針が正確かつ自在に毛針を扱うことができる
▲毛針を丸呑みしたイワナその5
(喉の奥まで丸呑みしたイワナ・・・それでも簡単に外せるのが毛針のいいところ)

▽中小河川(開けた本流)
テンカラ・・・竿3.3m〜3.6m+テーパーライン4.5m+ハリス1.7m=9.5m〜9.8m
エサ竿利用の半チョウチン毛針・・・竿6.1m+ライン3〜3.5m=9..1m〜9.6m
エサ竿利用のテンカラ・・・竿4m〜5.4m+テーパーライン4.5m+ハリス1.7m=10.2m〜11.6m

開けた本流であっても、ポイントまでの距離に差はほとんどない
要は、正確なキャスティングさえできれば、どちらでも可能である
エサ竿利用の半チョウチン毛針は、針にエサではなく毛針をつけたもので、
エサ釣りの延長線上で毛針釣りを楽しむことができる

また、ラインを標準仕掛け前後の長めにする場合は、小さなウキを利用すれば飛ばしやすい
また、場合によっては、毛針の上に小さなオモリをつけ、毛針を沈ませ、
エサと同様の操作で誘いながら釣る方法もあるだろう

要は、固定観念を捨て、釣り場の状況や自分の技術レベル、道具に合った釣り方を選択し、
さらにオリジナルな工夫を加えることに尽きるだろう
▽創造的な釣り
私は、テンカラの予備竿を持たない・・・通常、予備竿はエサ竿5.4m〜6.1mである

想定外その1・・・テンカラ竿を折ってしまった場合はどうするか
釣りを諦めるのも一つの方法だが、私はすぐさまエサ竿を代用して毛針釣りを続けるだろう
その際、風が上流から吹き込み、キャスティング不能に陥る場合もありうる
そんな時は、玉浮きやガン玉をつけてキャスティングを試みるだろう

想定外その2・・・突然大雨・濁流に見舞われた場合はどうするか
そんな時、線で釣るテンカラやルアーは無力に等しい
すぐさまエサの点釣りに切り替えるだろう

かつて、北海道日高の山中にいた時は、エサ釣りの道具は一切持参していなかった
まさに最悪のケースだった
そこで考えたのがルアーの点(穴)釣り、ルアーをオモリにした毛針の点釣りを試みた
もちろんニジマスとイワナがおもしろいように釣れた

想定外その3・・・持参の竿を全て失ってしまった場合はどうするか
若い時ではあるが、滝壺に落ちた際、予備竿も含めて全て失ったことがある
その時は、棒切れにエサ釣りの仕掛けを結びイワナを釣った
アタリの感触はゼロだが、そろそろ釣れているだろうと上げれば釣れていた
楽しさは半減するが、諦めるよりはましだろう

こうした想定外のハプニングに遭遇すれば、釣りの固定観念は捨てざるを得ない
今残っている道具や仕掛けをどう使い、いかにして釣るか
これこそ創造的な釣りの面白さだと思う
▲清流に生かしたままデポしたイワナ

昼前だが、釣果は申し分なし・・・竿を納める
煌めく水をコッフェルに汲み、お湯を沸かしてミニカップラーメンを作る
それを汁にパンとおにぎりをほおばる
快晴に加え、狙い通りの毛針釣りに、充実感が五臓六腑に染み渡る

キープしたイワナは、野ジメにし、内蔵と背中の血合いをきれいに洗い流してから
「新聞紙」にくるみ、サブザックの一番下に背負う
「新聞紙」にくるめば、温度の高い夏でも意外と鮮度を保つことができる
だから「新聞紙」は、決して忘れられない必需品の一つ
下りは、カメラに三脚をセットし、スローシャッター撮影を繰り返しながら下る
苔は、水位変動の激しい沢や強い陽射しがまともに射し込む開けた沢には生えない
豊かな渓畔林と落差の激しい階段状の沢は、苔が生えた大岩が連続し美しい

しっとり濡れた苔岩の間を白い瀑布が美しい軌跡を描く
いくら美しい原始庭園でも、1秒程度のスローシャッターで撮影しないと見た目と同じ絵にはならない
▲魚止め付近の流れ
底石まではっきり見える透明度・・・故にイワナも丸見えである
ということは、釣り人も水中のイワナに丸見えということ
従って、イワナに気付かれないようにアプローチするには、殊の外難しい
▲源流部の美魚
汚れのない聖なる水が、陽射しを浴びてキラキラと輝いていた
イワナを野ジメにしたものの、煌めく流れを借景にシャッターを押してみた
やはり、イワナの腹部の柿色が鮮やかに浮かび上がり美しい
岩の間を縫うように落走する流れは、岩にはじけて美しい飛沫の軌跡を描く
マイナスイオンと聖なる飛沫を浴びて、奥へ奥へとイワナを追う楽しさは格別である
それは、「快感」に近いと言った方がむしろ正しい
ふと、右岸の笹藪を覗くと、クマがタケノコを食べた皮の残骸があった
早朝、クマは谷沿いの笹藪で大好物のタケノコを貪る・・・その痕跡は明瞭なクマ道となっている
クマたちは、笹藪に次々と生えてくるタケノコ前線の移動とともに峰に向かって移動する

大好物のタケノコが終わると、再び沢に下り、エゾニュウやフキなどを食べ恋の季節を迎える
さて、今頃、クマはタケノコを腹一杯に食べて昼寝をしているはず・・・
クマには失礼だが、ザックから厚手の袋を取り出し、笹藪に飛び込む

やや長刀になりかけてはいたが、柔らかい先の部分を折り採りながら藪を徘徊する
あっという間に1時間余りが過ぎた・・・それにしてもタケノコは重くかさばる
家に帰って処理すれば、2/3余りは捨てるのだが

今度は、小沢が流れ込む湿地に、ミズの大群生が目に止まった
赤くて太いものを間引くように採取する
どうも食える物に目が向き、遅々として前に進まない・・・
お陰でサブザックは、破れんばかりに膨らみ、荷の重さでヨレヨレになりながら車止めに辿り着く
家に着いたのは、午後5時半・・・山の幸を採取すれば、その後処理が大変だ
しかし、今年の初物・タケノコ汁は、その苦労の何倍もの美味しさとなってかえってくる
タケノコは、やはり味噌汁との相性が良い
採れたて独特の風味と香り、シャキシャキした歯触りは絶品である
▲開いてしまったゼンマイ ▲残雪とゼンマイ ▲初夏の花:シラネアオイ
▲伸びてしまったワラビ
▲ワラビは山菜の中でも人気はトップクラス ▲アイコとワラビのおひたし
ワラビは、林道沿いの伐採跡地を探せば、簡単に採取できる
誰もが気軽に山菜採りを楽しめる代表格
シャキシャキした歯触りとヌメリが美味しく、食べ始めると止まらない

アイコやシドケは日持ちしないが、ワラビは比較的日持ちのする山菜である
簡単に大量採取、美味しい、日持ちの三拍子が揃っているから人気が高い
沢には、「美味しい水」が無尽蔵に流れている
しかし、谷には道と呼べるようなものはないに等しく、しいて言えば「けもの道」ぐらいだ
だから谷は、いつも無人境に等しく、静かで清々しい
そんな「原始の道」を歩いていると、身も心も生き生きとしてくる
渓谷美を鑑賞しながら沢を歩くだけでも楽しい
加えて、イワナを釣る、山菜を採る、きのこを採る、秘境の花園を辿って山の頂に立つ
写真を撮る、記録する、創造的な釣りを考える・・・山釣りの楽しさは無限大である

だから何時間歩こうと、不思議と疲れを感じない
それは眠っていた野生の感覚、美の感性が一斉に目を覚ますからだろうか
気がつけば、年齢を重ねるたびに体はヨレヨレ
しかし、この快感は何なのか・・・理屈じゃないことだけは確かである

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