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早春のイワナ、キセキレイ、シジュウカラ、カタクリ、イチゲ、エゾエンゴサク、バッケ、ヤマワサビ、ギョウジャニンニク・・・
2009年4月上旬、雪解けの早い日本海側の渓流は、早くも早春の草花が満開に咲き誇っていた
長い冬の寒さと飢えに耐え、雪代とともに動き出すイワナたち・・・
雪解けの林床に降り注ぐ早春の光を一杯に浴びると、一斉に芽を出す草花たち・・・
雪国の春の素晴らしさは、待ちに待った生き物たちの生命が爆発する瞬間である
▲映画「釣りキチ三平」パネル展
3月20日、この映画を観たら、無性にイワナを釣りに行きたくなった
秋田の渓流解禁は、その翌日の3月21日・・・でもジッと我慢していた
なぜなら、山野草と山菜が芽を出す時季じゃないと、渓流の素晴らしさは体感できないからだ
▲早春のイワナ
いつものことだが、年の初めに釣りあげたイワナの感触は胸が高鳴る
ましてや、今年は、映画「釣りキチ三平」の感激が残っていた
まるで釣りキチ三平になったつもりで、夢中でイワナを釣り、撮影を繰り返した

入れ食いが続き、目的の源流に辿り着く前に、持参したエサがなくなってしまった
のんびり昼食をとった後、渓流を下りながら山野草の撮影と早春の山菜採りを楽しむ
▲ブナの芽吹き ▲キセキレイ ▲シジュウカラ(オス)
毎年、崖崩れで通行不能になる林道を歩く
下流のブナは、早春の柔らかい陽ざしを浴びて、枝先を茶褐色に染める芽吹きが始まっていた
枝沢から溢れ出た雪解け水が林道を流れる水辺には、黄色が鮮やかなキセキレイが忙しく昆虫を探し回っていた

汗をかき始めたころ、頭上から「ツーピー、ツツーピ」とうるさいほどの鳴き声が聞こえてくる
枝から枝へと飛び回っては、鳴き続ける
黒い頭と胸の黒い帯は、まるでネクタイをしているように見えるシジュウカラだった
林道を標高差100mほど上ると、対岸の斜面に林立するブナは、白骨のような寒々しい光景に一変する
林道と沢との落差は約100m、斜面が緩くなった所で沢に向かって下る
芽吹く前の渓畔林は裸同然で、明るく、遠くまで見通せる
春の陽光は、木々の枝先から熱を根元に伝え、雪を解かし始める
その雪解け水は、身を切るほどに冷たい・・・この時季のイワナはまだ瀬に出てこない

はやる気持ちを抑えながら、仕掛けを作る
流れの早い瀬やザラ瀬、白泡渦巻く落ち込みは全てパス
流れが緩い深淵、枝沢が合流する地点、流木の下などの早春のポイントを狙って釣る
▲黒くサビついた早春のニッコウイワナ
ポイント毎に、面白いほどイワナがエサを追う
連日好天が続いているせいだろうか・・・水温は低いものの、イワナの活性度は極めて高い
7寸前後の小物も多く、写真を撮ってはリリースを繰り返す
▲全身が黒くサビついたイワナ
こうした全身真っ黒なイワナは5尾ほど釣れた
朝飯を食うのも忘れ、次から次へとイワナを釣りあげる・・・これじゃ、まるで釣りキチ三平だ
漫画や実写版映画と違う点は、釣り上げたイワナの撮影を怠らない点だけであった
渓の岸辺で撮影したイワナ画像

残雪の上で撮影したイワナ画像
黒くサビついたイワナを際立たせて撮影するには、白い雪の上で撮るのが一番
イワナを引き寄せてから流れの岸辺で撮影しようとすれば、
イワナはしばらく暴れまくり、撮影のポーズをなかなかとってくれない

冷たい雪の上に置くと、イワナは意外とおとなしくなる
それでも横にして撮影しようとすれば、むくっと起き上がって雪の上を歩き始める
イワナの様々な動きを撮影するには、雪の上は絶好の場所である
▲クレソンとイワナ
深淵の1ポイントで4尾も釣り上げると、さすがにイワナを釣るのに飽きてきた
時計を見ると午前9時30分・・・エサも残り少ない
日当たりのよい河原に座り、遅い朝食をとる

コンビニで買った粗末な食事だが、最高に美味い
見渡す限り続く自然庭園を借景に、雪代のマイナスイオンを浴びているからだろうか
小さなポイントでも、イワナは確実に釣れるが、小物が多い
残り少ないエサでキープサイズのイワナを釣るには、大場所を攻める方が確率が高い
早春の渓流の風景を撮りながら、足早に歩く
▲イワナを流れに泳がせながら撮る
イワナを流れに泳がせながら撮るほど難しいものはない
だから、こういう面倒くさい撮影は、釣りに飽きてこないとなかなか実行できない
しかし、底まで透き通って見える渓流の透明感とイワナの自然な姿が撮れるだけに、この作業は欠かせない
▲釣り上げたイワナを浅瀬で撮る
光が当たる浅瀬や水溜まりにイワナを寄せて撮る
左の写真は、イワナが落ち葉に頭を隠し、おとなしくなった瞬間を撮る

■体力の衰えとデジカメ水没
半年間に及ぶ運動不足と、連日続いた飲み会、そして押し寄せる老化・・・
体力がかなり弱っているハプニングが起きた
雪代で増え始めた早瀬を渡る時、弱っていた足がよろけ流れに転倒してしまった

その際、首にぶら下げていたデジカメに大敵の水をかけてしまった
こういう場合、素早い処置をしてもまず正常に作動しない
万が一と思い・・・すぐさま電池とSDカードを抜き、乾いたタオルで丁寧に水滴をふきとる

光と風通しの良い河原にデジカメを置き、祈るように乾かす
その間、竿だけ持って上流へ・・・
イワナを5尾ほど釣り上げると、持参したエサが完全になくなってしまった

これから山野草や山菜の写真を撮りたかったが、デジカメが作動しないことにはどうにもならない
濡らしたデジカメが十分乾くまで、のんびり昼食をとる
デジカメが完璧に乾いた頃、電池を入れて作動を確認・・・なんと奇跡的に作動した
早春の草花と山菜
▲雪解けの斜面に顔を出したトリカブトの若芽
これ以降の写真は、水没したデジカメが復活した後に撮影した画像である
復活した嬉しさで、渓の風景や山野草、山菜を撮りまくった
▲残雪とエゾニュウの若芽 ▲ウバユリの若芽
▲エゾエンゴサク
左の花は青みの強い青紫色の花、右の花は赤みが強い
稀に白花もあり、花の色は多様性に富む草花の一つ
▲湿地に顔を出したヤマワサビの若葉 ▲雪解けの斜面に顔を出したバッケ(ふきのとう)

この時季のイワナは、日帰り釣りで唯一、イワナの刺身が食べられる
釣り上げたイワナの旬を保つには、保冷タイプのビクと車にはクーラーを必ず準備する
イワナの刺身のツマに欠かせないヤマワサビとつぼみ状のバッケを採りながら下る
▲春を告げるカタクリの群落
海が近い森は、最も雪解けが早い
毎年、毎年・・・この花の群れを見ると、北国にやっと春が訪れた喜びをいち早く感じる取ることができる
雪解けとともに咲く「春告げ花」は、カタクリ、キクザキイチゲ、エゾエンゴサクが代表的な草花だ
▲明るい森の斜面を紅紫色に染めるカタクリの群落は、一際美しい
斜面に寝そべり、ローアングルで何度もシャッターを切る
百花それぞれが百色の姿で咲くカタクリ・・・何度撮っても飽きることはない
▲手前の黄花はフクジュソウ ▲キクザキイチゲとカタクリの混生
▲キクザキイチゲは、光に向かって開いた白花と翼を広げたような葉姿は、春の訪れを体全体で喜び、群落全体が、まるでダンスを踊っているように見える ▲早春の味として、少しだけ摘む・・・山菜特有のクセはなく、淡白だが、サッと湯がいて食べると、早春の味がする
▲ギョウジャニンニク(アイヌネギ)の群落
一日中、山と谷を歩きまわり、足腰は既に限界に達していた
しかし、早春の山菜の代表・ギョウジャニンニクの誘惑には勝てず、最後の力を振り絞って目的の斜面を駆け上がる
やっと辿り着いたギョウジャニンニクの畑に座り込み、一本一本、根元をハサミで切り取る
▲ギョウジャニンニクは、紛らわしい毒草と混生している。手前がギョウジャニンニク、奥に生えているのは毒草なので注意。 ▲ギョウジャニンニクは、カタクリとも混生している
葉が一枚しかつけないものと、二枚のものがある
茎が太く、葉が二枚出るまでには、7〜8年もかかるという
■早春の山の味を楽しむ
身が引き締まったイワナの刺身と辛味が凝縮されたヤマワサビ、定番の塩焼き、二度揚げしたイワナの唐揚げ
寒ければ寒いほど強いニンニク臭を放つギョウジャニンニクと豚バラの油炒め、
春の苦みと香りが詰まったバッケ味噌、淡白なカタクリのおひたし・・・

今年の初釣りは、例年になく疲れ果て、体全体がバラバラとなった
それでも、最高の贅沢・山の幸定食で報われた
それが私にとって、唯一の元気の源であるであることを、しみじみと感じる早春の味である

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