初夏の桃源郷Part1 初夏の桃源郷Part2 山釣り紀行TOP


苔のマリモ、フキ、サワモダシ、ブナの森、シラネアオイ、イワナ寿司、ヤマワサビ、源流イワナ、クマの足跡、ゼンマイ、美しきゴーロ滝・・・
▲初夏の源流を彩るシラネアオイ
二日目・・・朝は小雨が降っていたが、奇跡的に快晴
二班に分かれて待望の源流探検へ
上の写真は、巨岩の上に咲き誇るシラネアオイの群落・・・初夏の陽射しに煌めく花の美は圧巻だった
シラネアオイが咲く季節は、ゼンマイ採りのシーズンなのだが、残念ながら旬を過ぎていた
▲源流のイワナ
連続する滝を大きく高巻き、久しぶりに秘渓の源流部を探る
水量こそ少ないものの、人跡稀な源流部はブナの原生林
クマの密度も高く、サルでも釣れるイワナの楽園だった・・・丸々太った魚体は、イワナの旬を物語る
午前7時半頃・・・一日遅れて小玉さんがやってきた・・・これで7名全員がそろった
今日のメインイベントは、刺身サイズのイワナを釣り、昼は初のイワナ寿司に挑戦することだ
まずは焚火で5合の飯を炊き、「すしのこ」で酢飯を作る
▲美しき水と苔のマリモ
密生する苔の塊を「マリモ」と呼ぶ
秋田県にかほ市の獅子ケ鼻湿原「鳥海マリモ」が最も有名で、国の天然記念物に指定されている
上の写真は、急斜面から湧水が噴き出す急階段の小沢・・・

見渡す限り一面の岩を分厚い苔が覆い、その間を美しき水が落走する光景は圧巻だ
苔の周りには、食用植物のミズやヤマワサビが群生している
もちろん水は冷たく、コップに汲んで飲めば五臓六腑に沁み渡る名水である
▲深い原生林と急階段のゴーロ連瀑帯
森林美、渓谷美を鑑賞しながら急な岩場を攀じ登る
日帰りでは到底辿り着くことができない人跡稀な源流部をめざす

「イワナ釣りは足で釣る」・・・だからひたすら歩く・・・歩いた分だけ目的のイワナは必ず釣れる
ただし、イワナが生息しない谷をやみくもに歩いても徒労に終わる
つまり、山釣りには、経験と知識、確かな自然観察力による釣り場の選定が第一である
▲秋田フキ
フキの旬は、5月中旬〜6月の初夏の若い茎
青フキと赤フキがあるが、青フキの方が柔らかく美味しい
特に湿った日蔭のフキは、茎を切ると中の空洞から水が滴り落ちる極上品で「ミズブキ」などと呼ぶ

大きい鍋に入れたフキを焚火で湯がく
湯がいたら種もみ用の網に入れて渓流水にさらす
皮をむき、適当な長さに切って油炒め、煮物などに利用する
▲またまたサワモダシ(ナラタケ)
もうキノコは充分なのだが、採らずに通り過ぎることができない
これは、採集の遺伝子が騒ぐせいだろうか・・・ともあれ楽しいキノコ採り
▲流木滝 ▲伸びたアザミは茎を利用する・・・湯がいてから皮をむき、適当な長さに切ってマヨネーズをつけて食べると美味い
▲大高巻き
二又を過ぎると、谷は急に狭くなりゴルジュとなる
そのゴルジュの奥には、突破が困難な二つの大滝が懸かっている
かつてはイワナ止めの滝であったが、釣りの好きな杣人が滝上に移植放流したイワナの子孫が生息している

そのイワナを追うべく、右岸の小沢を落差70mほど登り、平坦なブナの森に出て、滝上に下りる大高巻き開始
この滝上には、地元のゼンマイ採り・キノコ採り兼イワナ釣りの野営道具一式がデポしてあった
しかし、そのデポ品がクマにいたずらされるらしく、今は回収されてその痕跡もなくなった
▲苔生すブナの巨樹
ブナ林の高台に出ると、樹齢200年〜300年ほどの巨樹が林立している
見上げると、全身分厚い苔の衣をまとい、まるで山の神が宿っているような迫力がある
世界自然遺産・白神山地には、私たち人間のルーツ・縄文の森の原風景が広大に残っているが、
ここでも同じような縄文の森・ブナ原生林を見ることができる
▲ブナの森をゆく
小沢の窪地を登りながら、森を見上げる
360度、ブナ、ブナ、ブナ・・・に覆われている
ブナの若葉は、初夏の光を浴びて日増しに緑が濃くなってゆく

その森の頭上からエゾハルゼミの大合唱・・・
「ミョーキン、ミョーキン、ミョーキン、ケケケケケケー」とうるさいほどの鳴き声が降り注ぐ
朝、テン場を出る時は雨が降っていたが、一転、エゾハルゼミの大合唱が聞こえるほど好天に恵まれたのは有難い
▲源流部に残る残雪 ▲雪解けの遅い斜面に咲く早春の草花・ニリンソウ
旧イワナ止めの滝を境に、まるで別世界・・・風景は一変する
流れも意外に細い・・・我々に気付いたイワナは、瀬尻から落ち込みに向かって盛んに走る
▲盆栽のように見事な群生を形成していたシラネアオイ
シラネアオイの根元を良く見ると、ちょうど食べ頃のウルイも群生していた
何度も見ている花だが、天然盆栽のような自然の造形美は珍しい
逆光と順光で何枚もシャッターを切る
▲イワナ寿司用のイワナを釣る
時計を見れば、既に昼近い
刺身用サイズを4尾ほど釣り上げたら、竿を納めてイワナ寿司を作るとの約束をして釣り開始
しばらくザラ瀬が続く区間は、イワナに丸見えで苦戦・・・それでも30分ほどで5尾をキープ
▲秋田・源流釣友会初のイワナ寿司
渓友亭のように上手く握れなかったが、素材は釣り上げたばかりの旬のイワナだ
イワナを野ジメにしてから、皮を剥ぎ、三枚におろす・・・おろした具を三等分に切ってネタを作る
三人三様で握ったために形が不揃いなのが残念・・・見た目こそ美しくないが味は一級品だった

釣り人にしか味わえないイワナ寿司・・・やはりイワナに敬意を表する最高の料理、最高の味であった
この味と技を伝授していただいた渓友亭の皆さんに感謝して・・・ゴチソウサマでした
▲ヤマワサビの白花
滝下流のワサビは、全て花が終わっていたが、滝上は白花が満開
旬のワサビだったが・・・食べる山菜、キノコは山ほどあったので採らずに撮るだけにとどめる
▲真っ黒にサビついた源流イワナ
源流部は、ザラ瀬から一転、ゴーロの階段となる
その壷の奥から引き出したイワナは、一様に黒くサビついていた
斑点は大きく鮮明で、側線より下に鮮やかな橙色の着色斑点を持つニッコウイワナ
これは、滝の下流部に生息するイワナと同じ遺伝子を持っていることが分かる
▲湿地にあったツキノワグマの足跡
ツキノワグマは警戒心が強く、沢沿いに足跡を見つけることは滅多にない
それだけに貴重な写真だ・・・こうした目立つ場所に足跡を残すということは人跡稀な証拠だろう
沢沿いの山菜・・・特にエゾニューの芯を食べるために沢に集まってきているに違いない
▲ツキノワグマの足跡アップ
右は、泥壁に滑った足跡・・・クマも足をとられて滑ることもあるのだ
その慌てた姿を思い浮かべて笑う
▲開いてしまったゼンマイ
この谷は、ゼンマイの宝庫・・・かつてゼンマイ採りと言えば、それぞれ縄張りがあった
ここは集落記念碑が建立されている村の縄張りだったに違いない
しかし、山仕事がなくなった昭和40年代に限界集落となり、村は消滅した

今は、採る者もなく、貴重な資源は眠ったままだ・・・
もう一度、山の恵みに光を当てて山村を活性化させたいと思う
▲ゼンマイは正月や冬の食べ物だった
今は、安い中国産のゼンマイが一年中出回っている
かつては、ワラビは塩漬け、ゼンマイは干して保存し、正月や冬の貴重な青ものとして利用された
特にゼンマイは、現金収入の少ない山棲み人の貴重な副業であった

さらにゼンマイの綿毛を繊維として布に織るなど、捨てることなく暮らしにも役立てる知恵と技があった
それを伝承する人は、今や絶滅危惧種的な存在となってしまった
▲岩が累積した源流部
ザラ瀬の細い流れは、一転、階段のゴーロで水量が増す
下流は一部伏流になっているのだろうか・・・ここから、イワナのアタリは俄然良くなる
▲サルでも釣れるイワナ釣り
久々に大物を掛けた美和ちゃん・・・記念に写真をとってとせがまれる
得意満面のポーズをとっているが・・・
このイワナが釣れたポイントは、事実上の魚止めの滝壺で、いつも尺前後が釣れる好ポイントだ

それを知らない彼女は、自分の技術で釣り上げた一尾だと錯覚しているようだ
正直に申せば、ここは「サルでも釣れるイワナ釣りの世界」である
だが、このイワナの楽園は、距離が意外に短いのが難点だ
▲無垢なる源流イワナ
斑点が大きく鮮明な個体は、北海道のエゾイワナを連想させる
しかしエゾイワナは、無着色斑点のアメマス系だが、
ここのイワナは、濃淡はあるものの、全て着色斑点をもつニッコウイワナである
体長の割に顔と口がデカク、精悍な面構えは源流イワナと呼ぶにふさわしい
▲最後に釣れた源流イワナ
明確な魚止めの滝は存在せず、ゴーロの途中でイワナは消えていた
上の個体も、全身が浅黒く、岩穴に潜んでいる特徴をよく示している
▲両岸の岩壁が切り立つ源流部
青空に向かって屹立する岸壁と新緑、岩穴から落下する水・・・
岩の階段を上り、右に直角に曲がると二段の滝が姿を現す
▲魚止めの滝
両岸絶壁で、遡行を拒絶するような二段の滝
滝壺は深く大きい・・・試しに釣りを試みるもイワナの姿、アタリとも一切なし
この下流のゴーロ連瀑帯が実質上の魚止めであった
▲今晩の刺身用にキープした源流イワナ
竿を納めたのは午後2時頃・・・時間を持て余し、山菜を採りながらのんびり下る
後で聞いた話だが、枝沢組3名は、この時間に昼食をとっていたという

さらに、2人の長老は、イワナではなく、屹立する斜面に群生するゼンマイを追っていたという
山釣りにきたのに、ゼンマイ採りとは・・・老人になると、ゼンマイ採りに回帰するのだろうか
▲源流部に群生していたエチゴキジムシロ
花がイワキンバイと似ているが、葉が大きく、花床に白毛がない
花期も5月〜6月とイワキンバイより約1ヵ月ほど早く咲く
▲またまたサワモダシ発見
下る途中、積み重なった倒木の下にサワモダシの群生を見つける
サワモダシは、一般に梅雨の頃だが、初夏の季節に大アタリとは珍しい
楽しい、楽しいキノコ採りモードに突入したことは言うまでもない
▲前日より一回り大きいサイズがそろった ▲いつもより大きく切ったイワナの刺身 ▲蒲焼用に三枚におろす
▲特製のタレに漬け込み、フライパンでイワナの蒲焼を作る ▲別の班が釣ったイワナは塩焼きに
7人の大パーティともなれば、イワナ料理も大変だ
刺身用のイワナは8匹、蒲焼用も7匹、合計15匹を調理する
山菜、きのこ、イワナ料理を終えても、枝沢組は帰ってくる気配がない

6時過ぎ・・・谷が薄暗くなる頃、やっと帰ってきた
中村会長と長谷川副会長は、ゼンマイ採りに夢中で竿をほとんど出さなかったらしい
背中には、背負い切れないほどのゼンマイが入っていた

イワナは、今朝車止めから歩き通しの小玉さんが釣り上げたもの
いずれも丸々太った素晴らしい魚体ばかり・・・全て竹串に刺し、焚き火の周りに並べる
▲源流酒場
山の幸が豊富な宴会中心の山釣りには、焚き火が必須
山菜を種類別に湯がく、味噌汁などの鍋物、イワナの塩焼き、頭と骨の燻製、炊飯などマルチに活躍する
焚き火は山に生きる基本中の基本の技術だ

それにしても焚き火を囲んで飲む酒や地産地消の山釣り定食が最高に美味いのは何故だろうか

一日、谷を歩き回り腹が減っている
借景の代表である日本庭園は、美しい渓谷を模したものだが、本物の庭園はそれを遥かに凌ぐ
さらに森林浴効果とマイナスイオン効果で人の細胞は活性化し食欲が増す

つまり、源流酒場は、下界では決して真似のできない最高ランクの料亭である
山釣り定食は、山の命をメインにした素朴な料理・・・
それは山の命の循環の輪の中で生かされている食の原点に戻ったような安全安心な食べ物である

この至福の舞台で山釣り定食を肴に一杯飲めば、人生が狂うほど病みつきになる
そういう中毒症状を呈するほど、その魅力は尽きない
▲美しきゴーロ滝

自然回帰、田舎回帰・・・
三日目の早朝、深い原生林に包まれた巨岩帯を散歩する
連日、東京出張と飲み会が続いた

無機質な東京の風景、巨大な人の群れ、全てが金でうごめく社会、
照りつける光は、ビルとコンクリートに反射しすこぶる蒸し暑い・・・
身も心もヘトヘトになってしまった

なんでこんな世界に人は集中するのだろうか
バブル最盛期の昭和62年、「月刊田舎暮らしの本」が発刊された
そのコンセプトは「もっと人間らしい暮らしをしたい」「バブルとは違った幸せがあるのではないか」だった
▲美しきゴーロ連瀑帯
深い森と清冽な谷を散歩しながら思う
ここには、アンチ都会、アンチ現代・・・の宝物がギッシリ詰まっている
たまには水と緑の豊かな秋田で「田舎暮らし」、「山暮らし」をしてみたらいかがだろうか

秋田の山は、高さが低く縦走もままならない二流の山が多いけれど、
ひとたび沢に入れば、山の幸の宝庫・・・さらに山に生きた民俗文化の宝庫だ
山菜、きのこにしても種類、質ともに日本一だと自負している・・・「釣りキチ三平」の里・秋田へきてたんせ
▲清流と焚き火
今回、久しぶりにハンゴウ炊飯をやったが、見事にコゲだらけの飯になってしまった
反省を込めて、ここにメモしておきたい

□美味しい焚き火ご飯の炊き方
・最初は弱火で炊く
・ハンゴウについた水滴が消える頃、火力をアップする
・水分がフタからこぼれるようになったら、噴きこぼれないように火力を弱くする
・沸騰が終わり、白い湯気がでると完了
・逆さにひっくり返し、そのまま20〜30分程度蒸らす
▼釣りバカにつける薬はない
アッちゃんと美和ちゃんは、朝になると、スリッパを履いたままイワナ釣りを始める
そんなせこい釣りは止めなさい・・・と言っても馬の耳に念仏だ
「イワナ釣りは足で釣る」と言っても、楽な釣りがやめられないらしい

この二人は、会に入るのが遅く、回数も少ない・・・飽きるほど釣った経験もない
イワナの生態を熟知していれば、そんなバカな釣りは止めるはずだが・・・
やはり「釣りバカにつける薬はない」

かつては、我々もイワナしか見えなかった時代があった
これは誰もが通過しなくてはならないイワナ人生の一過程なのかもしれない
▲一晩、焚火で燻したイワナの薫製品 ▲美しい竹濱毛バリ
▲渓流シューズ、渓流足袋にピンソールを着け、帰りの身支度をする ▲美和ちゃんは、初めてピンソールミニを着ける・・・着脱の簡単さに驚く
▲若葉に映えるムラサキヤシオツツジ
▲ヤマツツジ
満75歳の中村会長と70歳の長谷川副会長の山釣り長老二人は、
数十kgのゼンマイを背負い杣道を歩く・・・超人なのか、それとも単なる欲張り爺さんなのか・・・
後始末が大変だと思うが、二人は「毎日が日曜日」だけに羨ましい

私も退職したら・・・干しゼンマイの技術を会得し、後世に伝承してみたいと思うのだが・・・
それにしても「山は宝なり」・・・
何故、現代人は「宝の山」に背を向けるのだろうか・・・とても理解に苦しむ
▲今回のメンバー7名
会結成以来二十数年間、苦楽を共にした仲間は4名・・・この4名の信頼関係は絶対的である
後年、会に加わった仲間が3名・・・それぞれ個性があってオモシロイ
山釣りでは、お互いの個性、力を合わせればどんな困難をも突破できる・・・

また一緒に遊びましょう・・・宝の山・人生の楽園゛桃源郷゛で・・・(END)・・・

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