八幡平大深沢Part1 八幡平大深沢Part2 山釣り紀行TOP


鳩の湯、五十曲、玉川温泉、湯ノ沢温泉、ヒメオオクワガタムシ、八瀬イワナ、ツキヨタケ・・・
2009年8月、待ちに待った真夏の沢旅は、4泊5日の日程で八幡平大深沢源流へ
今夏は悪天候が続いたせいか、いつもより水量は多く遡行は厳しい
予定を変更し、以下のルートをのんびり歩く

黒石林道終点P1〜吊橋〜発電所取水口〜八瀬ノ沢出合C1(730m)〜八瀬ノ沢遡行〜
八瀬ノ沢上二又下流C2(990m)〜秘境の花園・1033mコル〜明通沢出合(935m)〜
スズノマタ沢合流点(690m)〜小和瀬川支流中ノ又沢〜車止めP2(530m)
▲秘境の花園
八瀬ノ沢から明通沢へ抜ける際、小沢を一本間違えてしまった
そのお陰で、秘境の花園・・・この世の別天地に躍り出る
しかし、その代償は大きく、軌道修正するのに3時間に及ぶ藪こぎを強いられた
▲八瀬ノ沢源流の尺上イワナ
八瀬ノ沢には、独特の色彩を放つ美魚が生息している
しかし、7寸前後と小型が多く、これまで尺イワナが釣れたことはなかった
それだけに鼻曲がりの野生的な美魚は、記憶に残る一尾となった
▲キクラゲ
雨が多いと、渓沿いの倒木にキノコたちが一斉に顔を出す
キクラゲ、ウスヒラタケなど、夏のキノコとの出会いも沢を歩く楽しみの一つ
残念ながらブナ帯の夏のキノコの代表・トンビマイタケは、異常気象の影響で×だった
▲男神橋から宝仙湖を望む ▲吊橋が撤去され廃業した新鳩の湯
小和瀬川支流中ノ又沢車止めに一台を駐車し、遡行起点の黒石林道に向かう
国道341号線を北に進むと、右手の対岸に新鳩の湯があるが残念ながら廃業していた
旧鳩の湯は、1700年代前半、玉川村の田中氏が湯を開いた

当時は「玉川の湯」と呼ばれていた
「鳩の湯」と呼ばれるようになったのは明治になってから
山鳩の鳴く静かな山の湯治温泉で、参拝人やマタギたちがよく泊ったという

新鳩の湯は、玉川ダム上流の中州に湧出した新しい温泉である
かつては、山菜採りやキノコ採りのベースになった温泉で
ゼンマイを乾燥させる風景もみられたという
▲五十曲地点の渋黒沢に架かる橋
玉川毒水の源泉と言われる渋黒沢は、五十曲地点で大深沢と合流し玉川となる
黒石林道がなかった時代は、この五十曲地点から橋を渡り、大深沢の右岸の道を辿るか、
後生掛温泉からブナの樹海が広がる杣道を辿っていた
いずれのルートも距離が長く、発電所管理小屋付近で1泊した後、大深沢へ入渓していた
▲玉川温泉の大噴(おおぶけ)
 玉川温泉には、大小さまざまな湧出口があり、中でも「大噴と呼ばれる湧出口からは、98度の温泉が毎分8,400リットルも噴出、一ヶ所からの湧出量は日本一を誇る。その下流は、幅3mの湯の川となって玉川に注いでいる。この温泉は、PH1.2ほどと日本一の強酸性水で、昔から「玉川毒水」と呼ばれ、魚もすめない沈黙の川であった。

 だから、玉川ダムに沈んだ旧玉川部落の人たちは、本流に注ぎ込む各枝沢にイワナを移植放流する風習が根づいたのだろう。そのお陰で、八幡平源流のイワナを追う山釣りも楽しめる。旧玉川部落の方々に深く感謝せざるを得ない。
▲黒石林道終点・発電所管理ゲート
五十曲を越え、石黒沢合流地点を過ぎるとほどなく右手の黒石林道に入る
黒石林道を約10kmほど走ると、発電所管理ゲートに達する
車止めには、既に2台の車があった
▲発電所専用道路を下って大深沢へ
周囲は、ブナの森に覆われ、トンビマイタケが生えそうなブナの巨木が林立している
黒石林道沿いには地元の車が数台あったが、きっとトンビマイタケ採りの人たちだろう
トンビマイタケは、ブナ帯のキノコ狩りのスタートを告げるキノコである
▲発電所専用道路沿いに生えていたキノコたち
▲懐かしの吊橋
この吊橋を渡ると、ほどなく発電所管理小屋がある
上流で取水されているため、ほとんど川には水が流れていない
▲小和瀬発電所管理小屋
 大深沢で取水された水は、小和瀬川支流中ノ又沢の水と、隧道経由で合流し、小和瀬発電所へ送水されている
▲天然露天風呂「湯ノ沢温泉見張りの湯」 ▲湯ノ沢の湯花

管理小屋のすぐ傍には、天然の露天風呂がある
かつては、脱衣場もあったが今は朽ち果てていた
温泉の元である湯ノ沢は、白い湯花と湯煙を舞い上げながら無尽蔵に流れている
黒石林道がなかった時代は、ここで1泊、湯ノ沢温泉で下界の汗を流すのが定番だった
▲大深沢取水堰堤
▲支流伝左衛門沢に至る吊橋 ▲堰堤に堆積した土砂を排除するためのブル
▲取水堰堤上流の広河原 ▲じっと動かず寄ってくる虫を待つアズマヒキガエル
▲開けた谷に巨岩が点在する渓をゆく ▲ソヤノ沢
途中、関東から来たという3人組が下ってきた
聞けば、ヤセノ沢に1泊し、下ってきたという

「ここまで来て1泊とはもったいない」
「いやいや、これから大深温泉に行きます
今朝、6時半頃、日帰りの3人組がやってきたのには驚いたよ」

日帰りの3人組とは、きっと知人の鈴木さんグループだろう
車止めを朝4時半頃に出発すると聞いていたからだ
ソヤノ沢までは楽勝なのだが、ここより上流は谷が狭くなりゴルジュが続く
▲ヒメオオワガタムシ
一瞬、体型が平べったいことからヒラタクワガタムシと思った
愛読者から「ヒメオオクワガタムシ」ではないかとの指摘を受け、再度調べてみた
すると、頭部の真ん中がへこんでいる種は、ヒメオオクワガタムシだった

生態をみると、高山のブナ林帯生息すること
クワガタムシは一般に夜行性だが、この種は昼行性が強いとある
活動時間帯は朝10時から夕方5時とのこと
昼頃に動いていたことを考えると、ヒメオオクワガタに間違いないようだ
いつもより水量が多いゴルジュ帯は、小さく巻くか岩をヘツリながら進む
しかし4泊5日分の重い荷を背負い、際どい岩場をヘツルとバランスを崩しかねない
ゴルジュの淵は、腰上まで浸かりながら前進する
▲左から八瀬ノ沢、右から本流が合流する二又 ▲大深沢の清冽な流れ
▲八瀬ノ沢のテン場で出会った知人のパーティと記念撮影
今回のパーティは、前列の3名・・・後列右端が知人の鈴木さんとその仲間2名
何と日帰りで、障子倉沢下流の小沢から左岸高台のブナ林を歩き、
トンビマイタケを探しながら下ってきたという

残念ながらトンビマイタケはゼロとのこと・・・今年の異常気象を象徴しているようだ
「今度は一緒に山で宴会を楽しみましょう」と言って別れる
我々のようにテン場を構えると、2、3日は動かない亀のようなパーティは極めて少ない
▲八瀬ノ沢右岸のテン場全景
テントとシートを張り、快適なテン場が出来上がると動きたくなくなる
本流はいつもより水量が多く、この上流のゴルジュ帯の遡行は困難を極めそうだ
山に苦しみに来たわけではない・・・
ここに3泊し、八瀬ノ沢から小和瀬川へ抜けるルートにあっさり変更することに決定した
▲ソバナ ▲渓に群れる赤とんぼ
▲二日目、八瀬ノ沢のイワナと遊ぶ
なぜか水面を流す毛バリには反応しない
いずれのイワナも底に定位し、エサを底深く沈めないとヒットしない
釣り師の感覚からすれば、他の水系のイワナと比べ底生性が異様に強いように思う
▲八瀬ノ沢のイワナ
濃橙色の斑点と腹部の濃い柿色が鮮やかなイワナは美しい
落差の激しい山岳渓流に生息し、赤味の強い色彩でなぜか小型が多い
その特徴と底生性の強さを合わせ考えると、北海道のオショロコマを連想させる
▲八瀬ノ沢のイワナの特徴
八瀬ノ沢には、他の水系とは異なるイワナが生息している
全身が黄金色で、側線前後に濃い橙色の着色斑点がある
口から腹部、尻尾にかけて濃柿色に染まっている・・・まるで赤腹イワナである
さらに成魚でもパーマークは消えず、はっきり確認できるのが大きな特徴である
▲ミズナラの深緑
▲フキユキノシタの白花 ▲緑鮮やかなサワグルミ
▲美味そうな毒きのこ・ツキヨタケ
秋田では、一般に9月から10月上旬頃に生える
しかし今夏は雨が多く湿度が高いせいか、成菌のツキヨタケの群生が目立つ
▲楕円形のパーマークと赤腹が際立つ八瀬イワナ
 型は一回り小さいが、独特の個性を放つイワナは美しい・・・大深沢に生息するイワナは、下流の玉川毒水によって隔離されているがゆえに、特殊な遺伝子が保全されてきたようにも思う
▲昼食用のイワナの刺身 ▲三枚におろして万能つゆに漬け込む
二日目の夜、イワナづくしの料理を肴にウィスキーで乾杯
イワナの刺身、唐揚げ、蒲焼、焚火で燻製にしたイワナの頭と骨入り味噌汁・・・
▲大深沢名物・ダルマ岩
今にも転げ落ちそうなダルマ岩だが、不思議と健在だ
岩の頭には草木や苔が生え、一見巨大なコケシのようにも見える
自然の造形美には、いつも感嘆させられる
▲八瀬ノ沢出合い上流部のゴルジュ
このゴルジュ帯は、渇水ならば沢通しに通過できる
増水した場合でも、かつては右岸を小さく巻くことができた
ところが足場となっていた岩が欠けていたり、巻き道が崩壊・・・

簡単に辿ることができなくなっていた・・・おまけに大粒の雨が落ちてきた
淵の岸を泳げば突破できそうだが、濡れるのはコンディションが悪すぎる
やむなく敗退・・・テン場へと引き返す
敗退は大正解だった
以降、大雨が降り続き、水かさが増してきた
昼食は、昨夜焚火で燻製にしたイワナとラーメンつゆで作った雑炊
自然庭園を借景に食べる食事は、殊の外美味い
▲ガマズミの実 ▲オクヤマオトギリ(花期7〜8月)
▲シシウド(花期8〜11月) ▲ヨツバヒヨドリバナ(花期8〜9月)
▲トリアシショウマ(花期7〜8月) ▲イワナの大好物・ブナ虫
▲イワナ丼 ▲赤いターフは3人組の沢登りパーティ
3日目の夕方・・・降り続く雨の中、宴会していると、
二又方向にいつの間にか赤いターフが見えた
聞けば、千葉から来たという

車止めを昼過ぎに出発、午後4時頃に着く
ルートは大深沢〜北ノ又沢〜大深山荘〜大深岳〜赤川稜線
赤川稜線にバイクを置いて来たという・・・2泊3日の行程のようだ
▲4日目、朝まで降り続いた雨もあがり快晴となった
ブナの深緑から太陽の木漏れ日が漏れ、見上げる空は雲ひとつない澄み切った青空へ
頭上からは、セミの大合唱が、巨岩に沁み渡るように鳴り響く
まるで遅い梅雨がやっと明け、真夏がやってきたような好天となった

テン場を綺麗に片付け、荷を担ぐ
絶好の写真日和に、デジカメのシャッターを押しながら八瀬ノ沢をのんびり遡行する
Part2は、八瀬ノ沢の巨大なガレ場や滝、渓相、尺上の美魚、秘境の花園・熊ノ湿原・・・

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