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エサ釣りに慣れてしまうと、なかなか毛バリ釣りを実行できない
そのエサの誘惑を断ち切るために、予備エサも川虫採り用の網も一切持たずに秘渓に向かった

今回は、テンカラではなく、餌釣り用の竿を使ったチョウチン毛バリだ
狙いは的中・・・というよりも、想定外の爆釣が続いた
チョウチン毛バリは、エサ釣りの延長線上にある釣法であることを改めて実感させられた
▲草木も伸びた小沢
毛バリ釣りと言えば、テンカラやFFだと思っている釣り人が圧倒的に多い
しかし、こういう小沢でテンカラあるいはFFをやれば、渓に張り出した草木に引っ掛けて釣りにならない

果ては、手の届かない草木に引っ掛けてしまうと、大事な毛バリを草木に食われてしまう
イワナを確実に釣る・・・となれば、狙ったポイントに確実に毛バリを落とし、自在に操る必要がある
草木に覆われた小沢で、そんな釣りができるのだろうか・・・
▲茶系と黒系のパラシュートフライ・竹濱毛バリ
杣道を歩いて小沢の中流部に下りる・・・朝6時30分、仕掛けを作る
竿は、エサ釣り用に使用している硬調5.4m〜6.1m
1.5号の通し仕掛け2mに竹濱毛バリを結んだシンプルな仕掛けだ

ここで瀬畑翁の言葉を思い出す
「たとえ毛針を見失っても、たるませた黄色のラインは見える
アタリはラインのフケでとらえれば十分ですよ」

そうだ・・・道糸に、赤系のスプール目印を二か所付ける・・・毛バリ、道糸とも視認性は抜群
こうすればエサ釣りに慣れた人でも、その延長線上でイワナを釣ることができる
▲毛バリに食いついたイワナ
瀬や釜の落ち口付近に毛バリを垂直に落とす
イワナは水面を割って毛バリを咥えた
不思議なことに、イワナは咥えた毛バリをなかなか吐き出さない

「遅合わせ、遅合わせ」と言い聞かせるように、一呼吸おいて合わせる
仕掛けが短い分、強い引きが竿を介して握る手にビンビン伝わってくる

岸辺にイワナを引き寄せ・・・「ヤッター」と心の中で叫びながらシャッターを切る
だんだん慣れてくると、爆釣モードに突入する
チョウチン毛バリの釣法は、特別な技術を要しない・・・つまり、釣り方はエサ釣りと何ら変わらない
▲尺イワナがヒット
右手から小沢が合流する地点の釜・・・いつも良型がヒットする好ポイントだ
草木に隠れて低姿勢で接近・・・瀬尻、瀬脇へと毛バリを落とし、
流れに対して直角に引く、斜めに引く、逆引きするも、何の反応もない・・・おかしい

釜の落ち口の左は深く、流れが右回りになっていた
その流れに乗せるように毛バリを落とす
すると、いきなり水面を割って毛バリを咥えた

尺イワナの撮影をしていると、イワナは岸辺を這い流れに向かった
竿が流れにもっていかれそうになる・・・慌てて竿をつかもうとしたが・・・竿を踏んでしまった
唖然・・・竿は真っ二つに割れていた・・・尺イワナの代償にしては大き過ぎる
▼止水やトロ場の毛バリ釣り
何度か、止水に毛バリを落とし、イワナの動きを観察する
着水した瞬間、イワナは毛バリに興味を示し接近するものの食いつかない
今度は毛バリに動きを与える・・・再度興味を示すものの、また低位置に戻った

しかし、稀に毛バリに猛然と食らいつくイワナもいた
止水は、毛バリもイワナの動きも丸見えだからオモシロイ
だからと言って、止水やトロ場が毛バリの好ポイントだとはとても思えない
▲イワナの食い筋に流す
毛バリの流し方は・・・瀬畑翁の言葉がいつも頭をよぎる
「真上から見た場合、ヤマメ、イワナの左右45度ずつ、
90度ぐらいの扇形の角度の範囲内に流さないと、毛針には飛びつけない
取り損なったエサは、あっさり諦め、次のエサを待つというのがヤマメ、イワナの習性なんですよ

くわえやすいところへ、くわえやすいように流すことが最も大切ですよ。
これを゛食い筋゛に流すと呼んでいます」・・・
つまり、毛バリの流し方もエサの流し方も同じだった

テンカラに生涯をかけた人の言葉は、やはり重い
その重さを体で分かるには、無駄な釣り人生を幾度となく経験しないと決して分からないことだと思う
その神技の一端を垣間見たような思いがした
エサ釣りでは、ミミズやブドウ虫、トンボ、クモ、バッタ、ブナ虫、川虫など何でもOK
しかし、夏の渇水ともなれば、現地採取のエサに勝るものはない
特にトンボ、クモ、バッタ、ブナ虫類は、オモリを一切つけず、水面に浮かせて釣ると効果が大きくオモシロイ

チョウチン毛バリは、そのエサ釣りの浮かせ釣法とほぼ同じ釣り方でOK
ポイントは、ひたすら「くわえやすいところへ、くわえやすいように流す」ことに尽きる
▲オオバミゾホオズキ
▲ミヤマカラマツソウ ▲ヤグルマソウ
▲今が旬のミズ・・・太くて粘り気の強い赤ミズを選んで採取する
▲いつもお世話になっているキ・ノ・コ、サワモダシ(ナラタケ)
▲黒系の毛バリに食いついたイワナ
ハックルが黒系の毛バリは、茶系の毛バリより何となく見えにくい
そんな気がして茶系の毛バリだけを使っていた

ところが、強合わせの悪い癖が出てしまい、イワナに茶系の毛バリを二度も食われてしまった
黒系の毛バリに代えて振り込んでみる
イワナの食いは依然として高い・・・毛バリの色は関係ないのだろうか
▲黒系の毛バリを丸呑みしたイワナ
毛バリを見失わないためには、できるだけラインを張る必要がある
しかし、ラインを張っていると毛バリの動きが不自然になる
さらに、早合わせ不要のイワナに対してラインを張る理由はどこにもない

ラインをたるませて釣る
毛バリを見失っても大丈夫・・・ミチイトの目印がスーッと動くのを見て合わせる
上のイワナは、毛バリに違和感を感じなかったらしく、喉の奥まで呑み込んでいた

釣り人は、イワナではなく、自分が見えやすい毛バリを使いたがる
後で考えると、喉の奥まで飲まれる毛バリは黒系が多かった
ということは、黒系の毛バリの方がイワナにとってみれば美味そうに見えたのかもしれない
▲岩穴の奥に潜むイワナも引き出す
小滝の落ち込みの底・・・その岩穴に潜むイワナを毛バリで釣るのは難しいと勝手に思い込んでいた
ところが、意外に簡単に釣れることが分かった
小滝の落水に毛バリをぶつけるように振込み、毛バリを落水に乗せて沈ませる

もちろん毛バリは見えなくなるが、目印が激しく動き、竿先に明確なアタリが出た
引き抜くと、真っ黒にサビついたイワナだった
まるでエサ釣りと同じ振込み方だが、バリエーションが増えると本物のエサを上回る爆釣モードに突入する
▲こんなに釣れていいのか・・・毛バリ天国
水面を羽虫が飛んでいたが、陽射しが強い日中・・・一挙に羽化する時間帯でもない
なのにイワナは狂ったように疑似餌を追った

水面をガバッと飛び出すイワナに、反射的に強く合わせてしまう
すると、短いハリスはその衝撃に耐えられず、切れてしまった
果ては、毛バリの結び目が二回も切れてしまった

テンカラでは草木に毛バリを食われ、チョウチン毛バリではイワナに食われる
チョウチン毛バリは、仕掛けが短い分、道糸や竿に掛かる負荷が極めて大きい
だから、強合わせは厳禁だ
▲昼前だが、釣果は十分・・・
早い昼食を食べながら、釣りを止めるべきかどうか考える
食べるには十分の釣果だが、毛バリ天国の誘惑に負ける
とりあえず、編袋に生かしたまま持ち歩いたイワナをデポしておく
毛バリ天国の画像Part1

▲毛バリ天国は、やはりブナとミズナラ、サワグルミの広葉樹に包まれた渓流に限られる
イワナを追っていると、必ず「ブナの森=イワナ=クマ」の世界に突き当たる
不思議なほど、この図式は変わらない
と同時に、山菜、山野草、きのこの宝庫でもあるから堪らない
▲爆釣は止まらない
上るにつれて、イワナのサイズもワンランクアップする
黒身を帯びたイワナが小さな釜から電光石火のごとく飛び出す
その勢いにつられて、思わず強く合わせ過ぎてしまうこともしばしば・・・軽く合わせるだけで釣れるのだが・・・
▲喉の奥深く毛バリを飲み込んだイワナ
毛バリでも、喉の奥まで飲み込まれると外すのに苦労する
右の写真は、白のウイングが血だらけに染まるほど、毛バリを飲み込んだ証である

これには驚くほかない
残念ながら、このイワナは死んでしまった・・・ただし、数十匹も釣って死んだのはこの一匹だけであった
毛バリは、勝負が早くスピーディに釣り上がることができる

しかもイワナに対するダメージも極めて少ない・・・
やっと職漁師たちが毛バリを選ぶ理由が分かったように思う
やはり丸一日毛バリ釣りに没頭しないと、その真実に迫ることはできない
▲クマは草食いの季節・・・エゾニューやフキを食べた痕跡
笹薮のタケノコは、全て長刀状態で旬はとうに過ぎていた
クマは、草食いのため、沢に集まって来ているに違いない

大きく伸びた草原に、明瞭なクマ道を見つける
その道を探ると、エゾニューの真中の芯やフキの茎を食べた跡が至る所に散乱していた
クマの楽園・源流部・・・毛バリ天国の画像Part2
チョウチン毛バリで丸一日、釣り上がったのは初めてのこと
想定外の爆釣に、イワナしか目に入らないほど狂わされてしまった
チョウチン毛バリは、山岳渓流に調和した実に合理的な釣法であることを実感した

沢の大小を考えれば、仕掛けの全長を2mに固定するのではなく
3m程度の半チョウチン毛バリも試してみる価値はあると思った
▲天然盆栽・オオバミゾホオズキの群落
飛沫を浴びる湿っぽい岩場に群落を作り、実に美しい
▲美味そうに毛バリを咥えた美魚
斑点は鮮明で、側線より下に鮮やかな着色斑点を持つニッコウイワナ
クマの気配を背にビンビン感じながら、こんな美魚を立て続けに釣る
まさにイワナの楽園と呼ぶにふさわしい
▲今晩の塩焼き用イワナ
▲釣り過ぎたイワナは、網袋から取り出しリリース
1つの網袋に10匹ほど入れていた・・・窮屈だったらしく、すぐには流れに走らないイワナもいた
体力が回復すると、元気に流れの中に消えていった
それを見届け、ゴーロの階段を足早に下る
▲初夏のイワナは味もピカイチ
一年で最もイワナが美味しい季節は、6月の初夏である
川虫や落下昆虫、羽虫を腹一杯食べて丸々と太っているからだ

イワナの塩焼き、ミズのたたき、ミズとサワモダシの味噌汁で熱燗を飲む
脂がのって実に美味い
今から20年ほど前、「月刊 北の釣り」にチョウチン毛バリの特集記事を目にしたことがあった
毛バリをポイントに正確に振り込む、毛バリをまるで生きている羽虫のように踊らせる
チョウチン毛バリは、そんな神技のような釣りができるといった内容だった

それを真似て、何度かチョウチン毛バリでイワナを釣ったことがあった
当時は、市販の毛バリで、しかもエサ釣りに飽きてしまった後のサブ的な釣りに過ぎなかった
以来、チョウチン毛バリの記事を目にしたことは皆無である

昨年、チョウチン毛バリ師・竹濱さんと出会う
彼はチョウチン毛バリで次々とイワナを掛ける・・・それは、新鮮な驚きだった
いざ実践してみると、エサ釣りを上回る爆釣に驚きの連続・・・まさに毛バリ天国・・・

チョウチン毛バリは、現代の釣り人たちに見捨てられてきた釣法であった
それは、テンカラやFFに比べると、ダサイ釣りに見えるからだろうか
しかし、その釣法は、日本の山岳渓流に調和した、実に合理的な釣法であることは確か

なぜなら、誰がやっても、シンプルで易しい釣りほど合理的な釣法はないからだ

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