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新緑の春山、隠れた名水、山菜、ヒラタケ、尺イワナ、オオサクラソウ、ピンソール、イワナ&山菜フルコース、山にこもる理由・・
2009年5月上旬、命が芽吹く新緑の谷をゆく
萌え出る新緑に包まれた谷を歩くほど、心ときめくものはない
杣道から新緑の山々を俯瞰し、一週間前にテン場を構えた場所に向かって小沢を下る

ちょうど中間点の斜面から湧き出す美味しい水で喉を潤す
この小沢の斜面は、春のあたたかい陽射しを浴びると、一斉に芽を出す山菜の宝庫・・・
だから勝手に「山菜畑沢」と命名している
遥か眼下に、地元の山菜のプロが忙しく山菜を採る姿が垣間見える・・・待ちに待った山菜シーズンの到来だ
▲渓友亭作・イワナ寿司(まな板は自作で、「PIN-SOLE」「渓友亭」と刻まれている)
山釣りと言えば、大人数で行く場所ではない・・・と、勝手に思い込んでいた
しかし、今回は、ピンソールの開発者・渓友亭の竹濱武男さん一行3名と
秋田・源流釣友会6名、計9名の合同大パーティとなった

山菜シーズンは、山の恵みが豊富だから、ベースキャンプを構え、宴会中心の山釣りが最高だ
その宴会のメイン・山の幸をフルコースで楽しむには、最高の合同大パーティだった
特にイワナ寿司は、釣り人にしか味わえない感動の逸品であった
今後、我が会の定番メニューにしたいと思う
▲カケスとイワナ
調理用のイワナを狙ってやってきたカケス
カケスは雑食性だが、果たしてイワナを食べるのだろうか・・・

仕事が忙しく、タイムリーな編集がなかなかできない
従って、今回の記録は、2009年4月24日〜26日・第一回の山釣りと、
2009年5月2日〜4日・第二回の山釣りの総集編となってしまった
わずか一週間ほどしか経っていないが、命が芽吹く春山の劇的な変化に改めて驚かされた

▲4月24日、山頂は薄らと雪化粧し、新緑もまばらである ▲一週間後の5月2日、淡い新緑の絨毯が谷から峰に向かって広がっていた ▲5月4日、新緑の波は点から面へと急激に広がっているのがわかる
▲アザミ ▲アイコ(ミヤマイラクサ)
▲ギョウジャニンニク ▲シドケ(モミジガサ) ▲ウルイ
■ブナ林は、山菜の宝庫
早春のバッケ、カタクリ、ギョウジャニンニクに始まり、タラノメ、アザミ、コゴミ、セリ、クレソン・・・
新緑の頃になると、ホンナ、アイコ、シドケ、ウルイ、ヤマワサビ、ミズ、ウド、ワラビ、ゼンマイ、タケノコと、
切れることなく、次から次へと美味しい山菜が生えてくる・・・

だから、釣り人と言えども、イワナ釣りも山菜採りも、その魅力は甲乙つけ難い
▲キバナイカリソウが咲き乱れる杣道をゆく ▲ビールと酒を一杯詰め込んだ重いザックを背負い、急斜面を登る ▲寿命が尽きて倒れたブナ
▲新緑の杣道をゆく渓友亭3名
重いビールと酒、中華鍋と調味料、釣り道具、野営道具などザック一杯に詰め込む
今回の山釣りは、山菜&イワナ料理をメインにした宴会中心の山釣り・・・

ジンさんによると、荷が20kgを超えたので、他のメンバーに背負ってもらったという
我々に御馳走しようという心配りに頭が下がります・・・感謝、感謝・・・
▲花が開き始めたキバナイカリソウ(4月24日) ▲満開のキバナイカリソウ(5月2日) ▲イワウチワ(4月24日)は、全て終わり、山菜シーズンの到来を告げていた
▲岩穴から湧き出す名水・・・古くから杣人たちに愛されてきた水場だ
▲重い荷に喘ぎながら登る・・・この苦行の向こうに感激が待っている ▲やっと美味しい水場に辿り着く・・・ここで遅い朝食をとる ▲ムラサキヤシオツツジの赤いツボミ・・・この花が開くと、新緑のピークを迎える
▲ブナの芽が膨らみはじめ、枝先が茶褐色に霞む(4月24日)・・・深い谷は雪代で逆巻き、まだ灰色の世界だ ▲芽吹き始めたブナ(5月2日)・・・若葉と花で山全体が萌黄色に霞んで見える。疲れも吹っ飛ぶ美わしい風景が続く。
▲タチツボスミレ
▲最後の急斜面を登り切ると、小沢を下降するコル地点に達する ▲スミレサイシン ▲春の陽光に踊るエンレイソウ
▲隠れた名水で喉を潤す
数時間、重い荷を背負って杣道を登り、やっと辿り着いた名水
新緑の季節・・・斜面の中腹から湧き出す水は殊の外冷たい

その名水をコップに酌み、萌黄色に染まった新緑のシャワーを浴びて一気に飲み干す
吹き出す汗がスーッと引き、五臓六腑に沁み渡る
その美味さは、下界に持ち帰って飲むより数倍美味い
▲ハンゴンソウ ▲アイコ(ミヤマイラクサ) ▲シドケ(モミジガサ)
4月24日は、アイコもシドケも、腐葉土から顔を出したばかりで葉が開いていなかった
しかも、食べられる山菜は、まばらにしか生えておらず、採取に苦労した
▲早春のキノコの代表・ヒラタケ(晩秋〜春、4月24日)
4月中旬以降、低温と雨が降り続いたせいか、いつになくヒラタケは豊作だった
上右の写真は、倒木の下側に生えていたヒラタケの成菌
水気が少ない倒木の上側は、まだ小さい幼菌だった・・・一週間後、ちょうど食べ頃に成長していた

ヒラタケは、肉厚でボリュームがあり、時に傘が波打つ・・・どんな料理にも合うが油との相性が良い
■料理・・・天ぷら、フライ、バター炒め、味噌汁、煮物、炊き込みご飯、和え物、酢の物、ホイール焼きなど
▲一週間も経てば、アイコもシドケも葉が開き、まるで山菜畑のように群がって生えている
わずかな時間で、9人の大パーティでも食いきれないほど簡単に採取できる
▲ザックとコダシ一杯に採取した山菜名人の古老
こんな山奥まで山菜を採りに来るプロは、この古老一人だけになって久しい
小柄で痩せた体型・・・まるで山猿のように四足で斜面を駆けずり回るスーパー爺さんだ
一度に30kg前後のアイコとシドケを背負って山を歩き、自転車で村まで帰る

それでも山菜初期で1万5千円、山菜最盛期になると半値になるという
山に生きる古老は、損得抜きにして「山が好きでなきゃ、とでもできるもんじゃねぇ」と語っていた
小柄で寡黙な老人だが、山に向かうとスーパーマンに変身する
▲4月24日の山の幸・・・茎が短いアイコとシドケ。早春のコゴミとバッケ、ヒラタケ。 ▲わずか一週間後の5月2日に採取した山菜・・・30cmのザルが見えなくなるほど成長したアイコとシドケに注目
前回は、4人のパーティだった・・・その際使用したテントと共同装備一式をデポしておいた
最後の夜は、寒さと雨風にたたられ、ブルーシートはズタズタ・・・
強風がシートとテントを襲い、凄まじい音で眠れぬ一夜を過ごした

それだけにデポしたテントと共同装備品が心配だったが、無事だったことに安堵する
狭いテン場に、3人用のテント二張りを何とかセットする
ブルーシートを張り、三日間の薪を集める・・・野営の準備は、人数が多いと実にスピーディに進む
▲昼食後、今晩のメイン食材・イワナ釣りに出掛ける
釣る距離は、滝までのわずか400mほど・・・雪代で逆巻き、ポイントは極端に少ない
水温は低く、キープサイズのイワナは、白泡渦巻く岩穴に隠れてなかなか出てこない
竹濱さんのチョウチン毛バリにヒットはするものの、リリースサイズの小物ばかり・・・

ましてや下山田さんのテンカラにはヒットするはずがないと思っていた
私は、ブドウ虫をエサに点釣りで釣り続けた・・・9人だから少なくとも一人2尾で18匹、いつもよりノルマが多い
右岸から枝沢が合流する地点・・・ミオ筋から離れている浅瀬だが、いつも大物が潜むポイントだ
▲第一回の釣果・・・残念ながら尺イワナは出なかった ▲第二回目の釣果・・・上から二番目が32cmの尺イワナ

カーブ地点の急流を渡り、対岸のポイントに辿り着くと、上流にいた金光さんが盛んに合図する
そのポイントで、既に刺身サイズが三匹釣れたという
聞けば、先行していた下山田さんがテンカラで釣り上げたイワナだという
その最大は32cmであった・・・まいりました
▲4月24日、小さなヒラタケは採らずに残す ▲一週間後、ヒラタケは大きく成長していた
連日好天が続いたため、ヒラタケはカラカラに乾き、乾燥ヒラタケになっていた
こういう状態で採取できれば、水気を含んだきのこより遥かに軽く、乾燥きのことしても長期保存ができる
しかし、乾燥ヒラタケは、生えている姿・形が美しいとは言い難く、絵にならないのが唯一の欠点だ
それでも乾燥ヒラタケは、水に浸せば、簡単に元の姿に戻り、最高の食材に変身する
▲沢沿いに咲いていたイワウチワ(4月24日) ▲急な岩場を紅紫色に染めるオオサクラソウの群落
▲カタクリ(4月24日) ▲5月2日、下流のゴルジュ帯には、早くもオオサクラソウが咲き始めていた
小躍りしながらシャッターを切る
釣り終わってテン場に戻る・・・9人分のイワナには少し足りない・・・
午後2時半頃、私は一人下流に下がって釣り上がることにした
前回は、イワウチワやカタクリが咲いていたが、今回はオオサクラソウとシラネアオイが咲き始めていた
生命踊る季節の変化は、生きとし生けるもの全てが駆け足で走っているかのように、目まぐるしく変わる
流れは雪代のピークを迎えたらしく、水かさが急に増し、濁り始めた
急流を渡り、下流の滝の左岸をきわどく巻いて滝の下流に降りる
だが、ゴルジュ帯の流れは太く容易に渡れそうにない・・・やむなく急流を飛び跳ねて対岸に渡る

やっとの思いで滝壺に近付けたが、釜は煮えたぎって釣れそうにない
何とかエサを岩穴に送り込み、キープサイズのイワナを引き出す
▲おいしい水とピンソール・ピンソールミニ、そして名水で冷やしたビールと冷酒

新緑の谷は、雪代で水かさが増し、下流から遡行するのは危険極まりない
さらに雨が降ろうものなら、水量は一気に倍以上となり、遡行不能に陥る
そんな危険を回避するには、高度差数百mもある急斜面の杣道ルートを辿り、目的の小沢を下って
一気に険悪なゴルジュや滝の上流へ下りる安全確実なルートを辿るほかない

目的の谷に辿り着いたら、イワナを釣りたい、斜面に萌え出た山菜も採りたい
そんな時、威力を発揮するのが自由自在に着脱が可能なピンソール、ピンソールミニ
▲水で戻したヒラタケは、山菜とヒラタケの味噌汁用に使用 ▲定番のイワナの刺身・・・アラは唐揚げ、頭と骨は骨酒用に焚き火につるす ▲定番の山菜のおひたし
▲シドケの天ぷら ▲イワナのタタキ・ナメロウ
▲コゴミの天ぷら ▲山菜の塩もみ・浅漬け
今回も、ジンさんが背負ってきた中華鍋が大活躍
いつも飲みながら揚げたての天ぷらを食べたいと思うが、料理に専念しなければならず、なかなかできない一品
イワナのタタキは、三枚におろし、皮ごと細かく切り、味噌で味付けした一品

これをさらにナタで刻み、味噌を加えて叩けばさらに美味しくなりそうだ
山菜の塩もみは、初めて食べたが、酒のツマミにグーだった
初日から、イワナと山菜のフルコースを楽しむ
▲萌え出たばかりの新緑と清流を借景にした桃源郷「源流酒場」
山では、「焚き火」ほど有難いものはない・・・悪天候になればなるほど、その有難さが身にしみる
「焚き火」は、暖房、照明、調理、濡れた衣類の乾燥などマルチに活躍する
昔は、暮らしの中心に「囲炉裏」があった・・・山ごもりでは、もちろん「焚き火」が中心になる

ジンさんは、前回、ブルーシートに穴があくほどの焚き火をしたいがために、
中村会長が手にしていたノコギリと同じジャンボサイズのノコギリを持参していた
お陰で3日分の太い薪が簡単にそろった

盛大に燃え盛る焚き火を中心に、あちこち彷徨った山釣り談義に花が咲く
酔うほどに源流酒場は、「山が笑い、人も笑う」・・・まさに桃源郷そのものだと思う
▲非日常の世界に山ごもりする理由
2009年5月号の「BE-PAL」に、「今、日本人にキャンプが必要な7つの理由」の特集があった
それをベースに考えてみたい

1.鈍っていた「五感」が呼び覚まされる
自然の真っただ中に入れば、普段「眠っていた」五感が急に起き出すのは確かである
自然の音や生き物の声、特にイワナや山菜、きのこなど食材となるセンサーが鋭くなる
それは、誰もが持っている狩猟・漁労採集の遺伝子が騒ぎ出すような感覚である

また四季折々、多様な自然美に感動する感性も鋭くなる
春、夏、秋、冬へと季節が循環するように、生き物の命も永遠に循環している
人間も自然に生かされているという感覚・・・そこから山の神様に感謝するブナ帯文化も生まれた
人間の幸せは、十人十色だが、つまるところ「健康で文化的な暮らし」をすることではないだろうか
2.日ごろの「ストレス」が解放される
人跡稀な源流の世界は、お金もテレビも携帯電話も役にたたない非日常の世界である
日常の世界で蓄積されたストレスは、その日常から遠く離れるほど解消される
私の場合は、非日常の世界に最低3日間、理想は5日以上こもればストレスは、ほぼ解消される
3.「不便」「失敗」も楽しいことがわかる
日常の便利さ、快適さにどっぷり浸かっていると、その有難さが分からなくなる
たまに非日常の世界に来ると、何でも金で買っていた愚かさに気付く
当然、失敗の連続・・・自然から謙虚に学ぶ・・・

非日常の世界で生きるためには、食べ物を自ら手に入れる技術、それを美味しく食べるための料理術、
ノコギリやナタで薪を作り焚き火をおこす技術、快適に寝るための野営の技術、山や谷を自在に歩く遡行術・・・
とにもかくにも中途半端な技術では役に立たず、山で生きる総合的な技術と知恵が要求される
マタギのように山に向き合って生きてきた杣人たちの経験知、民俗知の凄さを知る
4.子供たちの「生きる力」が身につく
ひたすら快適で便利さを求め続ける現代社会では、子供に限らず大人も「生きる力」を失っているように思う
中村会長は、満75歳になり後期高齢者の仲間入りをしたが、上の写真の通り、
山野を自在に駆け巡り、キノコや山菜を採る、イワナを釣る・・・まるで子供にかえったように元気だ

テン場に戻れば、太い倒木を切る、焚き火を起こす、山菜を調理する、飯を炊く・・・
四六時中動き回る・・・その生きるパワーの凄さに驚かされる

明日から山釣りともなれば、子供の遠足のように心が躍る
山にこもれば、生きる力が湧いて元気になることは確かだ
少なくとも私にとって山釣りの世界は、元気の源である
5.「絆」を取り戻すことができる
山にこもるとなれば、様々な危険や困難に遭遇する
人間は、クマではなく猿に近い・・・猿と同じく群れなければ生きていけない動物であることに気付く
共に危険や困難を乗り越え、寝食を共にすれば、仲間の絆はより深くなる
6.「食う・寝る」ことの本質がわかる
多忙な日常の世界では、三度の飯を漫然と食べ、時には眠れない夜もある
クマは食うことと、寝ること、そして子孫を残すことのみに一生を費やすという
山釣りは、山の恵みを採集して美味しく食うことと、子供のようにたわいもなく眠ることに尽きるように思う

我が会の柴ちゃんは、山に来て釣りもせず、ひたすら寝ることを目的に山にやってくる
仲間がテン場に戻るとテントから起き出し、食うためにイワナや山菜・きのこ料理に専念する
彼を見ていると、奇人変人のようにも見えるが、「食う・寝る」ことだけは決して怠らない

7.「人生」は楽しんだ者勝ちと思えるようになる
山釣りの世界は、焚き火を囲み、山の幸定食をツマミに、仲間と飲み語らうひとときが最も楽しい
我々は、この世界を「桃源郷」と形容している
人生の楽園「桃源郷」は、日常の世界には存在しないが、非日常の世界には存在するように思う

しかし、山にこもって一生暮らすとなれば、桃源郷どころか苦行の世界に一変するだろう
この世は二律背反が現実・・・
ならば、日常の世界から脱出して、たまには非日常の世界にこもるのが最も幸せな生き方なのかもしれない

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