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オオサクラソウ、キバナイカリソウ、ヤマザクラ、オオカメノキ、ツツジ、トリカブトの食中毒、山菜、岩魚、新緑定食・・・
2008年4月下旬、恒例の初山釣りへ
春山は、長い眠りから覚めたクマのようにゆっくりと動き出し、
雪解けとともに変化のスピードを倍化させて、千変万化のドラマを展開する

その感激のドラマを撮りたくて、毎年、GW前半と後半の二回、山ごもりをするのが恒例になった
今年は、これまで見た風景とは明らかに異なっていた
杣道沿いのブナ林は、眩しいほどの若葉に包まれ、既に山菜はピークに達していた
今年の山菜は、1週間以上、草花は2週間も早いように思う
その証が上の写真だ・・・何とオオサクラソウが満開に咲き誇っていた
図鑑によれば、花期は6〜7月とあり、初夏の谷を象徴する草花だが、
この谷では例年5月中旬頃の盛春に咲く・・・4月下旬に咲くとは、驚くほかない
暗いゴルジュの岩場を紅紫色に染め上げるオオサクラソウの大群落・・・その美は、いつ見ても圧巻だ
山菜はピークを迎えていたのに、突然、仕事が入り、2日目には帰らなければならなくなった
例年であれば中途半端で、元気をもらうには不満の残る山釣りになるはずだった
ところが早春から盛春まで混在したような草花と山菜、新緑の美にすっかり酩酊してしまった
連休後半はどんなドラマを展開してくれるのだろうか・・・季節外れのドラマにワクワク
▲新緑と残雪の谷
左:対岸の残雪は、いつもより痩せ細り、ブナの若葉は一斉に開いていた
右:斜面に林立するブナは淡い新緑をまとい、ゴルジュ帯の雪崩斜面の下部に、
わずかに残った残雪、その上には大量の落葉が降り積もり、谷底を雪代水が轟音を発して流れ下る
ブナも岩魚も山菜も草花も、一斉に笑い踊る・・・雪国の春は、一年の中でも最も心躍る季節だ
▲キバナイカリソウ
例年だと5月中旬頃に見掛ける花だが、もう既に満開だった
杣道沿いの斜面に大群落を形成し、錨型の淡い黄色の花は良く目立つ
被写体としても絵になる草花の一つ
▲シラネアオイ
例年5月頃に咲き、ゼンマイシーズン到来を告げる草花。ということは、日当たりの良い斜面にはゼンマイが出ているのだろうか。
▲スミレサイシン
この花は、早春に咲く花の代表で、全体的に花のピークは過ぎていた
▲ミヤマキケマン
早春の草花だが、花が散ってまばらになっているのが目についた。鮮やかな黄色の花を多数つけ、遠くからでも良く目立つ。
▲ヒトリシズカ
ヒトリシズカやニリンソウ、シラネアオイが咲き始めると、山菜はピークを迎える
▲ヤマザクラ
全山、新緑に包まれると、ヤマザクラも満開に咲く
オオヤマザクラは赤味が強いが、ヤマザクラの花は白色
樹皮は特有の美しさと強さがあり、樺細工として利用されている
▲ニリンソウ
春の陽射しにキラキラと輝く清流・・・その水辺に咲くニリンソウは、光に向かって一斉に踊り出したかのように咲き乱れる
▲ムラサキヤシオツツジ
昨年は、GW後半でも咲いていなかったのに・・・ブナの森が新緑に包まれると、一際目立つツツジも咲き始める
▲オオカメノキ(ムシカリ)の白花
新緑の若葉に白く目立つ花を多数つける
アジサイによく似ているが、大きな卵円形の葉が亀の甲羅に似ているのが最大の特徴
この葉は、虫に食われることが多く、別名「ムシカリ」とも呼ばれている
▲オオバキスミレ ▲ミヤマカタバミ
▲ヤマワサビの白花 ▲モミジイチゴの白花
初夏に橙黄色の果実をつけ、生食すれば甘酸っぱく美味い
初山釣りで定番のカタクリやイワウチワ、エゾエンゴサク、キクザキイチゲは、花が枯れた状態で旬はとうに過ぎていた
杣道に別れを告げ、小沢を下りながら、楽しい山菜採りを楽しむ
右の写真は、猛毒のトリカブトの群落
不思議にも、食用のニリンソウやシドケなどと同じ場所に群生している
これは山菜が獣や人間に食われないようにする戦術なのだろうか
いずれにしても山は、中途半端な知識で入れば命取りになりかねないことだけは確か

◆シドケと間違えて食中毒を起こした事例
2008年4月20日夜、大館市の夫婦が親類からもらったシドケの中にトリカブトが混入
「おひたし」にして食べたところ、舌のしびれや呼吸困難の症状が出て、大館市内の病院に救急搬送された
1994年には、横手市の男性が死亡している

◆ニリンソウと間違えて採取し死亡した事例
2005年4月21日、70歳の男性は、自宅近くの山林で食用のニリンソウと誤ってトリカブトを採取
同日夜、家族4人であえ物にして食べ、いずれも舌のしびれや顔面まひ、呼吸困難に陥る
23日午前1時、70歳の男性は弘前市の医療機関で死亡した
▲アイコ(ミヤマイラクサ)
ご覧のとおり、茎が伸び、葉が大きく開いている・・・まさに山菜最盛期を物語る風景
全身に細かい刺毛があり、素手で採ろうとすれば悲鳴を上げるほど痛い
しかし茹でるとクセもなく美味しい山菜に変身する

葉は味噌汁に、茎の部分は皮をむいて「おひたし」にするのが定番
市場や直売所では、シドケの半値程度だが、私にとっては一番食べたい山菜の筆頭角
▲シドケ(モミジカサ)
姿、形が美しく、山菜の王様と呼ばれ、市場価値も高い
特にブナ林の奥地に生えるシドケは、茎が太く極上品が生える
山菜特有のクセがあり、好みが分かれる山菜でもある
▲ウド・・・シドケやアイコが生える斜面では、痩せウドが多い。ウドはやっぱり雪崩斜面下の腐葉土が厚く堆積した崩落土が最適地。 ▲ウルイ(オオバキボウシ)
同じ場所に生える毒草・コバイケイソウの若芽に似ているので注意!刻んで味噌汁の具、お浸しや酢味噌和え、一夜漬け
▲エゾニュウ(左)・・・秋田ではニョウサクと呼ばれ人気の高い山菜の一つ。
しかし、数ある山菜ガイドブックを探しても、ほとんど掲載されていない。
他県では食べる習慣がないのだろうか。
初夏の山菜のはずだが、早くもこんなに大きくなっていた。

▲ヤマワサビ(右)
▲新緑の岩魚釣り
山菜を採り、テン場をセット・・・昼食後、待ちに待った岩魚釣りへ
新緑の谷ともなれば、岩魚の活性度も高くなる
淀みの岩陰を狙って底を探れば、懐かしのアタリが糸と竿を介して手に伝わってくる
竿先が弓なりになったところで岩魚を一気に引き抜く・・・
食用のサイズならば、自然と満面の笑顔となる
▲ゴーロの始点に懸かる二条滝
落差の大きいゴーロ帯や狭い岸壁が続くゴルジュ帯は、
いかにも幽谷の岩魚が潜んでいるかのように見える・・・しかし、現実は魚影が薄い
なぜなら、洪水が起きれば岩魚だって危険極まりなく、エサとなる川虫も少ない
人間も岩魚も川虫も、流れが穏やかで安定した場所を好む
▲夕食用にキャッチ&キープした岩魚
左の岩魚は刺身サイズ、右の編袋に入っている岩魚は塩焼きサイズ
山にこもれば、唯一のタンパク源だけに、持続的な釣りを心掛けたい

キープサイズは7寸以上あるいは8寸以上とし、一人3尾以内にとどめれば
こうして毎年岩魚釣りを楽しむことができる・・・山菜も岩魚も間引く感覚でとるのが基本だ

◆疑問・・・山でキープする岩魚が一人3尾なんて余りに少ない。そんな釣りは「岩魚釣り」とは言わないんじゃないか。
そのとおり・・・だから我々は「山釣り」と呼んでいる
当然のことながら、岩魚釣りだけでは時間を持て余し、満足できるはずもない
山菜やきのこ、草花などを追い掛けるようになるのも必然のこと

実は、かく言う私も、一日中岩魚を追い掛けていた時代があった
当時は、山菜もきのこも、草花や木の名前すら知らなかった
実に無知で愚かだったことに気付かされ、今、夢中になって山の学問を強いられている
学問・・・疑問に思うことを学ぶ・・・未知の世界に学ぶほど楽しいものはない
▲美わしい新緑の谷
左の写真:峡谷のゴルジュ帯を高巻く高台の斜面は、極上の山菜が生える秘密の場所
そこから俯瞰する渓谷美は、絶景、絶景・・・
新緑の頃は、雪代がピークに達し、釣るポイントは少ない・・・山菜でも採らなきゃ時間を持て余すことになる
▲雪代の飛沫を浴びて滝壺を釣る
雪代の頃は、こうした滝壺に岩魚が集結している
オモリを重くし、岩陰の底を舐めるようにじっくり攻めると数釣りが楽しめる
ただし、釣り上げる時は、場荒れしないように一気抜きするのがベスト

雪代が終わると、こうした大場所では、なかなか釣れなくなる
なぜなら、岩魚はエサを捕食するために流れの瀬に出るからだ
ここまで釣り時間は、わずか1時間・・・キープした岩魚は一人3尾に満たなかった
そこで、テン場の下流を探ることに・・・そこで意外な光景に出くわす
▲絶滅危惧種1A類・オオサクラソウの大、大群落
雪代とは言え、下り釣りでは釣果は望めない
警戒心の強い岩魚に気付かれないために、沢沿いの高台の薮を掻き分けながら下る
滝が連続するゴルジュ手前の急斜面を潅木をつかみながら沢を降りようとした時だった

暗く湿っぽい崖に、一際輝くように群れる花が目に飛び込んできた
何と、あの美しいオオサクラソウが満開に咲き誇っているではないか
しばし、釣りを忘れて夢中でシャッターを切る
オオサクラソウの群落は、渓谷の湿り気の多い岩場に生える
一株から数株のオオサクラソウは、たまに見掛けるが、
500mにもわたって渓谷の岩場に群生する場所は、ここでしか見たことがない
こんなにたくさん群生しているのに、なぜオオサクラソウが絶滅危惧種になっているのだろうか

その大群落は、大滝から数段の滝が連なるゴルジュ帯だけに限られている
しかも花の最盛期は、雪代が逆巻く危険な時期でもあり、とても素人が歩ける場所ではない
絶滅危惧種を選定する専門家の人たちが、このオオサクラソウの楽園を知らないだけではないだろうか
目の前一面に広がるオオサクラソウの大群落を眺めていると、そんな素朴な疑問が湧き上がってきた
▲岩魚の滝壺
数段の滝が連なる左岸を際どく巻き下り、狙った滝壺に降り立つ
左の岩陰から攻めたが、意に反してリリースサイズの岩魚だった
本命のポイントは、右の巻き込みの岩陰だ・・・壷の深さは2m近くもある

3Bのオモリを3つも付けて、急流の岩陰にエサを送り込む
いきなりガツンときた・・・竿先が水中に引き込まれるほどの衝撃に
反射的に引き上げようとしてしまった・・・1号のハリスは簡単に切られ、ふっと力が抜けてしまった

仕掛けは、点釣りのチョウチン仕掛け・・・
深い滝壷では、大物が食らいついた場合、仕掛けが短いと
竿は簡単にのされ、糸を切られる確率が高い
二回目もハリスを切られ、三回目にヒットしたのが上の岩魚
雪代が逆巻くゴルジュ帯だけに、かなりの数の岩魚が集結していることは間違いない
しかし、ヒットはするものの次第に場荒れし、岩魚のサイズは小さくなっていく
未練がましく、滝壺を眺めながら竿をたたむ
▲清流と山人料理
アイコ、シドケ、コゴミを渓流で洗い、焚き火にかけた大鍋で湯がく
湯がいたら、すかさず渓流水で冷やす
アイコは、一本一本丁寧に皮をむく・・・シドケは水を絞り、適当な長さに切りそろえる
▲極上のシドケ
シドケは、里山にも生えているが、茎が細い
ブナの原生林が広がる沢では、何と言っても茎の太さと色艶が違う
採取は、茎が太く、モミジ型の葉が開き切らない若芽を選んで間引くように採取する
▲岩魚料理
釣り上げた岩魚の腹を割き、内臓を取り除く、中の血合いは渓流できれいに洗い流す
次にサイズごとに分ける・・・大きい順に刺身用、中型サイズは塩焼き用に振り分ける
右の写真は、5人分の刺身完成品と刺身で残った素材(唐揚げ用)
▲山菜料理完成品
「山釣り定食」or「ブナ森定食」or「新緑定食」・・・が完成したら、焚き火を囲み乾杯
美味い、美味い、美味い・・・
今回は5名のパーティだったが、明日は仲間を残して帰らなければならない
何とも残念・・・それがために記念撮影はなしになってしまった
▲春爛漫
萌え出たばかりの新緑の斜面にアクセントを添えるヤマザクラの白
よく見ると、春の芽吹きの色彩は、一つ一つが微妙に変化し、多様性に富んでいる
時が経つにつれて、ヤマザクラやツツジ、フジなどの花の色が加わると、色彩は無限に広がる
二日目は曇り時々雨
最短コースを辿り源流へ・・・私は、杣道に辿り着いた所で仲間と別れる
単独で落差200m余を沢まで下り、山菜平でシドケとアイコを採る
今日は異常に寒く、さらに雨が降り出してきた

採取はほどほどにして、テン場まで戻り、帰り支度をする
ほどなく雷鳴が轟き、雨と突風が襲ってきた
両端のブルーシートが切れ、飛ばされそうになる

目の前に置いていたデジカメやザックに雨が降り注ぐ
濡れてはならない物を、急いでテントの中へ入れる
切れたブルーシートにヒモを巻き付け、再度張り直す

午後2時、テン場を出発・・・
沢から杣道まで一気に上り、のんびり新緑の谷を俯瞰しながら下る
地元の山菜採りのじいさんは、天候が悪かったからか、姿が見えなかった
オオサクラソウ、幽谷の岩魚MEMO
▲希少種・オオサクラソウ(絶滅危惧種1A類)メモ
秋田県のレッドデータブックでは絶滅危惧種1A類にランクされている希少種
盛夏にも適度な湿度を保つ沢筋の斜面に生えている
生育場所は、三脚がなければブレてしまうほど暗い

真っ直ぐ伸びた細い一本の茎の先端に濃い紅紫色の花を一杯に広げて咲く姿は、
遡行者を釘付けにするほど美しい
この沢では、とりわけ群生の規模が大きく、狭い沢の両岸に生えている
ただし、大きな滝を高巻かないと簡単には見つけられない難所に咲いているので、
人の手から逃れて「オオサクラソウの楽園」が生き残っているようにも思う。
▲深山幽谷に棲むイワナ(岩魚)メモ
「谷の精」とか「渓流の王者」「幻の怪魚」といった様々な形容詞で飾られることが多く、
また伝説がよく似合う淡水魚でもある
漫画「釣りキチ三平」(矢口高雄著)では、
夜泣き谷の怪物・左膳岩魚を釣るシーンが描かれている

天然イワナが生息する条件は、水温15度以下と冷たく、年間を通して水量が安定していること
夏の渇水で水が枯れるような沢には生息しない
餌は、トビゲラ、カワゲラなどの水生昆虫や陸生昆虫、さらにはサンショウウオ、カエル、ネズミなどを食べる
中には、胃袋から蛇や同じ岩魚が出てきた例も少なくない

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