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テンカラと竹濱毛バリ、タニガワコンギク、黄金岩魚、岩魚のたたき風刺身、秋田名物・いなにわうどん、ウスヒラタケ、巨樹、半毛バリ
2008年8月中旬・・・懐かしの源流へ
源流初心者時代・・・釣りが下手糞だったことを棚に上げ、
「岩魚の魚影は薄い」と勝手に決め付けていた源流が残っていた
あれから20年余りの歳月が流れた・・・

真夏日が続く日中は、岩魚釣りが最も難しい
にもかかわらず、岩魚は稚拙なテンカラに何度も食いついた
またしても、会発足当初のデータは全く当てにならないことを痛感させられた
▲懐かしの源流をめざして遡行
天気予報は、連日晴れマーク・・・気温は30度前後と真夏日が続く
杣道から沢へ下りると、テンカラの釣り場としては、一級品の渓相が続く

ブナ、サワグルミ、カツラ、トチなどの豊かな渓畔林、苔蒸す岩、清冽な流れ
瀬音とセミの鳴き声・・・時折、黒いカワガラスが低空飛行を繰り返す
エメラルドグリーンに染まった瀬尻から黒い影が何度も走った
▲杣道をゆく ▲杣道に別れを告げ、沢通しに遡行 ▲小滝の大淵
▲大岩が点在するゴーロ ▲苔蒸す岩場 ▲広々とした河原と豊かな渓畔林・・・岩魚が群れ遊ぶ渓相に心が躍る
▲タニガワコンギク
沢沿いの岩場に群生する・・・夏の渓を彩る代表的な草花
花は紫色を帯び、葉先はとがり、鋸歯がある
▲柴ちゃんのテンカラにヒットしたニッコウイワナ
大きく蛇行したサワグルミ林にテン場を構える・・・平坦でかつ流木も売るほどある素晴らしいテン場だ
久々に参加した柴ちゃんは、4mのテンカラ竿を持って試し釣りへ
ほどなく、釣り上げた岩魚をぶら下げて戻ってきた
毛バリは、アブを模した自作の毛バリ・・・側線前後に橙色の斑点が鮮やかなニッコウイワナ
▲小生のテンカラ釣り
○テンカラ竿・・・ダイワ源流テンカラ35SE(瀬畑翁によれば4m〜4.5mの長い竿がベストらしい)
○テーパーライン・・・渓愚スペシャル3.5m、瀬畑翁作テーパーライン4.5m〜5.5m
○ハリス・・・1〜1.5号、長さ約1.5m

障害物の多い源流の釣り場は、竿は3.5m、テーパーラインは竿と同じ3.5m、全長5m余りが最も使い易いように思う
伝統的なテンカラは、仕掛けの全長が、身長+竿の長さ(cf:1.7m+3.5m=5.2m)・・・つまり5m前後
これぐらいの長さなら、ラインが水面を叩くことなく、楽に毛バリだけを着水させることができる

だから仕掛けの全長が5m前後の源流テンカラは、初心者向きとも言える
魚影の濃い釣り場なら、これぐらいの長さでも、テンカラ釣りの醍醐味を十分堪能できる
しかし、大淵ともなれば、もう1m、2m長ければ・・・と思うこともしばしば

瀬畑翁は、竿が4m〜4.5m、テーパーラインは4.5m〜5.5m、仕掛けの全長は7mほどにもなる
障害物の多い源流でも、この長い仕掛けを自在に操る
遠くへ投げる、ラインをタップリたるませるには、長竿に長くて少々重いラインがベストだという
テン場上流のカーブ地点に竹濱毛バリを静かに振り込む
ふと下流のトロ場を振り返ると、岩魚が4〜5匹集団で泳いでいるではないか
この時点でアプローチは失敗・・・普通なら釣れるはずもないのだが・・・

ものは試し・・・下流の集団に向かって毛バリを水面に着水させる
意外にも、岩魚は水面を割り、白い目印の付いた竹濱毛バリに食い付いた
すかさず合わせると、黄色のラインが上流に走り、テンカラ竿が見事な弧を描く
▲竹濱毛バリ
今回試用した毛バリは、ピンソールの開発者・竹濱さんからいただいた毛バリのみを使用した
竹濱毛バリの特徴は、浮力と視認性を重視したフライで、頭部に白い飾りをつけたパラシュートフライタイプ

手が器用な人が作った毛バリは美しく、見やすい
しかも、流れの抵抗で微妙に踊り、岩魚に羽虫と錯覚させるに十分の効果を発揮した
毛バリの色は、黒であろうが、茶色であろうが、何でも釣れた
▲真夏の渓流定番料理・・・渓流で冷やしたソウメン
茹でたソウメンは、川虫採り用の網に入れ、冷水でもみ十分冷やす
麺つゆは、味道楽を沢水で4倍に薄める・・・ネギとミョウガを薬味に食べる
あっと言う間に完食するほど美味い
▲左:柴ちゃんのテンカラ
テンカラ竿4m、テーパーラインは瀬畑翁作4.5m、仕掛けの全長は約6m

▲右:竹濱毛バリを丸呑みにした岩魚
毛バリを喉の奥まで呑み込む岩魚を見れば、岩魚のアワセは「遅アワセ」で十分であることが分かる
むしろ「早アワセ」は、バレる確率が高い
つまり、里川のヤマメと違って、源流岩魚のテンカラ釣りは、難しくないのが最大の特徴
▲真夏の陽射しを一杯に浴びて、のんびりテンカラを振る
瀬尻から落ち込みまで、丁寧に釣り上がる

○毛バリの流し方・・・真上から見た場合、イワナの左右45度ずつ、
90度ぐらいの扇形の角度の範囲内に流さないと、毛針には飛びつけない
つまり、岩魚の「食い筋」に流すことがポイント・・・岩魚が食いやすいところへ、食いやすいように流すのがコツ
▲毛バリを丸呑みした源流岩魚U
毛バリにスレていない源流岩魚は、何の疑いもなく毛バリに食らい付く
つまり、アプローチとキャスティングさえマスターすれば簡単に釣れる

岩魚を何度か掛けると、水面に浮く毛バリは、だんだん沈んで見えにくくなる
目がよくない私は、毛バリを見失わないように目で追うことはできなくなる
だから、たるんだ黄色のラインだけを注視する

岩魚が食いつくと、たるんだラインが上流に走るから、誰の目にもヒットしたのが分かる
究極の「遅アワセ」・・・だから、毛バリを丸呑みされることもしばしば
しかし、岩魚が水面に飛び出す感激の瞬間を見られないのが唯一の欠点
▲餌釣りにヒットした岩魚
一日目は、テンカラの方がよく釣れた
しかし、二日目、真夏日が続く源流では、テンカラより餌釣りの方がよく釣れた
どちらがよく釣れるのかは、川幅や水温、時間帯によって異なる
▲幽谷の美魚
大きな尾ビレは、オレンジ色に染まり
腹部から口までは、鮮やかな橙色に彩られている
大きな斑点が体全体に散りばめられ、側線より下は薄い着色斑点を持つニッコウイワナ・・・実に美しい
▲キャスティングのコツ
肘を支点に手首を曲げずに振るのがコツ・・・手首を曲げるとラインが水面を叩き、岩魚を追い散らしてしまう
ウシロ振りは、真上の12時でしっかり止め、ラインが後ろに延びきる直前でマエへ振り、時計の10時半あたりで止める
毛バリは水面に叩きつけるように打ち込むのではなく、あくまでソフトに振り込むことが肝心

とは言うものの・・・いざやってみると、頭で考えていた以上に難しい
できるだけ魚影の濃い沢で実践練習を積むのがベスト
岩魚がヒットすれば、その時のキャスティングのコツは、体で覚える・・・頭ではなく体で覚えることに徹することだろう
▲次々と竹濱毛バリに飛びついた岩魚
一人3尾・・・合計12尾をキープしたところで納竿
一日目は、線で釣るテンカラが圧倒的に釣れたが・・・
▲今夜の食材 ▲岩魚のたたき風刺身・・・タマネギ、かいわれ大根、ショウガに岩魚の刺身を混ぜ、味の素少々と醤油を入れよくかき混ぜる。コッフェルに蓋をして上下に叩き、さらに均等に混ぜる。30分ほどねかすと、ボリューム満点の岩魚たたき風刺身が完成。
▲アラの唐揚げ ▲岩魚丼 ▲チャーハン

▲夏の朝食は、秋田名物「いなにわうどん」で決まり
秋田の山釣りでは、「ソウメン」よりも「いなにわうどん」が数段美味い
美味しい茹で方は、麺が半透明になったら、すかさず網に入れ
渓流の冷水で十分水洗いする・・・ソウメン同様、渓流水で水洗いすれば最高の味となる
▲二日目、昨日釣り上がった所まで一気に歩き、竿を出す
木漏れ日の河原を歩き、ゴルジュに懸かる大釜を高巻き、狭くなった岩場の廊下帯をヘツリ源流へ
右の岩魚は、金光氏のチョウチン毛バリにヒットした岩魚
▲出ました・・・尺岩魚
この岩魚は、長谷川副会長の餌釣りにヒット
源流に近付くにつれて谷は狭く、水量も少なくなる・・・しかも連日猛暑が続いていた
こういう時は、朝夕のマズメ時を除けば、テンカラも苦戦を強いられる

それはどういう訳だろうか・・・餌釣りでヒットしたポイントを見れば一目瞭然だった
真夏の強い陽射しと上昇する水温を嫌い、岩魚は小沢が流入する岩陰や
酸素が溶け込みやすい白泡の渦の中に潜んでしまうからだ

上の尺岩魚は、小沢合流点の岩陰から飛び出した
つまり、線で浮かせ釣りをするよりは、点で餌を沈める釣りの方が効果的だった
▲それでもテンカラで粘って釣り上げた岩魚たち
▲深緑と夏の青空 ▲釣り上げた岩魚は、旬を保つために、網袋に入れて生かしたままデポ
▲源流二又右俣の枝沢に入る・・・小沢は狭く点釣りの世界
20年前は、岩魚一匹釣れなかった・・・岩魚のいない岩魚谷と思っていたが・・・
慎重に釣り進むと、白泡の渦の底から岩魚が飛び出した
▲黄金岩魚32cm
大滝下流の壷で釣れた黄金の尺岩魚
一般的な岩魚と黄金岩魚の体色を比較すれば、その体色の違いは歴然
全身が黄金色に輝く黄金岩魚は、最高に美しい

○尺岩魚に成長する条件
厳しい源流で尺岩魚に成長する確率は、極めて低いと言われる
一般にダム湖に生息する岩魚の成長は早く、大型化することが知られている
それは、ワカサギやウグイなどの小魚を食べるからと言われている

「イワナをもっと増やしたい」(中村智幸、フライの雑誌社新書)によれば、
若齢時に高成長遂げた個体で、昆虫食からより栄養価の高い魚類や両生類を
選択的に食べるようになった個体が大型化する・・・という食性の変化説をあげている
▲黄金岩魚を野ジメして撮影
上の黒橙色から腹部の黄金色のグランデーションが実に美しい
精悍な面構えを見れば、オス岩魚とすぐに判別できる・・・星屑のように散りばめられた斑点も鮮明だ
滝壺の奥深くに潜む源流岩魚を代表する美魚と言える
▲魚止めの滝15m・・・右岸を高巻き、滝上を探る ▲昼食後、滝上の岩魚を追う・・・確かに岩魚は生息していたが、魚影は薄かった ▲小滝が連続、幽谷の岩魚釣り場の雰囲気は満点なのだが・・・
▲小滝の滝壺を釣る・・・意に反し、リリースサイズの小物が釣れてきた ▲エゾアジサイの白花
▲魚止めの滝壺 ▲エゾアジサイ・薄青紫色の花 ▲源流部は、好ポイントが連続しているが岩魚は生息していなかった・・・午後1時半、早くも納竿
▲夏のきのこ・ウスヒラタケ
岩魚のザッパ汁用の具として採取・・・テン場まで一気に下って2時間ほどかかった
▲尺岩魚の刺身料理・・・皮を剥ぎ、三枚におろす ▲赤味に彩られた岩魚の刺身
▲岩魚の皮は半分に切って唐揚げに ▲唐揚げ料理 ▲まるでオコゼのような岩魚の唐揚げ・・・山の神様も喜ぶような岩魚料理
▲岩魚の塩焼き・・・盛大な焚き火の周りに串刺しにし、遠火でじっくり燻す
倒木ブナの焚き火・・・その煙の魔術で絶品の天然燻製を味わうことができる

焚き火で燻製にした頭と骨は、ミズとウスヒラタケの味噌汁に入れて美味しくいただく
▲源流酒場
日中は、アブの大群に悩まされたが、夕方になると突然姿を消す
赤々と燃え盛る焚き火に、一人一尾の岩魚を串刺しにして焚き火の周りにかざす
濡れた衣服を着替え、頭にはヘッドランプをつけて焚き火の傍らに座る

せせらぎの音、焚き火のはぜる音を聞きながら、山の幸定食をつまみに乾杯!
山釣りの最高の瞬間は、清冽な流れを借景にした源流酒場に勝るものなし
改めてここにテン場を構え、春から初夏にかけて岩魚を追ってみたいと思う

▲クマの爪痕U
▲ブナの巨樹 ▲クマの爪痕 ▲ブナのコブ
▲輝くブナの深緑 ▲オオカメノキの赤い実 ▲ホツツジ・・・特徴的な花は8〜9月頃
▲ブナの巨人たち・・・この原始の森が岩魚を育む・・・尾根を高度差100mほど登り、トンビマイタケを探すも見つからず、残念 ▲ミズナラの巨木・・・マイタケが数十kgも生えそうな巨樹を見上げる
▲痩せ尾根から沢の下流部の山並みを望む ▲不明のきのこ
真夏の木漏れ日と涼しさを誘う流れを渡渉し沢を下る
夏の沢歩きは、クソ暑い藪こぎや登山道を歩くより数段快適だ
▲廊下の急流や大釜・・・こういう場所をラッコ泳ぎで下れば最高だろう・・・残念ながら防水パッキングしていなかったので断念 ▲ツリフネソウ・・・花は紅紫色
▲豊かな渓畔林に覆われた岩魚谷を下る

テンカラは、いかなる時でも釣れる釣法ではない
一般に、朝夕マズメ、曇りの日が良いとされる
晴天時は、毛バリがニセモノと見破られる確率が高い
雨の日は、釣り難く、エサ釣りにかなわない

○「半毛バリ」の名人 「実践テンカラ・テクニック」(堀江渓愚著、山と渓谷社)
職業漁師・海老沢亀太郎名人は、大型のヤマメバリにニワトリのハックルをぱらりと巻き
それに川虫を刺すという他に類のない独特の仕掛け・・・「半毛バリ」で、
あたかも畑の大根を引き抜くように、いとも簡単に次々とヤマメを釣り上げるという
これは、邪道と言われるテンカラの毛バリに川虫を刺すのと同じことではないか

これまで何度か、この禁じ手を使って岩魚を釣ったことがある
テンカラで苦戦している場合、この半毛バリを使えば、確かに釣れる
禁じ手あるいはダサイと言われようが、釣れない釣りに固執するほど馬鹿らしいことはない

釣りの常識を覆す・・・
これからは餌釣り仕掛けの「半毛バリ」、テンカラの「半毛バリ」を堂々とやってみたいと思う
参 考 文 献
「実践テンカラ・テクニック」(堀江渓愚著、山と渓谷社)
「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
「山渓ハンディ図鑑2 山に咲く花」(山と渓谷社)
「イワナ釣り」(植野稔、河出書房新社)
「イワナをもっと増やしたい」(中村智幸、フライの雑誌社新書)

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