白神源流の滝NO.1 白神源流の滝NO.2 白神源流の滝NO.3 山釣り紀行TOP


大川・カチズミ沢・大滝又沢源流、粕毛川源流、追良瀬・サカサ沢源流、真瀬川・三ノ又沢源流
入良川、水沢川、津梅川・カンカケ沢、大又沢、カネヤマ沢の滝・・・白神山地はマタギの山、滝の魅力・・・


大川源流の滝
▲大川源流魚止めの滝・・・手前は魚止めの脇の滝、奥右が大川ヨドメの滝
対照的な二本の滝が連なる光景は、珍しい
手前の滝は「魚止めの脇の沢」に懸かる滝で、女性的な滝、一方、
右奥に見える滝が大川本流に懸かる「ヨドメの滝」で、豪快に落下する男性的な滝である
▲大川ヨドメの滝(魚止めの滝) ▲魚止めの滝頭から下を望む
雨後の水量が多い時は、ヨドメの滝の迫力は満点
落差は20mと言われているが、25〜30mはありそうな気がする
滝の流れは、左岸の岩壁にぶつかり、大量の飛沫を吹き飛ばしながら、直角に曲がって流れ下る様は圧巻
ヨドメの滝は、右岸に明瞭な巻き道がある
▲大川魚止めの脇の滝
ヨドメの滝の瀑風はもの凄く、近づくことすら拒否されているような滝だが、
この滝は、思いっきり近付いて、聖なる飛沫を頭から浴びて「滝の洗礼」を受けたくなるような滝である
天気が良ければ、滝のシャワーを浴びながら右手の小段をシャワークライミングすれば楽しいだろう
▲大川フキアゲの滝と自然堰止湖(2001年10月撮影)
2001年5月に発生した右岸の土砂崩れで、流れが堰き止められ、
縦50m、横20m、深さ3〜5mのタカヘグリ新湖ができた当時の貴重な写真
しかし、2003年10月には、堰き止められた土砂もかなり流され、湖の深さは2mほどに下がり、

現在、この自然堰止湖は、完全に消滅している
つまり、幻の湖と黄葉に染まったフキアゲの滝の美しさは、二度と見ることはできないだろう
▲左・中:フキアゲの滝頭の飛沫が、はじけ飛ぶ・・・その様は、まさにフキアゲの滝
▲右:滝末端のシャワーが滝底の岩盤にはじけ飛ぶ
そのシャワーを上と下から浴びながら、コップに汲み飲めば、喜悦する快感を得ることができる
こうした滝に出会ったら、迷うことなくご馳走にあずかろう
▲津軽の箱・タカヘグリ
フキアゲの滝を左に曲がると、大川最大の難所・タカヘグリのゴルジュ帯となる
昔からタカヘグリは、切り立った断崖、絶壁が連なり、
マタギでさえ近づけない「不入の門」「津軽の箱」と言われていた

「津軽の箱」と呼んだのは、秋田マタギだという
「津軽の箱」に獲物が逃げ込むと、マタギは雪崩の危険を感じて深追いするのを諦めたと言われる

マタギ道は、この難所・タカヘグリを大きく迂回する左岸の尾根筋にある
雪代や雨で増水すれば、何人も通過することは不可能になる
一時期、自然堰止湖で流れがせき止められたため、深い淵は土砂で埋まり、遡行しやすくなった
▲タカヘグリを迂回するマタギ道
大川支流ジョウトクの沢から分水尾根沿いに「津軽の箱」を迂回する杣道がある
740mピークまで高度差500m近く登らなければならず、オリサキ沢まで約3km・・・決して楽なコースではない
かつては、740mピークを南に下るとマタギ小屋があった

その小屋は、山菜採りやイワナ釣り、キノコ採り、狩猟のために利用された
白神山地の素晴らしさは、ブナ林の恵みの豊かさにあったことが分かる
白神山地で出会った杣小屋は、いずれも沢水が近くにあり、洪水や雪崩の危険がない台地にあった
その立地条件の素晴らしさには感服させられる
▲右岸から流入する小カチズミ沢出合いの滝。この滝上の小カチズミ沢は、青鹿岳に登る指定ルートになっている。 ▲カチズミ沢の滝・落差10m・・・これをカチズミの大滝と勘違いし、ここで引き返したが、後で調べると、このすぐ上流に落差40mほどの滝があり、それがカチズミ沢の大滝だった。残念!。
▲大川MAP
秋田県側の粕毛川と水沢川金山沢には鉱山があった
津軽の人たちは、大川支流大滝又沢沿いなどの杣道を辿って県境稜線を越え
秋田側の粕毛川、峰浜村の金山沢へ働くために通ったという

◆白神山地は、マタギの山
砂子瀬マタギは、追良瀬川と大川、赤石川源流
川原平のマタギは、赤石川下流と暗門川源流を猟場と決めていたという
もちろん、共同で猟をすることもあった・・・猟場を区分するナワバリと、共同猟は秋田マタギと同じである

白神山地周辺には、秋田県阿仁から獲物を求めて土着したマタギも多かった
大間越地区の高関辰五郎は、阿仁の生まれで、百頭以上の熊を獲り、白神の仙人と呼ばれた名人マタギだった
目屋マタギ最後のシカリ・故鈴木忠勝さんの先祖は阿仁からの移住者である

また、白神山地は、阿仁の旅マタギが活躍した猟場の一つで、伝説にも阿仁のマタギが度々登場してくる
白神山地のマタギも、本家と呼ばれる阿仁マタギの影響を強く受けていることは、実に興味深い

◆目屋マタギの神様「ジョウトク様」
大川支流ジョウトクの沢の名の由来となっている「ジョウトク様」は、目屋マタギの神様であった
かつて、マタギは、大川を通過する時、ジョウトクの沢の源頭に向かって拝礼するしきたりがあったという
また、ジョウトクの沢出合いから大川の奥地は女人禁制であった
大川支流大滝又沢の滝
▲大滝又沢15m滝・「洗礼の滝」
大滝又沢は変化に富み、苔生す小滝も多く、遡行も楽しい
滝頭は、美しい紅葉に彩られ、濡れた岩壁には、落葉が彩り、
白く輝く聖なる水が、末広がりに黒い岩盤を落走している・・・

その滝を滝壺に入って、聖なる飛沫を浴びながら見上げると、
白神の源流に鎮座する滝の洗礼を受けているような感覚を味わうことが出来る
この滝は右岸のガレ場を小さく巻く
▲清冽幽玄なゴーロ滝が連続している
心が洗われるような美渓が続く
大滝又沢は、その名のとおり、滝が連続する美しい谷だ
▲清冽なナメ滝と天然ナメコの美
緑の苔が斑状に生えたブナの倒木に、美しいナメコが生えている
背後には、清冽な流れがナメ滝シャワーとなって末広がりに落下

その流れは、茶褐色の岸壁にぶつかり、大量の飛沫をあげて右に直角に曲がって流れ下る
苔もナメコも湿気の乏しい所には生えない・・・つまり、ナメ滝周辺は大量の飛沫で湿度が高いことの証
この豊潤な景観の美には、なかなか出会えないだけに貴重な写真だと思う
▲苔生すゴーロ滝
黄葉したブナの森にすっぽり覆われた暗い谷・・・
巨岩の隙間を白い帯が幾筋にも連なり、かすかにたなびく冷たい空気に身も引き締まるほど美しい
▲20m滝
15m滝からまもなく、落差20mほどの豪快な滝が正面に姿を現す
まるで鉄壁を水の斧で削り落とすかのうように垂直に落下している
飛沫は凄まじく、デジカメを持って不用意に近づくことはできない

一見巻くのが困難に見えるが、右岸にルートをとれば簡単に巻くことができる
右の写真は、右岸を小さく巻き、滝頭を上から撮影
まるで人工の落差工のようにも見えるほど水平な岩盤には驚かされる

追良瀬川源流サカサ沢魚止めの滝
▲サカサ沢のナメ滝
▲サカサ沢魚止めの滝・下段5m ▲サカサ沢源流をゆく
▲ブナの原生林に包まれたサカサ沢
通常、沢沿いの湿った場所に生える渓畔林はサワグルミが圧倒的に多い
しかし、穏かなサカサ沢は、延々ブナ、ブナに覆われ、その母なる森と水の景観は素晴らしい
これに似た美景は、赤石川・石の小屋場沢が合流する地点より上流部である
いずれもブナの原生林と清冽な流れが一体となった白神山地独特の美渓である
真瀬川三ノ又沢ヨドメの滝
▲真瀬川三ノ又沢ヨドメの滝・多段40m

三ノ又沢源流二股を左に曲がると、まもなくヨドメの滝・大滝だ
春は、滝の手前がいつも巨大なスノーブリッジに覆われている
大滝は、一見4段の滝に見えるが、その上にも滝は連続し、総落差は40m以上に及ぶ

その両岸は屹立する壁が屏風のように連なり、大高巻きを強いられる
かつて、この滝の左岸を巻いたことがあったが、切り立つ崖が高く、杉林と猛烈な藪に悪戦苦闘したことがあった
三ノ又沢の源頭・分水嶺を越えると、追良瀬源流のブナの樹海と向白神岳の絶景を拝むことができる
入良川の滝
▲入良川ヨドメの滝二段10m ▲枝沢に懸かる白簾の滝
入良川は、日本海に注ぐ小河川だが、マス類が遡上する滝は源流部まで皆無に等しい
だからマス類が入るのに良い川ということで、入良川と呼んだのではないか
かつて、下流に堰堤がなかった時代は、サクラマス、アメマスが大量に源流部まで遡上した

八峰町のマタギから聞いた話によると、小入良川から分水嶺を越えて入良川に入渓し、
日本海から遡上したサクラマスを大量に捕獲したという
当時、捕獲の対象は、美味なサクラマスだけで、アメマスやイワナには見向きもしなかったという
▲入良川中流部のゴーロ滝 ▲白簾の滝その2
入良川中流部は、左岸絶壁から崩落した巨岩が累積し、見事な階段状のゴーロ連瀑帯を形成している

水沢川の滝
▲イワナ泊りの滝3m
下流から遡上したイワナは、この滝壷で一旦止まる
滝上に遡上しようと、イワナが渾身の力を振り絞ってジャンプする光景を何度も見たことがある
また、この近くにはハチの巣があって、滝壺の周りを飛んでいた
釣り上げたイワナの腹を裂くと、大量のハチが出てきて驚いたことがある
▲S字状ゴルジュに懸かる小滝
苔生す岩と清冽な流れが美しい
▲ゴルジュF1の滝 ▲ゴルジュF2の滝
▲苔生すゴーロ滝
水沢川源流は、イワナの遡上を阻むような大きな滝はないのが大きな特徴
▲左岸枝沢・白布の滝5m
▲ブナの新緑と小滝
▲左岸から流入する枝沢のゴーロ
分厚い苔に覆われた岩と幾筋もの白い帯となって落下する流れが美わしい
▲苔岩滝2m
岩だけでなく、右の岩に生えたブナの根元も分厚い苔に覆われている
流れは、その間を圧縮されたトヨ状に落下・・・勝手に苔岩滝と呼んでいる
▲水沢川ヨドメの滝
数段からなるゴーロ滝は、増水すれば、イワナが遡上できると思われる
しかし、このヨドメの滝上は、傾斜が急にきつくなり、水量も細流となることから実質上の魚止めとなっている
▲ヨドメの滝全景 ▲ヨドメの滝の左岸にあるブナの巨木
▲ヨドメの滝上部
苔に覆われた岩が累積・・・上るに連れて高度が増す
夏の渇水期には、水が地下を走り伏流となる
渇水期に川干し状態になるような場所にイワナは生息しない
津梅川支流小又沢カンカケ沢の滝
▲カンカケ沢F2・三段8m滝
このルートは、かつて、大間越の人たちがカンカケ沢を詰め、追良瀬川マス止めの淵へ
サクラマスを捕りに通った由緒ある杣道で、通称「マス道」と呼ばれている
しかし、歩く人が途絶えると、歴史に刻まれた道と言えども、あっと言う間にヤブに埋もれてしまう
▲カンカケ沢F1・5m滝
▲カンカケ沢F2・三段の滝8m ▲カンカケ沢F3・10m・・・大きな滝壺をもつ豪快な滝。先行した会長が滝頭に立つ。

カンカケ沢最大の滝はF3で、左岸には巻き道がある
一般に、標高380m地点の右岸から流入する小沢を詰めて、黒滝沢へ下降する
もう一つは、標高400m地点のカンカケ湧水流からガレ場を上って、分水嶺・標高830mから小沢を下降する
津梅川支流大又沢の滝
▲大滝20m
小滝と大釜が連続する谷を右に左に遡行すると、左から滝となって赤滝の沢が合流する
ここからほどなく谷は狭くなり、その奥に豪快に落下する大滝が目の前に現れる
夏なら大滝に近付き、滝の飛沫と大量のマイナスイオンを浴びながら「滝の洗礼」を受けるに限る
とにかく涼しく、最高の気分を味わうことができる

しかし、雪解けの頃は、広大なブナの森から流れ出す水は、桁違いに多く、
その流れは滝頭で一気に圧縮され、直立する黒壁を落下、凄まじい飛沫を撒き散らす
とても近付くことすらできず、ただただ遠くから目を丸くして眺めるほかない
▲三条の滝
夏ならシャワーを一杯に浴びて、聖なる滝の水をコップにくみ喉を潤すと最高
しかし、雪代の頃は、滝の形相は一変する
▲雪代の頃は、三条の滝が二条の滝に変身する
まさに目の前一面が白い瀑布でミニ白滝のような滝となる
滝壺は、煮えたぎった状態で、イワナの魚信は遠い
▲津梅川最大の滝・三階の滝
下から見える滝が三段になっていることから三階の滝と呼ばれている
この奥にも滝が連続し、総落差は40mを超える
岩盤は花崗岩で、渓も滝も一際美わしい
▲夏、三階の滝全景 ▲春の三階の滝は、雪代の水を集めて落下する瀑布が凄まじく、近付くのも容易ではない
この滝は、左岸を大きく高巻く
近年、歩く人が稀なのか、踏み跡が雪崩で崩壊し足場が悪い・・・滑落の危険があるので注意
滝上は、ゴルジュと滝が連続している
ウズラ石沢と同様、花崗岩の谷で変化に富み、遡行は楽しい
▲十文字滝・三段7m
左に大きくカーブした滝で、正面から見ると二段の滝しか見えない
この滝上で沢が、ちょうど「十」の字に交差していることから十文字滝と呼んでいる
▲カネヤマ沢出合いの滝、7m滝

本流から遡上したイワナは、この滝を遡上できず、イワナ泊りの滝となっている
滝上は、急勾配のゴーロと滝が連続、渓相は変化に富み、遡行は楽しい
▲出合いの滝の左岸を直登する ▲カネヤマ沢ヨドメの滝をゆく

世界自然遺産に登録される前は、遡行が楽しいカネヤマ沢を詰め、分水尾根を越えて、
ツツミ沢・標高約510m地点に抜けるルートとしてよく利用していた
残念ながら、指定ルートから外れてしまった
▲カネヤマ沢最大の滝、20m大滝

夏には、伏流となる急階段のゴーロを上りきると、流れは穏やかとなる
ほどなく、遥か頭上から一直線に落下する大滝が現れる
滝下の風圧は凄まじく、岩がオーバーハングになっている

時に、滝の飛沫に虹橋が架かると、その美はクライマックスに達する
かつて追良瀬川へ越える場合のテン場は、この滝下流の右岸が定番だった
ある日、この右岸を高巻くと、死体のようなものが壷に浮いていた
よく見ると、サルの死骸だった・・・この周辺は原生林も深く、サルやツキノワグマの生息密度も高い

◆白神山地源流の滝の魅力
「白神山地のブナの森は渓流と一体化している、これが最大の魅力的要素といえる。
そこに分け入ると、美しい森には美しい流れがあり、両者は不可分の関係にある」
(「白神山地ブナ原生林は誰のものか」根深誠著、つり人社)

幽谷の滝へのアプローチは、山棲み人が歩いた杣道を辿らなければならない
その杣道は、沢を登り、滝を高巻き、稜線のヤブを越えて源流に至る道なき道である
そこには、ブナ帯文化を象徴する歴史が刻まれている

春はクマ狩りと山菜採り、夏はサクラマスやイワナ捕り、秋はきのこ採り、冬は狩猟・・・
ブナの恵みを求めて歩いた杣道、ブナの幹に刻まれた刻印、沢や滝の名称、
杣人が滝上に移植したイワナの子孫が群れる源流、山の伝説、山棲み人の民俗知・・・
白神山地源流の滝巡りは、「白神に生かされた」ブナ帯文化に思いを馳せれば、その楽しみは百倍となる
参 考 文 献
「津軽白神山がたり」(根深誠著、山と渓谷社)
「ブナ原生林 白神山地をゆく」(根深誠著、立風書房)
 「ブナ林の四季 白神山地をゆく」(根深誠著、中公新書)
「白神山地ブナ原生林は誰のものか」(根深誠著、つり人社)
「白神山地・四季のかがやき 世界遺産のブナ原生林」(根深誠著、JTB)
「恵みの森 白神山地」(根深誠著、JTB)

参考:世界遺産・白神山地核心地域内指定ルート及び入山届出について
保存地域の入山は、津軽森林管理署(FAX0172-27-0733)に入山届出が必要。
その際「一日ボランティア巡視員」を引き受け、遡行後、
巡視の結果及び保存地区の管理のあり方等について意見を述べるようにしてください。
世界遺産指定地域内の河川は全て釣り禁止につき注意。
その他注意事項は、手続き要領を参照。

また、ここに紹介する源流の滝は、そのほとんどが日帰りが不可能で、
かつ登山道や山小屋は皆無・・・道なき道を歩く沢登りと数泊の野営を要する点に注意願いたい。

白神山地核心地域内指定ルート図&現地状況一覧表
核心地域入山手続き要領

◆世界遺産指定後の経緯
・平成5年(1993)12月、白神山地が世界自然遺産に登録。秋田県側は入山禁止に。
・平成6年(1994)1月、秋田県藤里町粕毛川源流部を禁漁区に設定。
・平成9年(1997)6月、青森県側の核心部は27の指定ルートに限って入山の許可制を導入
・平成10年(1998)7月、青森県側の核心部を流れる追良瀬川、赤石川、滝川、大川、笹内川を禁漁区に設定。

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