▲実写版映画「釣りキチ三平」のロケ現場となった北ノ又集落と三平応援Tシャツ 9月中旬、映画「釣りキチ三平」制作担当者Tさんから、この特製Tシャツをいただいた 映画の撮影がマスコミにリリースされたのは、撮影を目前に控えた7月上旬のこと 撮影のほとんどは秋田県内で、7月下旬から9月中旬頃まで行われた 古沢良太さんのオリジナル脚本を何度も読み返した 秋田の釣りキチとしては、血が騒ぐようなストーリーだからだ しかも、監督の滝田洋二郎さんは、現在上映中の「おくりびと」の作品で、 北米最大級の映画祭、第32回モントリオール世界映画祭グランプリを受賞 さらに第81回米国アカデミー賞最優秀外国語映画賞部門に正式エントリーが決定 さらに、さらに中国のアカデミー賞とも言われている中国最大の映画祭 「中国金鶏百花映画祭」で、作品・監督・男優の3冠を獲得するという快挙を達成 それだけに、実写版映画「釣りキチ三平」への期待は膨らむばかりだ |
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▲釣りキチ三平の村 五城目町北ノ又集落 |
▲三平一平家 坂道の高台にある茅葺き民家 |
▲美しき棚田 |
▲ロケ現場風景(北ノ又集落) 五城目町での撮影は、8月10日から19日まで行われた 三平家を訪問した魚紳から、三平と一平は、「夜鳴き谷の怪物伝説」を聞かされる その夢を釣るべく、幻の巨大岩魚を追う源流行が始まる 8月15日、漫画「釣りキチ三平」の作者・矢口高雄さんが北ノ又集落のロケ現場を訪れ出演者とスタッフを激励 矢口さんは、「原作のイメージ通りの風景。出来上がりが楽しみ」と話したという ▼矢口高雄公式サイトに掲載されているキャスト&風景写真 茅葺き民家が残る北ノ又集落は、1987(昭和62)年に公開された映画「イタズ−熊−」のロケ現場にもなっている 現在、三平家は空き屋だが、映画撮影記念として整備され、 看板と撮影の様子を写した写真パネルが貼られているという |
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▲五城目町「ネコバリ(根古波離)岩」・・・この周辺で渓流シーンの撮影が行われた 高さ約6メートルの巨岩の上に根を張った巨木の森・・・ その根が波のように張って離れた地面とつながっていることから「ネコバリ岩」と名付けられた 五城目町清流の会は、ネコバリ岩までの山道に砂利を敷いたり、軌道跡の草刈りなどを行っている |
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▲クライマックスシーンの撮影が行われた法体の滝(秋田県由利本荘市) 上段の一の滝は落差13m、二の滝は2.4m、三の滝は42mの3段からなり、 総落差は57.4m・・・滝壺は深く大きい・・・ 雨上がりの滝周辺は、白い霧に包まれ、「夜鳴き谷の怪物」が潜むイメージにピッタリだった |
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▲左:三平に夜鳴き谷の怪物がヒット 白組のVFX技術で、夜鳴き谷の怪物を釣り上げるシーンをどう表現するのか・・・最大の楽しみ ▲中:滝壺を泳ぐ魚紳と愛子・・・大岩魚を釣るより難しい撮影が続く |
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私のイメージ「釣りキチ三平の世界」 | ||
▼ふるさと秋田を代表する風景 | ▼ブナ原生林とブナ帯文化 狩猟、川漁、山菜・きのこ・木の実採りなど、ブナの恵みに依存した暮らし |
▼岩魚を追う源流行 山村の川魚の筆頭は、イワナ |
漫画「釣りキチ三平」の主人公・三平三平は、自然豊かな秋田の山村に生まれる 釣り名人、和竿作り名人として評判の一平じいさんと暮らす 三平は、大きな麦わら帽子がトレードマークで、祖父譲りの天才釣りキチ少年 大人顔負けの技術とアイディアで次々と幻の巨大魚、伝説の主を釣り上げる 漫画「夜泣き谷の怪物の巻」のストーリー 夜泣き谷を訪れた三平は、鳴神淵で「夜泣き谷の怪物」と呼ばれる片目の巨大イワナと対面する 丹下左膳になぞらえ、怪物を「左膳岩魚」と名づける しかし左膳岩魚は用心深く、大岩の穴から容易に出てこない 滝壺は大きく、並の竿ではポイントまで届かない・・・三平は、ある奇策で見事「左膳岩魚」を釣り上げる 古沢良太さんの脚本は、原作をベースにオリジナリティに富んでいる 魚紳の悲しい過去、両親を次々と亡くした三平と愛子・・・釣りが原因でバラバラになった家族 亡き父の夢と回想・・・魚紳に夜鳴き谷の怪物の話をした釣り仲間の正体は・・・ バラバラだった魚紳と三平、愛子の心が、夜鳴き谷の怪物を追っているうちに、謎が解け、次第につながってゆく そして感動的なラストシーンを迎える |
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▼熊の爪痕 | ▼マタギのナタ目 | ▼マタギ小屋 |
岩魚の生息分布は、広葉樹と熊の生息分布、マタギのテリトリーと一致している 「マタギが(イワナの)移植や放流に積極的であった事例には事欠かない。 秋田マタギの故郷、阿仁町には゛小沢を持っている゛という言葉があるが、 これは魚止めの滝上に人知れずイワナを放流し、隠し沢とも言うべき自前の漁場をもつことを かく称したもので、一人のマタギが2〜3本は持っていたと言われる」 (「渓流魚と人の自然誌 山漁」鈴野藤夫著、農山漁村文化協会) |
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▼昔・・・マタギが魚止めの滝の上に放流した「隠し沢」をめざす | ▼ブナの新芽を貪る野猿 | ▼深山幽谷 |
原作者・矢口高雄さんは、夜泣き谷のイメージについて、次のように記している。 「自然界はかたときも眠ることはない。 深閑たる山中の闇も、ひとたび耳をすませば、そのざわめきは真昼以上のものがある。 餌を求めてさまよう一匹のイタチ。 そのイタチの気配に、身の危険を察知したキジの夫婦が、夜陰をひきさいて飛び立った。 鳥は夜目がきかない。 だから、それゆえに悲鳴もけたたましく、深い谷間に響きわたる。 と、それに呼応するかのように、谷間の野猿の群れがいっせいにわめきだした。 その声は、あたかも谷間が夜泣きしているごとくに・・・ こんなイメージで描きはじめたのが、本編「夜泣き谷の怪物」だった。」 (漫画「釣りキチ三平 第3集夜泣き谷の怪物の巻あとがきより」) |
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「この夜泣き谷は 見てのとおり 景色の美しい ゆたかな山じゃ 春になりゃあ いっせいに 木の芽がふきだして 花が咲き いろんな山菜が ふんだんに ほころびはじめる 秋にゃ秋で 栗やトチ、山ブドウの実がどっさりみのるし・・・ ナメコやシメジなんかのキノコ類もボコボコはえてきよる んだから ここは 動物たちにとっちゃ 楽園よ」 (漫画「釣りキチ三平 第3集夜泣き谷の怪物の巻」矢口高雄、講談社) |
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▲子ども時代の雑魚とり | ▲ドジョウの味噌かやき | |
子どもの頃は、学校から帰ると親に見つからないように、 竿とバケツを持って、まっすぐ田んぼの水路に走っていった 親に見つかると、農作業を手伝わされるからだ フナ釣り、トジョウ釣り、雑魚とり・・・夏の夜ともなれば、カンテラとヤスを持って夜突きに明け暮れていた 貧しい農村では、子どもたちがとってきた魚は、大事な家族の食糧だった たとえ親に隠れて魚とりに興じても、咎めるどころか、大漁を一緒に喜んでくれた 食べ切れない魚は、囲炉裏に魚を串刺しにして焼き、ワラで作ったベンケイに刺して保存した 秋田の多様な釣法も川漁も川魚料理も、全て貧しい農民、山村民が ありったけの知恵と工夫を凝らした経験知から生まれたものばかりだ |
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▲源流の主・岩魚(イワナ) | ▲イワナの薫製 | |
イワナは、人里離れた深山幽谷に棲み、数々の伝説を持つだけに、神秘的なイメージがつきまとう しかし、秋田では、度重なる移植放流の歴史や「盆魚=イワナ」の風習、 イワナ職漁師など、山村の暮らしに最も密着した川魚の筆頭であった 今思うと、里地里山、田んぼ周辺の生き物の多様性は凄かった 漫画「釣りキチ三平」は、こうした雪国の暮らし・・・スロー風土から生まれた作品と言えるだろう |
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▼幕営(BC:ベースキャンプ) | ▼魚止めの滝 「出て来い 魚止めの主!」 |
▼感激の大岩魚を手に・・・これはウソじゃねぇ、夢じゃねぇぞ・・・ |
実写版映画「釣りキチ三平」は、シリーズ化を視野に入れているという その第一弾となる作品は、原作者・矢口高雄さんのふるさと秋田から出発すべきだ というこだわりから、ロケ地として秋田が選ばれた 今回の作品は、アユ釣りと渓流釣り・・・ 中でも夜鳴き谷の滝壺に潜む怪物岩魚を釣るシーンがクライマックス 特に渓流釣りファン、岩魚釣りファンなら必見の作品である 映画「釣りバカ日誌」のシリーズは、「男はつらいよ」シリーズ同様、 全国の観光地を舞台に「笑い」をテーマにしている 「釣りバカ日誌15」は、秋田を代表する観光地・男鹿市、大仙市(角館町、田沢湖町、西木村)で撮影が行われた 一方「釣りキチ三平」のロケ地は、一般的な観光地ではなく、 ふるさとの原風景を象徴するような山村、森と渓流、マタギ小屋、魚止めの滝など、 秋田の美しい自然と文化を背景に、釣りとは何か、自然観、人生観、家族観まで踏み込み、 最後のラストシーンは、感極まって泣かされるだろう 同じ「釣りバカ」「釣りキチ」を主人公にした映画だが、その内容は全く異なる 原作者の矢口高雄さんは、漫画について次のように記している 「ボクは、漫画とは、人間のリアリティの追求だと思う 人間にとって何が美しいことであり、何が醜いことであるか・・・ 幸福とはどんなものか そうしたことを追求するのが漫画だと思う」 (「釣りキチ三平第25集怪魚釣り編あとがき」矢口高雄、講談社) 「人間のリアリティの追求」・・・その精神は、オリジナル脚本にしっかりと継承されている また、現代人は、中高年登山ブームに象徴されるとおり、自然に飢えている 「自然」と「人」と「釣り」の素晴らしさを描くことによって、その期待に十分応える作品になるだろう 実写版映画「釣りキチ三平」の第一弾は、2009年3月20日公開 |
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実写版映画「釣りキチ三平」MEMO | ||
原作:矢口高雄(講談社「週刊少年マガジン創刊50周年」記念作品) 監督:滝田洋二郎(おくりびと、バッテリー、壬生義士伝など) 脚本:古沢良太(ALWAYS 三丁目の夕日、ALWAYS 続・三丁目の夕日など) 製作プロダクション:東映東京撮影所、白組 VFX:白組(アニメーション、CG、特撮、画像合成などの技術を得意とする映像製作プロダクション) 麦わら帽子の天才釣りキチ少年・三平三平:須賀健太 三平の祖父、和竿作りの名人・三平一平:渡瀬恒彦 プロの釣り師・鮎川魚紳:塚本高史 三平の姉・三平愛子:香椎由宇 三平の隣・幼なじみの少女・高山ゆり:土屋太鳳 |
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■秋田の主なロケ地 ・鮎釣り大会・・・湯沢市秋の宮の清流・役内川 ・三平家・山間部の小さな村・・・五城目町北ノ又集落 ・渓流シーン・・・五城目町ネコバリ岩周辺 ・三平の家の近くの川・・・八峰町ホタルの里(法体の滝近くの沢に変更) ・墓参り・・・横手市雄物川町 ・マタギ小屋・・・東成瀬村すずこやの森 ・魚止め滝・・・東成瀬村天正の滝 ・夜鳴き谷・・・由利本荘市法体の滝 |
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◆ 追 記 2008年11月24日 | ||
▼実写版映画「釣りキチ三平」最新情報 週間少年マガジン特別編集2008年10月25日増刊・・・「釣りキチ三平平成版VOL.7」(矢口高雄著、講談社、380円)に、矢口先生が秋田県五城目町北ノ又集落を訪れた速報記事「映画釣りキチ三平撮影現場訪問記」が掲載されている 茅葺き民家の前で滝田洋二郎監督に送った色紙を手に矢口先生と滝田監督の写真が大きく掲載されている・・・その色紙には・・・ 「男ってやつは いくつになっても 体の中にガキを2〜3匹飼ってたいるもんだ/釣りキチのムシってやツも その中の一匹なんだけど こいつがうずき出したら大変!!/なだめる方法は たったひとつ 釣りに行くしか ないんだよなぁ・・・」と書いてある ロケ現場で激励する矢口先生や、囲炉裏を囲んだ朝食シーン、源流行スタイルで魚止めの滝に辿り着いたシーンなど興味深い写真が掲載されている また、あとがき「長い道草」には、「三平」の実写映画について、矢口先生の夢が現実になった感激を記している・・・「シナリオも四稿を重ね、満を持した7月25日にクランクインとなったのだが、ボクにとって更なる喜びは、ロケ地の95%が三平のふるさと秋田を舞台としていたことだった」と記している ロケ地は、矢口先生が銀行マン時代に鮎釣りに通った役内川からスタート・・・そして北ノ又集落の古民家は、今年取り壊される寸前だったが、ロケ地に決まったことで、持ち主が修復・・・撮影現場では、地元のボランティアが100〜200食もの弁当を炊き出すなど、進んでロケ隊をバックアップ・・・「釣りキチ三平」がふるさと秋田に深く愛されていることを知り、「原作者として無上の喜び」と記している ▼脚本のベースとなったと思われるもう一つの作品 「釣りキチ三平平成版2 天狗森の巨大魚」(KCDX2、講談社) この作品は、世界自然遺産・白神山地の源流行をイメージした創作・・・この作品は、かねてから矢口先生に描いてほしかった山にこもって源流のイワナを追う「源流行・・・山釣り」・・・それは、小沢良太さんの脚本・実写映画「釣りキチ三平」のオリジナルシナリオと重なっていた・・・・・・しかも、私が夢に描いた、自然描写において他の追随を許さない矢口先生の力作だった ブナの原生林・・・「この森に自由に出入りできる人間ちゅうたら マタギ以外に考えられん・・・しかも そのマタギは古くより移しイワナちゅう習慣があったと聞く・・・」 源流行に出掛けた三平と魚紳ら3名は、源流に山ごもりし、イワナ止めの滝で引き返す その途中、山棲みでゼンマイ採りをしていた源さんから、イワナ止め滝の上流・天狗森の幻の沼で、野ネズミを丸呑みした巨大魚の話を聞く・・・聞いたからには、釣りキチの虫が騒ぐ・・・かくしてゼンマイ小屋にさらに一泊、再び巨大魚釣りに挑む・・・そして悪戦苦闘の末、1m近い大イワナを釣り上げる 家に帰った三平は、天狗森の沼にイワナを放流した白石じいさんの移しイワナの話を聞く その巨大魚は「30年前程前に移したもんに違いねえって・・・ 自分では、移しただけで、釣ったことも、獲ったこともなかったらしく・・・ よくぞ生きてくれたなんて感慨深げに涙なんか浮かべて、ただ・・・」 この物語は、根深誠さんが書いた「白神山地をゆく」の一節にもある・・・ 砂子瀬マタギの工藤成元氏が、以前、私に語ってくれたところでは、 赤石川のヨドメの滝ツボで十数尾の尺イワナを釣って、 それを上流に放してやったという。 「行ってみたいとは思うが自分はその目的を果たすこともなく年齢をとってしまい、今日にいたってしまったんだ。いまでは、山に寝泊りして赤石川の奥地まで行くことはとてもできないが、いったい、あのイワナたちはどうなっているのだろうか?」 この話を聞いてから、機会があって私が行ってみると、確かにイワナは定着していた。 「いたぞ。みんな、ずいぶん大きいやつばかりだ」 その夜、帰宅した私は工藤成元マタギに電話で知らせた。 マタギは年齢のせいもあって、耳が遠くなっている。 けれど、何度も聞き返しているうちに、私の言葉の内容がわかったようだ。 「うんだべぇ。うんだがぁ。ほんだがぁ」 と、狂喜したように叫んだ。 それから急に黙りこくって、声がでなくなった。 ・・・マタギは、感きわまったのだ。 ・・・果たして白神山地の奥深く、 ヨドメの上流に、ひっそりとイワナを移植放流したマタギの心は、 いったいなんであったのか? あらゆる自然の造形が生命の複合であることを思いいたせば、 マタギは、それらと密接にかかわり、 それらに畏敬の念や親近の情を寄せていた。 その心は、愛ではなかったろうか。 「白神山地をゆく ブナ原生林の四季」(根深 誠著、中公文庫 933円+税) |
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