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▽早春の渓谷
身を切るような冷たい流れは、点在する岩を噛み、苔生す岩壁にぶつかると、左に直角にカーブして流れ下る。
例年なら上流部の雪崩で濁流になることも少なくないが、その時季はとうに終わっていた。

午後2時前後になると、雪代のピークがやってくる。
だが、渡渉できないほどの増水ではない。
渓谷の風景は、残雪を除けば、いつもと何ら変わらない。
しかし、流れの岩に潜む岩魚の行動は、明らかに異なっていた。
▽異変を物語る個体・・・源流で釣れた33cm
いつもならスノーブリッジに覆われて釣りにならない源流部で釣れた尺岩魚・・・
黒いサビは雪代に磨かれ、全身真っ白な岩魚と化している。
もともと白っぽい花崗岩の谷だから、雪代が終わる5月下旬頃はこうなるのだが・・・
天気は曇天、今にも泣き出しそうだったが、急な尾根を登り源流をめざす。
振り返ると、雪崩斜面の窪地に残る雪はやけに細い。
今冬の雪は異常に少なかったことを物語っていた。

杣道に達する手前でしばし休憩をとる。
いざ登ろうとすると、ブナの木に上って我々を偵察していたサルが目に飛び込んできた。
背丈の低い笹薮には、ボスザルのような姿も見えた。
「サルだ、サルだ」と叫んでカメラを構えたが、撮る前に逃げられてしまった。
自然観察指導員の資格を持つ柴ちゃんが背後で叫んだ。
「この花、何だべぇ」・・・
自然観察指導員に聞かれるのは初めてのことだけに問い返すと、
「何、名ばかりのペーパー指導員さ」との言葉が返ってきた。
▼ブナの森は、「地衣類の楽園」
ブナの森は明るく湿気に富んでいる。
だから、幹から枝まで地衣類に覆われる場合がほとんどで、
白や灰色、灰緑色など、モザイク状を呈している。
その不思議な紋様は、岩魚の斑点とオーバーラップするものがあり、興味をそそられる。
残雪が消えた源流部・・・いつもなら対岸に大量の雪渓が残り
絶好のシャッターチャンスを与えてくれる場所だが、その雪渓が消えていた。
あいにく曇天で、花びらを閉じているものが多かったのは残念・・・
雪が消えた小沢の源流を釣る。
心なしか流れに力が感じられない。
全身黒くサビついている岩魚・・・
この沢は、いつも暗く、年中黒っぽい岩魚が釣れる。
この沢独特の特徴は、雪代前後に魚体の色が極端に変化しないことだ。
腹部の着色は赤系の橙色で鮮やか・・・
赤腹岩魚と呼びたくなるような個体が生息している。
頭部から背中、尾ビレにかけて黒っぽい印象を受ける。
側線より下の中央部に薄っすらと着色斑点があるニッコウイワナ系だ。
急な階段のゴーロ区間は、分厚い雪渓に覆われているはずなのだが・・・
ご覧のとおり、流れを覆うSBは完全に消えていた。
竿を担いで魚止めの滝をめざす。
例年なら、5月下旬頃にならないと釣りにならない魚止めの滝で竿を出す。
滝壺の真ん中に流木が突き刺さっていた。
その左側に振り込んだ小玉氏には、期待に反し9寸ほどの岩魚が掛かった。

私は、流木の右に振り込む。壷は深く、なかなか魚信がない。
餌を沈め粘っていると、鈍いアタリ・・・ほどなく滝壺上流に走った。
合わせる間もなく竿は満月状態に・・・尺物の手ごたえだ。
無理をせず、ゆっくり竿を上げ、下流に引きずり込むように取り込む。
全身、黒っぽい魚体の頭部から背中にかけて、虫食い状に乱れている。
精悍な面構えをしたオス岩魚の全長は、33cmだった。
サイズの割りに顔がデカイのは、餌が少ない証拠だろう。
左:久々に見る鼻曲がりの岩魚だった。
右:斑点は不鮮明で小さく、無着色斑点のアメマス系の岩魚だった。
2時間ほど小沢で遊び、本流を釣り上がった4名を追い掛ける。
スノーブリッジが消えた本流を駆け足で歩き、やっと追いつく。
昨日、焚き火で燻製にした岩魚をオカズに飯を食べる。

それにしても異様な光景だ。
かつて暖冬の年に歩いた時は、厚いスノーブリッジが連なり、谷は美しい新緑に包まれていた。
ところが、今年はSBがすっかり消えていたのに森は灰色のままだ。
雪代も例年より少ないことは明らか・・・それに反し、岩魚の活性度はやはり高かったようだ。
昼食後、私と中村会長は、懐かしの源流の滝をめざす。
外の4名は、竿を納め、先にテン場に帰ることに。
こんな源流部にも繁殖していた外来種・クレソン(オランダガラシ)
湧水が滴る斜面に群生していた。
帰りに採取し、岩魚の刺身の薬味として賞味。
外来種とはいえ、生のまま食べられるだけに、利用価値は高い。
小沢が合流する地点は、大物が潜む絶好のポイントなのだが、意外に水深が浅かった。
さほど期待もなかったが、とりあえず挨拶のつもりで餌を振り込む。
ほどなく魚信とともに竿が弓なりに・・・合わせると強いアタリがかえってきた。

引き寄せてビックリ・・・全身真っ白なホワイト岩魚ではないか。
計測すると、またしても33cm・・・これはどういうことなのだろうか。
理屈はどうあれ、33cmを2本も釣り上げたことにすっかり満足して竿を畳んだ。
雪渓がわずかに残る源流をゆく
絶好の壷は雪代で沸騰し、なかなか釣るポイントがない
中村会長は、70歳をとうに過ぎた最長老。
頑固一徹に長い仕掛けにこだわり続けている。
仕掛けは、目印と正確にポイントに振り込むために小さなウキを使用している。
しかし、白泡渦巻く雪代の時期は、こうした「線」で釣る釣法はなかなかヒットしない。
仕掛けは短く、オモリは重く・・・あくまで「点」で底を探る釣法がベストだと思うのだが・・・
早春、この魚止めの滝まで達したことは一度もなかった。
なぜなら、雪渓に埋もれて釣りにならなかったからだ。
今年は一転、ここまで谷を埋め尽くす雪渓は皆無だった。
二日目の成果品・・・尺岩魚4本、うち33cmの尺上が2本。
山釣り定食に申し分ない食材が揃った。
これまで尺物は出ても1本か2本に過ぎないのが現実だった。
上の写真は、早朝、長谷川副会長が釣り上げた尺岩魚の尾ビレのアップ。
この岩魚も33cm・・・なぜか大物3本全てが33cmというのも妙だが、
この沢で尺岩魚が7本も釣れたのは記憶にない。

同じ岩魚でも、尺以上になると警戒心が事の外強い。
大雨が降った後の笹濁りなど、異常な気象状態でない限り、
尺以上が立て続けに釣れることは滅多にない。
獰猛さと裏腹に警戒心がすごぶる強い遺伝子を持っているからこそ、
岩魚は、過酷な源流で勢力を拡大し、今日まで生き延びてきたのだ。
それを考えると、解せない出来事だった。
飴色に輝く尺岩魚の頭の燻製
骨酒にすると、焚き火の香りと野生の味が酒に滲みこみ、例えようのない珍酒となる。
清冽な流れとネコノメソウ
苔生す小沢の流れ
山菜よりいち早く生長するトリカブト
トリカブトは、根元を引っこ抜くと簡単に根ごと抜けてくる。
全草が毒だが、特に大きな根の毒性が強い。
帰路、日当たりの良い斜面に萌え出た山菜を探しながら小沢を登る
しかし、シドケやアイコは、まだポツリ、ポツリとしか生えていなかった
分厚い腐葉土と落葉が降り積もった斜面から一斉に顔を出したシドケ
茎の太いものを選び、根元から間引くように折り採る
周囲の森が芽吹く前は、山菜初期でピークには程遠い
杣道を下り、芽吹きが始まった下流の日当りの良い斜面を下りながら山菜を探す
ご覧のとおり、葉がモミジの形をしたシドケが群がって生えていた
こうなれば、山菜採りは楽しいことこの上ない
アイコは、ピークになると、写真のように群がって生える
一ヶ所見つければ、左右前後に連続して生えている
いたずらに歩かず、周囲を丹念に探すと効率よく採取できる
根元をつかみ、下流に折り採るようにして採取するのがコツ
こうすれば、一番美味しい根元から摘むことができる
深い腐葉土の中にある根元は、赤紫色と白に染まり、食欲をそそる美しさだ
下流部は、早くも萌黄色の新緑が谷から峰に向かって動き出していた。
シドケやアイコなど、ブナ林の山菜のピークは、ブナの芽吹きと新緑に包まれる頃だ。
今回のパーティは6名
岩魚釣りだけなら、パーティの人数が少ないほど楽しいかもしれない
しかし、メンバーが多いと、共同装備を分担できるから荷も軽くなる
テン場の設営から薪集め、焚き火、山菜と岩魚料理など・・・効率的に作業できる
焚き火を中心にした源流酒場も賑やかで楽しく、絵になる焚き火の風景も撮影できる
連休後半は、パーティがわずか3名だったが、待ちに待った「新緑と山菜」が待っていた・・・(続く)・・・

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