天国と地獄1 天国と地獄2 山釣り紀行TOP


和賀山塊堀内沢・・・甘露水口〜薬師岳〜薬師平〜小杉山〜喜左衛門長根〜八滝沢源流へ
▼薬師平のお花畑をゆく(天国1・・・稜線の花園と和賀山塊のパノラマを満喫)

夏の山釣りは、お花畑が鑑賞できる登山道を辿り、谷底へ一気に下るルートが楽しい
7月13日、台風4号は針路を東に変え、14日午後には九州南部に接近するとの情報・・・
台風は気になるものの、東北に接近するにはまだまだ先のはず・・・と安易に考え決行

●コース・・・薬師岳トイレ・休憩所(新築、宿泊もOK)-甘露水(370m)-ブナ台(620m)-滝倉水場(800m)
-倉方(990m)-薬師岳分岐(1170m)-薬師岳(1218m)-稜線お花畑-薬師平(1180)-小杉山(1229m)
-喜左衛門長根-985m分岐-薮こぎ-八滝沢BP(700m)
▼鼻曲がりの大岩魚(天国2・・・感激を釣る)

小杉山から白岩岳方向に向かうと、右手に堀内沢源流部の谷が一望できる
登山道に別れを告げ、薮と化した尾根を辿り、転がり落ちるように八滝沢に降り立つ
二日目、和賀山塊の主と再会・・・まるで山の神様の化身のような迫力
山釣りの鉄則に従い、魚止めの主は撮影後、滝壺に返す
三日目(7月15日)・・・7月の台風としては史上最大の台風4号が接近していた
直撃は免れたものの、薬師岳稜線の暴風雨は凄かった・・・地獄の苦しみを味わう
山は天気が良ければ天国、暴風雨ともなれば地獄・・・まさに「天国と地獄」を味わう山旅だった
▼真木白滝
真木林道を進むと、苔生す岸壁から清冽な水がシャワーとなって降り注ぐ滝に出会う
写真奥の滝は、岩場の割れ目から水が噴出している・・・夏のクソ暑さを吹き飛ばしてくれる見事な滝だ
かつてマタギ小屋があった場所に、新しい山小屋ができていた・・・これは有難い!
看板には、「薬師岳登山口公衆トイレ」とあるが、宿泊もOKのようだ。駐車場も広く、10台は駐車できる。
車は、甘露水まで入れるが駐車スペースが少なく、ここに駐車するのがベター

登山後に、汚れた靴を洗ったり、着替えや用足しにすこぶる便利だ
帰路、新潟から来たというおばちゃん3人組に出会う。
テント泊を覚悟していたようだが、この小屋に感激!・・・早速泊りに利用させてもらうとのことだった
▼甘露水(370m)
甘露水で喉を潤し、登山開始
一般登山と違って、渓流シューズor渓流足袋にピンソールを着けて歩く。山釣りは水陸両用の足ごしらえが必須。
甘露水口から、しばらく無味乾燥な杉林が続く
旧マタギ小屋ルートと合流するあたりから、ミズナラの巨木やサワグルミ、トチノキなどの広葉樹林帯へ
▼ブナ台(620m)
標高500m地点から始まる斜面を上り切ると、ブナ台に辿り着く
2泊3日の荷は20kg弱・・・重荷を背負って登るのは、やっぱりきつい
しばし休み、乱れた心臓を整える・・・ブナの幹には、ナタ目がたくさんあった
ブナが林立する九十九折の坂を上る ブナの木の根道をゆく
▼滝倉水場(800m)
やっと滝倉沢(曲り沢)の水場に達する
どんよりとした曇り空で、今にも降りそうな天気だったが・・・ここでのんびり朝食
オニギリをほお張りながら地形図を眺める・・・まだまだ先は長い
▼滝倉避難小屋跡
水場からほどなく、ブナ林に囲まれた広場に出る
地図に、「薬師岳避難小屋」と記された地点だ
かつては収容人員50名の大きな無人小屋があったという
水場が近くにあるので、キャンプするには最適な場所のように思う
▼サンカヨウの実
清楚な白花を咲かせる高山植物・・・花は終わり、藍色の果実をたくさん付けていた
ブドウのような甘酸っぱい味で美味い・・・かつて食べ過ぎで下痢をしたことがあるので撮るだけにとどめる
九十九折の急斜面を上ると、尾根沿いの起点・倉方に達する
▼倉方(990m)のブナ
ブナの実は、上向きにつくので、下から見上げただけでは見えない
左の写真のとおり上から観察すると、鈴なりに実をつけていた
右の写真のブナ・・・幹が四方八方にねじれている。稜線の風が強いからだろう。
▼倉方から尾根沿いに真っ直ぐの登山道をゆく
薬師岳まで高度差200m余り・・・
ほどなく痩せた急な岩場の道となる・・・展望が一気に開け、疲れも吹っ飛ぶ
甲山(かぶとやま、1012m)の稜線は、流れる雲に見え隠れし神秘的だ
深い谷・・・重畳たる山並みを眼下に従えながら歩くのは楽しい
▼ヤマルリトラノオ・・・トラの尻尾のような花は、クガイソウと似ているが、葉が二枚向き合って付いている点が決定的に違う。 ▼クガイソウ・・・葉が4〜8枚、輪生する。
▼ヤマブキショウマ
糸状に見える花は、チダケサシやヤグルマソウ、オニシモツケに似ているが
葉が卵形で先が尾状に鋭く尖っているが特徴
正面に尖って見えるピーク・薬師岳分岐(1170m)を目指して上る
振り返ると、仙北平野が一望できる
広大な緑の絨毯に散居集落と屋敷林が点在する田園空間・・・秋田を代表する文化的景観だ

薬師岳は、昔から山麓の人たちにとって信仰の山として知られている
自分たちの村を守ってくれる山の神、田の神が棲む山・・・お薬師さんから見下ろすふるさとの絶景は格別
薬師岳登山が絶えないのも分かる気がする
▼オオバキボウシ・・・淡紫色の筒状鐘形の花を総状につける。大きな葉は、卵状楕円形で、基部は心形であるのが特徴。 ▼ヨツバヒヨドリ・・・細長い葉が3〜4枚、輪生するのが特徴。花は白色、まれに淡紅紫色で、茎頂に散房状に密につく。
▼オオカサモチ
シシウドやミヤマシシウド、ハナウドなどと似ているが、判別の決め手はやはり葉の形
小葉や採集裂片が鋭く切れ込むのが特徴
白い小さな5弁花を多数つけ、全体的な姿が傘のような姿をしている
▼ミネウスユキソウ・・・その名のとおり、中央頭花を取り囲む白色が薄っすらと雪を被っているように見える
東北の山には、ミヤマウスユキソウ、ハヤチネウスユキソウ、ミネウスユキソウが自生している
▼薬師岳分岐(1170m)
右に針路をとれば、大甲まで1.9kmの分岐点
ここからニッコウキスゲのお花畑が続く散歩道へと一変・・・大パノラマとお花畑に心が弾む
▼シロバナニガナ
茎は上部で枝分かれし、白い小花を8〜11個つける
黄色の花を咲かせるハナニガナに似ている
薬師岳最後の上りを振り返り、お花畑の道を撮る
奥の谷は、岩手県和賀川源流部・・・
かつて、高下川登山口から和賀岳ルートを辿り、和賀川渡渉点にBP
和賀川源流部、そしてワシクラ沢合流点上流の険しいゴルジュ帯を探索したことがあった
それだけに、分水嶺から雲海に霞む谷を俯瞰すると、格別の趣が感じられた
▼タカネアオヤギソウ・・・花は黄緑で、茎の上部に小花を多数つける。葉は長い被針形で、茎を包むように下に集まる。 ▼ゴゼンタチバナ・・・登山道でよく見掛ける代表的な高山植物。白花4枚が十字に並んで咲く。葉は広い卵形で、6枚輪生するものに花がつく。4枚のものには花がつかないとか。
▼薬師岳山頂(1218m)
左の写真・・・小さな神社には、「お薬師さん」と呼ばれる薬師如来が祀られている
薬師岳は、薬師信仰に由来し、全国に同じ名前の山がたくさんある
簡単に言えば、病気を治してくれる神様・・・ここまで上れば、自ずと病は治るような気がする
▼ハクサンフウロ・・・紅紫色の5弁花で美しい
葉は、掌状に5裂し、ニリンソウやトリカブトの葉に似ている
▼オニアザミ・・・大きな花冠は紅紫色で、2〜3個の頭花が下向きにつく。花を支える黒っぽい部分が粘るのが特徴。
薬師岳から望む小鷲倉(左:1354m)と和賀岳(右:1440m)
ここから和賀山塊の盟主・和賀岳まで、まだ2時間も歩かねばならない
参考タイム・・・薬師岳-(35分)-小杉山-(40分)-小鷲倉-(40分)-和賀岳
▼薬師岳山頂から薬師平方向の風衝草原を望む
秋田県・袖川沢側の斜面は、一面黄色の絨毯を敷き詰めたように見え、ニッコウキスゲは満開のようだ

この尾根は、秋田県・袖川沢(左)と岩手県和賀川(右)の分水嶺
風がよほど強いと見え木が育たず草原となっている
こうした草原を風衝草原と呼ぶ
冬は季節風の影響をまともに受け、多雪と春の残雪が多様なお花畑を育んでいるのだろう
急ぎ荷を担ぎ、お花畑のど真ん中を通る登山道を下る
一際でかいオオカサモチ、ニッコウキスゲの黄色とイブキトラノオの白の競演
▼風衝草原の花園をゆく
7月、花の最盛期は、お花畑に勝るものナシ
重い荷を忘れ、夢心地に浸りながらスローに歩く
▼イブキトラノオ
ニッコウキスゲに負けないくらい背が高く、白から淡い紅色の花穂もでかい
山地から高山の日当たりの良いやや湿り気のある所に群生する
クガイソウも負けじと、大きな輪生葉を広げ、
トラの尻尾のような大きな花を太陽に向けて咲く
▼ニッコウキスゲ
鮮やかな黄色の絨毯・・・夏山を象徴する花の代表だが、
いつみても不思議と新鮮な感動を覚える
今年もこの花が無事だということは、山も無事、村も無事、
家族も私も無事、そして岩魚も無事・・・といった安堵感がある
夏の湿原は、ニッコウキスゲとワタスゲが一般的だが
イブキトラノオの白花はワタスゲよりインパクトが強く、見事なコントラストを魅せてくれる
分水嶺に広がる風衝草原のお花畑は、360度のパノラマを同時に楽しめるだけに素晴らしい
▼風衝草原のお花畑から袖川沢と仙北平野を望む
今から14年前、仙北マタギの狩場だった袖川沢を遡行したことがあった
天然秋田スギの巨木と山菜、山野草が見事だったことが想い出される

このページを作成している時、一通のメールが届いた
貴殿のエッセイを読んで心が振るえ、思わずメールしてます。”ああ同じなんだと.......。”そして、入渓するとき、
山頂から
鳥になるとき、山々に祈り感謝して遊ばせていただく、汎神教者?(笑)です。」・・・
この分水尾根からパラグライダーに乗り、鳥のように飛ぶことができたら・・・
山の神の化身になったような気分になるのだろうか
▼薬師岳と風衝草原のお花畑
帰路、台風接近で恐かったのは、風を遮るものが何もない草原があることを記憶していたからだ
しかし、実際経験してみると、お花畑は意外に風が弱かった
むしろ分水尾根の左側斜面(和賀川)は、歩けないほどの強風にさらされていたのに・・・
▼薬師平(1180m)
緩いお花畑のピークを過ぎると、薬師平の草原に着く
山小屋を利用せず、テント泊にこだわる登山者なら、ここにテントを張るに違いない
かつて、ここに避難小屋を建設する計画があったが、立ち消えになったという
窪地には、小さな沼(右の写真)があり、水面に低木林が映って美しい
▼シナノキンバイ・・・花は橙黄色のガク片が5〜7枚、葉は細かい切れ込みがたくさんある。ミヤマキンポウゲと似ているが、こちらは花が小さく梅の花の形に似ている。 ▼わずかに咲いていたコバイケイソウ・・・花の盛りは終わったようだ。帰路、強風に耐え切れず、この低木林の中に避難するとは・・・
▼薬師平から小杉山に向かう(左の写真)
道は、岩手県側の草原を辿るルートになっている・・・帰路、岩手県側から吹き上げる強風は凄まじかった

低木林の薮から、「ホーホケキョ・・・」とウグイスの澄んだ鳴き声が響き渡る
このさえずりは繁殖期を迎えたオスの鳴き声で、うるさいほど鳴き続ける・・・だが姿は見えない
若いウグイスは、「ホー」と鳴いたきり後が続かない・・・まだまだ修行が足りないようだ

同じく繁殖期を迎えたカッコウが「クワッコー、クワッコー」と頭上から聞こえてくる
この鳥は、モズやホオジロなどの巣に一個の卵を産みつけ、他の鳥にせっせと子育てをさせる戦略をとるらしい・・・
妻に子育てを任せ、ひたすら釣り三昧に終始した人生とカッコウの戦略が見事に重なっていることに気付く
何と怠け者の人生だったことか・・・深く反省せざるを得ない

▼カラマツソウ(右の写真)
▼小杉山(1229m)
小杉分岐は、和賀岳に進む道と白岩岳に進む道に分かれる
荷を下ろし、和賀岳にも挑戦してみたかったが、時間がなく断念
ここでのんびり昼食とする
▼小杉山から和賀岳を望む・・・奥のピークが和賀岳(1440m)

小杉山から和賀岳まで往復3時間もかかる
それでも登山者なら、当然、和賀山塊最大のピークを目指すだろう
だが山釣りは、そのピークをあっさり捨てて、反対方向の白岩岳ルートに進路をとる
そして登山道から外れた薮をこぎ、深い谷底へ・・・なぜそんなルートを辿るのか

新潟・中越沖地震は問いかける・・・人間が生きていくための必需品は何か
それは生命の源・「美しき水」であり、食事や照明の役割をする「火」であり、食べ物(山の恵み)・・・
その安住の地に眠ることができる寝床は、山の頂ではなく、その山懐にあるからだ

(2007.7.21・・・つづく)
 参 考 文 献
「ひとめで見分ける320種 ハイキングで出会う花 ポケット図鑑」(増村征夫著、新潮文庫)
「ひとめで見分ける250種 高山植物ポケット図鑑」(増村征夫著、新潮文庫)
「山渓ハンディ図鑑2 山に咲く花」(永田芳男、畦上能力、山と渓谷社)
「秘境・和賀山塊」(佐藤隆・藤原優太郎、無明舎出版)
「野鳥観察図鑑」(杉本学監修、成美堂出版)

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