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LUMIX DMC-FZ50実写テスト、トワダカワゲラ、初夏のキノコ(ウスヒラタケ、ナラタケ)、クマ、岩魚の燻製
連日、残業が続くと無性に岩魚に会いたくなる
幸い今日は一日晴れマーク・・・取り急ぎ、山釣り道具を車に放り込み、沢へと向かう
初夏の光・・・新デジカメの実写テストを行なうには、絶好のチャンス
岩魚を釣る、岩魚を撮りながら会話する・・・
不思議なことに、岩魚が誘う世界は、筋書きのないドラマが立て続けに起きる
夏になるにつれて、岩魚釣りは難しくなる
まして釣れない釣り日和・・・こんな時は市販のエサは×
初夏の岩魚釣りは、川虫採りから始まる(写真:サンショウウオとカワゲラ)
初夏の強い光に深緑が眩しいくらいに輝く
樹幹から鳥の囀り、谷底から沢の音・・・清々しい岩魚谷の朝・・・心は子どもに返ったように元気になる
▼ウスヒラタケ
谷沿いに細々と続く杣道を歩いていると、斜面の倒木に何やら白いものが見えた
初夏のキノコの代表、ウスヒラタケの群生・・・心は早くも舞い上がる
岩魚を追っていると、思わぬ副産物に出会う・・・岩魚が棲む森と谷は、やっぱ恵みの宝庫

だが、若い頃は、こうしたキノコが何一つ見えなかった
人間誰しも若葉マーク時代は、岩魚しか見えないもの
長年、岩魚谷を彷徨っていると、不思議なことに五感が多機能化する
山菜センサー、キノコセンサー、獣センサー、草花センサー・・・がやたら作動するようになる
だからこそ「岩魚から学ぶ」ことは山ほどある・・・ありがたいことだ
その名のとおり、ヒラタケより肉質は薄い
ブナやミズナラの風倒木に重なり合うように生え、収穫量も多い
全体的に白っぽく、成長すると傘は淡い灰色を帯びる・・・右の写真のように傘裏は白く、倒木に側生する
ナイフで切り取り、買い物袋に入れる・・・杣道に張り出した枝に吊るし、デポしておく
ウスヒラは、タケノコ汁に欠かせないキノコの一つ・・・歯ざわりがよく、味噌汁、鍋物の具、炒め物、煮物など
「岩魚の宝庫」かどうかは、川虫を採取すれば一目瞭然
落葉→川虫→岩魚・・・命の連鎖を考えれば、多種多様な川虫が生息していることが岩魚谷の前提条件だ
カワゲラは常に見掛ける川虫だが、左下の川虫は珍しい
カワゲラに似ているが、明らかに形が違う・・・トワダカワゲラ
▼カワゲラ(オニチョロ、キンパク)
岩魚釣りでは、最も多用する川虫の代表格
瀬の石の裏にへばりついている・・・下流に網を置き、石をひっくり返しながら採取する
下流から源流域まで生息しているので、釣りながら採取するのが効率的
尻からチョン掛けにすれば、動きも良く岩魚の食いも良い
▼トワダカワゲラ
1931年、青森県十和田湖に注ぐ小渓流で発見されたことから、トワダカワゲラと命名された
全体的に鎧を被ったような原始的な姿をしている
成虫に羽がなく、化石に出てくる昆虫そのもの・・・だから氷河期の遺存種と言われる
一般に夏でも水温が14度以下と低い山間渓流の湧き水や滝壺に生息
この川虫が生息している谷は、昔から自然環境が良く残されている証拠になるらしい

ちなみにFFの世界では、渓魚たちの常食エサとはなりえず、フライパターンとは無縁の水生昆虫に分類されている
これまで何度か採取したことはあるが、何となく気味が悪く、エサとして使ったことがなかった
今回初めて使ってみた・・・何と岩魚は一発でトワダカワゲラに食いついた
この沢には、なぜかトワダカワゲラが多く生息している・・・だから岩魚の常食エサの一つであるのは当たり前
いつも食べている川虫に、警戒することなく食いついたニッコウイワナ
初夏になっても顔がサビついたように黒いのが印象的な個体・・・
恥ずかしいのか、それとも臆病なのか・・・黒い顔は、いつも暗い岩陰に隠れているからに違いない
斑点が小さく不鮮明なニッコウイワナ
この岩魚も顔が黒い・・・トワダカワゲラが生息する谷の岩魚は、顔が黒いのだろうか
惚れ惚れするような魚体をズームアップで撮影
悪天候での撮影は、新デジカメに不満があった・・・だが、晴れると満足する描写が得られた
平瀬で川虫を採取しながら、苔蒸す谷をのんびり釣り上がる
見上げれば、サワグルミの深緑が青空に映えて美しい
初夏の渇水・・・瀬では川虫を沈める必要はない
瀬尻で待つ岩魚が見えたら・・・生きた川虫を水面に躍らせる
それを見た岩魚は、たまらず水面を割って食らいつく
まるで毛鉤釣りと同じ感覚で釣るのもオモシロイ
白い斑点が大きく鮮やか・・・鋭い歯を持つ岩魚
相変わらず黒い顔をした岩魚が釣れ続ける
釣るのも楽しいが、岩魚は個性があるだけに撮るのも楽しい
こうして岩魚を撮り続けていると、不思議な発見があり、家に帰ってからも楽しみが続く
編袋に入れて、大事に生かしたまま釣り上がる
岩魚のポイントに来れば、転がっている石を網の上に置き、釣りに専念する
網を無造作に置くと、岩魚が暴れ、気付いた時は流れの中に消えることがあるので注意
9寸前後の良型ならば、リリースせず、編み袋の中へ
狭い谷に光が降り注ぐと、寄り添う岩魚たちが網の中でもくっきり浮き立って見える
そこをすかさず撮る
下流部では、タニウツギの花は散っていたが、上流部に来るとご覧のとおり満開
谷を黄色に彩る初夏の花・オオバミゾホオズキも至る所に咲いていた
久々に川虫で釣ったが、オモシロイように釣れる
採取に時間はかかるが、何事も苦労をしないと感激もない
市販のエサでも確かに釣れる・・・しかし初夏の渇水ともなればサイズがワンランク落ちる
現地採取のエサは、ただ釣れるだけでなく、サイズがワンランクアップする
それだけ大物でも常食エサには無警戒になるからだろう
この沢にはニッコウイワナ系が多く生息している
上の個体は一見、アメマス系に見えるが、良く見ると側線の下に薄っすらと着色斑点がある
顔は、やはり黒くサビついている・・・全身に散りばめられた斑点が鮮明な個体は、何故か美しく見える
トワダカワゲラが氷河期の遺存種なら、この岩魚も氷河期の遺存種だ
そうした太古の息吹を残す谷を歩いているから、眠っていた遺伝子が騒ぐのだろうか
釣り上げた岩魚をそのまま遊ばせてカメラを構える
動き回る岩魚を撮るには、とにかく数打ちゃ当たる方式で撮るしかない
流れに渓畦林の深緑が映え、水面に光が走る中を岩魚が踊る
こうして不思議な絵ができる・・・足で撮る写真の世界・・・これは新しい表現技法と言えるかもしれない
他の魚たちが棲めない最上流部に生息する孤高の王者「イ・ワ・ナ」
その魅力に、ついつい奥へ奥へと分け入ってしまう・・・その魅力はだんだん強くなり、ついには魔力と化す
気付いた時には、水が消えていた・・・なんてことはしばしば
▼ミズ(ウワバミソウ)の雄花
オス株は緑白色の花を、メス株は葉の脇に淡い緑色の小さな花をつける
ミズ畑をかき分けるように進み、ひたすら岩魚を追う
黒っぽい魚体に白い斑点がくっきりと浮かぶ
岩魚の目線は、警戒しているのか、デジカメ目線になっている
キラキラと輝く流れは、水の質感を際立たせてくれる
光がまともに注ぐ岩魚の撮影は、水面が反射しない位置を選定するのが難しい
浅瀬に誘導すると、顔が光に反射しキラリと光った
大きな口には、鋭い歯でトワダカワゲラを飲み込んだ尻尾が見える
側線より下には、濃い橙色の着色斑点が鮮やかだ
岩魚釣り同様、感性と足で撮る・・・岩魚の世界は、それだけで十分絵になる
▼岩魚を象徴する斑点とパーマーク
岩魚の稚魚には、ヤマメのような薄い青色のパーマークがある
成長すると次第に薄くなる・・・上の個体は、良く見るとパーマークが残っているのが分かる
このパーマークは、アメマス系にはほとんど見えないが、ニッコウイワナ系には残る傾向があるようだ
岩魚の特徴は、何と言っても全身に散りばめられた斑点に尽きる
斑点の色は、白から橙色、黄色、柿色、朱色と様々で、遺伝子の多様性に富んでいる
苔蒸す岩をシャワーのように滑り落ちる小滝・・・清々しさに誘われて
汗を拭い、コップに入れて冷水を飲む・・・心の中まで沁みる美味しさ
振り向けば、一際デカイ葉を広げるホウノキ・・・その枝先に大きな花が光に向かって咲いていた
雲ひとつない青空の下、岩魚の魚信は止むことなく続く
飽きるほど釣り、飽きるほど撮ったはずだが・・・なぜかその魔力に吸い込まれてしまう
透明感溢れる水の流れの質感、煌く幽谷の美魚・・・新デジカメの描写力に納得した一枚
流心に泳がせると、小さな段差を体をくねらせながら上ろうとする
それを観察していると・・・泳ぐではなく、まるで水の中を歩いているような感じだった
流れに没した頭はゆがみ、胸の部分に飛び散るような光が走る
側線より下に鮮やかな橙色の斑点が際立ち、落ち込みの白泡がギラギラと輝く
▼岩魚は保護色
水中を泳ぐ岩魚は、慣れない人には見えない
岩魚は、谷の岩に同化できる能力を持っているからだ
だが、長年岩魚を追っていると、その姿を肉眼ではっきり捉えることができる
しかし、デジカメではその姿をとらえるのは無理・・・岩魚がどこに写っているのか、分かるだろうか
川虫や落下昆虫を腹一杯食べて、丸々と太ったメス岩魚
黒い顔は、やはりこの沢の特徴
全身黄色っぽい岩魚
腹部は鮮やかな柿色に染まっている
上二又近くの源流部・・・美魚を釣り上げ、その感激を楽しむために水溜りに泳がせる
浅瀬でかつ直射日光を避けると、岩魚を鮮明に撮ることができる
岩魚の撮影に満足して時計を見ると、12時をとうに過ぎていた
沢水を汲み、漬物をつまみにオニギリをほおばる・・・沢で食べる食事は、いつも清々しく美味い
黄色の草花と苔蒸す流れが続く源流部
斜面に林立するブナの森と笹薮も深くなる・・・何となくクマが気になるような景色へと一変する
ほどなく、小さな壷から尺近い岩魚が竿を絞った
岩魚から離れ、角度を変えながら撮影している時だった
サワモダシ(ナラタケ)が一個、岸辺の水面に浮いていた
背後を振り返ると・・・
▼現地調達のタケノコとキノコ汁・・・最高!言うことナシ
苔生すブナの倒木に、サワモダシが折り重なるように生えているではないか
もう一週間ほど早ければ・・・2/3は腐っていたが、食べられそうなものを選んで採取する
それにしても、なぜサワモダシが水面に落ちていたのか・・・
斜面の薮を見ると、何度も歩いたクマの道が・・・
▼クマが食べた痕跡
エゾニュウの真ん中に出た柔らかい部分だけを食べているようだ
一帯の薮は、この森最大の猛獣であることを証明するようになぎ倒されている
ちぎった茎には、クマの歯型がくっきり残っていた
なるほど・・・落ちていたサワモダシは、人ではなくクマが接触したものだった

クマが通った笹薮を観察すると、タケノコは大きく伸び、とうに旬を過ぎたものばかり
クマは、タケノコから多肉多汁の植物を好んで食べているようだ
上るに連れて、沢沿いの薮はクマの草食いの跡がやたらあった
左は、大きなフキの根元を食べた跡・・・右はエゾニュウを食べた跡
初夏の6月・・・クマは、タケノコや背丈が高く水分の多い植物を食べるために、笹原が広がる沢に集まる
さらに繁殖期を迎えるため、成獣は気性が荒くなっている
だからタケノコ採りのクマ被害は、やたら多い・・・
しかも残飯を平気で捨てるマナーの悪さが拍車をかける
▼食べ物目当てのクマと遭遇、タケノコ採りの男性、遺体で発見
6月14日、鳥海山にタケノコ採りに出掛けた男性が、クマに襲われ遺体で発見されるという悲惨な事件が発生した
「なんで、こんなことに」・・・周辺には、弁当の空き箱や空き缶、レジ袋が捨ててあった
遺体が発見された現場には、被害者が持っていた食料が食い散らかされていたという

人間の味を覚えたクマが、食べ物目当てに近付いた悲劇と推察されている
「山に残飯等ゴミを捨てるな!」・・・クマと向き合ってきた人たちにとって、これは絶対的な掟だ
そんな事件が起きた直後に、クマの痕跡をやたら見つけると、だんだん恐くなってくる
腰に下げていた熊避け鈴を大きく鳴らしながら釣り上がる
源流部に上るにつれて、沢は狭くなる
流れも細く、こんな所に岩魚はいるのか・・・
と疑いたくなるような小さな壷から、信じられないような大物が飛び出す
背後に獣の気配を感じる妙な快感を味わいながら、竿を納めることなく魚止めへ
ブナの森と岩魚とクマとタケノコとキノコは、全てフィールドが重なっている
クマを恐れていたら、野生の岩魚釣りなんて夢のまた夢になってしまう
クマとの無用なトラブルを避けるには、それなりの準備と心構えが必要だ
熊避け鈴で自分の存在を教えながら歩くことと、残飯やゴミを決して捨てないこと・・・実に簡単なことだ
▼魚止めの滝
誰しも魚止めに達すると、心ははやる
そこには、最上流に生息する王者が潜んでいるからだ
渇水ともなれば、意外に壷は浅い
カワゲラを倒木の下へそっと振り込む
サッーと黒い影が走り、竿はすぐさま大きな弧を描く
強引に手前に引き釣り込む・・・途中で、ふっと緊張の糸が切れる
さんざん釣り続けたハリスは、無理が重なり弱っていたのだろう・・・簡単にハリスを切られ「THE END」
▼ミヤマカラマツソウ・・・葉は卵形で丸い鋸歯がある ▼コンロンソウ・・・ワサビと似た白花を咲かせる
まるで山の神が造った庭園のような森が広がっている
この沢は、日帰りのキャパシティしかないが、岩魚も、山菜も、キノコも、クマも宝庫
こんな夢のような秘渓が、秋田には、まだまだたくさんある
氷河期の遺存種・トワダカワゲラと岩魚が多く生息している事実こそ、自然度の高さを証明しているように思う
おまけ岩魚画像集

岩魚の燻製
▼岩魚の燻製
年に1〜2回は、家に持ち帰って岩魚の燻製を楽しみたいもの
岩魚は山魚だから、冷凍にすれば味が格段に落ちる・・・冷凍保存は×
秋田では、昔から塩漬けにするのが習わしだ・・・味を落とさず長期保存するには塩漬けに限る
現場では、腹を割き、内臓と血合いをきれいに取り去る
塩がなければ新聞紙に包むか、現場で採取した笹の葉やフキ、ホウノキの葉で包みザックに担ぐ
(塩を持参していれば、その場で塩漬けにするのが一番)

車に着いたら、クーラーに入れ、できるだけ鮮度を保った状態で家に持ち帰る
ビニール袋に入れ、大量の塩を入れて、まんべくなく袋の上からかき回し、塩漬けにする
袋の空気を抜き、口を固く縛って冷蔵庫に入れ、次の週末までねかす
「塩抜き」は、最低一昼夜を要す・・・夏は気温が高いので、水に浸したまま冷蔵庫へ
数回、水を換え、塩抜きが完了したら、「風乾」へ
岩魚の首がもげないように、タコ糸で魚体から口へ吊るすヒモを作る
次に物干しハンガーに吊るし、扇風機で一晩あるいは一日強制風乾させる
燻製の良し悪しは、干物に近いほどしっかり風乾させることがコツ(左の写真)
市販のスモーク缶を使えば、チップを燻す時間は2〜3時間ほど(右の写真は燻製完成品)
昔の山人は、山で釣り上げた岩魚を塩漬けにして持ち帰り、ベンケイに刺して、囲炉裏で燻していた
その燻製法は、渓流魚の「手づくり燻製」として現代に引き継がれ、アウトドア調理法の最高峰に君臨している
飴色に輝く魚体、野生の香り、独特の味覚・・・「山魚」には、「燻製」が良く似合う

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