奥森吉その1 奥森吉その2 山釣り紀行TOP


様ノ沢に懸かる秘境の滝、幻の滝、山の神様の滝・・・九階の滝紀行
艶やかな黄葉のドラマが始まった奥森吉のブナ
今日も絶好のキノコ日和だが、幻の滝・九階の滝へ・・・
果たしてどんなドラマが待ち受けているのだろうか
▽様ノ沢源流・九階の滝コース
クマゲラ保護センター−(2.1km)−桃洞渓谷・赤水渓谷分岐-(1.2km)ヤスミバの沢-水場
-(0.7km)-右岸小沢尾根-(0.4km)-分水尾根・745mコル-右手の尾根・九階の滝撮影ポイント

▽ポイント2・・・745mコルから左へ-799m-急峻な東の尾根を下ると、最も真近に九階の滝を拝むことができる
▼スタート地点:クマゲラ保護センター・・・車止めが、このセンターより手前なのは解せない。せめて、広い駐車場があるセンター周辺まで車が入れるようにすべきでないか。 ▼分岐点・・・右に進めば、割沢森・森吉山方面へ。直進すれば桃洞渓谷・赤水渓谷へ。
▼ノロ川遊歩道のブナ林をゆく
ノロ川沿いの遊歩道は、苔生すブナの原生林が延々と続き、誰もが気軽に森林浴を楽しむことができる
森林浴コースとしては、通称「クマゲラの森」と呼ばれるとおり特Aランク
クマ避け鈴を全員腰に下げた7名のパーティ・・・全員が並んで歩けば、ジャラン、カラン、ジャラン・・・
笹薮で寝ていたクマが「うるさい〜!」と言いながら起きてきそうなほど凄まじい音が鳴り響く
▼ヤチダモ(モクセイ科)遺伝子保存林(左、右下の写真)
樹皮は灰褐色で、縦に深い裂け目があるのが最大の特徴
ヤチダモは、その名のとおり谷地(湿地)に生育し、秋には黄葉する
▼桃洞渓谷・赤水渓谷分岐点
クマゲラ保護センターから約2km、野生鳥獣センターから約3km
右の桃洞渓谷を1.4kmほど上れば桃洞滝、左の赤水渓谷を1.9kmほど進めば九階の滝コースの小沢に達する
▼赤水渓谷左岸沿いのブナ林
遊歩道からトロ場を覗けば、岩魚が悠然と泳ぐ姿を見ることができる
▼色付き始めた赤水渓谷
かつては、左の写真手前が入渓点だったが、淵が深く危険なため
現在は、大きな淵の上流に出る地点に変更されていた
右の写真のとおり、トラロープを頼りにナメ床に下りる
▼甌穴ノ滝(右)
真っ赤に色付き始めたハウチワカエデの紅、一枚岩盤に生えた潅木類の黄色が鮮やかだ
ナメの滝壺は意外に深く、岩魚が悠然と泳ぐ姿を垣間見ることができる
▼天国の散歩道「赤水渓谷」
渓谷のナメ床は、兎滝まで約3.5kmも続く
天然の歩道は、実に快適で、長大なスラブ壁を彩る紅葉も絶品・・・
赤水渓谷に分け入ると、誰もが感嘆の声を発する・・・まさに「天国の散歩道」
▼ミズナラの幹に着生したヤマブシタケを撮る、採る
ナメの渓に迫り出したミズナラの巨木を見上げる
何やら白いものが二個目にとまった・・・予想通り珍味・ヤマブシタケだ
幸い、長谷川副会長が長い柄の鎌を持参していたので、二個ともゲット

右下の写真は、採取したヤマブシタケの撮影会・・・7名全員がデジカメを持参
かつては考えられないことだが、デジカメの進化で今や一億総カメラマンの時代になった
▼第一の水場 ▼キノコ籠を頭に被る原住民?も紅葉の素晴らしさに天を仰ぐ
▼ハウチワカエデの紅と黄色の競演 ▼ナメの小滝と甌穴が続く美渓をゆく
▼第二の水場
ヤスミバノ沢を過ぎると、ほどなく第二の水場に達する
乾いた喉を潤し、紅葉に染まるナメ滝をゆく・・・爽快感は最高潮に達する
左の写真奥に砂場が見える・・・まさか道に迷って屹立するスラブ壁の滝頭から、この砂場を眺めようとは・・・
スラブとナメの渓が大きく右にカーブする地点・・・桃洞沢分岐点から約1.9km
その左手潅木に赤いスプレーがあるのを確認
その目印は、九階の滝を眺めるコースの起点になっている
▼尾根筋コースを辿る
様ノ沢との分水嶺に至る小沢はナメ滝となっているが、左岸の尾根筋にはっきりとした踏み跡があった
右の写真は、その尾根筋から赤水渓谷を見下ろすように撮影・・・
右手の屹立するスラブ壁は、ほとんど潅木類も生えないほど傾斜がきついのが分かる
尾根筋ルートから滝上に出ると、また滑りやすいナメの小滝が現れるが
トラロープがあるので快適に進む
ブナが林立する二又で休憩・・・左の沢方向に赤いテープが下がっていた
▼窪地状の小沢を詰め、コルへ
左の小沢を詰め、笹薮をかき分けるように登ると、745mの分水尾根に達する
不思議なことに、右にも左にも明瞭な踏み跡と赤い目印があった・・・中村会長が右の踏み跡を確認に行く
他の6名全員がまさかと思ったルートに行く中村会長の鋭い勘に改めて驚かされた

地図を見れば、左のコースが九階の滝に近い・・・眺望地点は左に違いない
残り6名は、左に進む・・・ちょっと古いが赤いテープを幾つも確認・・・
間違いないだろうと背丈を越える笹薮をかき分け上り続ける・・・これが間違いの元だった
▼745mコルの右を辿ると、九階の滝の全貌が見えるビューポイントへ(撮影:高橋金光)
確かに九段からなる滝であることが分かる
ただし、この地点からだと直線距離にして700mと遠いのが欠点・・・ズーム倍率の高いデジカメが必須
このベストポイントから撮影できたのは、7名のうち4名のみ
▼隠れた第二の絶景ポイントへ
左の踏み跡を辿った長谷川副会長と小玉氏、私の3名は、799mピークを目指していた
不思議なことに、踏み跡の要所要所に赤い目印が確実にあった
右ではなく左に針路をとったなら、誰だって、九階の滝を眺望する踏み跡だと勘違いするに違いない

右の写真のブナ・・・まるでブナの股間から突き出したチンポコのよう・・・思わず笑ってしまった
799mピークは、ブナの森に覆われ、全く視界が悪い・・・地図と磁石で九階の滝の方向を確認
東側の急な尾根を下る・・・左手に様ノ沢右岸の長大なスラブ壁が見える、次第に滝の音が木々の隙間から聞こえてくる
痩せ尾根は次第に転がり落ちるような斜度となる・・・

ここでふと思い出したのは、ノロ川から粒様沢へ辿った1999年7月の遡行
最短コースを辿ったのだが、屹立する痩せ尾根は我々の想像を越えていた
最後の下降で200mもある長大なスラブ壁に出くわす・・・20m程度のザイルでは、とても歯が立たない
屹立するヤセ尾根を潅木類につかまり、宙ぶらりんになりながらやっと下降した苦い思い出が鮮明に蘇った
▼様ノ沢源流に懸かる幻の滝・九階の滝
太平湖に注ぐ粒様沢は、上流で粒沢と様ノ沢に分かれる
特に様ノ沢は、巨大な一枚岩が連なるスラブ群が深い谷底から一気に迫り上がる秘境の渓谷
クマやカモシカが近付いても谷底に落とされるのは必須・・・だからこの一帯には獣も近付かない

かつて阿仁マタギは、この一帯を猟場にしていたが、それは粒沢であって
様ノ沢は猟場から外れていた・・・マタギは、クマも寄り付かない険谷を「神様の沢」として畏怖していたという
だからこそ「(山神)様ノ沢」と命名されたに違いない
目の前全てが、蟻地獄のように連なる幽谷の谷・・・
その一枚岩盤を滑り落ちる弱水が、激甚の落差を滑るに従って速度を倍化させ
まるで岩を削る斧に変身したかのように削り落ちていく

奥森吉最大の滝・九階の滝という稀有の景観を造り出したものは・・・水の力
まさに山の神、水の神の造形美・・・神々が宿る滝を目の前に声を失う

屹立する痩せ尾根から対岸の滝まで直線距離にして約300m・・・
ベスト撮影地点は逸したが、ここまでズームアップで撮れる場所は、ここしかない
巨大なスラブ壁を谷底めがけて「シャー、シャー」と滑り落ちる滝音が、実に心地良く耳に響く

滑り台に生えた潅木が折れれば谷底に突き落とされるような急斜面
その真っ只中で眺める九階の滝は、想像を絶するど迫力があった・・・
第二の絶景ポイントで幻の滝に満足した釣り馬鹿トリオは、
まるで「もののけ」にとりつかれたように森を彷徨い、挙句の果ては完全に道を踏み外してしまった
九階の滝に酩酊した3名は、痩せ尾根を落差100mほど登り返し、799mピークへと戻る
ブナとミズナラが林立するピークは、平坦な深い笹薮に覆われ方向を見失いやすい
先頭をゆく小玉氏は、旧ルートに残された目印にマンマと騙され、笹薮トンネルに吸い込まれるように下っていく
それを変だなと思いながらも、何かにとりつかれたように一列縦隊でついてゆく
穏かな尾根に仁王立ちしたブナとミズナラの巨木・・・
見たこともない神木を見上げては、キノコ木の根元を360度歩きながらシャッターを切る
これで方向を完全に見失ってしまったわけではないが・・・最も低いコルまで下がり、右に下れば赤水渓谷のはずだった

念のため、磁石を見ると、右は様ノ沢渓谷の東をさしているではないか
人間の勘がいかに当てにならないか・・・180度逆転していたのだ
地図を眺めるも、自分たちの位置を完全に見失ってしまった・・・
やむなく3名は、西側の赤水渓谷を目指して下った
一枚岩盤が続く窪地は、やけに歩き易い・・・まるで地獄谷に誘うかのように
この小沢は、行きに通った小沢の左ではなく、右の沢を下降している錯覚に陥る
倒木に生えていたキノコを採取し、緩やかな窪地を下った・・・

するとナメ沢は、いきなり垂直に切り落とされていた
遥か下を覗けば、広い砂地が見えた・・・通った記憶が全くない光景だった
もしかして九階の滝コースの起点より上流に出てしまったのではないか・・・

自分たちの位置を完全に見失ってしまった・・・だが、右手に林立する痩せ尾根を下れば沢に下りられそうだった
しかし、仲間が待っていることを考えると引き返すしかない
来た踏み跡を忠実に辿り、やっと799mピークまで戻る(1時間半ほどのロス)
ピークの尾根で、地図と磁石で確認すると・・・我々は、南に下るルートを何と西側の尾根に向かっていたのだ
屹立するスラブ壁の様ノ沢を左手にみながら南下を開始・・・何とか745mコルまで戻る
西側の斜面を下ると見覚えのある小沢に達する

二又まで下ると、仲間が作った倒木の三脚があった・・・これは中村会長外3名は無事帰ったサイン
赤水渓谷まで下ると、その出合い(左の写真)にも三脚があった
ここで完全にガス欠状態となる

ところが、ご飯にかけるフリカケと茶漬け、カンパン、スティックコーヒー、スープ類は
他の4名が背中に背負っていた・・・我々3名の背中には、湯を沸かす道具しか入っていなかった
やむなく非常食用のパンとゆで卵をほおばり、何とか動く燃料を補給する

右上の写真は、岩魚が4匹ほど群れていた甌穴
近付いても逃げる気配なし・・・禁漁の谷に遊ぶ岩魚は、人間の怖さをすっかり忘れているのだろうか
▼道に迷い、引き返した滝頭を望む
そこは第二の水場がある地点だった
見上げれば、滝の左の脇尾根を下れば何なく下りられるルートだった
結果論だが、我々が黄色の目印に騙されたルートは、九階の滝に至る旧ルートだった
思えば、赤い目印のテープは脱色し黄色に変色するほど古いものだった
深山の尾根歩きは、磁石と地図が不可欠
もし、これがなかったなら、屹立する斜面を様ノ沢方向に下りていただろう
まかり間違えば大事故につながりかねない・・・山を甘くみてはいけない・・・またしても山から謙虚に学ぶしかなかった
▼「もののけの世界」に誘う幻の滝全景(高橋金光撮影)
「谷を歩いて何時も驚嘆するのは水の力だ。
あんな高い山から、こんな水底まで、こんなに剛頑な岩をどうして掘り下げて来たのかと、
隆々とした肩骨を突き出している狭壁を仰いで、私は自然の彫塑の痕に眼をみはる。

柔軟な水が・・・巨大な岩石を押し流し、遂には絶大な天斧となって堅岩を割り、深谷を刻む
その雄大な彫塑の痕を見て歩く、私たち谷をゆく者は、高大な自然の成せる画廊に、
幾百世紀を丹念に刻んだ超人の傑作を鑑賞しながら行くのだから、その楽しみはユニークである」
(「渓(たに)」冠松次郎著、中公文庫)
参考文献
「森吉山ダムのふるさと」(モリトピア選書11、国土交通省東北地方整備局森吉山ダム工事事務所)
「ぐるっと 森吉山」(宮野さだひさ著、秋田魁新報社)
「渓(たに)」冠松次郎(かんむり まつじろう)著、中公文庫

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