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マイタケが生えるキノコ木、方位、種類と発生時期、生育過程と呼び名、発生時期、発生周期、ナラノキイシとは・・・
(写真提供bizenさん、きのこ日記)
今年初めて、マイタケ銀座と呼ばれる太平山系に分け入り、マイタケの魅力にとりつかれてしまった
数あるキノコの中でも、マイタケは、発見が最も難しく、姿・形・食味ともに優れている

ミズナラの大木も見事だが、その根元の周りを取り囲むように数株も連なるマイタケの美は圧巻だ
その造形美を撮ってみたい・・・ネイチャーカメラマンなら誰しも思うことだろう
だが、マイタケ初心者には、なかなか出会えないのが現実だ

プロのマイタケ採りは、高齢化し、その知見や技術を伝承する人も極端に少なくなった
ある日、図書館で見つけた一冊の本・・・「秋田太平山地のマイタケ」(佐々木仁八郎著、秋田中央印刷株)
この本をベースに、これまで山を歩いた経験と重ね合わせて、まとめてみた
これはあくまで、マイタケ初心者の目線でまとめたもので、事実かどうかは今後の実践で確認してみたい
●マイタケが生える「キノコ木」・ミズナラとは・・・
ブナ科の落葉高木
見分け方・・・葉がギザギザのノコギリ歯をもつ独特の形をしている
樹皮は黒褐色を帯び、縦に不規則な裂け目がある
山地に生え、大きいものは高さ35mにもなる
ミズナラは、水分が多く、燃えにくいことから、その名がついた
ブナより遥かに寿命が長く、巨木になる・・・別名「オオナラ」とも言う
果実はドングリとなり、リスやクマなどの餌となる
用材・・・家具、楽器、たる材、下駄の歯、シイタケの原木など
▼白神山地水沢川源流のブナ ▼太平山系のミズナラ
●ミズナラは、どんな場所に生えているのか
ブナとミズナラは混生する木だが、性格は全く異なる
ブナは陰樹、ミズナラは陽樹と言われる
陰樹とは、暗くてもゆっくり成長を続けられる樹木で、その代表がブナ
ミズナラは、親木が大きく成長すると、いくら種を落としても足下が暗く、すぐに枯れてしまう
だから多くのミズナラ林は、ブナ林にとって代わられる傾向にあるという・・・その代表が白神山地だろう
▼標高800m、奥森吉山系の尾根に広がるササとブナ林 ▼標高700m、白神山地のササとブナ林

白神山地や八幡平、太平山系などでは、標高が高くなるとササが出現する
ササに強いのは陰樹のブナだから、ミズナラは少ないことが分かる
また、暗い沢沿いや谷筋には、サワグルミ、ブナ、トチ、カツラ、イタヤカエデなどが生える
ミズナラは標高が余り高くなく、日当たりの良い脇尾根筋〜急斜面に生えることが多い
「標高400m〜500mを主体」に、奥地に行かなくともマイタケは採れることが分かる
山を立体的に歩き、どんな場所にどんな樹木が生えるのか・・・を体で学ぶことが、キノコ狩りの第一歩
▼トチノキの黄葉
山地の沢沿いに自生する渓畦林の一種。大きな葉が羽扇子のようにつくのが特徴。
▼サワグルミ
その名のとおり、沢沿いに自生する渓畦林の代表種。湧水が湧き出るサワグルミ林には、ヤマワサビの大群落を形成する。
▼クロモジ
ブナ林の低木類を代表するのがクロモジ。和菓子に、この木の皮つきの楊枝が良く使われる。芳香、殺菌力、丈夫さ、そして緑色の皮に黒い斑点があって美しい。
▼タニウツギ
山地の日当たりの良い場所に生える。花期は5〜6月。その名のとおり、日当たりの良い谷沿いによく自生する。

●太平山系の標高別樹種
▽標高300〜600m前後の尾根筋・傾斜地
ミズナラ、イタヤカエデ、サワグルミ、ホオノキ、トチノキ、ヤマザクラ、クリ、ミズキ等の大木
ヤマツツジ、クロモジ、タニウツギ等の低木

▽標高600〜800m前後
ブナ、ミズナラ、イタヤカエデ等の高木
ヤマツツジ、クロモジ、ヒメアオキ等の低木に加えてササが出現する
尾根筋には、少数のスギ、クロベ、キタゴヨウマツ等の針葉樹も混生

▽標高800m以上・・・ブナの純林+ササ群落
標高別の樹種を観察すれば、標高800m以上は、キノコ狩りの対象外であることが分かる
●マイタケが生える樹種
ミズナラが圧倒的に多く、稀にブナやクリ、ヤマザクラ類にも生える
ブナ、クロベ、キタゴヨウの根際に生えたマイタケは、ミズナラの根が張り出して絡み合っている場合が多いと言われる
●マイタケが生える方位は・・・
マイタケに限らず、キノコは一般に日当たりが良く風通しの良い場所に生える
だから方位は、南向き(南から北に向かって登る斜面)、東向きが最も良い

脇尾根沿いを上り下りしながら、まずミズナラの巨木を探す
目に止まったミズナラがあれば、急斜面を上り下りしたり、横にトラバースしたり・・・
キノコ採りの中では、最も重労働を強いられる・・・それだけに、見つけた時の感激も大きい
●マイタケが生える「キノコ木」とは・・・
マイタケ採りのプロは、数十年にわたってマイタケを収穫できるミズナラ大木を「キノコ木」と呼ぶ
キノコ木は、生木(立木)が最も多く、次いで伐根、倒木、立枯木など
一般に一箇所に数g〜数kgの株が2〜4株発生する
時には10数株もみられることがあるという
●マイタケの種類と発生時期は・・・
マイタケは、一般に白系、黒系の2種と言われているが、茶系を加えた3種が正解

▽白系・・・シロマイタケ、ワセマイタケ、ネズミマイタケ、シロフ、ワセフ、シロフサなどと呼ぶ
早出タイプで、9月上旬〜9月下旬まで発生、茎は長く枝は分岐が多い
大きな株や特大株が多数発生する傾向があり、全体で数十kgに達するものもある
ただし、容積の割には軽い
歯切れが悪く、他系統のマイタケよりも食味が劣ると言われる
▽茶系・・・チャマイタケ、アメイロマイタケ、チャフ、トビフ、アメフ、チャフサ、ナカデなどと呼ぶ
中出タイプで、9月中旬前半〜10月上旬前半まで
白系マイタケより数日遅れて発生する
葉はやや長く充実、枝は比較的分岐する
肉質は白系より厚く、舌触りは滑らかな良質の食感で、サックサックと歯切れがよく食味良好
他系統のマイタケより大型で、株数も多い
(写真提供bizenさん、きのこ日記)
▽黒系・・・クロマイタケ、ホンマイタケ、ビロードマイタケ、クロフ、クロフサ、シモフリマイタケ、シモフリなどと呼ぶ
遅出タイプで、マイタケシーズン最盛期の9月中旬後半〜10月上旬後半に発生
他系統のマイタケより遅く、霜の降る頃に発生する
葉は小葉で茎は短く充実、枝は分岐が少ない

一箇所で十数株も発生することがある・・・形が良く、容積の割りに重量は大きい
肉質は厚く締まり、歯切れが良い・・・3種の中では最上級の品質で、市場性が高い
霜降る頃にみられるマイタケは、「シモフリマイタケ、シモフ、シモフサ」などと呼び、最上級品
▼(写真提供bizenさん、きのこ日記)

●生育過程と呼び名
▽マメ・・・豆のように可愛い原基が現れ、マイタケ採りの人たちの目に見えるようになった状態
▽サワリ・・・マメから8日程度経過し、採るか採るまいか、触りたくなるような若いマイタケ
▽サカリ・・・サワリから8日ほど成長し、あたかも働き盛りに見える状態
▽スワリ・・・サカリから8日ほど経過し、森に座りながら次の世代に子孫繁栄のため、
より多くの胞子を飛散している大株状態
▽ナガレ・・・スワリから6日ほど経過して、傘からほとんど胞子を落とし、
悪臭が漂いキノコバエ等が飛来し、傘の肉が落ちる状態

マイタケ採りの最終目標は、当然のことながらサカリまたはスワリの大株
マメあるいはサワリのマイタケを見つけたら、1週間〜2週間後に行けば大株、特大株に出会う確率が高い
ただし、他の人に採られる場合もあるので、これだけは運に任せるほかない
●採取時期はいつ頃か
マイタケのスタートは、一般に9月上旬、終期は、10月中旬頃と言われている
マイタケの最盛期は、一般に9月中旬から10月上旬
しかし稀に11月上旬まで採取されるマイタケは、シモフリマイタケ、ビロードマイタケとして最上級品らしい
また、夏の盆前後に台風が吹くと成長が早いという

●発生の周期は・・・
深山のミズナラは、2〜4年間隔で発生する場合が多いという
しかし毎年発生する木もあれば、7〜8年も発生しない木もある

マメからサワリを採取したキノコ木は1〜3年、サワリからサカリ3〜5株採取したキノコ木は3〜5年、
サカリからスワリ6〜8株採取したキノコ木は6〜8年間隔で発生するという
また、サワリ、サカリ、スワリを10株以上も採取したキノコ木は10年以上経過しないと再発生しないらしい
ということは、大当たりしたキノコ木ほど、年数が経過しないと生えないことが分かる
●ナラノキイシとは・・・
マイタケが生える山を判別するには、ミズナラだけでなく、岩石の種類も決め手になるらしい
上の写真は、マイタケ銀座で知られる太平山系の花崗閃緑岩
この石を「ナラノキイシ」と呼び、マイタケ採りに欠かせない重要な石だという
つまり、標高800m以下のナラノキイシと傾斜地のミズナラ大木からなる原生林が
マイタケ採りの目安になると言えるのではないか・・・今後検証してみたい
▼和賀山塊のマイタケ ▼(写真提供bizenさん、きのこ日記)

●天然マイタケの撮影は難しい
まずマイタケ採りそのものが極めてハードで、かつ発見が難しい
運よく見つけたとしても、生えている斜面がきつく、安定した足場の確保が困難な場合が多い
しかもミズナラの根元は暗く、手持ち撮影では手振れを起こしやすい
これを防ぐには、ローアングル撮影が可能な三脚又はミニ三脚が必須だと思う

だが、どんなに優れたプロのカメラマンでも、見つけないことには撮ることすらできない
数株も連なるマイタケの美は、やはり高嶺の花・・・それだけに心惹かれるキノコの王様だ
マイタケ探しで出会うキノコ
▼ヤマブシタケ
ミズナラの枯幹や老木のくぼみなどに垂れ下がるように生える
左の写真のように、手が届かないような高い場所に生える場合が多く
柄の長い鎌がないと採取は難しい
▼シイタケ
ミズナラの大木を探し歩くと、その倒木に生えたシイタケによく出会う
マイタケがなかなか見つからない時は、シイタケ採りに切り替えると救われた気分になれる
▼ウスヒラタケ
ブナやミズナラの風倒木に重なり合うように生え、収穫量も多い
▼ミズナラの巨木の幹や根元に生えていたマスタケ
ブナの寿命は250〜300年ほどだが、ミズナラの寿命は、千年を超えるほど寿命が長い
それだけに生えるキノコは、マイタケを筆頭に、ヤマブシタケ、シイタケ、
ムキタケ、ヒラタケ、ヌメリスギタケ、ナラタケ、マスタケなど種類が実に多い
参 考 文 献
「秋田太平山地のマイタケ」(佐々木仁八郎著、秋田中央印刷株)
 生態測定調査と採取活動30年間の記録

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