頭の潰れた岩魚谷へPart1 頭の潰れた岩魚谷へPart2 山釣り紀行TOP


頭の潰れた怪魚、シラネアオイ、ゼンマイ、ウド、エゾニュウ、ニリンソウ、ヤマワサビ、尺岩魚、大雨と災い、タケノコ・・・
▼雪渓と新緑が眩しい谷を釣る
朝まで降り続いていた雨が嘘のように止み、強い陽射しが狭い谷間に降り注ぎはじめた
渓流の音に混じって、若葉の中から鳥たちのさえずりが流れてくる
竿を片手に、岩魚と山菜の宝庫を歩けば、眠っていた五感が鋭く反応するようになる
ほどなく、私の竿に頭の潰れた怪魚が掛かった
▼頭の潰れた怪魚
頭は、まるで人間のように丸く、目は前についている
頭部の紋様は虫食い状に乱れ、上顎は鼻がつぶれたような感じだ
口を上下に動かしているものの、その上げ幅は小さい
正面から見れば、まるで人の顔をした「人面魚」・・・アカンベ〜をしたような顔で私を睨みつける

「そろそろ岩魚を殺生するのはやめたらいかがか・・・
俺を釣ったら釣り師を引退するのがならわしだ・・・それに逆らうと大変な災いがあることを知っているだろう」
何となく不気味な予感が頭をよぎる
この谷の怪魚は、上顎が内側に巻き込んだように完璧になくなっている
その上顎のない頭に、針掛かりするのは偶然を期待する以外にない
それほど狙って簡単に釣れる怪魚ではない

斑点は、鮮やかな白のアメマス系の岩魚だ
頭のつぶれた岩魚は通算5尾目・・・うち私が釣り上げたのは3尾目だ
かつては、着色斑点を持つニッコウイワナ系が多く、20cm〜28cmと大型化していた
この岩魚は6寸程度と小さい・・・ちゃんと子孫を残していることが分かる
針を外し、リリースしたが、しばし浅瀬から動かなかった
ズームアップで上から撮る・・・頭から背中にかけて白い紋様が虫食い状に乱れている
別れを惜しむかのように、手ですくい上げて流れに帰す
▼シラネアオイ
この花が咲くとゼンマイシーズンが到来したことを告げる
▼この谷は、ゼンマイがやたら生えることから、「ゼンマイ谷」の異名を持つ
「毎日が日曜日」の長谷川副会長は、岩魚に眼もくれずゼンマイ採りに夢中だ
木灰又は重曹を加えた熱湯で10〜20分ほど茹で、冷水に一晩さらす
ゴサなどに広げて天日で干し、乾燥させる・・・その際、手のひらでもみ、繊維を柔らかくするのがコツ
多忙なサラリーマンには、なかなかできない技だ
岩魚はほどほどにして、斜面に群生する山菜モードへ
山釣りを長い間やっていると、なぜか岩魚釣りの誘惑が薄れてくる
決して逃げない山菜やキノコの方に一層心惹かれるようになる・・・それはなぜなのか
年を重ねるに連れて、採集の遺伝子が騒ぐからだろうか
▼アイコ(ミヤマイラクサ) ▼ミズ(ウワバミソウ)・・・根元が赤い赤ミズが美味い
▼天然ウド畑
ゼンマイが生えるような険谷は、頻繁に雪崩が起きる
その雪崩で堆積した腐葉土には、ウドの楽園が形成される
だからこの谷には、ウドがやたら生えている・・・写真のように若芽が開かないものが旬
至る所に生えていたウド
ウドは、かさばり重いので、旬のものを選び、数本採取するにとどめる
若いウドは、根から若芽まで全草利用でき、料理のバリエーションも広い
▼食べ頃のシドケ(モミジガサ) ▼ホンナ(ヨブスマソウ)・・・似た種(イヌドウナ)もあるが、茎が空洞になっているものが美味い
▼トリアシショウマ・・・若芽は食用 ▼ニオサク(エゾニュウ)・・・株の真ん中に出た若芽を切り、皮を剥いて塩蔵する。煮付け、汁の実が美味い。夏は、クマの大好物の一つ。
▼ヤマワサビ・・・人跡稀なワサビ畑の根は太い
太い根を選び間引くように数本採取する・・・岩魚の刺身の薬味として利用する
▼怪魚独特のアタリ
雨で増水した渓は、流れが速い・・・岩陰の緩い流れを狙ってエサを落とす
ツンツンツンと岩魚独特のアタリが竿を握る手に伝わってくる
竿を上下にあおると、猛然とエサに食らいつく・・・尺前後か・・・
強烈な引きを考えると、完全に針掛かりしているはずなのだが・・・
あえなく外れた弾みで、上の枝に空振りの仕掛けが絡まった
他の渓では考えられない怪魚独特のアタリだ
雪代が終わると岩魚の旬を迎える・・・だから、釣れる岩魚は全て丸々と太っていた
不思議なことに、着色斑点を持つニッコウイワナは釣れず、全て白色のアメマス系のみ
かつては、ニッコウイワナ系が圧倒していたのだが・・・
来る度に、釣れる岩魚が異なるのはどうしたことだろう
▼F3の滝
狭いゴルジュに懸かる滝は、鬱蒼とした原生林に包まれ暗い
滝壺は意外に広く深い・・・やっと竿を出した金光氏に尺岩魚が掛かった
▼怪魚が棲む谷を象徴するような岩魚31cm
尺物でも白い斑点は鮮明で大きい・・・北海道のエゾイワナと見紛うような個体だ
魚体の太さに比べ、頭と尾ビレが小さい
岩魚の口は、厳しい源流に生きる獰猛さを象徴する部分だが、その面影は全く感じられない
断崖絶壁に陸封された岩魚たちは、まるで落人部落に生きる特殊な遺伝子を持っているのだろうか
頭が潰れた怪魚の谷は、釣り人が抱く岩魚の常識をことごとく覆される
その最たるものが、真っ白な腹部・・・
源流に陸封された岩魚の腹部は、鮮やかな橙色から柿色に染まっているのが常識
ところが、この沢の岩魚は、真っ白な岩魚ばかり・・・
来る度に、何かに騙されているような魔力を感じる
暗いF3の滝は、左岸のロープを頼りに上る
滝上で昼食をとっていると、天気は急変、大粒の雨が降り出した
三日間で晴れたのは、わずか二時間ほどにすぎなかった
▼ニリンソウ
流れが穏やかになると、右岸に広々とした台地が広がっている
そこは、ニリンソウやヤマワサビ、トリカブトの楽園だ
一つの茎から二つの花を咲かせることからニリンソウと名付けられているが、
写真のように三つの花を咲かせるものも少なくない
雨にしっとり濡れた白花は、特に美わしい
▼白い花が満開のヤマワサビ
テン場周辺にも山ほどあるので、採らずに撮るだけにとどめる
岩魚谷の左岸に流れ込む小沢のブナ原生林
根元から中間部まで苔に覆われたブナが幾つも林立している
こうした新緑に覆い尽くされた沢は、年間絶えることなく清冽な水が流れている
豊かな水辺林は、太陽の光りを遮り水温上昇を抑える・・・ブナの森にやってくる昆虫も多い
怪魚は、俗界とは全く異なる桃源郷のような世界に棲んでいる
雨が降り出すと、全員が山菜モードに突入してしまった
ゼンマイ採りに飽きた中村会長が、やっと竿を出す
リリースサイズの岩魚を釣り上げては苦笑い

本来なら、釣りは雨が降れば絶好のチャンス・・・源流に行けば行くほどサイズはアップするはず
ところが、どういう訳か7寸程度とキープサイズには達しない
気まぐれなデーモンに騙されているような錯覚を何度も感じた
やっと良型サイズが釣れた・・・またしても無着色斑点のアメマス系だ
それにしても鮮明で大きな斑点には驚かされる
ニッコウイワナもいるはずなのだが、一匹も掛からなかった
雨は止むどころか、ますます強くなった
足早に魚止めをめざす・・・右俣の魚止めは、数段の小滝が連なる地点だった
振り返ると、広葉樹の山並みが雨に煙っていた
二又まで戻って気付く・・・サブザックのザックカバーがない
激しく降り続く雨に、ザックの中はびしょ濡れ状態
だからカメラを濡らさないようザックに入れることができなかった
二又にデポした岩魚を野ジメにし、撮影した後、首に下げたまま雨合羽の内側に入れて沢を下る
それが「頭の潰れた岩魚」を釣り上げた災いの序章だったとは・・・

下る途中、落としたザックカバーが流れに沈んでいるのを発見・・・これはラッキーだった
足早に下るも、雨足は強くなるばかり
F3の滝下にデポした岩魚を入れようとザックを下ろした
すると、首に下げていた愛用のデジカメがザックにからまって水溜まりに落ちてしまった

テン場に帰ってから電池を開くと微かに濡れていた
乾かしたが、時既に遅し・・・全く作動しなくなっていた
残念ながら怪魚の谷で採取した極上の成果品は全く撮ることができなかった・・・残念!
▼左下のデジカメは、雨に祟られ作動しなくなったPanasonic LUMIX DMC-FZ20(2005年4月購入)
500万画素、光学12倍ズーム・ライカDCレンズ、光学手ぶれ補正ジャイロ、重量約550g
頭の潰れた怪魚を釣ったら、恐れていた予感が的中してしまった。
電源を入れるとスイッチONになるが、シャッターを押しても全く作動しない
やむなくバージョンアップしたデジカメを購入するはめに・・・

▼右のデジカメは、災い後に購入したPanasonic LUMIX DMC-FZ50
1010万画素+光学12倍ズーム・ライカDCレンズ(F2.8-3.7)+光学式手振れ補正
+フリーアングル液晶モニター+一眼レフ並みのマニュアル操作
進化した分、重量は重くなり668g、SDメモリーカード2GB
そろそろ新機種が出る時期だから、価格は5万円前後と超お買い得だった
災い転じて福となす・・・怪魚の本当の災いは、もしかしてリリースせずにキープすれば起こるのだろうか
▼タケノコ(ネマガリダケ)・・・5月下旬から6月、数ある山菜の中でも間違いなく横綱級の美味さ
その美味さは一度食べると病み付きになる・・・だからタケノコシーズンになると、山菜採りの遭難は断トツピークに達する
初夏になるとクマは、チシマザサの若芽が土から顔を出す場所を移動しながら一ヶ月もタケノコを食べ続ける
野生動物にとっても、北国の最高のご馳走だ

ただし焼きタケノコ以外は、皮を剥いて調理しなければならず、しこたま面倒なのが最大の欠点
そんな時大活躍するのが、100円ショップで売っている万能皮むき器
タケノコの先端から根元にかけて、一筋の切れ目を入れるだけで簡単に皮を剥くことができる
今晩は、クマになったつもりでタケノコ汁に舌鼓をうつ・・・やっぱり美味い、美味い

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