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復活した岩魚たち、カタクリ、イチゲ、ギョウジャニンニク、ヤマワサビ・・・遡行日:2007年4月上旬
4月上旬、内陸部の渓流は、まだ雪が深く山菜や山野草は皆無。
春の息吹を五感で感じるには、岩魚釣りだけでは不十分。
だから早春の岩魚釣りは、雪解けの早い日本海側の小河川に限る。

特にブナの芽吹きが始まる前は、暗い渓谷の隅々まで光が降り注ぎ
釣り上げた岩魚を撮影するにはベストシーズンである。
生き生きとした岩魚を撮りたければ、芽吹く前のわずかな期間を逃してはならない。
早朝、急なガレ場を下り、何年ぶりになるか忘れるほどご無沙汰した渓流に降り立つ。
渓を渡る風は冷たく、空気も流れも澄んでいる。
岩場にフキノトウが萌え出し、早春の渓を味わいながら釣りの準備にとりかかる。
残雪がまだら状に残る灰色の山並み・・・殺風景としか言いようがない。
谷は、一転藪もなく林床まで春の陽光が降り注ぎ明るい。
かつては岩魚の宝庫であったが、奥まで林道が延び、隠れた源流部が伐採されてしまった。
岩魚が激減した渓をぼやきながら、源流部の無残な姿を見た時は愕然・・・
以来、5年以上も竿を出したことがなかった。
それだけに岩魚は未知数で、期待も薄かったのだが・・・。
真っ黒にサビついた早春の岩魚。
型も魚影も一回り回復していた・・・
型も上々、ほぼ入れ食い状態で釣れてくるではないか。
こうなりゃ、のんびり岩魚と戯れ、思いっきり岩魚の撮影に専念することに。
全身黒っぽく、典型的な早春岩魚
側線より下に橙色の着色斑点を持つニッコウイワナ
斑点が鮮明で美しい
釣り上げた岩魚を浅瀬に泳がせながらズーム撮影を試みる。
二人で撮影するには意外に簡単だが、全て一人で撮るのは難しい。
岸に寄せた岩魚は激しく暴れるので、おとなしくなるまでじっと待つ。
次に光で底まで見える浅瀬に誘導し、刺激しないように岩魚からそっと離れる。
光が水面に反射しない位置に立ち、高倍率の望遠側で撮影すれば、自然体の岩魚を撮影できる。
中間部に両岸絶壁のゴルジュが行く手を阻む。
ここは、渓流足袋にピンソールミニを付け、右岸を際どくトラバースする。
こうした滑り易い斜面を安全かつスピーディに遡行するには、
ピンソールより、着脱が簡単なピンソールミニが最適だ。
無着色斑点のアメマス系イワナ
下流部に砂防堰堤ができる以前は、源流部までアメマスやサクラマスが遡上していた。
アメマス系のイワナは、その子孫たちに違いない。
頭部から尾ビレにかけて全身が黒くサビつき、精悍な顔をしたオス岩魚。
腹部は鮮やかな柿色で、居着きの特徴をよく示している。
この沢の岩魚の特徴は、総じて斑点が鮮明であること
北海道に生息するエゾイワナのように、白い斑点が大きく鮮明な個体も生息している。
穏やかな流れから一転、階段状のゴーロとなる。
こうした絵になる区間は、岩魚の魚影が薄い。
残雪と懐かしい老木、まだ朽ち果てずに仁王立ちしていた
サビがとれ、全身が白っぽい岩魚も釣れた。
穏やかな瀬で釣れる岩魚は、総じて白っぽく、淵の深い穴に潜んでいる岩魚は黒っぽい。
早春にしては意外に瀬に出ている岩魚が多かった。
右は、痩せた個体・・・早春の頃は、こうした岩魚も少なくない。
食べても美味しくないので、撮影後リリースするのがベスト。
雪崩に押し倒された斜め木、所々に残雪が見える。
苔生す大きな岩陰に隠れ、そっと竿を出す。
ほどなく、ツン、ツン、ツン・・・という心地良い引きが竿を握る手に伝わってくる。
一呼吸置くと、岩穴の方向に走る。すかさず合わせる。
岩魚が凛とした空間に舞う・・・感激、感激のドラマが続く。
これだから岩魚釣りはやめられない。
光りを最大限に活かして撮る
手前の清冽な流れに、早春の光りが反射し、キラキラと輝く
頭部から背中にかけて青黒い魚体に大きい白い斑点が際立つ
側線より下は、大きな橙色の斑点が鮮明で美しい
頭部は、虫食い状に乱れ不思議な紋様に彩られていた
側線より下に淡い着色斑点を持つ岩魚
アメマス系とニッコウイワナの混血のような個体
魚体をS字状にくねらせているのは、逃げようと警戒している姿勢を表す
この後、蛇のように魚体をくねらせ歩き始めた
泳ぐ岩魚を鮮明に撮影
渓畦林が芽吹く前は、水面全体に光が降り注ぎ、水の透明度が抜群
自然な岩魚を撮影するため、できるだけ被写体から離れ
12倍ズームで何度もシャッターを切った。
水面に反射する光を無視すると、不鮮明な写真になってしまう。
尾ビレの上と下が鮮やかな赤に縁取られているのに注目。
斑点が小さく鮮明な個体・・・
同じ沢でも岩魚の個性が強く、遺伝子の多様性を強く感じる
その多様性が持続可能な岩魚社会を支えているように思う
最後に釣り上げた岩魚は、深いトロ場に泳がせ
のんびりオニギリをほおばりながら泳ぐ姿を観察
たくましい尾ビレの上下は、赤く縁取られ、斑点も大きく鮮明で
頭部は虫食い状に乱れている・・・この沢の標準的な個体
やっぱり深山幽谷に生息する岩魚は「神秘の美魚」と呼ぶにふさわしい
早春の柔らかい陽射しを浴びて、半日、野生の岩魚と戯れ、
帰路、一斉に咲き始めたカタクリやキクザキイチゲなどの草花たちにカメラを向け、
フキノトウやギョウジャニンニク、ヤマワサビを摘む・・・
山釣りの幕開けを強く感じる長〜い一日だった
わずか一週間前は、ツボミ状態だったが、
カタクリもキクザキイチゲも春の陽光を浴びて満開に・・・
生命踊るドラマ・・・「山笑う」季節がやってくる
一週間前は、芽さえ出ていなかったギョウジャニンニクの若芽(左)
仕掛け用のハサミをポケットから取り出し、一本一本丁寧に切り取る
右下は、今晩の夕食用に採ったギョウジャニンニクとヤマワサビ

キープした岩魚は、雪の塊を入れ新鮮な状態を保って家路に着く
約8ヶ月振りの岩魚の刺身にヤマワサビの薬味で一杯・・・コリコリした食感で実に美味い
ギョウジャニンニクとカタクリのお浸し、フキ味噌、岩魚の塩焼き・・・体中に山の命がしみわたる

身体はクタクタだったが、半年振りに味わう山の味・・・
岩魚と山菜・・・山から「授かる」敬虔な心が蘇り、すなおに山の神様に感謝、感謝の一日だった

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