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北ノ又沢源流の岩魚、葛根田川C1〜八瀬森湿原〜関東沢C2
▼北ノ又沢源流の美魚
源流でも、薮こぎを回避したくなるほどの猛暑が続いていた・・・本日も快晴、釣れない釣り日和
しかも渇水で釣り人の姿は丸見えなのだが、不思議と岩魚のアタリは止まらない
ナメを聖なる水が滑る岩床と岩魚・・・八幡平の源流を代表する独特の岩魚で美しい

頭部から背中にかけて青黒く、側線前後の斑点全てが赤橙色の着色斑点
腹部は、燃えるように鮮やかな赤橙色に染まっている
聖なる水に、聖なる岩魚が潜む別天地・・・それが北ノ又沢源流
▼ナメと岩魚が群れる滝壺
低い姿勢で滝壺にアプローチし、右の淀みに目一杯振り込む
竿と仕掛けが一直線になった状態で、すぐに竿を引っ張るようなするどいアタリ
その引きの強さにつられて強く合わせてしまった・・・ハリスはあっさり切られTHE END
▼オクトリカブト(花期8〜10月)
ヤマトリカブト群の一つで、北日本に分布・・・世界で二番目に毒性が強いトリカブト
木漏れ日を浴びて、楽しい、楽しい源流の岩魚釣り
20年前は、足跡が皆無だったが、砂地に数人の足跡があった・・・沢登りの人たちだろうか
▼ブナの渓畦林に包まれた岩魚の桃源郷

20年前の記録には
「この悪場を抜けると、そこはこの世の別天地、まさにイワナの秘境であった。
第一投目で良型の黄金イワナが宙空を舞った。
どこまでも穏かな瀬、ナメ床、ナメ滝、釜が続く。全てのポイントにイワナがいる。
偵察隊のイワナが瀬尻から走っても、その壷で釣れてくる。
まるで釣り糸を知らないかのようだ。」
当時、「魚隠しの滝」の突破に悪戦苦闘しただけに、感激が大きかった記憶が鮮明に蘇る
極論すれば、岩魚の魚影は、過去も現在も変わらない
ごく普通にみられるニッコウイワナも生息している
ただし、斑点の橙色は、やや赤味を帯び、腹部は鮮やかな柿色
▼無垢な岩魚
左の写真は、接近しても逃げなかった岩魚をズームアップで撮る
あるナメの滝壺では、数十匹の岩魚が群れる姿を久々に観察
岩魚が群れる沢は、生きている実感がフツフツと湧いてくる
左:穏かな瀬は、渇水でポイントは少ない・・・瀬から岩魚が走る姿を見ながら、先を急ぐ
右:透き通るような聖水が滑り落ちるナメ滝
夏の源流は、ナメやナメ滝の続く沢が清涼感を誘い、最も心地良い
▼ヤナギタンポポ(花期8〜9月)
日当りの良い河原に群生していたヤナギタンポポ
山地のやや湿り気のあるところに生える
頭花は舌状花だけからなり、黄色い花を多数つける
▼昼食・・・現地調達の刺身
余りの暑さに、昼には早いが日陰で昼食とする
良型2尾をさばき、のんびり刺身を造る・・・昨日の塩焼き岩魚と合わせて岩魚づくしの昼食
何度食べても、山で食べる岩魚料理は最高だ
▼ソバナ(花期8月)
花はツリガネニンジンに似ているが、花冠の裂片は反り返っている
花の中心にある花柱は花冠から出ないのが特徴
8月の沢では、特に美しい花の一つ・・・滝周辺や岩場など、至る所に咲いていた
昼食前に、夕食用の岩魚を確保・・・生かしたままデポしておく
後は、のんびり釣りながら岩魚の撮影を楽しむ
上の写真は、釣り上げた岩魚を針から外し、天然の生簀に放しシャッターを切る
いつの間にか、生簀の岩魚は2尾に・・・
撮影に夢中になっている間に、相棒が上で釣り上げた岩魚を放り投げたもの
偶然にも、絶好のシャッターチャンス到来

警戒心の強い岩魚は、逃げようとして岩陰に頭を突き刺し絵にならない
無垢な岩魚は、様々なポーズをとって撮影に協力してくれるからありがたい
▼北ノ又沢の標準的な岩魚
一般的にニッコウイワナ系の着色斑点は、側線の下にある・・・側線より上は無着色斑点
この沢の岩魚は、着色斑点が濃く、側線の上にもあるのが特徴
体色は黄色味を帯び黄金岩魚に近い
側線より上の無着色斑点は小さく、頭部に虫食い状の斑紋は見られない
細流となった源流部
ナメ滝が幾つもあるが、明確な魚止めの滝はない
どこまでも岩魚は生息しているが、渇水のためか、8寸以上の岩魚は下流に集結しているようだ
どこまでも続く穏かな源流部・・・小岩魚が瀬尻から盛んに走る
結果は・・・流れが細くなるにつれて岩魚の型は小さくなった・・・7寸、6寸、果ては5寸
まるで種沢的な世界に・・・一日岩魚と遊んだ満足感を胸に竿を畳む
20年前の記録の最後には、次のように記している
「北ノ又沢の二段20mの滝のゴルジュに守られて、釣り人の侵入を受けずに息づいていたイワナたち。
かつて生保内職漁師が滝上に放流したものか、あるいは別人が隠しイワナにしていたのか、
私たちは知るゆえもない。だが、奥羽山脈の中では、こんなイワナ谷に出会う幸運も、ときにはあるということ」
▼避暑地に群れる赤とんぼ
平地に広がる田んぼと水の源を結ぶ代表的な生き物・・・それが赤トンボ
過酷な源流に生きる岩魚の貴重なエサでもある
この生き物の連鎖を考えると、我々人間も山に生かされていることが分かる
▼岩魚の魚影調査考
春一番の入渓・・・岩魚がスレておらず、最も釣り易いシーズンであることは釣り人の常識
しかし、入渓者が増えるにつれて、岩魚はだんだんスレて姿を見せなくなる
まして先行者がいれば、岩魚の影すら見えなくなる

夏の岩魚釣りは最悪の季節・・・
源流に行けば、いつでも簡単に釣れる、あるいは岩魚が走る魚影が見られると思うのは、
人間側の勝手な思い込みに過ぎない
一般的に大物ほど警戒心が強いから、ヒットするのは警戒心が弱い小物が多くなる
夏の源流では、こうした一時的な現象をとらえて、岩魚が激減したと錯覚する人が多い

私も山釣り初心者時代は、入渓者が増えたことを理由に、岩魚が激減したと、勝手に思いこんでいた
岩魚が激減したのでは・・・と思っていた沢に、翌年の春一番に入渓してみると、
岩魚がどこから湧いてきたのか、不思議に思うほどの「入れ食い」を経験することはよくあること

懐が深く、ブナの森あるいは混交林が広がる岩魚谷に限れば・・・
昔も今も、岩魚の魚影は変わっていないことに気付く
それはブナの実や山菜、キノコなどが、豊作・平年作・凶作を繰り返す自然現象と同じような気がする

できるだけ正確に岩魚の魚影を確認するには、スレていない春一番が最も適している
岩魚バカを自称する釣り師なら、沢をくまなく歩いて確認してほしい
山の神の領域に棲む岩魚は、人間の浅はかな知恵を超えている
▼ウスヒラタケの味噌汁
ウスヒラタケは、春から秋まで年間を通してお世話になっているキノコの代表
非常に香りがよく、クセも全くない・・・山では味噌汁が定番、歯切れの良さが特徴
よく味をすうので洋風の煮込みや各種鍋物に合う
肉厚のヒラタケは、晩秋から春にかけて生える
▼岩魚の刺身 ▼岩魚の味噌タタキ
▼源流のクライマックス
葛根田川源流の二又は、沢登りの銀座と聞いていたが、ここに二日泊っても誰も来ない
他のパーティが来たなら岩魚をご馳走しようと、少し多めにキープしたのだが、予想が外れてしまった
焚き火の周りに6本の串刺し岩魚を並べ、山の料理をツマミに酔いしれる
静まり返った暗闇に、心地良いせせらぎの音、焚き火のはぜる音が不思議な旋律を奏でる
狩猟・漁撈採集時代に返った錯覚に陥り、下界では落ち着かない遺伝子がやたら落ち着く・・・
だから私にとって、焚き火を囲む源流酒場は、何にも代え難い
▼三日目・・・八瀬森湿原を越えて関東沢をめざす
快晴から曇り空へ・・・天候は下り坂のようだ
テン場から北ノ又沢を200mほど進むと、右岸に6mの滝が懸かっている
飛沫を浴びて入り口の滝を越える
滝を越えると、階段状のゴーロが続く
不思議なことに岩魚の姿は全くなかった・・・
入り口から滝とゴーロが岩魚の遡上を阻んでいるからだろうか
しかし、岩魚が遡上できない滝があっても、他の枝沢全てに、岩魚が生息している事実を考えると納得できない
ゴーロで一気に高度を稼ぐと、一転穏かなザラ瀬に変わる
岩魚がいないか・・・眼を皿のようにして探すも、影すら見えない
やっぱり岩魚はいない・・・まるで死の川を歩いているようで元気がでない
延々と続くザラ瀬が終わると、歩き易いナメ(右の写真)が現れる
▼底まで見える団扇形の甌穴 ▼地球の歴史を語る縞状の岩盤
難所が一つもない穏かな源流を辿ると、突然巨大なナメ滝が行く手を阻む
総落差は20m(左の写真)・・・右岸に、よく踏まれた巻き道が・・・沢登りの銀座ルートであることが分かる
20mナメ滝を越えると、今度は8m(右の写真)ほどのナメ滝が現れる
直登できそうだが、重い荷を背負っているので、左岸の薮を巻くことに決定
最後の詰め・・・薮こぎの斜面に備えてピンソールを着ける
8m滝は、ちょっと下がって痩せ尾根沿いの薮を巻く
ネマガリダケは、予想以上に密生している・・・かき分けながら進み、滝の上に出る
頻繁に磁石で確認しながら湿原に出るはずだったが・・・
左:深山に生えるツバメオモトの実
右:登山道の向こうに湿原が広がっている

滝を越えたら、左、左と進めば良かったのだが・・・1168mピークの東側斜面に出てしまった
しばらく登山道を歩くと待望の湿原に出た
薮こぎが続いた後だけに、広々とした湿原に出ると解放感に満たされる
▼八瀬森湿原に咲くミズギクの群落
この湿原は、東側になだらかに傾斜している
写真の奥が最も低く、小さな沼がある・・・その一帯の湿原にミズギクが群生していた
▼ナガボノアカワレモコウ
▼ナガボノシロワレモコウ
枝先に、白緑色と紅紫色の二種類の花穂をつけるワレモコウ属の花
夏花の最盛期が過ぎた湿原では、やたら背が高く目立つ花だ
中でもナガボノアカワレモコウ(右)が多く咲いていた

▼タチアザミ(右下:花期8〜10月)
湿地に生え、頭花は枝先に直立し、上向きに咲く
▼ゴマナ(花期8〜10月)
八瀬森湿原(標高1130m)の湧水路沿いに群生していた
一般に9月以降に見られる花だが、標高が高いせいか、咲くのが早い
葉は細長く、粗いノコギリ歯がある
▼トウゲブキ(花期7〜8月)
高山の草原に、一際目立つ鮮やかな黄色の花を咲かせる
背景の紅紫色の花は、全てナガボノアカワレモコウ
▼コバイケイソウの実
八瀬森湿原は、7月、コバイケイソウの群落が特に美しい
大きな花穂は、いつもトウモロコシの実を連想してしまうが、実も大きい
枯れゆく草原の草花たちを見ていると、早くも秋の装い・・・と言う感じがする
訪問者を圧倒する高山の湿原は、やはり7月に限る
▼八瀬森山荘
水場に荷を置き、懐かしの山荘に立ち寄る
中は、綺麗に掃除されていたが、山荘前でゴミを燃やした後が半端で汚かったのが残念
恐らく燃やす途中で雨に見舞われたからだろうが・・・燃やせないゴミは持ち帰りましょう
▼シシウドの大群落
湿原から抜きん出て咲く大花が、横一列に群れて咲く姿は壮観だ
水場で湿原の湧水を飲み休憩していると、雨が降り出してきた
急ぎ荷を担ぎ、この湿地帯を北に下る・・・ほどなく関東沢の源流に達する
関東沢・標高1007mの二又まで1km余り・・・
湿原への最後の詰めは失敗したが、予定どおりC2に着く

標高1000m以上に生息する岩魚、真夏の天狗湿原、草食いのクマとの遭遇・・・
二つの尾根を越え、14kmも歩いたヨレヨレの沢旅、アブと股ズレ・・・(つづく)

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