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八幡平・小和瀬川大沢口〜中ノ又沢〜葛根田川〜関東沢〜ヤセノ沢〜明通沢〜小和瀬・中ノ又沢 |
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猛暑が続く夏は、冷たい飛沫を浴びて源流から源流へと辿る沢歩きが最高だ 昨年、大沢口ルートで葛根田川源流に挑んだが、軟弱にも中ノ又沢に足止めを食わされた 葛根田大滝や源流二又、北ノ又沢源流へは20年もご無沙汰している 地図を見る度に、20年前と現在の姿がどれほど違うのか・・・それを確かめたい衝動に駆られた どうせ歩くなら、沢登りのゴールデンルートになっている葛根田川から大深沢へ抜けてみたい 今回は4泊5日に及ぶ長旅だが、パーティは2名と少ない・・・それだけに軽量化に苦労した |
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▼北ノ又沢源流の岩魚 岩魚釣りの世界では、20年以上前と現在を比較し、昔を懐かしむ人が多い 「昔は岩魚がウヨウヨいた・・・サイズも今よりワンランク上だった」 「今は、型も小さく、岩魚は激減してしまった」・・・ 果たしてそうだろうか・・・ 私の答えは・・・原生林が残っている限り、年毎に変動はあるものの、ほとんど変わっていないように思う 今回の源流探検で、その直感が当たっていることを強く感じた |
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▼葛根田川源流二又C1 清冽な流れ、焚き火、そして岩魚やキノコなどの山の恵み・・・ このたった一枚の写真が、今回の「山釣りの魅力」の全てを語っている ▼今回のコース・・・小和瀬川支流大沢口〜999mピーク〜中ノ又沢〜葛根田川本流〜源流二又C1〜 北ノ又沢源流探検〜八瀬森湿原〜関東沢源流二又C2〜天狗湿原〜関東沢源流探検〜1190m尾根〜 ヤセノ沢〜1032m分水尾根〜明通沢〜小和瀬川支流中ノ又沢下降〜車止め(総延長26km) |
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小和瀬川から葛根田川、大深沢を経て一周するには、車を二台用意する必要がある 帰りのコース・小和瀬川支流中ノ又沢に入ると、ほどなく崖崩れで通行不能に・・・ やむなく、中ノ又沢起点の林道脇に車を一台駐車する・・・帰りの林道歩きは辛かった 大沢沿いの林道は、ほどなく崩壊して車の通行はできないので、起点の広場に駐車 暑い陽射しを浴びて、大沢の右岸沿いにある杣道を歩く 1.6kmほど歩くと、大沢口の急峻な尾根沿いの登山口に着く 右の写真は、そこに掲げられた看板・・・「ここは大沢です。下れば小和瀬川です」 |
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大沢口から999mピークまでは、尾根沿いに直登するコースで傾斜はきつい 標高差は、およそ350m余り・・・重い荷を背負っての登りは、殊の外しんどい 登山道沿いには、ヒバや松類の巨木が林立し、暑い陽射しを遮ってくれるのでありがたい |
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道の傾斜はきついが、木の根道が続き歩き易い 一般的な登山道しては、ほとんど利用されないルートだが、よく踏まれた道だ 地元の人たちが、「タケノコ採り」のルートとして盛んに利用しているからだろう 大沢口ルートは、登山道というよりはタケノコ道と呼ぶ方がふさわしいように思う |
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左:急な木の根道終点には、タケノコを運ぶスノーダンプが幾つもデポされている 尾根沿い周辺の笹薮でタケノコを採取し、この地点までスノーダンプで下ろすのだろう ここから40kg〜60kgものタケノコを担ぎ、急斜面を下る・・・想像するだけでも眼が回りそうだ 右:急斜面を登り切ると、大沢の源流部が一望できる場所に出る ここからブナの森とネマガリタケの密林になる |
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左:999mの分岐点・・・右に針路をとる 左:ほどなく大沢分岐点の標識のある地点まで下る ここからさらに下り、最低鞍部から密生した笹薮ルートへ |
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ここで相棒の金さんが新調したピンソールを着ける 私は、最初から渓流足袋にピンソールを着けて歩く 今回は、峰越え・薮こぎルートにピンソール・・・沢歩きの際、滝の大高巻きにはピンソールミニを使用した つまり、釣りながら谷を安全かつスピーディに遡行するには、着脱が簡単なミニが最適だ |
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▼エゾアジサイ(花期:6〜8月) 長い柄のある青紫色の美しい装飾花をつけるのが特徴。葉は先が尖り、鋭いノコギリ歯がある。 |
▼エゾニワトコ 葉は長い楕円形で、縁に細かいノコギリ歯がある。夏、赤い実を上向きにつける。 |
密生した笹薮をかき分けるように下ると、中ノ又沢の源流に達する ほどなく、一年魚の岩魚たちが走る 一帯の緩斜面には、ブナが林立し、岩魚谷にふさわしい景観が広がっている 沢沿いのミズバショウやエゾニュウをなぎ倒したクマの痕跡が至る所に散見された ブナ=ネマガリタケ(チシマザサ)=クマ=岩魚の方程式にピッタリの沢である |
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▼岩魚の群れ 860m二又で荷を下ろし、岩魚の魚影調査を開始 倒木が横たわる淵に岩魚が群れていた・・・近付いても逃げない(無垢な岩魚たちであることが分かる) 写真に写っているだけでも11匹・・・これでも20年前より岩魚は激減したと断言するのだろうか ろくに歩きもせず、岩魚が激減したと呟くのは早計である 釣り人あるいは沢登り、山菜・キノコ採りの人たちが歩いた後なら、 岩魚は岩陰に隠れて決して姿を見せない・・・人の数だけ見て、山を見ず、といった人がやたら多いように思う |
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葛根田川本流は、釣り人や沢登りの銀座・・・岩魚はいても、夕食用の岩魚を確保するのは難しいだろう という訳で、この沢の源流岩魚を調達することに 源流部は渇水状態・・・釣るより先に逃げられるケースが頻発 それでも短時間で5尾をゲット |
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橙色の着色斑点、腹部も鮮やかな黄橙色に染まった岩魚たち 1尾をさばいて昼食用の刺身に・・・ブナの木漏れ日を浴びて楽しい昼食 残りの4尾は、夕食用にフキの葉でくるみザックに背負う |
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沢は、黒い縞状の苔ブナの森に覆われ、その中を蛇行するように流れ下る 滝は皆無、何の変化もないダラダラとした流れを延々と歩き続ける 沢登りなら、これほどつまらない渓もないだろうが・・・ 実は、こうした絵にならない渓こそ、岩魚の楽園であることを忘れてはならない 岩魚だって、険しい峡谷は嫌いに決まっている |
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左から小沢が合流すると、本流が近いことを示すナメ滝に達する 木漏れ日にナメ滝のシャワーがキラキラと輝き涼感を誘う ここで、釣りを諦めた女性が下っていく姿が見えた 「釣れました」と叫ぶと・・・ 「全くアタリがないので、諦めて帰ります」 「上に行けば、岩魚はいくらでもいるよ、夕食用の岩魚ぐらい釣らんと・・・すぐ上の小沢に入ってみたら」 落胆していた女性は気を取り直し、上流へと勇んで向かった・・・釣れるといいのだが |
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左:中ノ又沢合流点二又、この下流右岸の高台にテン場がある 右:葛根田川本流をゆく 二又には、先ほどの女性と同じパーティが二人、河原で焚き火をしていた 「釣らないんですか」 「釣りはダメなんです・・・岩魚が走る姿を何度も見ました 滝ノ上温泉が満杯なんで、沢で遊んでから温泉に入ろうと・・・ 中ノ又沢を遡って一周しようと思ったんですが、この暑さじゃ・・・ 明日、本流を下って帰ります。真面目な沢屋じゃないから」と・・・ 真面目であろうが、なかろうが、岩魚を追わなきゃ、真夏の渓は元気がでないと思うのだが・・・ |
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▼葛根田大滝 2段20m 中ノ又沢出合いから約600mほどで、懐かしの大滝と再会 ここまで岩魚が走る姿を何度も目撃・・・ところが、20年前の私の記録には・・・ 「中ノ又沢出合いまで26cm1匹のみ。中ノ又沢出合いの滝で数匹釣れてくるが型は小さい 大物は全て釣り尽くされたか、あるいは大きくなる間もなく釣られているのだろう ここで四人の沢登りパーティに出合う。昨日本流を遡り、中ノ又沢を下降してきたという。 ・・・本流はポイントがあるがアタリがない・・・葛根田大滝・・・この滝壺は水を満々とたたえ、 いかにも大物がいそうである。しかし、下段で22cm1匹上がっただけで、上段は全くアタリなし 大石沢組は・・・小型が多く、27cmが最高で、他はリリースサイズが多かったとのこと・・・ 今晩のおかず用イワナは、やっと間に合う程度の貧果であった」 20年前の記録を読み返すと、いかに岩魚しか見えていなかったか・・・恥ずかしいくらいだ 当時の記録と比較してみると、岩魚の魚影は確実に増えているような錯覚に陥る これは錯覚であって、実は、昔も今も変わらない、というのが真実のように思う |
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▼滝ノ又沢出会い・葛根田川源流二又C1 20年も経過すると、源流二又の風景は一変していた かつては、大きなフキが群生していた記憶があるが、その気配は全くない 大深沢の関東沢出合いや赤石川源流二又のように、テン場の位置が全く変わった場所も多い 左岸高台のテン場は、相当利用されているらしく、大人数の数パーティを収容できるほど平坦で広い かつての記録には・・・ 「二又下流の貧相と魚影の薄さに落胆し、休憩とする。 まわりはヒバ、サワグルミ、ミズナラの巨木が林立し、いかにも源流部らしい。 葛根田川を訪れた人は口々に二度と行かなくていいと言っている話が出て、私もそのとおりだと思った。 いくら渓相がよくても、こうも釣れないのでは不満である。」 結果的に、こうした苦い記憶もあって、20年もご無沙汰してしまった |
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▼滝ノ又沢F1の滝 二日目の朝、三脚にデジカメをセットし、滝の撮影へ 滝ノ又沢は、その名のとおり、入り口から滝が連続している 水量が少なければ、滝を直登できそうだが・・・ 転がっている石を見ると、角ばっている・・・ということは、崩落等でかなり荒れているような気がする 岩魚探索には食指がのびない |
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左:L字状に曲がった芸術的な流木 右:北ノ又沢を釣る・・・確かに大滝まではアタリが遠い その理由は簡単だ・・・源流二又は、沢登りの人たちが泊る銀座・・・ 夕食用の岩魚調達で相当攻められていることは間違いない・・・岩魚がいないのではなく、神経質なだけ |
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北ノ又沢は、深い広葉樹の渓畦林に覆われ、岩魚谷の風景そのもの 試しに川虫を採取してみたが、岩魚が生息するには十分の川虫が生息していた 渓に横たわる流木を見ると・・・ウスヒラタケがびっしり生えていた・・・今晩の味噌汁用に採取する |
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▼北ノ又大滝 15m かつて「魚隠しの滝」と命名した名瀑との再会・・・さすがに20年前と何ら変わらない不動の滝だ 両岸絶壁で、直登は不可能・・・滝壺は深くエメラルドグリーンに染まっている 高巻きルートも不鮮明で、しかも突破には一つのルートしかない 釣り人を容易に寄せ付けない滝だけに、改めて「魚隠しの滝」そのものだと思った ピンソールミニを着け、一つしかない安全ルートを忠実に辿る 上にも両岸絶壁の滝が見える・・・小段ルートを辿り、滝上に出ると 落差10mほどの垂直の崖になっていて、容易に沢には下りられない 張り出した木にシュリンゲを巻きつけ、布テープをつないで下りる |
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▼北ノ又沢源流の岩魚 斑点の全てが着色された岩魚・・・しかも、一般的な薄橙色ではなく、濃い柿色 腹部も白い部分がほとんどないくらい、柿色に染まっている 大深沢支流ヤセノ沢源流や関東沢源流のヤマトイワナに近い遺伝子を持つ岩魚だ これらの岩魚が同一の遺伝子を持っていることを考えると、 いずれも同一水系の岩魚を、峰越えで源頭放流した岩魚のように思う 果たして北ノ又沢源流の岩魚たちは、20年前と比べてどうだったのだろうか・・・(つづく) |
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