世界自然遺産白神山地周辺の紀行文について
 これまで世界遺産白神山地の核心部及び周辺地域を旅し、数多くの紀行文を掲載してきました。毎年恒例の山釣りのスタートは、4月下旬から5月の連休にかけて行っていますが、その紀行文を「早春の白神」「残雪の春山」等のタイトルで、早春の白神の風景や岩魚釣り、山菜採り、焚き火、山野草、野生動物等の写真を掲載してきました。

 これらの紀行文は、全て雪解けが早い日本海側の岩崎村や八峰町などの河川(もちろん、世界遺産地域以外)の記録です。白神山地を流れる河川は、世界遺産指定後、禁漁河川が多くなり、釣りが可能な河川は希少な釣り場となっています。また、この沢には絶滅危惧種1A類のオオサクラソウや絶滅危惧種1B類のトガクシショウマなど希少な植物群落もあります。持続的な利用と保全に考慮し、河川名は全て伏せてきました。

 また、私が「縄文の森・白神山地」「縄文岩魚」と呼んでいる地域は、上記河川の上流にある枝沢での記録です。この沢は、急峻な地形で滝が連続しており、かつては岩魚が生息していませんでした。昔、麓の山人が移植放流したと聞いています。下流と滝で隔絶された沢だけに、クマの密度も濃く、頭部に虫食い状の斑紋を持つ独特の個体が生息しています。

 禁漁期に入った10月のオフシーズンは、白神山地のブナ林で「黄葉とキノコ狩り」を行なっていますが、それは西目屋村の世界遺産地域以外の河川で、一部緩衝地域が含まれています。ここは、地元の人たちもキノコ狩りに訪れている場所です。

 今回、初めて指摘を受けて気付いたことですが、こうした事情を知らない人たちが、白神山地周辺の紀行文を閲覧したとすれば、河川名を明らかにしていない白神山地での岩魚釣りや山菜採り、焚き火、キノコ狩りの行為は、「世界遺産の核心地域で違法な行為を堂々と行っている」といった誤解を招きかねないことだったと初めて気付かされました。個人が管理するHPとは言え、誤解を招いた点については、素直に反省したいと思います。

 なお、白神山地の核心地域への入山については、津軽森林管理署に入山届を提出し、一日ボランティア巡視員の証明書をもらって入山しております。巡視の結果については、遡行後、管理のあり方も含めて報告をしております。

◆沢名を明示すべきか否か
 営利目的の情報誌なら、沢名を明示しないと価値がありません。しかし、非営利目的でかつ個人のHPの場合、その判断は基本的に個人の自由です。ちなみに渓流釣りのHPでは、ほとんど沢名を伏すのが常識です。逆に沢名を明示すると、渓の荒廃に拍車をかけるとの指摘を受けたこともあります。

 沢名を明示するか否かの判断は、実に悩ましい問題です。私の判断は、日帰り釣りが可能な範囲でかつ流域面積が小さい沢は、渓の荒廃を招く恐れがあると判断し、基本的に沢名を伏せています。一方、八幡平や和賀山塊のように、日帰りが不可能でかつ奥が深い沢は、基本的に明示しても問題ないと判断しています。

 ただし、「頭のつぶれた岩魚」のように特殊な遺伝子を持つ個体群が生息するような沢は、学術的にも希少な価値を持っていると判断し、全て沢名を伏せています。
◆世界遺産指定後の経緯
・1993年12月、白神山地が世界自然遺産に登録。秋田県側は入山禁止に。
 ・・・以降、秋田県藤里町粕毛川源流部に入山したことはありません。ちなみに、20世紀の記録「白神山地珍道中記」(1993年9月)が最後の記録です。
・1994年1月、秋田県藤里町粕毛川源流部を禁漁区に設定。

・1997年6月、青森県側の核心部は27の指定ルートに限って入山の許可制を導入
・1998年7月、青森県側の核心部を流れる追良瀬川、赤石川、滝川、大川、笹内川を禁漁区に設定。
・2000年10月、「東北自然保護のつどい」鯵ヶ沢大会で「白神2000プラン」を決議。

・2003年7月、青森県側は入山許可申請制度から入山届出制へ緩和。また、一日ボランティア巡視員制度を創設。
 ・・・これまで青森県側核心地域への入山も控えていましたが、入山届出制に緩和されたのを機に白神山地核心地域への沢旅を2003年からスタートさせました。その際、津軽森林管理署から電話があり、「一日ボランティア巡視員」を引き受けてもらえないかとの依頼がありました。趣旨は分かっていたので快諾しました。以来、一日ボランティア巡視員を引き受けて入山をしております。
◆白神山地世界遺産地域以外での行為・・・沢登りや岩魚釣り、山菜採り、キノコ狩り、焚き火等の行為は、山に生かされてきた人たちの文化的な行為であり、持続的な利用と保全に資するブナ帯文化として大切に継承されるべきものと考えています。ただし、根こそぎ釣るあるいは採る行為は、文化的な行為とは言いません。

 また、白神山地での登山は、27の指定ルートに記されているとおり、登山道や山小屋など皆無です。世界自然遺産核心地域における指定ルートは、道なき道をゆく沢登りがメインであることを理解していただきたいと思います。従って、地図に記された指定ルートとは言え、非常に迷い易く危険であり、遭難の危険度も高いことに留意願いたいと思います。
白神山地核心地域内指定ルート図&現地状況一覧表
核心地域入山手続き要領
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