100万アクセス記念特集:晩秋のブナ原生林・・・ナメコ、ムキタケ、ブナハリタケ、チャナメツムタケ、スギヒラタケ、ツキノワグマ |
2006年10月下旬、4名のパーティは、黄葉に彩られた森吉山麓T沢源流のブナ林へ。 日本のキノコの過半数は、ブナ、ミズナラなどの落葉広葉樹林に生えると言われる。 ブナの巨木が林立する斜面、寿命が尽きた樹齢200年ほどのブナの立ち枯れ木に 折り重なるように生えたキノコの造形美・・・それは日本人の自然観を象徴する美だ。 |
錦繍に染まったブナ林の美の極致 雪国を代表するブナ林の四季・・・ 春は生命の息吹・まばゆいばかりの新緑、夏はむせ返るような深緑、 秋は生命の最後を飾る黄葉、半年近くも続く冬は深雪に閉ざされ休眠・死の世界 永遠に繰り返す四季のうつろいは、自然に生かされてきた日本人の心の中に投影され、 「循環輪廻」「輪廻転生」・・・「生」と「死」は永遠に循環するという日本人の自然観を生んだと言われる。 黄葉とキノコ狩りは、日本人なら誰しも持っている遺伝子・ 「輪廻転生」の自然観を取り戻す行為と言えるかも知れない。 |
重い荷を背負いY沢を詰め上がると、ブナの幹に遭難防止の張り紙があった。 以降、番号の付いた看板と矢印が巨木の幹にやたらあった。 この辺一帯は、タケノコ、キノコの宝庫だが、地形はなだらかで 似たような枝沢が迷路のように張り巡らされ、大変迷い易い。 それがために、毎年遭難騒動が起きているらしい。 |
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黄金色に染まった森の杣道をゆく 峰を越えると、見事なブナ林に覆われ、早くもキノコの匂いが漂う。 地元の人が先行していたので、見落としたキノコを探しながら下る。 |
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小沢に突き刺さるように倒れたブナから顔を出したナメコの幼菌 ナメコの幼菌は、スーパーで見慣れているナメコと姿、形が似ているので 初心者でも迷うことはないだろう。 ただし、野生のナメコは、傘が開いた成菌が主なターゲット。 |
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ムキタケは最盛期だったが、ナメコはまだ早いようだ。 ムキタケは、猛毒のツキヨタケと姿・形が似ているだけでなく 同じブナやミズナラの枯れ幹や倒木に生えるからややこしい。 初心者は勝手に判断せず、経験者から、両者の見分け方を教わることをおススメしたい。 現場で一度教われば、100%間違うことはない。 ▼ムキタケとツキヨタケの見分け方 ・姿・形・・・ムキタケは、ツキヨタケのような毒々しさはなく大変美しいキノコ。 ・裏返すと、ヒダはかなり密で白っぽく綺麗な印象を受ける。 ・傘の表皮が簡単にむける。 ・柄の中心から半分に切ると、芯に黒いしみがない。 ・黄葉の季節になると、ツキヨタケは姿を消し、ムキタケが折り重なるように生えてくる。 |
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▼湿原の遷移とお花畑 小沢を下ると広い湿地に出る。 湿原の遷移を感じさせるような草原が広がっていた。 湿原のお花畑は、永遠に繰り返されると錯覚しがちだが、 毎年、植物が枯れると堆積し、やがて泥炭層が形成される。 水面のほとんどが泥炭層となる低層湿原には、ミズバショウやリュウキンカ →泥炭層が水面を越える中層湿原には、ニッコウキスゲやコバイケイソウ、ヤチヤナギ →泥炭層が地下水位より高く盛り上がる高層湿原には、ヒメシャクナゲやツルコケモモ →やがて草原から→森林へと遷移する。 深山にひっそりと眠る湿原は、千変万化する夢幻的風景に浸ることができる別天地。 |
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Y沢とT沢を結ぶルートには、番号と矢印が掲示されている。 ただし、度重なる豪雪に剥げ落ちたり、矢印の向きがズレたりしているので注意が必要だ。 |
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小沢とT沢本流が合流する大木に大きな看板が掲げられている。 「ここはY沢です。これより下ると危険ですので、番号順に上ってください。 Y沢林道に出ます」とある。 ところが、ここはT沢である。 間違った掲示板のお陰で、本流に辿り着いたのに気付かず かなり下ってから、やっと掲示板が間違っていることに気付く。 「どうもおかしい、ここがT沢本流じゃないか」 |
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▼イタチタケの大群落 雨に濡れた傘が光り輝き、傘の縁に白い被膜が付着して美しい。 この周辺一帯に驚くほどの大群落を形成していた。 無毒でクセはないとのことだが、肉が薄く食指はのびない。 |
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ブナ林の黄葉初期 ブナの黄葉は、鮮やかな黄色から、やがて褐色へと変化する。 黄葉の谷は、昼と夜の寒暖差が激しく、最低気温が6度以下と 急激に寒くなった証左。この頃の山ごもりは、防寒対策が必須。 |
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T沢沿いには、湿地を好むサワグルミとトチノキが目立つ。 特に苔生したトチノキの巨木が多いのには驚かされる。 斜面には、ブナが圧倒的に多く、ミズナラやハウチワカエデ その下に低木のオオカメノキ、クロモジ、笹類が繁っている。 |
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▼チャナメツムタケ 湿った傘は、ナメコと同じくヌメリがあり、まんじゅう形から平らに開く。 色は中央部から縁にかけて淡くなっていく。 傘裏のヒダは密で白色、後に土褐色へと変化する。 |
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チャナメツムタケは、林内の地上や埋まった枯れ幹上に発生する。 ヌメリが強く、汁物にすればナメコ以上にコクのある旨味が出る。 テン場では、雑キノコ鍋の一つとして入れたが、ヌメリがあり大変美味だった。 近縁種にキナメツムタケ、シロナメツムタケがあり、いずれも食べられる。 |
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本流を下っていることに気付いた我々は、重い荷を下ろし休憩。 黄葉に染まったブナ林内は、やたらキノコの匂いが漂っていた。 左岸の斜面を見上げると、何やら白いキノコが目に止まった。 |
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▼キノコの山 斜面を駆け上がり近付くと、キノコがびっしり生えているではないか。 倒木の横から下には、白く帯となってブナハリタケがびっしり生え 上には、大きなムキタケ、ナメコが生えていた。 |
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倒木の上には、折り重なるようにムキタケが連なる。 ムキタケ特有の大きな傘は、雨に濡れ照り輝いている。 黄色のカエデや褐色のブナの落葉が彩りを添え美しい。 |
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倒木の上部には、降り積もった落葉に混じって 開いたナメコが点々と連なっている。 ブナ林は、キノコの宝庫であることを象徴するようなキノコの山に感激。 |
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すぐ脇に立っている枯れたブナの巨木を見上げる。 根元から遥か頭上までブナハリタケが群生・・・ キノコの造形美に魅了され、デジカメのシャッターを何度も押す。 |
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ブナ林の黄葉が始まる頃、風倒木にムキタケが大量に発生する。 虫が付いていないかどうかを確認するには、傘の裏面をよく見て確認する。 肉質も厚くボリューム感に溢れ、採るには最高に楽しいキノコ。 一箇所当たれば、袋一杯になる。 |
キノコの山が連なる場所は、笹類などの雑草が少なく、日当たりの良い場所が多い。 それだけに沢沿いも同様、開けた場所が多く、テン場には最適。 沢沿いの右岸の平らな場所にテン場を構える。 |
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▼ブナ林内では珍しいスギヒラタケ ブナハリタケが群生していた左側にも、何やら白いものが見えた。 ブナハリタケとおもいきや、杉林で見掛けるズギヒラタケだった。 秋田では、人気の高いキノコの代表でスギカノカと呼ばれている。 2004年、スギヒラタケが原因とされる急性脳症が多数報告され、今では毒キノコの筆頭に、残念! |
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昔から、身近な杉林で大量に収穫でき、味も良いことから特にお年寄りに人気が高い。 杉の古い切り株などに多数重なって発生する姿は美しい。 表面は白色、肉は薄く、縁部は内側に巻く。裏側も白色でヒダも密。 ブナハリタケと同様、茎はなく側生する。 料理・・・味にクセがなく、しなやかな歯ざわりとコクのある出汁が出る。 かつては味噌汁が定番。他に鍋物、煮物、天ぷら、酢の物、油炒めなど、どんな料理にも合う。 ただし、現在は毒キノコと疑われているので注意! |
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日が暮れ始めると、谷は急激に冷え込む。 キノコ料理をしていると、手の感覚がなくなるほど寒い。 濡れた衣服を着替え、ホッカイロを腹と背中に貼って防寒具を着込む。 晩秋の焚き火は、暖房と照明、キノコ料理にとマルチに活躍してくれる。 豚肉とサワモダシ、チャナメツムタケを鍋一杯に入れたキノコ鍋 ブナハリタケと豚肉の炒め物、持参したキャベツ料理などをツマミに 熱燗で乾杯・・・この世の極楽・・・ 明日の好天を約束するかのように、夜空には満天の星が一晩中輝いていた。・・・つづく・・・ |
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付録:秋田県鹿角市、子グマ2頭の撮影に成功・・・ツキノワグマ捕獲2900頭超す | |
▼2006年10月下旬、林道沿いの木に登る2頭の子グマ(撮影:高橋金光) 母グマも隣の木に登っていたが、車に気付き木から下りる。 その時のバキバキという凄まじい音でクマを発見、小グマ2頭の撮影に成功。 昨年は、ブナの実が豊作で、出生率はグ〜ンと上がったことが予想される。 それだけに、子連れのクマに遭遇する確率が高く、キノコ狩りは特に注意が必要だ。 2006年春、秋田県と岩手県は、ブナの実の不作を予想し、初めてクマ出没注意報を出した。 今年のツキノワグマ有害捕獲数は全国で2956頭(うち学習放獣319頭) 大量出没した2004年の2241頭を超えた。 人身事故も死者3人、けが111人に達している。死亡事故は、長野2人、富山1人。 北海道では、ヒグマの人身事故で2人が死亡している。 その多くは、山に入る山菜採りやきのこ狩りでの事故だが、人里での事故も少なくないという。 (参考:朝日新聞2006年10月31日) |
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