玉川支流小和瀬川大沢口〜999m稜線〜中ノ又沢〜葛根田川・・・パーティ3名 |
2006年7月中旬、小和瀬川上流大沢道から八幡平稜線を越え葛根田川に向かった。 夏の葛根田川は、沢登り、山釣りのメッカだが、思えば18年もご無沙汰していた。 分水嶺を隔てた大深沢にのめり込み、葛根田川の記憶はほとんど風化したに等しくなっていた。 しかし、八幡平周辺の地図を見ながら大深沢のバリエーションルートを探っているとき、 いつも気になるのは、まだ訪れたことのない葛根田川の支流群だった。 予報は3日間とも雨・・・ならば安全なルートは山越えルートしかない。 いざ稜線を越え、中ノ又沢に入ると、驚くほど平坦な笹薮にブナ、ブナ、ミズナラの深い森が広がり、 蛇行を繰り返す穏かな流れには、黒い影が何度も走った。 源流部は、タケノコの宝庫であることを示す笹海が広がり、湿地にはミズバショウ、コバイケイソの群落、 巨大なフキ、エゾニュウ・・・クマの好物が山ほどあるだけに、クマの楽園であることは間違いない。 最近は、人を恐れないクマも出現。さらに昨年はブナの実が豊作で、子連れのクマも多い。 念のため、腰には熊避け鈴に加えて熊撃退スプレーを下げて遡行した。 |
玉川ダム・宝仙湖に架かる男神橋を渡り、小和瀬川沿いの林道を走る。 大沢林道はほどなく崩壊が著しく車の通行は不能だった。 地図や現場には、大沢口〜八幡平稜線登山道のルートを示す標識は一切ない。 しかし、実によく踏まれた道だった。 車止めの標高はおよそ600m、目指す稜線の標高は999m、落差約400m。 最初から渓流足袋にピンソールをつけて荷を担ぐ。 予想していたとは言え、重い荷を背負いながらの上りはきつい。 |
|
鼻をぶつけるような急斜面だが、ヒバの根が横に這い、ちょうど階段のようになっている。 まさに「木の根道」。 荷の重さを除けば快適そのものなのだが、一ヵ月半ぶりの山ごもり・・・ 心臓は乱れに乱れた。 約1年振りの美和ちゃんも「苦しい、苦しい・・・」を連発。 |
|
木の根道が終わると、ブナの道に一変する。 妙なことに、スノーダンプがブナの木に固定されていた。 何だろう・・・ 稜線周辺で採ったタケノコを、この急斜面を滑らせながら下ろす道具に使っているようだ。 これより下は、木の根道でスノーダンプが効かない。 だから、ここで荷造りをして車止めまで運んでいるに違いない。 八幡平稜線は、タケノコのメッカだけに、 大沢口は登山道と言うよりはタケノコ道と呼ぶべきかもしれない。 |
|
ブナが林立する急斜面を登る。 全身から汗が噴出し、心臓はパッコン、パッコンと音鳴りがするほどだ。 何度も立ち止まり、「苦しい、歩けない・・・」の声が飛び出す。 「どうせ急ぐ旅じゃないんだから、休み休み行こう。いずれ時がくれば稜線に出るはずだ」 |
稜線近くに来ると、ブナの森も深くなる。 濃い霧が右から左にゆっくり流れ、一面を覆い始めた。 神秘の森をゆく・・・絶好のシャッターチャンスだった。 ほどなく、「標高999m」の標識がある稜線登山道に出る。 |
大白森山荘の方向に下り、低いコルから笹薮を下る。 まだタケノコが生えているのではないかと思ったが、全てナギナタと化していた。 清冽な源流の流れに躍り出ると、地獄から天国に迷い込んだような夢心地になる。 苦しい分だけ、この感激は大きい。 |
|
中ノ又沢源流部は、歩いても歩いても一帯は平坦で穏か。 滝も皆無・・・笹薮と深いブナの森に埋め尽くされている。 源流の一滴から岩魚の稚魚が見える沢も珍しい。 変化に乏しく、沢登りとしてはツマラナイと言う人も多いだろうが、 クマやカモシカ、野鳥、岩魚、サンショウウオ、川虫たちにとっては、まさに楽園。 |
|
標高860m二又を過ぎると、沢も広くなる。 ブナの渓畦林に包まれた穏かな流れ・・・ まるで白神の追良瀬川源流を彷徨しているような錯覚に陥る。 |
|
変化に乏しい河原がどこまでも続く。 遡行者は、距離感覚が次第に麻痺してくる。 時折、足元を走る岩魚に元気づけられながらひたすら葛根田川の出合いをめざす。 |
|
ショウキラン・・・葉緑素を持たないランの仲間だが、暗い森の中、ほのかに光っているように見え美しい。 | マスタケ・・・紅マスやサクラマスの身の色に似ていることから「マスタケ」と名付けられた。釣り人にとっては、縁の深いキノコ。 |
葛根田川出合い近くになって初めて滝に出会う。 やっぱり夏は、滝のマイナスイオンを体中に浴びると元気百倍になる。 |
|
葛根田川本流・・・中ノ又沢出合いは両岸が岸壁でテン場適地はない。 本流に懸かる葛根田大滝を越え、北ノ又沢と滝ノ又沢出合い二又にテンバル予定だったが 中ノ又沢を走る岩魚の魚影を見てしまった我々は、あっさり変更。 雨の予報にかこつけて、軟弱にも中ノ又沢右岸にテン場を構えた。 遡行計画なんて、あってないに等しい。 あくまでその時の天候と現場の感覚で、臨機応変に選択できるのが山釣りの楽しいところ |
|
右岸の高台を刈り払い、テントを設営。 雨でも快適に過ごせるようにブルーシートを張ると快適なテン場に変身する。 薪を集め終えた頃には、既に午後3時半を過ぎていた。 さっそく夕餉の岩魚調達に出掛ける。 滝壺で岩魚を手に満面の笑みを浮かべて喜ぶ美和ちゃん。 先ほどまで苦しそうに歪んでいた顔が、これだけ変わるのだから岩魚の力は凄い。 |
|
平凡な河原の瀬脇にミミズを流すと目印が止まり、 ツンツンという岩魚独特の心地良いアタリ手に伝わってくる。 上下にあおり挑発すると、岩魚は一気に餌に食らいつく。 口、ヒレ、腹部が鮮やかな橙色に染まったニッコウイワナ。 川虫を腹一杯に食べて丸々太っていた。 |
|
側線より下に鮮やかな橙色の着色斑点を持つ典型的なニッコウイワナ。 曇天の夕方とあって、岩魚の食いはすこぶる良かった。 本流に出た長谷川副会長はすぐに空戻りしてきた。 上流から釣り終えた三人組が下って来たと言う。 恐らく大石沢出合いにでもテン場を構えているのだろう。 |
|
わずか1時間余りで、三人分の岩魚が釣れてしまった。 思ったとおり岩魚天国だったのだが・・・なぜか翌日はアタリが遠かった。 今回のパーティは3名と少なく、共同装備分が重かった。 それだけに岩魚の刺身、ムニエル、そして焚き火を囲み飲む熱燗が格別に美味かった。 |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||