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ニッコウキスゲ、レンゲツツジ、コバイケイソウ、ハクサンチドリ、ワタスゲ・・・花暦、そして幽谷の美魚
 7月中旬、八幡平・大深沢源流に向かっている途中、国道の左手に黄色の絨毯が目に止まった。急遽、オシッコタイムと称し立ち寄った大場谷地・・・朝露に濡れたニッコウキスゲの大群落は見事だった。駐車場や案内看板、木道も整備され、誰もが気軽に撮影できる。今度は、新緑と残雪を抱く湿原と早春の花を撮ってみたいと思った。
 大場谷地と焼山(1366m)。この山地湿原は標高970m、面積は4haほど。案内看板には「春から秋にかけてミズバショウ、エゾノリュウキンカ、コバイケイソウ、レンゲツツジ、ニッコウキスゲ、タチギボウシ、ミズギク、エゾオヤマリンドウなどの花を観察できます」とある。新緑の季節、湿原に春を告げるズバショウ、エゾノリュウキンカの群落はどんなにか美しいことだろう。
 ニッコウキスゲ・・・夏山定番の花。ゼンテイカ(禅庭花)とも呼ばれている。山地や高山の草原に群生する。花は漏斗状の鐘形で、3〜4個、下から順に咲く。花の色は、バックの深緑に映える鮮やかな橙黄色あるいは山吹色。花は一日花で、朝咲いた花は夕方には閉じてしまうとのこと。それでもツボミが次から次へと咲き、花期は意外に長い。
 朝露にしっとり濡れた花々が逆光に輝く。デジカメが進化した現在、同じ花でも、早朝に撮ればカメラ任せでベストショットが簡単に撮れる。三脚があればベストだろうが、これも手振れ補正機能付きのデジカメなら不要だ。
 逆光に輝く蜘蛛の巣。やっぱり順光より逆光の方がオ・モ・シ・ロ・イ。
 レンゲツツジ・・・木道から遠く離れた低木類の花を撮影するには、手振れ補正付きの高倍率デジカメが大活躍。これは12倍ズームで撮影したもの。レンゲツツジは、湿原の周縁部を、黄色の絨毯と深緑に一際映える朱橙色の花を帯状に彩る。
 コバイケイソウ・・・ほぼ旬は過ぎ、わずかに残っていた群落を12倍ズームで撮影。夏の湿原は、まず白のコバイケイソウが咲き、それが終わりかけるとニッコウキスゲが咲き始める。八幡平・大深沢源流の湿原では、この時季、標高1000m前後はニッコウキスゲ、標高1400m前後はコバイケイソウが満開だった。
 ハクサンチドリ・・・伸びた草に邪魔されベストショットが撮れなかった。広大な湿原を木道以外は歩けない。それがために、ポツリポツリと咲く小さな花の撮影は難しい。ハクサンチドリの名前は、千鳥が飛ぶ姿に似た草の意。花は紅紫色で茎の先端に多数総状に咲く。
 ハクサンシャクナゲ・・・白色の美しい花をたくさん咲かせる低木。いつもなら花の満開を迎えているはずだが、まだ咲いていなかった。
 ワタスゲ・・・ミズゴケ湿原に生え、白い綿毛の群れが風になびく光景は大変美しい。名前は、白い綿毛のような花穂による。
 マルバシモツケ・・・ハイマツに接して生える場合が多く、高さ1mほどの落葉低木。白色の花を密につける。単にシモツケという種もあるが、本種は葉が丸く、マルバシモツケとされた。
 ニッコウキスゲとワタスゲの競演乱舞。湿原には次々と花が咲き、雪国の山にも待ちに待った初夏の到来・・・まさに「花と水の庭園」と化す。
 人で溢れかえる尾瀬とは違い、静かな花園をスローに満喫できる。八幡平一帯には、こうした気軽に鑑賞できる湿原から、人跡稀な秘境の湿原まで、実に多様性に富んでいる。デジカメ、デジタルビデオをザックに忍ばせ、ベストショット撮影に挑戦してみてはいかがだろうか。
 八幡平は日本屈指の豪雪地帯。それだけに夏は短い。そのいっとき、目を見張るような美わしい花を咲かせる。夏、岩魚を追いながら、秘境の花園に躍り出ようものなら、感激はピークに達すること間違いなし。その夢を叶えようと思うなら、ぜひ2万5千分の一地形図で湿原マークを探してほしい。きっと秘境の湿原が見つかるはずだ。ただし猛烈な薮こぎを覚悟しなければならないが・・・。
 八幡平大場谷地位置図・・・田沢湖から八幡平に向かう国道341号線を走り、玉川温泉を過ぎると、まもなく大場谷地湿原に着く。八幡平の観光スポットから離れているだけに、隠れた花の名所の一つ。手前の熊谷地、前谷地の湿原も面白そうだ。

 大場谷地の花暦・・・5月上旬〜下旬、ミズバショウ、エゾノリュウキンカ。6月中旬〜コバイケイソウ、ワタスゲ、ツマトリソウ、イワカガミ、ミヤマツボスミレ、ハクサンチドリ、ミツガシワ、レンゲツツジ。7月、ニッコウキスゲ。7月中旬、ハクサンシャクナゲ、モミジカラマツ、マルバシモツケ。8月上旬、ミズギク。8月中旬〜9月上旬、エゾオヤマリンドウ、アキノキリンソウ、オクトリカブト、シロバナトウウチソウ、サラシナショウマ。
おまけ画像・・・深山幽谷の美魚・岩魚二体
 黒っぽい魚体をしたニッコウイワナ。テンカラ竿を弓なりにした一尾。
 やや淡い黄色を帯びた魚体と腹部が濃い柿色に染まったニッコウイワナ。同じニッコウイワナでも上の個体とはまるで違う印象を受ける。人間と同様、岩魚も十匹十色(2005年7月)。過酷な源流に陸封された岩魚は、遺伝子の多様性に富み、湿原の花に負けず劣らず美しい。
参 考 文 献
「北とうほく花の湿原」(日野東、葛西英明著、無明舎出版)
「八幡平の花」(工藤茂美著、加賀谷書店)
「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)

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