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ゼンマイ、エゾハルゼミ、無斑岩魚、怪魚の謎、リュウキンカ、カエルを丸呑みするヤマカガシ・・・
 頭のつぶれた怪魚が棲む谷・・・その険谷に分け入ったのは、いずれも初夏から盛夏の頃。5月下旬、新緑の季節に訪れるのは初めてのことだった。中でも、両岸の険しい岸壁に、極太のゼンマイが延々と連なる風景は圧巻だった。竿を放り投げて撮る、採る・・・
 岩魚よりもゼンマイ採りに翻弄され、肝心の怪魚との再会は果たせなかった。しかし、その中間種と思われる岩魚や斑点が全くない無斑 岩魚・・・さらには、衝撃のスクープ写真・・・ヤマカガシが大好物のアズマヒキガエルを丸呑みする瞬間に遭遇・撮影に成功した。ところが私は、大の蛇嫌いだけに、その画像を見ると気持ち悪くなる。よってトップではなく、最後のページに掲載するのでご容赦を。
雨の中、エゾハルゼミの鳴き声を聞きながら源流へ
 台風接近の影響で、初日はあいにくの雨だった。今回のパーティは5名。渓流足袋に初めてピンソールを装着して山道を歩く。他の4名は、スパイク付き地下足袋、渓流足袋あるいは渓流シューズに簡易アイゼンを付けて歩く。(写真は、怪魚が棲む谷が合流した下流部)
 エゾハルゼミ・・・深い森の頭上から「ジャーー、ジャーー」と、エゾハルゼミの大合唱が聞こえてくる。雨の音なのか、沢の音なのか、区別がつかないほど、多数の個体が連続して鳴き続ける。これがくそ暑い夏なら、「うるさい!」と一喝したくなるだろう。

 東北・北海道には、ハルゼミが生息していないらしい。ということは、春から初夏にかけて、ブナ林から聞こえてくるセミの声は、エゾハルゼミしかいないことになる。透明な羽、胸部に緑と黒の紋様がある。ブナ、カエデなどの広葉樹林を好む。朝から夕方まで、日照に関係なく鳴く。(写真は羽化したばかりのエゾハルゼミ)
 途中で、タケノコ、林ワラビを採ったりしながらのんびり歩く。いつものテン場は、サワグルミ林内にワサビの大群落がある。苔生す大石が点在する自然庭園、ブナの風倒木も多く、焚き木は売るほどある。テン場の決め手は、水場に近く、焚き火用の薪を確保できることが第一条件。次にテントが張れるだけの平らな場所があるかどうか。これら全ての条件を備えた素敵なテン場だ。ブルーシートを張り、テントをセット。薪を集めてから、今晩のオカズ調達へ。
 巨岩が点在するゴーロの壷を釣る。雨後の笹濁りで岩魚釣りには、絶好のコンディションだった。渓を覆い尽くす木々は、ブナ、サワグルミ、トチの木などの巨木に覆われ、太古の息吹を感じさせてくれるような渓相が続く。
 この沢に生息する標準的な岩魚・・・白い斑点が鮮やかで、他の水系の個体よりも一際大きい特徴を持つアメマス系。まるで北海道のエゾイワナとそっくりな岩魚が生息している。頭部のみ斑点は若干乱れているものの、背中は丸い斑点が綺麗に並んでいる。
 原始庭園・・・テン場からほどなく流れ込む左岸の小沢。サワグルミ林にすっぽり包まれ、一面分厚い苔に覆われている。急斜面から湧き出す清冽な流れがたまらない。もちろん、美味しくいただく。沢筋には、清冽な水を好むミズと山ワサビが群生している。
 標準的な岩魚と異なる個体・黄金岩魚・・・全身が黄色っぽく、黄金岩魚と呼びたくなる美しい個体。斑点が小さく、側線より下に橙色の斑点を持つニッコウイワナ系。
 全身真っ白に輝き、口が尖がったような特徴を持つ岩魚。腹部、ヒレは鮮やかな橙色に染まっている。特に尾ビレの上と下に赤橙色の鮮やかな線が入っている。これは、白神山地追良瀬川支流ウズラ石沢に生息する白神岩魚に似ているように思う。
 岩魚の水中撮影・・・アッちゃんが、水中ハウジング付きのデジカメを持参。ならばと、水中撮影を開始。慣れないせいか、岩魚は全てピンボケとなってしまった。頭のつぶれた怪魚を水中撮影できたら最高だろう。ぜひ挑戦したい課題だ。
 上るにつれて、落差も大きくなり、美しいゴーロ連瀑帯が続く。普通なら、こうした場所は岩魚のアタリが遠いのだが、雨後笹濁りで入れ食いが続いた。
 左の個体の口と右の個体の口をヨ〜ク比較してください。左の岩魚は、口が尖がっている。右の個体は、上顎が小さく丸い。この上流に頭のつぶれた岩魚が生息していることを考えると、どうもその中間種のように思えてならない。正常な岩魚と奇形魚が交雑しているのだろうか。謎は深まるばかりだ。
 今晩のオカズに十分の岩魚を釣り、急斜面を登って杣道に出る。見事なブナ林を眺めながら、快適に下ってテン場に戻る。焚き火を囲み、現地で採取した岩魚、山菜、きのこで旬の食材を調理、豪勢な宴会が待っている。
山釣りのクライマックスに酔う
 清流の傍らで焚き火を囲み、ワイルドな料理を楽しむ。まず岩魚の腹を割き、内臓を取り出す。きれいに血合いを洗い流す。大きい岩魚は刺身、22〜23センチの小さい岩魚はムニエル、8寸から9寸程度の岩魚は塩焼きに。頭と骨は、焚き火に吊るして燻製に。皮は唐揚げ。タケノコときのこのみそ汁、アイコ、ワラビ、アザミの茎のおひたし、ミズの塩昆布漬け、ウド、ワサビ、フキ料理・・・時間がいくらあっても足りないくらい忙しい。
 燃え盛る焚き火を囲み、熱燗で乾杯!山釣りのクライマックスに思う存分酔う。竹串に刺した塩焼き岩魚は10本。5人で10本・・・1本は宴会用、残り1本は、明日の昼食用だ。5月下旬の谷は、冷え込みも厳しい。こんな時は、焚き火の有り難さが身にしみる。大自然の中で、焚き火を起こす行為は、唯一「人間の証明」みたいなものだと思う。そして、最もホッとする空間を創り出す。それだけに、焚き火は絶対に欠かせない。
 金光氏がキャンドル用のローソクを持参してきた。暗闇の岩に乗せ、シャッターを切る。深い闇に柔らかいローソクの炎がよく似合う。酩酊寸前に飯を炊き、納豆ご飯とタケノコ汁でTHE END。明日はどんなドラマが待ち受けているのだろうか・・・。
苔蒸す悠久の美
 朝5時に眼が覚める。曇天だが、雨は降っていない。焚き火を起こし、朝一のコーヒーを飲む。朝飯前に、EOSKissデジタルと三脚を持って苔蒸す小沢へ。幽玄な風景を撮るには、陽が渓に射し込む前の早朝が一番だ。静寂の森を独りで歩いていると、日本人の美の原点は、まさにこうした苔蒸す幽玄の自然美にあるのではないかと思う。
 横たわる風倒木や点在する岩、サワグルミの根本にも瑞々しい緑の苔に覆われている。重厚な自然庭園の空間・・・人間では決して創り得ない自然の造形美・・・何百年、何千年の時を刻んで創り出された風景だからこそ、原始的な自然美、悠久の美を感じとることができる。
 苔は体が小さく、シダ植物や種子植物との生存競争に勝つことは難しい。そこでほかの植物が利用しない隙間、つまり岩や巨木の幹、風倒木を利用することで生き延びてきた。こうした苔の生態は、弱肉強食ではなく「棲み分け」そのもの。苔の美しさは、「共生の美」と言い換えることもできる。年中、マイナスイオンと清冽な飛沫を浴びて生きる超幸せな植物でもある。
 自然の造形美を存分に鑑賞しながら沢を歩く楽しみは、世界中どこにもない。日本文化のルーツは、こうした日本固有の自然美から生まれた。瑞々しい苔岩の間を清冽な湧水が落走する風景を眺めていると、心の中まで洗い清められるような感じがする。時を忘れて、心の底まで贅沢な空間に浸る。やっぱり沢遊びはやめられない。

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