山釣りの世界TOP


ウド、シドケ、アイコ。サクラソウ、シラネアオイ、ムラサキヤシオ、ヤマザクラ・・・そして岩魚
 雪解けの早い沿岸部の山は、新緑の峰走りもほぼ終了、全山燃えるような新緑に包まれている。新緑の春山は、山の幸も春の花もピークを迎えつつある証。ただし、まだ雪代は終わっておらず、沢を歩き、岩魚を追うには難渋する。
 岩魚の顔・・・シグマの古いレンズをメーカーにバージョンアップしてもらうのに、約3週間ほどかかった。今回は、そのマクロレンズと広角レンズだけを持ち、初めて実写テストしてみた。
 今回撮影に使用したレンズ・・・SIGMA AFマクロ90mmF2.8(144mm相当)、SIGMA 18-35mm F3.5-4.5(29-56mm相当)。マクロレンズは明るいレンズだけに、花や山菜、岩魚の顔をクローズアップ撮影するには威力を発揮した。しかし、レンズの暗い広角レンズは、手ぶれを起こしやすく、不満な画像が多かった。
 沢は、雨と雪代でいつになく増水。ほとんど渡渉できないほど、流れも太く速かった。当然沢通しに歩く釣り人は皆無。お陰で、小玉氏とスクラムを組んで渡渉したり、高巻きを繰り返した。萌黄色の新緑が渓谷を包み込み、雪代水は狭い谷間に木霊する。
 雪代の洗礼を受け、サビのとれたメス岩魚。サイズは8寸級だが、薄いパーマークが見える個体だった。頭部から背中にかけて、白い紋様も若干乱れている。
 同上のアップ。側線より上は白い斑点、側線より下に橙色の斑点が2列に並んでいる。ニッコウイワナだが、色はかなり薄いように思う。アメマス系とニッコウ系の二種が混在している渓流だけに、中間種的な色彩を持つ岩魚の個体も多い。、
オオサクラソウの大群落に酔う
 暗く湿った渓谷の斜面に大群落となって咲き乱れるオオサクラソウ。延々と連なる渓谷を、紫紅色に染める群落は圧巻だ。これが絶滅危惧種1A類なんて、考えられないほど多く自生している。しかし、白神でもこうした大きな群落に出会うのは、ごく限られた場所しかない。
 真っ直ぐ伸びた1本の茎から8個もの花が輪状に咲き乱れ、花姿が実に艶やかで美しい。この花が咲く頃、沢沿いの山の幸はピークを迎える。
 花姿も個性的だが、葉も天狗のウチワのように大きい。名前の由来は、花が桜に似ているから。
絶壁上部に隠れた山菜畑
 雪崩斜面は、腐葉土が厚く堆積し、極上の山菜が生える。特にウドは沢沿いにもあるが、本命は山の中腹にある崩落斜面だ。写真の斜面中腹には、ウド、シドケ、アイコ、ウルイの山菜に加え、白のニリンソウと黄色のオオバキスミレが咲き乱れていた。
 崩落土の分厚い斜面には、根も太く極上のウドが生える。ウドは、数株群生するが、一般にポツン、ポツンと離れて生えている場合が多い。ところが、この雪崩斜面は、よほどウドの生育に適しているらしく、一面ウド畑と呼びたくなるほど規模が大きい。
 痩せウド・・・崩落土上部は、中間部に比べ腐葉土が浅い。そこに群生していたウドは、おしなべて細く、通称「痩せウド」と呼ばれているものばかり。もちろん食べられるが、今回は全く採取せず。
 厚い腐葉土から顔を出したばかりの若ウド。茎は、太く白と赤紫色。全身白い産毛に包まれ、食欲をそそる。芽の部分は天ぷら、根元の太い部分は、皮を剥ぎ、生で食べる。皮は、捨てずに「きんぴら」にすれば、酒のツマミにグーだ。つまり、若芽は捨てるところが一つもない。
 同じウド畑に群生していたシドケと白のニリンソウ
 山菜オンパレード・・・アイコ、シドケ、ウドが同じ場所に混生していた。これはちょっと珍しい。
 腐葉土が厚いとウドだけでなく、シドケも太い。
 直径30センチのザルを出し、ナイフで切り取ったウドを入れる。あっと言う間にザル一杯になった。こんな極上のウド畑を見つけると、岩魚を釣るより感激は大きい。たくさん採取したら、保存用に味噌漬けにすれば最も簡単で美味。
 オオバキスミレ・・・新緑の森に咲く草花は、白や紅、紫色の草花が多い。それだけに、花は小さいけれど、鮮やかな黄色の群落は際立って見える。
 ブナの新緑をバックに、ザル一杯のウドを持ち記念撮影。題して「ブナ林の恵み、食べてたんせ」・・・ブナ林のスロー風土をまるごと味わう。
再び、岩魚釣りモードへ
 ウド、シドケ、アイコを採った後、急斜面を下り、岩魚釣り開始。狙ったポイントでは、必ずといっていいほど、岩魚が竿を絞った。感激、感激のドラマが続く。
 尺にはちょっと足りないが29cm余りの岩魚。渦巻く滝壺で、3Bのオモリを2個も付けて釣り上げた一尾。雪代渦巻く渓では、根がかりを怖れず、地球を釣り上げる感じがベストだと思う。
 岩魚の顔に思いっ切り近づき、マクロレンズで接写。動くものなら何でも食らう悪食家のチャンピオン、獰猛な野生を感じさせる岩魚の鋭い歯も、マクロレンズなら簡単に撮れる。
 野性味溢れるオス岩魚の顔がたまらない。何度眺め、何度シャッターを切ったか知れない。それほど絵になる個体だった。まだ10時前だったが、あっさり竿を畳む。次なる楽しみは、山野草の撮影だ。
シラネアオイ・・・
 シラネアオイ・・・一度覚えたら忘れられない大型の花。なぜなら、これと似たような花は一つもないからだ。この花は、ブナ帯の遺存植物と言われ、原始的な形質を残しながら、現代まで生き抜いてきた。シラネアオイの美しさは、花だけでなく、その首から広げた大きな葉が、花を一層引き立てているところにある。一般に群生の規模も大きい山野草の一つ。
 花のアップ。薄紫色の花弁は、四方に開き、中心の黄色は、おしべ。このぐらいの接写ともなれば、もはや肉眼では見えない世界だ。
 コミヤマカタバミ  ニリンソウ。背後の紫色は、シラネアオイ。
山の幸
 朝飯前に採取したウドと岩魚。河原で新緑を借景に、遅い朝食を楽しむ。美景を360度眺めながら、コーヒーを飲む。ザックと竿を置き、再び山菜畑へ。
 ゼンマイ・・・もちろん採らずに撮るだけ。そろそろ地元の山菜プロたちも、アイコとシドケからゼンマイ採りに変わるだろう。
 第二の山菜畑で採取したシドケとアイコ。山菜畑に着くと、ほどなくCFカードの残がなくなり、カメラの撮影ができなくなった。しかたなく、山菜を採るしかない。採っても採っても、採り尽くせないほど天然の畑は巨大だ。お陰で、帰りは荷の重さに苦しむ羽目に陥った。
 ミズも大分大きくなってきた。
エンレイソウ、ムラサキヤシオツツジ
 シラネアオイと並び原始的な草花・エンレイソウの花のアップ。紫褐色の小さな3弁の花を、引き立てるように3枚の大きな葉を広げる姿がユニークだ。
 ムラサキヤシオツツジの花も満開だった。新緑に一際目立つ紅紫色の花は、遠くからでもすぐ分かる。ムラサキヤシオは、庭には育たず、雪国の山でしかお目にかかれない。それだけに価値ある花の一つ。
山の幸を背負いながら、新緑、木の花・・・を撮る
 山菜をどっさり背負い、斜面を登る。左下の白い花はニリンソウ、その上の緑の群落は猛毒・トリカブト。林立する木はサワグルミ。ということは、湿った窪地であることが分かる。
 ブナの若葉 イカリソウ
 ヤマブキ・・・里ではヤマブキの花も最盛期。谷川沿いの湿った場所に多く自生している。鮮やかな黄金色は、まさに山吹色と呼ぶにふさわしい。
 モミジイチゴの花・・・下向きに白い花を咲かせ、花弁は5個。果実は黄色に熟し、味も良い。
 ブナの新緑に彩りを添えるヤマザクラ。日本の野生サクラの代表で、ブナ林帯にも多く自生している。花の図鑑によれば、ヤマザクラの北限は、男鹿半島と記されている。ならば、白神のサクラは、赤味の強いオオヤマザクラと白のカスミザクラの二種だけなのだろうか。いずれにしても、山に自生するサクラだから、通称ヤマザクラと呼んでいる。
 ヤマザクラ(水心苑で撮影)は、葉と花がほとんど同時に開く。葉の色は茶系で、遠くから見ると赤っぽい感じに見える。「願わくは花の下にて春死なん/そのきさらぎの望月の頃」(西行)・・・この句の「花」は、もちろんヤマザクラ。
 イタヤカエデの新緑・花・・・葉が開く前に黄緑色の花が枝先一面に咲く。遠くからでも鮮やかな萌黄色で、よく目立つ。
 オオモミジの新緑・・・ブナの新緑をバックに、萌え出たばかりの花と実が映える。
「食」をキーワードに、自然と人間との関係をつなぐ
 ブナ林の恵みを実感するには、やはり「食」がキーワードだと思う。マタギをはじめとした山麓の人々は、ブナの森から四季折々、「食」の恵みを受けて生きてきた。山菜にしても、岩魚にしても、それを採り食べることによって、はじめてブナ林と人間が「命」でつながっていることを実感する。これを「頭」ではなく、「身体」で感じることが大切だと思う。
 ブナ林、美しき水、川虫、岩魚、山菜、キノコ、花、虫、鳥、野生動物・・・これら全てが生命の鎖でつながっている。なのに、人間だけが、この森からどんどん切り離されていくような疎外感、危機感を感じることも多い。そのバラバラに切れてしまった関係を一つ一つつないでいくことこそ大切だと思う・・・山の命をありがたく食べることは、自然と人間との関係を取り戻す最も基本的なことだと思う。もう「頭」で考える「自然保護」なんて、やめようじゃないか。

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