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栃川探索行パート2
 三条の滝を釣る・・・何となく「フナ釣り」でもしているように、のんびり糸を垂れる。実は、このノンビリ糸を垂れる心境こそ大切。「穏やかになることを学べ」
 長谷川副会長が、すかさず深場からイワナを誘い釣り上げた。これは経験の差か?
 上の滝壺で釣れたイワナ・・・背中の部分が青緑に輝いた不思議な個体。斑点も一際鮮明だ。
 同上のアップ・・・白い斑点も橙色の斑点も鮮明なのが分かる。
 次第に渓は、ナメの岩盤が続く。歩くには、天然の舗装道路を歩いているようで快適だが、イワナが隠れる岩もほとんどなく、イワナのアタリは遠のく。この後、美和ちゃんは、左のナメの岩盤で足を滑らせ滝壺にすっぽりはまってしまった。寒く、いい湯加減とはいかなかったようだ。
 ナメ滝を快適に上る。最上段の壷で、まさかの尺物が釣れた。恐らく、産卵に備えて遡上中のイワナだったに違いない。
 枝沢が合流する地点で昼食。美和ちゃんは、寒さで唇が紫色に染まり、体が小刻みに震え出した。こりゃいかん!急いで焚き火をし、着干し作戦を開始。
 荷物を置いて、3名は栃川大滝をめざして釣り上がる。上の写真は、イワナがヒットした瞬間である。副会長は、イワナがヒットすると左足を上げるクセがあるので、その瞬間はすぐに分かる。竿がブルブル震えた。
 まあまあのサイズなのだが、なぜか青いパーマークが残るイワナだった。イワナは6寸未満では、パーマークが鮮明だが7寸以上になるにつれて不鮮明になる傾向を持つ。イワナは、深山幽谷に幽閉されたような世界にいるだけに、その個体差は著しい。
 右手に長大なスラブ壁が見えてくると栃川大滝も近い。
 栃川大滝30m・・・激甚の落差と瀑風は凄まじく、滝の直下にデジカメを持っては近づけない。見上げれば、両岸切り立つ壁が連続し、訪問者を威圧するに十分の迫力がある。この滝を高巻くには、右岸を大きく巻く以外に手はなさそうだ。
 下って名もない枝沢を探索することに。竿を出したのは、チョウチン釣りが得意な長谷川副会長。落差のある階段状のポイントが連続しており、意外と良型が釣れてきた。
 全体にサビついたように薄黒く、体色は黄橙色、顔は真っ黒といった感じで源流イワナ特有の魚体だ。居着きの特徴を示す腹部の柿色も鮮やかだ。口元も黒っぽいが、口紅を塗ったように橙色に彩られている。
 苔生す岩場を歩く源流イワナ。頭から背中にかけて黒っぽく、本流に比べて斑点は著しく小さい特徴を持つ。
 丸い岩がナメ滝の斜面にチョコンと乗っかっていた。今にも転げ落ちそうな不安定さだが、それだけに自然の妙を感じる光景だった。
 このポイントでは、大きなイワナが底から浮き上がってきたのが見えた。慌てて竿を入れるたが、釣れてきたのは、見えたイワナよりワンランク小さい泣き尺のイワナだった。恐らく、見えた時点で、大イワナは我々に気付いていたのだろう。相手が一枚も二枚も上手だった。
 上の壷で釣れてきた泣き尺のイワナ。見えたイワナより小さかったが、なかなか精悍な面構えだ。
 水中撮影・・・鼻曲がりのオスイワナ。ちょっと暗かったのが残念だが、源流イワナの迫力は撮れたと思う。
 本日キープした良型のイワナたち。全て生かしたまま歩いただけに、旬の食材としては一級品。1人3匹を目安にキープ(刺身、ムニエル、翌日の昼食用塩焼き・・・計3匹)。栃川は、キャパシティが決して大きくないが、イワナとほどほどに遊べたので満足、満足だった。
 早めにテン場に戻り、山の料理を楽しむ。私の役目は、イワナだ。腹を割き、卵と白子は酢醤油和え用に小さな容器に入れる。イワナの頭に切れ目を入れ、皮を口でかんで一気に剥ぎ取る。先程まで生きていたので、皮に身が付くこともない。三枚におろし、刺身を作る。次に4匹をムニエル用に三枚におろす。残りの皮は、唐揚げ用に半分に切る。頭と骨は、焚き火の上に吊るす。塩焼きイワナは、笹竹に刺し、手製の三脚に立ち掛ける。

 美和ちゃんは初めてイワナのムニエルに挑戦。小麦粉と塩コショウ、ニンニクを使ってフライパンで炒める。初めてとは言え、なかなか美味かった。さもない場所で滝壺にハマッタが、これは誰しも経験することだ。失敗がなければ上達もなし。これが身体で学ぶ文化の真髄だと思う。中村会長も八滝沢で壷に落ちたし、かく言う私も追良瀬川で重い荷を背負ったまま頭から壷に落ちたことがある。山の幸に舌鼓をうち、酒を飲みながら、そんなバカな話を繰り返す。どうってことないさ・・・失敗を笑い飛ばす余裕は、やっぱり信頼できる仲間と焚き火があればこそだと思う。
 翌朝、残りの焚き木を積み上げ、ブナの森の喫茶店を満喫する。せせらぎの音と深いブナの森、これ以上ない借景がステックコーヒーの美味さを何倍にもしてくれる。「こんなところで山暮らしができたら・・・」誰彼となく、そんな言葉が漏れた。
 テン場を囲むように林立するブナを見上げる。
 見事なブナばかり・・・白っぽい樹肌には、様々な地衣類が着生し、多彩な斑紋をつくる。
 二日間お世話になったテン場を綺麗に片付ける。なかなか素敵なテン場だが、酒の入ったビンや大きな鍋が捨てられていたのは残念だった。「来た時よりも美しく」・・・この言葉をぜひ実践してほしいと願う。山で遊ばせてもらっている以上、それは最低限のマナーだと思うが・・・。
 森の中をしばし散策。最も大きいブナの巨木に近づくと、やっぱり寿命を示すヒビ割れ現象があった。この森周辺は、平坦で風もほとんどなく、ブナにとっても楽園に近い地の利があった。それだけに巨木も多い。それでも推定樹齢は300年ほどだ。白神山地と同様、ここも250年から300年がブナの更新サイクルのようだ。
 雪圧だろうか。手前に倒れかかったブナが斜めになっていた。秋のブナの森は、熟した木の実の匂い、落ち葉の匂い、風倒木に生えたキノコの匂い・・・その匂いから、呼吸する森、豊穣の森、母なる森、原始の香りといった言葉が次々と浮かぶ。
 寿命が尽きて倒れたブナもあれば、訪問者を威圧するような巨木もあった。1200年の古道にふさわしい森が広がっている。それにしてもブナ、ブナ・・・で埋め尽くされた森と渓は、やっぱり心のオアシスだ。「岩手のブナも素晴らしい」の一言だった。ブナの森に感謝しつつ、仙北街道に向かった。

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